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第4章 富国弱兵
第4章 富国弱兵~1 インフラ整備よーいどんっ!
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1 インフラ整備よーいどんっ!
「やったー!白ーっ!」
男の子が沙那の足元を駆け抜けていった。
この世界の多くの女性と異なり、丈の短いスカートなので簡単に中を覗くことができる。
「こらーっ!」
沙那が拳を振りかざす。
子供にぱんつ見られたくらい大したことではないが、他の女の子にもやるようになっては困る。
ちゃんと教育しなくてはならない。
もちろん古き良き時代らしくゲンコツだ。
アレキサンダー領に帰還したクローリーたちは大忙しだった。
予想外の利益を得て帰ってきたのを元手に、前々から計画してきたことと他に仲間で知恵を出し合って様々なことを始めたのだ。
沙那が最初に提案したのは学校だった。
文字の読み書きや四則演算を領民たちに行き渡らせることが重要だと思ったからだ。
ここ数ヵ月の生活で、帝国の多くの人々が文字の読み書きができないことを知った。
簡単な計算もできないので貨幣経済が浸透していなかった。
物々交換と貨幣支払いが半々なのだ。
これでは先々の繁栄は望めない。
まずは基本的なことを教える機関が必要だった。
最初は子供から。
義務教育として5~6才から強制的に学校に通わせることにした。
幼いうちからの方が教育は効果を発揮しやすいのもあったが、実のところは沙那が理解できる彼女の世界の常識を導入しただけである。
始めてすぐは教科書すらなく手探りの授業だった。
4~5年で最低限のカリキュラムを行うつもりであったが、優秀なものは飛び級も認められていた。
何故なら人手が足りないので、卒業した中で優秀な者は代用教員として採用したいからだ。
彼らをアレキサンダー領の公務員とすることで現金収入を得る手段にもなる。
将来的には更なる高等教育機関が必要であったが、それはまだまだ先のことだった。
問題はあった。
帝国では子供も重要な労働力なのである。
庶民……特に農民たちは子供を取られることを嫌がった。
そのために行ったことは、授業料無料と給食無料である。
子供の分の食事が浮くだけでも帝国の庶民には大きい。
その上に、朝早く来れば朝食も。夕方には夕食まで用意した。
これはとても大きい。
更には付随する給食センターを作って領民を雇用したり、老朽化した車輪屋の馬車をスクールバス宜しく送迎に使ったりもした。
クローリーの出費は少なくないが、未来のための投資と割り切ることにした。
教育の重要性は彼自身が痛いほどよく理解していたからだ。
「あらあらぁ」
甘えん坊な子供はマリエッラの豊かな胸に顔を埋めていた。
巨乳度なら沙那も負けてはいないが、母性の差が大きい。
マリエッラには安心感がある。
子供たちが懐く由縁だった。
ママのような先生……マリエッラ。
面白悪戯対象……沙那。
とにかくも代用教員が育つまでは沙那やマリエッラ、ヒンカといった面々が教員をするしかない。
そのために彼女たちの詰める役所は小屋を学校に隣接させた形になっていた。
* * *
「フホホっ。機械文明の開化でござるよ。ブフゥ」
賢者が丸々とした腹を揺すり、ぶひぶひ言っていた。
以前からクローリーと計画していた上水道の建設に充分な資金を得たからであった。
クローリーたちが持ち帰ったドカル金貨は7万5千枚ほどあった。
これはちょとした国の国家予算以上だ。
帝国で例えるならば三代王朝の一つの3年分の予算である。
クローリーたちの細々とした交易はとてつもない収入になっていたのだ。
上水道の整備は大工事だが今回の利益から考えれば大したことはない。
帝国は元々大規模な工事の場合は、無料で領民を強制労働させるのが常だったが、クローリーはきちんと給金を支払っていた。
現金であったり食料であったりは状況によりけりだったが。
それを賄っても余りある金額だったのだ。
とにかく領民の生活を多少なりとも向上させたい。
その考えの基礎になったのは、賢者から聞いた話だった。
『歴史上、豊かな中間層が多い社会ほど豊かな国だった』
