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ACT2 石の上にも三年とか言うけど、石の上なんて痛くて三年も座ってられるか!1
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あおいがファンクラブのライブイベントを地元で開催して以降、全然実感がなかったことが急激に動き始めた。
きっと、物事が回る時ってこんな風に、自分がどんなにのほほんとしてても、巻き込まれるようにして、急激に動いていくんだなって、自分でも驚いてる。
書類やらなんやらの提出が終わってから、週に二回の上京レッスンはほぼ義務になった。
それだけじゃ足りないから、地元でもボイトレ受けろとサイゾー氏に念を押され、なんやかんやと地味に歌漬けの日々が訪れていた。
一応、日給で給料と交通費は出るらしい。
契約上は完全なアーティスト契約じゃないんで、必要に応じて自腹切らないとダメらしい。
音楽業界やっぱ厳しいぜwww
まぁ、そんなことは今知ったこっちゃないんだけどさ。
賑やかで煌びやかなネオンの高級な街並みを、なんとなく窓から眺めつつ、視線を戻すと、目の前には細身で長い黒髪のなよっとした男がピアノの前に座っていた。
生けるレジェンド大河マサオミ、通称マーボさんだ。
今日は地味にレッスンの初日で、こんなの受けたことないから全然勝手がわからなくて、とりあえず、覚えてるのだけでいいから歌ってみろ言われて、歌ってみたら、マーボさんがきょとんしてしまった。
「ふむ・・・
バカっぽく見えて、記憶力いいのねあなた?
まさか最初のレッスンを受ける前に、全曲の自分のパート全部歌えるようになってるなんて!
デモのデータ送ったの昨日の夜よ??」
「あの、すいません、はっきりバカ言うのやめてくださいw地味に傷つきますw」
俺は思わずそう言ったw
マーボさんは、うふふっと可笑しそうに笑って「あーら、ごめんなさいw」といつものおねぇ口調から、言葉を続ける。
「あなた、午後からみっしりボイトレやったせいかもだけど・・・
素人あがりのわりに、声はちゃんと出てるわね
っていうか、やっぱりあなた、なかなかの良い声持ってる
だけどダメね~
あなたタバコ吸ってるでしょ?
そのせいで、変なとこで声の伸びにひっかかりがあるのよね~
もったいないわ!
歌の技術だけみたら、まだまだ遠くプロの世界に及ばないけど・・・
そこそこしっかり歌えてるし、レコーディングまでにはなんとかなるかもしれないわ
ねぇ?もういっそ、タバコやめちゃいなさい!」
「え?!マーボさんまじ!!?」
「あらやだ、まじよ~!その方があなたの歌のためよ!」
「え~・・・・まじでぇ?辞められるかなぁ???」
俺は思いっきり嫌そうにそう答えてしまう。
マーボさんは、薄くリップを塗った唇を呆れたようにへの字に曲げる。
そして、細い眉の隅を少し吊り上げて、真っすぐに俺を見ながら真剣な口調で言う。
「可愛いお顔でそんな表情しないの!
音楽だけで食べてるこのあたしが、そう言うんだから努力なさい!
あなたの掴んだチャンスは、おそらくもう一生めぐってこないチャンスよ?
それを活かさなかったかったら、冴えない人生は死ぬまで変えられないわ
いい?
人間なんて、なにも80まで生きる必要ないの!
一度きりの人生を生きるなら、太く短く生きればいいのよ!
その人生の中で、今だけ我慢できること我慢すれば、展望が見えるんだから
たかがタバコ、医者いけばすぐに禁煙できるわ!」
ものすげー熱く、そして、謎のオーラを感じるほどの勢いで、マーボさんはそう語った。
音楽ギョーカイの生けるレジェンドの言葉は、おかま口調でも、ずしんと心に来る言葉でもあった。
そういえば、真奈美にフラれて・・・
俺、ちょっとは真剣に人生を生きようと思ったんだよな。
マーボさんは、不意に沸いて出ただけの素人あがりの俺を、真剣に育てようとしてくれてるんだと思う。
俺は人生にやる気がなかった。
今もやる気ないけど、でも、こうやって真剣に向き合ってくれる誰かがいるんだからな・・・
真奈美もそうだった、すげー真剣に俺を好きでいてくれたし・・・
一生に一度ぐらい・・・
人生を生きることに、真剣になってもいいのかもな・・・
「マーボさんわかった・・・明日、医者いってくるよ」
自分でも驚くほど、俺は真面目にそう答えていた。
マーボさんは、一瞬きょとんして、何故か、女が笑うみたいににっこり笑う。
「あーら・・・今のその表情(かお)は、今日一番の真剣な表情(かお)ね?
