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ACT2 石の上にも三年とか言うけど、石の上なんて痛くて三年も座ってられるか!8

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 俺の人生はだいたい適当だ。

 あおいからのDuoの申し出を、とりあえず受けてみたけど、そのことの重大さをあんまりわかってない俺。
 すげープレッシャー感じるけど、やってみないとわからないとこもあり、まぁまぁそこは、それなり頑張ってやるかと思ってみてみる。

 昨夜の寝しなにそんな電話で、目が覚めた時にもあんま実感なくて、ただ寝ぼけてぼけーっと天井を眺めてた。
 ふんわりと、なんか食い物の匂いがしてる。
 カーテンの外には既に太陽が出てて、夜が明けたのはわかったけど、何時なのかはわからなかった。

 なんか左腕がしびれてる・・・
 と思ったら、そういえば昨夜きなこに抱き付かれたまま寝たんだっけ・・・

 あれ?
 きなこは・・・?

 と思った瞬間、ベッドの脇からにゅっときなこが顔を出してきた。

「おはよう!てっちゃん!」

「わぁぁ!!!」

「なによ!貞子でも見たような顔して!!」
 
「おまえどっから顔出してんだよ、びびるだろうが!」

 きなこは、むすっと不満そうな顔をしてじーっと俺を見つめている。
  
「え~・・・」

「え~・・・じゃねーよ!ってか、おまえ仕事は?」

「準夜勤だから夕方からだよ~」

 きなこはそう答えると、意味深に笑ってぱふっとベッドに顎を乗せてくる。

「うんとね、朝ご飯作っておいたからね!
ていうかね、てっちゃん、冷蔵庫に何もないじゃん?
いつも何たべてんの?
朝から近所のスーパーまで買い物いっちゃったよ!」

「あぁ・・・・いつも適当に買ってきてるし、面倒だとカップラーメンだし・・・」

 ってそこまで言って、俺はあることに気づいた。
 あれ?
 きなこ、昨夜、財布ごと鍵なくしたって言ってなかったか???
 なんで買い物なんか行けたんだ??
 まさか俺の財布・・・!
 いや、俺の財布には1000円ぐらいしかねーわ・・・
 え?スマホ決算?
 めちゃくちゃ不思議に思って、まじまじときなこの顔を見ると、思わず聞いた。

「おまえ・・・財布失くしたって言ってなかったっけ?」

「ああ!それがね!!」

 きなこはそう言って、こたつの脇に置いてある自分のバッグをひっぱり寄せると、その中からでかい化粧ポーチを取り出して、俺の前に突き出したのだ。
 当然俺は一瞬びびるw

「!?」

「なんとぉ!このポーチにしまったの忘れてたんですぅ!
忘れん坊のきなこさんてば、ちょっと可愛いでそ???」

 オウムのように首を傾げて、何故かにっこりと笑うきなこに、俺は大きくため息をついた。

「・・・・あ、はい・・・?
そうですかね・・・?そうなんですかね・・・?」

「そうなんですです!だから、てっちゃんご飯たべよ!!」

「・・・きなこの料理とか・・・どんな味なん?」

「ああ!なにその嫌そうな顔!?
あのね!あたし、めっーーーーーーーちゃ!!!料理上手なんだからね!!
バカにすんなよぉ!!」

「・・・・・へぇ・・・・」

「いいから起きて起きて!!!」

 そう言ってきなこは、バンバンと人の腕を叩き始める。
 まじおまえww
 色んな意味で面倒くさいわwwww

「わかったよ起きるよ、起きる起きる・・・」

 枕元のタバコを手に取りながら、俺はゆっくり起き上がる。
 タバコをくわえてベッドを降りると、ライターで火をつけた。
 
 その時、不意にきなこが目をまん丸にして、まじまじと俺の顔を見上げたんだ。

「??」

「てっちゃん!!」

「なんだよ?」

「てっちゃん・・・ほんとにインポじゃなかったんだね!!!!???」

「・・・・はっ???」

 一瞬、変な沈黙が流れる。
 俺は思わず、目線を下に落とす・・・

 うん・・・
 まぁ・・・

 そして、タバコの煙と一緒に大きく息を吸い込んだ。

「やかましいわwwww
おまえどこ注視してんだwwwww
あほかwwww
朝起きると現れる生理現象だわwwwwww
ってか俺はインポじゃねぇって、あれほど言ってんだろwww」 

 
 そう叫んだのは言うまでもない。
 
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