これは彼の知識の中のローマ帝国であったり、あるいは20世紀のアメリカ合衆国であったり、彼のいたバブル時代の日本国であった。
豊かな中間層が発揮する購買力は経済を活性化させ拡大する。
彼のいた時代の日本は、世界最大の経済大国アメリカ合衆国を買い占めることができるといわれるほどだったのだ。
その原動力になったのは無駄遣いともいえるほどの公共事業だった。
インフラ整備は赤字国債をバンバン発行したにも拘わらず、雇用を促進し結果的には税収も増えたのだった。
豊かさは内需を大きく拡大する。
賢者はその後の大増税を知らないために、景気の良いことしから判らない。
労働中の食事は学校と同じく給食センターから配給する上に、工期が短縮できたらそのグループにはボーナスまで支払われた。
これにより領民だけではなく、領地外から人が流入した。
出稼ぎであったり移住であったりは様々だ。
人が増えれば町は賑わう。
事実上クローリーのポケットマネーで始めた事業は、街を大きく潤わせた。
人口は増え治安も悪化したが、シュラハトたちが警察として取り締まった。
何より住居が足りなくなり、急増の公営住宅を建てまくったほどだ。
平屋ではそう広くない土地を使い切ってしまうので、3階層の、しかも決まった形状のアパートを量産した。
おかげで景観は画一的なものになってはしまうが、この時点では仕方がない。
さて、上水道が機械文明というのは同時に水車の導入をしたからだった。
クローリーたちが建設する上水道は複数の系統がある。
まず一つは飲料水を行き渡らせるもので、各家庭にとまではいかないものの区画ごとに給水口が設置された。
これは少し離れた山から引かれるもので、逆サイフォン効果でアパートの3階やアレキサンダー男爵邸の最上階まで水を運ぶものだ。
「逆サイフォン……?ブホッ?」
賢者には良く判っていなかったが、これは沙那やヒンカのアイデアだ。
取水口が高い位置にあれば、それよりも給水口が低い位置にあればポンプを必要とせずに、水を引き上げることができるという単純な現象である。
古くから沙那やヒンカの時代にも用いられているもので、用水路などにも使われる手法だ。
さらに蛇口を取り付けたいくらいだったが、それはさすがに困難なので現状は垂れ流しである。
もう一つは用水路である。
山水は夏は冷たく冬は暖かいという特性を持つが、生活や農業に使う水は温度管理はそこそこで良い。
水源は様々で池や湖などから引いてくることが多かった。
水車はまさにそこにこそ多く設置された。
水車はよほど巨大なものでもなければ緩やかな流れで十分に回る。
これを減速歯車で粉挽き臼などを動かすのだ。
手作業で行うよりもはるかに効率が良い動力だった。
賢者が度々注文して改良していた車輪の軸受けの効率化は大きく役に立っていた。
帝国の辺境領域……例えばアレキサンダー領のような地域では麦をパンにして食べるのはかなりの贅沢であった。
庶民は硬い黒パンしか、どころか基本的に麦粥なのだ。
粉にする手間すら惜しいのが実情だった。
賢者も度々口にする麦粥に閉口していたので、せめてパンにしてもらいたいという願望が水車になったのである。
主に湿地が多く、川や運河で繋がれたアレキサンダー領にはうってつけだった。
技術革命は小さな動力から始まるのだ。
「文明の灯がついに……ブフゥ」
そして賢者の最大の発明は発電機だった。
抵抗の少ない回転軸、水車、減速歯車……そしてドワーフ職人に依頼していた細い銅線。磁石は自然界でも獲得できる。
これらの組み合わせは昭和の少年だった賢者にとってはお馴染みのアマチュアモーターだった。
電気モーターは回転軸を回せば発電機になる。
さすがは昭和!
工作系の玩具が豊富だった時代の人間らしい。
ただ……賢者はあくまで文系だった。
「永久磁石じゃたいして発電できないよー?」
「ブホゥ!?」
沙那のツッコミに賢者は途方に暮れかけた。
そう。使用した磁石は天然の磁石だった。
昭和の少年たちの愛したアマチュアモーターも同様の永久磁石である。
確かに発電はできるのだが、その能力はとても小さい。
発電機は基本的に電磁石を必要とする。
発電のために電気が必要になるという、卵が先か鶏が先かのような話になるのだった。
「ブホオオオオオオオウッ!!?」
賢者は唸った。
何ということだろう!