やる気あるのかないのか、微妙にわからない感じでボイトレ受けてたから
この子大丈夫かしら?と思ったけど・・・・
間抜けな顔するのは癖だったのねwww」
「いや待って・・・間抜けってwwえ?w間抜けってひどっww
マーボさんひどっwww」
「うふふww
あたしに対しても、何の物怖じもなくそんなこと言うあなた・・・
あたし、そういうとこ結構気に入ってるのよ
頑張って育ってちょーだいね?ww」
なんとなくマーボさんが細めた目に、地味に寒気を覚えつつ、俺は一応「頑張りまっす!」とだけ答える。
夜の東京のネオンがマーボさんの肩越しにまぶしく光っていた。
あおいがファンクラブのライブイベントを地元で開催して以降、全然実感がなかったことが急激に動き始めた。
きっと、物事が回る時ってこんな風に、自分がどんなにのほほんとしてても、巻き込まれるようにして、急激に動いていくんだなって、自分でも驚いてる。
書類やらなんやらの提出が終わってから、週に二回の上京レッスンはほぼ義務になった。
それだけじゃ足りないから、地元でもボイトレ受けろとサイゾー氏に念を押され、なんやかんやと地味に歌漬けの日々が訪れていた。
一応、日給で給料と交通費は出るらしい。
契約上は完全なアーティスト契約じゃないんで、必要に応じて自腹切らないとダメらしい。
音楽業界やっぱ厳しいぜwww
まぁ、そんなことは今知ったこっちゃないんだけどさ。
賑やかで煌びやかなネオンの高級な街並みを、なんとなく窓から眺めつつ、視線を戻すと、目の前には細身で長い黒髪のなよっとした男がピアノの前に座っていた。
生けるレジェンド大河マサオミ、通称マーボさんだ。
今日は地味にレッスンの初日で、こんなの受けたことないから全然勝手がわからなくて、とりあえず、覚えてるのだけでいいから歌ってみろ言われて、歌ってみたら、マーボさんがきょとんしてしまった。
「ふむ・・・
バカっぽく見えて、記憶力いいのねあなた?
まさか最初のレッスンを受ける前に、全曲の自分のパート全部歌えるようになってるなんて!
デモのデータ送ったの昨日の夜よ??」
「あの、すいません、はっきりバカ言うのやめてくださいw地味に傷つきますw」
俺は思わずそう言ったw
マーボさんは、うふふっと可笑しそうに笑って「あーら、ごめんなさいw」といつものおねぇ口調から、言葉を続ける。
「あなた、午後からみっしりボイトレやったせいかもだけど・・・
素人あがりのわりに、声はちゃんと出てるわね
っていうか、やっぱりあなた、なかなかの良い声持ってる
だけどダメね~
あなたタバコ吸ってるでしょ?
そのせいで、変なとこで声の伸びにひっかかりがあるのよね~
もったいないわ!
歌の技術だけみたら、まだまだ遠くプロの世界に及ばないけど・・・
そこそこしっかり歌えてるし、レコーディングまでにはなんとかなるかもしれないわ
ねぇ?もういっそ、タバコやめちゃいなさい!」
「え?!マーボさんまじ!!?」
「あらやだ、まじよ~!その方があなたの歌のためよ!」
「え~・・・・まじでぇ?辞められるかなぁ???」
俺は思いっきり嫌そうにそう答えてしまう。
マーボさんは、薄くリップを塗った唇を呆れたようにへの字に曲げる。
そして、細い眉の隅を少し吊り上げて、真っすぐに俺を見ながら真剣な口調で言う。
「可愛いお顔でそんな表情しないの!
音楽だけで食べてるこのあたしが、そう言うんだから努力なさい!
あなたの掴んだチャンスは、おそらくもう一生めぐってこないチャンスよ?
それを活かさなかったかったら、冴えない人生は死ぬまで変えられないわ
いい?
人間なんて、なにも80まで生きる必要ないの!
一度きりの人生を生きるなら、太く短く生きればいいのよ!
その人生の中で、今だけ我慢できること我慢すれば、展望が見えるんだから
たかがタバコ、医者いけばすぐに禁煙できるわ!」
ものすげー熱く、そして、謎のオーラを感じるほどの勢いで、マーボさんはそう語った。
音楽ギョーカイの生けるレジェンドの言葉は、おかま口調でも、ずしんと心に来る言葉でもあった。
そういえば、真奈美にフラれて・・・
俺、ちょっとは真剣に人生を生きようと思ったんだよな。
マーボさんは、不意に沸いて出ただけの素人あがりの俺を、真剣に育てようとしてくれてるんだと思う。
俺は人生にやる気がなかった。
今もやる気ないけど、でも、こうやって真剣に向き合ってくれる誰かがいるんだからな・・・
真奈美もそうだった、すげー真剣に俺を好きでいてくれたし・・・
一生に一度ぐらい・・・
人生を生きることに、真剣になってもいいのかもな・・・
「マーボさんわかった・・・明日、医者いってくるよ」
自分でも驚くほど、俺は真面目にそう答えていた。
マーボさんは、一瞬きょとんして、何故か、女が笑うみたいににっこり笑う。
「あーら・・・今のその表情(かお)は、今日一番の真剣な表情(かお)ね?
やる気あるのかないのか、微妙にわからない感じでボイトレ受けてたから
この子大丈夫かしら?と思ったけど・・・・
間抜けな顔するのは癖だったのねwww」
「いや待って・・・間抜けってwwえ?w間抜けってひどっww
マーボさんひどっwww」
「うふふww
あたしに対しても、何の物怖じもなくそんなこと言うあなた・・・
あたし、そういうとこ結構気に入ってるのよ
頑張って育ってちょーだいね?ww」
なんとなくマーボさんが細めた目に、地味に寒気を覚えつつ、俺は一応「頑張りまっす!」とだけ答える。
夜の東京のネオンがマーボさんの肩越しにまぶしく光っていた。
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