「……馬鹿なのじゃ。最初に発電した弱い電気で電磁石にすれば良かろうなのじゃ」
ヒンカが溜息を吐いた。
何のことはない。
低効率の発電機数基を使って、メインの発電機を回せばよいだけだったのだ。
「ウホウホホホホホッ!」
賢者は歓喜した。
これで灯りが作れる。と。
「そりゃ無理じゃ」
「ブフゥ!?」
一見、単純な構造の電球ではあるが減圧構造になっていておいそれとは作れない。
何より発光体であるフィラメントの材料がない。
よく言われる竹のフィラメントだが寿命が短すぎて実用性に乏しい。
そもそも竹のフィラメントでは沙那や賢者が思い浮かぶほどの明るさは出ない。
強い電気を流すと簡単に焼き切れてしまうのだ。
沙那や賢者が良く知る明るさを出すことなど到底不可能である。
タングステンのフィラメントになってやっと性能が安定するのだが、帝国のこの時代にタングステンの産出などは全くない。
そもそも存在すら知らない。
賢者の期待していた電気の光は遥か遥か先のことになるだろう。
灯りが欲しい。
賢者は強く願っていた。
夜になると恐ろしいほど街中も暗い。
灯りを付けるランプの油が惜しいからだ。
節約のためにほとんど消してしまう。
月明りだけが頼りだ。
蛍でも探して集めようかと賢者は幾度も悩んだものだった。
もちろん面倒くさいからやらなかった。
「でも、電気があると便利だよー?電気分解とかいろいろ。アンモニアとか作れそうだしー」
沙那が指折り考える。
電気を通すことで作りだせる物質や便利なものは多い。
沙那のように現代の知識をもってすればいろんな製造に役立つだろう。
義務教育レベルの理科知識だけでもかなりのことができる。
古典的なバッテリーなどもその一つだ。
バッテリーがあればモーターを回すことができる。
内燃機関より遥かに構造が簡単なので、製造はとても楽だ。
電気自動車というと21世紀のものと勘違いする人少なくないが、ガソリンエンジンの自動車と電気自動車はほぼ同時の19世紀末に誕生している。
しかも臭い排気ガスなどがない上に静かなために、貴族たちには電気自動車の方が好まれたほどである。
ただし、電気自動車にはバッテリーの性能という足かせがあるために、性能は次第にガソリンエンジンなどに取って代わられてしまう。
それは沙那のいた21世紀の世界でも大きな壁だった。
当然、馬車を電気自動車に置き換えるとかは、かなり難しい。
ガソリンエンジンなどの内燃機関にするにも石油の宛がない。
膨大な量が必要だが、砂の国から輸入するにも運搬する手段がない。
アダマストール号で運べる量ではとても需要に追い付かないだろう。
すると船自体を大型化させたいところだったが、そもそもそれが難しい。
クローリーたちがやろうとしていることは、沙那たちの世界の数百年分の進化を一気に行うようなものだった。
それにはできないことも多かった。
あちらを立てればこちらが立たず。
技術の進化には様々な基礎技術が必要なのだった。
したがって、行うべきなのは経済的な進化であると考えられた。
ただ、ちょっぴりだけ。
クローリーと沙那は違っていた。
この世界には魔法があるからだった。
魔法印のように低コストで行える魔法との組み合わせで解決できることがあるのではないかと考えていたのだ。
なにより、沙那には不合理の塊みたいな相棒がいたのだから。
「……お湯。いっぱい出すよ」
イズミは第3の上水道として活躍していた。
各区画の広場にお湯を流したのだ。
つまり広場ごとに公衆浴場をを建てたのだった。
浴場に多くの人が集まる様子を眺めることはイズミにとっても本望だった。
しばしば浴場にその姿を見せるが、多くの場合は子供にしかその姿を見ることができない。
迂闊に見えてもらって困るだろう。
イズミの姿は一糸まとわぬ裸の美少女なのだから。
クローリーはたまに自分の浴室に来てくれないかな?と考えてもいたが、男の前にはめったに姿を見せない。
それはテリリンカ時代に学んだのだった。
「ちぇ……サービス悪いっス」
抗生物質のない世界での衛生管理はとても大きい。
定期的な入浴と石鹸の使用で清潔さを保たせようとした。
領民向けに石鹸を格安で販売した。
公衆浴場や学校など公共施設には常備。
ただし、購入には車輪貨幣のみとなっていた。
独自の貨幣を流通促進させる目的でもあった。
これを利用して転売を試みる者もいるだろう。
そこで石鹸を専売制として一度の販売量を細かく規制した。
旅費や通行税を払うとたいして儲けが出ない程度に巧みに調整されていた。
そしてなによりも、近いうちに石鹸を格安の雑貨にしようとクローリーは考えていたのだ。
近いうちに転売の意味すらなくなるだろう。
アレキサンダー領民を豊かにするのが彼の最終目的なのだ。
彼自身が資産家になりたいわけではない。
* * *
「犬娘。お主には船を出してほしいのじゃ」
「犬じゃない」
「じゃあ、ロリおっぱい?」
「それ、沙那」
ヒンカはルシエに注文を出す。
海外からしか入手できないものを頼むためだった。
リンザットは自由交易商人であって、クローリーの部下ではない。
自由に動かせる船はルシエのスカーレット号だけである。
積載量はアダマストール号の3分の1でしかないが、何より高速が売りだ。
その上、リンザットと違い外洋航行の経験もある。
「先ずは香辛料の買い付けじゃ」
「香料諸島か?」
「やっぱり知っておったんじゃな」
「一応」
帝国の商人には絶対秘密の香辛料の産地をルシエは知っていた。
本業は自称探検家だが手っ取り早く活動費を稼ぐためには、香辛料の帝国商人への転売も一つの方法だった。
なにより、彼女は厳密には異世界召喚者ではない。
偶然にも異世界への門を潜ってしまっただけなのだ。
神隠しのような状況だった。
それ故に帰還方法を探していた。
もっとも可能性がありそうなのはいわくのある遺跡群だったが、開発された地域よりも未開発な地域の方が狙えそうな気がしていた。
すでに人の手の入っている地域ならば神隠しの噂はすぐに広まる。
それがほとんどないということは知られていない別口があると考える方が自然だった。
香料諸島と呼ばれる地域には古代遺跡が散在していたのだ。
ルシエはその探索のために嫌でも向かわざるを得ない地域だった。
「すげえっスな。それ分かるんならいっぱい仕入れて欲しいっス」
帝国人にとっては見過ごせない話だった。
「なんじゃ?金儲けになるからじゃな?」
「ちげーっス……」
クローリーにとっての香辛料は石鹸と同じだった。
「テリリンカでもハイナードでもスパイスばっちりの料理を色々食べたっスよ」
カレーを始めとする様々なものが思い起こされる。
「ああいうのをもっと普通に食えるように。って、普通の領民もたまの御馳走くらいには食えるくらいに広めたいんスよ」
「ほーお?」
ヒンカは笑ったままだ。
クローリーは相変わらず面白い。
「ケンカするより、みんなで旨いもの食べて幸せになるっスよ」
「ただ……それにはもっと船と船員が必要っスなー」
「そうだな」
ルシエも頷く。
「なら。クローリー、あんたが船を用立てると良い。船長できそうな人間を探してくるよ」
船ごとアレキサンダー領にくるようなお人好しはまずいない。
ルシエくらいなものだ。
しかし、船さえあれば仕事にあぶれた優秀な船員を連れてくることはそう難しくない。
ルシエは船乗りの間ではそこそこ顔が利く。
美少女船長なんてそれだけで目立つ存在だ。
「へっへっへ。面白くなってきたっスなー」
クローリーはここにきて順調に事が進み始めたのが楽しくて仕方がない。
手をわきわきしながら想像が膨らむ。
「あ。それとじゃな。硝酸カリウムを可能な限り仕入れてきて欲しいのじゃ」
「何スか?それ」
「化学肥料じゃ。沙那なら少し分かるかもしれんな。土壌を改良して作物の実りを増やすものじゃ」
「あー!リンと窒素とカリウムー?」
「肥料の袋に書いてあったりするのじゃ」
沙那の答えにヒンカが頷いた。
「しょ、硝酸カリウムってなんか難しいでござるな。ブホッ」
「硝石のことだよー。乾燥した地域なんかにはたまに天然で産出されるんだよー」
沙那は単純に社会科の知識としてチリ硝石を知っていた。
ヒンカも同様だろう。
かつては肥料としてもさんざん堀り返されたものだ。
沙那どころか賢者の時代には科学的に合成することが簡単になて、安価で大量に供給されている。
空気から作るなどともいわれるほどだ。
「硝石……スか」
「うん。こーなんていうかー。。お塩みたいなヤツで青い炎上げて燃えるよー」
沙那は理科の実験で見たことがあった。
量を間違えると大惨事になりかねないのだが、ずいぶんと太っ腹な学校もあったものだ。
「ありゃ?もしかして、これっスか?」
クローリーは火炎爆発球に使う構成要素を取り出した。
小さな岩塩の欠片のようなそれは紛れもない硝石だった。
「オレらは焔炎石って呼んでるんスが。これ、エルフの魔法にも使うんスか」
「それはどこで手に入れるんじゃ?」
「魔術協会で手に入るっスが。いつも高価で量はちょっぴりしかないっスな」
「ふむ……」
ヒンカは少し考えた。
少量でも高価でも意味がない。
肥料に使うのだから纏まった量が必要だ。
「しょ、しょしょしょしょしょ……硝石!!?ブヒャホウ!」
賢者が目を剥いた。
それもそのはず。彼が追い求めている『火薬』の最も重要な材料なのだ。
文系なのに割と不勉強な彼は自然界にあることを知らなかった。
「それは……かや……かや…ん…火薬のっブブブフフッ」
「作れるのじゃ」
ヒンカはあっさり肯定した。
「工事にも武器にも使えるでござるな。ウヒャハハハアッ」
* * *
しかし、賢者の思惑とは違い、火薬を兵器にするのはかなり大変な作業になるのだった。、
火薬が登場してから鉄砲が本格的に使われるようになるまで、数百年もかかった理由を彼は知らなかったのだ。
文系だったから。
結果的に沙那の方が先に正解に近づくのは早くなることになる。
「やったー!白ーっ!」
男の子が沙那の足元を駆け抜けていった。
この世界の多くの女性と異なり、丈の短いスカートなので簡単に中を覗くことができる。
「こらーっ!」
沙那が拳を振りかざす。
子供にぱんつ見られたくらい大したことではないが、他の女の子にもやるようになっては困る。
ちゃんと教育しなくてはならない。
もちろん古き良き時代らしくゲンコツだ。
アレキサンダー領に帰還したクローリーたちは大忙しだった。
予想外の利益を得て帰ってきたのを元手に、前々から計画してきたことと他に仲間で知恵を出し合って様々なことを始めたのだ。
沙那が最初に提案したのは学校だった。
文字の読み書きや四則演算を領民たちに行き渡らせることが重要だと思ったからだ。
ここ数ヵ月の生活で、帝国の多くの人々が文字の読み書きができないことを知った。
簡単な計算もできないので貨幣経済が浸透していなかった。
物々交換と貨幣支払いが半々なのだ。
これでは先々の繁栄は望めない。
まずは基本的なことを教える機関が必要だった。
最初は子供から。
義務教育として5~6才から強制的に学校に通わせることにした。
幼いうちからの方が教育は効果を発揮しやすいのもあったが、実のところは沙那が理解できる彼女の世界の常識を導入しただけである。
始めてすぐは教科書すらなく手探りの授業だった。
4~5年で最低限のカリキュラムを行うつもりであったが、優秀なものは飛び級も認められていた。
何故なら人手が足りないので、卒業した中で優秀な者は代用教員として採用したいからだ。
彼らをアレキサンダー領の公務員とすることで現金収入を得る手段にもなる。
将来的には更なる高等教育機関が必要であったが、それはまだまだ先のことだった。
問題はあった。
帝国では子供も重要な労働力なのである。
庶民……特に農民たちは子供を取られることを嫌がった。
そのために行ったことは、授業料無料と給食無料である。
子供の分の食事が浮くだけでも帝国の庶民には大きい。
その上に、朝早く来れば朝食も。夕方には夕食まで用意した。
これはとても大きい。
更には付随する給食センターを作って領民を雇用したり、老朽化した車輪屋の馬車をスクールバス宜しく送迎に使ったりもした。
クローリーの出費は少なくないが、未来のための投資と割り切ることにした。
教育の重要性は彼自身が痛いほどよく理解していたからだ。
「あらあらぁ」
甘えん坊な子供はマリエッラの豊かな胸に顔を埋めていた。
巨乳度なら沙那も負けてはいないが、母性の差が大きい。
マリエッラには安心感がある。
子供たちが懐く由縁だった。
ママのような先生……マリエッラ。
面白悪戯対象……沙那。
とにかくも代用教員が育つまでは沙那やマリエッラ、ヒンカといった面々が教員をするしかない。
そのために彼女たちの詰める役所は小屋を学校に隣接させた形になっていた。
* * *
「フホホっ。機械文明の開化でござるよ。ブフゥ」
賢者が丸々とした腹を揺すり、ぶひぶひ言っていた。
以前からクローリーと計画していた上水道の建設に充分な資金を得たからであった。
クローリーたちが持ち帰ったドカル金貨は7万5千枚ほどあった。
これはちょとした国の国家予算以上だ。
帝国で例えるならば三代王朝の一つの3年分の予算である。
クローリーたちの細々とした交易はとてつもない収入になっていたのだ。
上水道の整備は大工事だが今回の利益から考えれば大したことはない。
帝国は元々大規模な工事の場合は、無料で領民を強制労働させるのが常だったが、クローリーはきちんと給金を支払っていた。
現金であったり食料であったりは状況によりけりだったが。
それを賄っても余りある金額だったのだ。
とにかく領民の生活を多少なりとも向上させたい。
その考えの基礎になったのは、賢者から聞いた話だった。
『歴史上、豊かな中間層が多い社会ほど豊かな国だった』
これは彼の知識の中のローマ帝国であったり、あるいは20世紀のアメリカ合衆国であったり、彼のいたバブル時代の日本国であった。
豊かな中間層が発揮する購買力は経済を活性化させ拡大する。
彼のいた時代の日本は、世界最大の経済大国アメリカ合衆国を買い占めることができるといわれるほどだったのだ。
その原動力になったのは無駄遣いともいえるほどの公共事業だった。
インフラ整備は赤字国債をバンバン発行したにも拘わらず、雇用を促進し結果的には税収も増えたのだった。
豊かさは内需を大きく拡大する。
賢者はその後の大増税を知らないために、景気の良いことしから判らない。
労働中の食事は学校と同じく給食センターから配給する上に、工期が短縮できたらそのグループにはボーナスまで支払われた。
これにより領民だけではなく、領地外から人が流入した。
出稼ぎであったり移住であったりは様々だ。
人が増えれば町は賑わう。
事実上クローリーのポケットマネーで始めた事業は、街を大きく潤わせた。
人口は増え治安も悪化したが、シュラハトたちが警察として取り締まった。
何より住居が足りなくなり、急増の公営住宅を建てまくったほどだ。
平屋ではそう広くない土地を使い切ってしまうので、3階層の、しかも決まった形状のアパートを量産した。
おかげで景観は画一的なものになってはしまうが、この時点では仕方がない。
さて、上水道が機械文明というのは同時に水車の導入をしたからだった。
クローリーたちが建設する上水道は複数の系統がある。
まず一つは飲料水を行き渡らせるもので、各家庭にとまではいかないものの区画ごとに給水口が設置された。
これは少し離れた山から引かれるもので、逆サイフォン効果でアパートの3階やアレキサンダー男爵邸の最上階まで水を運ぶものだ。
「逆サイフォン……?ブホッ?」
賢者には良く判っていなかったが、これは沙那やヒンカのアイデアだ。
取水口が高い位置にあれば、それよりも給水口が低い位置にあればポンプを必要とせずに、水を引き上げることができるという単純な現象である。
古くから沙那やヒンカの時代にも用いられているもので、用水路などにも使われる手法だ。
さらに蛇口を取り付けたいくらいだったが、それはさすがに困難なので現状は垂れ流しである。
もう一つは用水路である。
山水は夏は冷たく冬は暖かいという特性を持つが、生活や農業に使う水は温度管理はそこそこで良い。
水源は様々で池や湖などから引いてくることが多かった。
水車はまさにそこにこそ多く設置された。
水車はよほど巨大なものでもなければ緩やかな流れで十分に回る。
これを減速歯車で粉挽き臼などを動かすのだ。
手作業で行うよりもはるかに効率が良い動力だった。
賢者が度々注文して改良していた車輪の軸受けの効率化は大きく役に立っていた。
帝国の辺境領域……例えばアレキサンダー領のような地域では麦をパンにして食べるのはかなりの贅沢であった。
庶民は硬い黒パンしか、どころか基本的に麦粥なのだ。
粉にする手間すら惜しいのが実情だった。
賢者も度々口にする麦粥に閉口していたので、せめてパンにしてもらいたいという願望が水車になったのである。
主に湿地が多く、川や運河で繋がれたアレキサンダー領にはうってつけだった。
技術革命は小さな動力から始まるのだ。
「文明の灯がついに……ブフゥ」
そして賢者の最大の発明は発電機だった。
抵抗の少ない回転軸、水車、減速歯車……そしてドワーフ職人に依頼していた細い銅線。磁石は自然界でも獲得できる。
これらの組み合わせは昭和の少年だった賢者にとってはお馴染みのアマチュアモーターだった。
電気モーターは回転軸を回せば発電機になる。
さすがは昭和!
工作系の玩具が豊富だった時代の人間らしい。
ただ……賢者はあくまで文系だった。
「永久磁石じゃたいして発電できないよー?」
「ブホゥ!?」
沙那のツッコミに賢者は途方に暮れかけた。
そう。使用した磁石は天然の磁石だった。
昭和の少年たちの愛したアマチュアモーターも同様の永久磁石である。
確かに発電はできるのだが、その能力はとても小さい。
発電機は基本的に電磁石を必要とする。
発電のために電気が必要になるという、卵が先か鶏が先かのような話になるのだった。
「ブホオオオオオオオウッ!!?」
賢者は唸った。
何ということだろう!
「……馬鹿なのじゃ。最初に発電した弱い電気で電磁石にすれば良かろうなのじゃ」
ヒンカが溜息を吐いた。
何のことはない。
低効率の発電機数基を使って、メインの発電機を回せばよいだけだったのだ。
「ウホウホホホホホッ!」
賢者は歓喜した。
これで灯りが作れる。と。
「そりゃ無理じゃ」
「ブフゥ!?」
一見、単純な構造の電球ではあるが減圧構造になっていておいそれとは作れない。
何より発光体であるフィラメントの材料がない。
よく言われる竹のフィラメントだが寿命が短すぎて実用性に乏しい。
そもそも竹のフィラメントでは沙那や賢者が思い浮かぶほどの明るさは出ない。
強い電気を流すと簡単に焼き切れてしまうのだ。
沙那や賢者が良く知る明るさを出すことなど到底不可能である。
タングステンのフィラメントになってやっと性能が安定するのだが、帝国のこの時代にタングステンの産出などは全くない。
そもそも存在すら知らない。
賢者の期待していた電気の光は遥か遥か先のことになるだろう。
灯りが欲しい。
賢者は強く願っていた。
夜になると恐ろしいほど街中も暗い。
灯りを付けるランプの油が惜しいからだ。
節約のためにほとんど消してしまう。
月明りだけが頼りだ。
蛍でも探して集めようかと賢者は幾度も悩んだものだった。
もちろん面倒くさいからやらなかった。
「でも、電気があると便利だよー?電気分解とかいろいろ。アンモニアとか作れそうだしー」
沙那が指折り考える。
電気を通すことで作りだせる物質や便利なものは多い。
沙那のように現代の知識をもってすればいろんな製造に役立つだろう。
義務教育レベルの理科知識だけでもかなりのことができる。
古典的なバッテリーなどもその一つだ。
バッテリーがあればモーターを回すことができる。
内燃機関より遥かに構造が簡単なので、製造はとても楽だ。
電気自動車というと21世紀のものと勘違いする人少なくないが、ガソリンエンジンの自動車と電気自動車はほぼ同時の19世紀末に誕生している。
しかも臭い排気ガスなどがない上に静かなために、貴族たちには電気自動車の方が好まれたほどである。
ただし、電気自動車にはバッテリーの性能という足かせがあるために、性能は次第にガソリンエンジンなどに取って代わられてしまう。
それは沙那のいた21世紀の世界でも大きな壁だった。
当然、馬車を電気自動車に置き換えるとかは、かなり難しい。
ガソリンエンジンなどの内燃機関にするにも石油の宛がない。
膨大な量が必要だが、砂の国から輸入するにも運搬する手段がない。
アダマストール号で運べる量ではとても需要に追い付かないだろう。
すると船自体を大型化させたいところだったが、そもそもそれが難しい。
クローリーたちがやろうとしていることは、沙那たちの世界の数百年分の進化を一気に行うようなものだった。
それにはできないことも多かった。
あちらを立てればこちらが立たず。
技術の進化には様々な基礎技術が必要なのだった。
したがって、行うべきなのは経済的な進化であると考えられた。
ただ、ちょっぴりだけ。
クローリーと沙那は違っていた。
この世界には魔法があるからだった。
魔法印のように低コストで行える魔法との組み合わせで解決できることがあるのではないかと考えていたのだ。
なにより、沙那には不合理の塊みたいな相棒がいたのだから。
「……お湯。いっぱい出すよ」
イズミは第3の上水道として活躍していた。
各区画の広場にお湯を流したのだ。
つまり広場ごとに公衆浴場をを建てたのだった。
浴場に多くの人が集まる様子を眺めることはイズミにとっても本望だった。
しばしば浴場にその姿を見せるが、多くの場合は子供にしかその姿を見ることができない。
迂闊に見えてもらって困るだろう。
イズミの姿は一糸まとわぬ裸の美少女なのだから。
クローリーはたまに自分の浴室に来てくれないかな?と考えてもいたが、男の前にはめったに姿を見せない。
それはテリリンカ時代に学んだのだった。
「ちぇ……サービス悪いっス」
抗生物質のない世界での衛生管理はとても大きい。
定期的な入浴と石鹸の使用で清潔さを保たせようとした。
領民向けに石鹸を格安で販売した。
公衆浴場や学校など公共施設には常備。
ただし、購入には車輪貨幣のみとなっていた。
独自の貨幣を流通促進させる目的でもあった。
これを利用して転売を試みる者もいるだろう。
そこで石鹸を専売制として一度の販売量を細かく規制した。
旅費や通行税を払うとたいして儲けが出ない程度に巧みに調整されていた。
そしてなによりも、近いうちに石鹸を格安の雑貨にしようとクローリーは考えていたのだ。
近いうちに転売の意味すらなくなるだろう。
アレキサンダー領民を豊かにするのが彼の最終目的なのだ。
彼自身が資産家になりたいわけではない。
* * *
「犬娘。お主には船を出してほしいのじゃ」
「犬じゃない」
「じゃあ、ロリおっぱい?」
「それ、沙那」
ヒンカはルシエに注文を出す。
海外からしか入手できないものを頼むためだった。
リンザットは自由交易商人であって、クローリーの部下ではない。
自由に動かせる船はルシエのスカーレット号だけである。
積載量はアダマストール号の3分の1でしかないが、何より高速が売りだ。
その上、リンザットと違い外洋航行の経験もある。
「先ずは香辛料の買い付けじゃ」
「香料諸島か?」
「やっぱり知っておったんじゃな」
「一応」
帝国の商人には絶対秘密の香辛料の産地をルシエは知っていた。
本業は自称探検家だが手っ取り早く活動費を稼ぐためには、香辛料の帝国商人への転売も一つの方法だった。
なにより、彼女は厳密には異世界召喚者ではない。
偶然にも異世界への門を潜ってしまっただけなのだ。
神隠しのような状況だった。
それ故に帰還方法を探していた。
もっとも可能性がありそうなのはいわくのある遺跡群だったが、開発された地域よりも未開発な地域の方が狙えそうな気がしていた。
すでに人の手の入っている地域ならば神隠しの噂はすぐに広まる。
それがほとんどないということは知られていない別口があると考える方が自然だった。
香料諸島と呼ばれる地域には古代遺跡が散在していたのだ。
ルシエはその探索のために嫌でも向かわざるを得ない地域だった。
「すげえっスな。それ分かるんならいっぱい仕入れて欲しいっス」
帝国人にとっては見過ごせない話だった。
「なんじゃ?金儲けになるからじゃな?」
「ちげーっス……」
クローリーにとっての香辛料は石鹸と同じだった。
「テリリンカでもハイナードでもスパイスばっちりの料理を色々食べたっスよ」
カレーを始めとする様々なものが思い起こされる。
「ああいうのをもっと普通に食えるように。って、普通の領民もたまの御馳走くらいには食えるくらいに広めたいんスよ」
「ほーお?」
ヒンカは笑ったままだ。
クローリーは相変わらず面白い。
「ケンカするより、みんなで旨いもの食べて幸せになるっスよ」
「ただ……それにはもっと船と船員が必要っスなー」
「そうだな」
ルシエも頷く。
「なら。クローリー、あんたが船を用立てると良い。船長できそうな人間を探してくるよ」
船ごとアレキサンダー領にくるようなお人好しはまずいない。
ルシエくらいなものだ。
しかし、船さえあれば仕事にあぶれた優秀な船員を連れてくることはそう難しくない。
ルシエは船乗りの間ではそこそこ顔が利く。
美少女船長なんてそれだけで目立つ存在だ。
「へっへっへ。面白くなってきたっスなー」
クローリーはここにきて順調に事が進み始めたのが楽しくて仕方がない。
手をわきわきしながら想像が膨らむ。
「あ。それとじゃな。硝酸カリウムを可能な限り仕入れてきて欲しいのじゃ」
「何スか?それ」
「化学肥料じゃ。沙那なら少し分かるかもしれんな。土壌を改良して作物の実りを増やすものじゃ」
「あー!リンと窒素とカリウムー?」
「肥料の袋に書いてあったりするのじゃ」
沙那の答えにヒンカが頷いた。
「しょ、硝酸カリウムってなんか難しいでござるな。ブホッ」
「硝石のことだよー。乾燥した地域なんかにはたまに天然で産出されるんだよー」
沙那は単純に社会科の知識としてチリ硝石を知っていた。
ヒンカも同様だろう。
かつては肥料としてもさんざん堀り返されたものだ。
沙那どころか賢者の時代には科学的に合成することが簡単になて、安価で大量に供給されている。
空気から作るなどともいわれるほどだ。
「硝石……スか」
「うん。こーなんていうかー。。お塩みたいなヤツで青い炎上げて燃えるよー」
沙那は理科の実験で見たことがあった。
量を間違えると大惨事になりかねないのだが、ずいぶんと太っ腹な学校もあったものだ。
「ありゃ?もしかして、これっスか?」
クローリーは火炎爆発球に使う構成要素を取り出した。
小さな岩塩の欠片のようなそれは紛れもない硝石だった。
「オレらは焔炎石って呼んでるんスが。これ、エルフの魔法にも使うんスか」
「それはどこで手に入れるんじゃ?」
「魔術協会で手に入るっスが。いつも高価で量はちょっぴりしかないっスな」
「ふむ……」
ヒンカは少し考えた。
少量でも高価でも意味がない。
肥料に使うのだから纏まった量が必要だ。
「しょ、しょしょしょしょしょ……硝石!!?ブヒャホウ!」
賢者が目を剥いた。
それもそのはず。彼が追い求めている『火薬』の最も重要な材料なのだ。
文系なのに割と不勉強な彼は自然界にあることを知らなかった。
「それは……かや……かや…ん…火薬のっブブブフフッ」
「作れるのじゃ」
ヒンカはあっさり肯定した。
「工事にも武器にも使えるでござるな。ウヒャハハハアッ」
* * *
しかし、賢者の思惑とは違い、火薬を兵器にするのはかなり大変な作業になるのだった。、
火薬が登場してから鉄砲が本格的に使われるようになるまで、数百年もかかった理由を彼は知らなかったのだ。
文系だったから。
結果的に沙那の方が先に正解に近づくのは早くなることになる。
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