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ACT2 石の上にも三年とか言うけど、石の上なんて痛くて三年も座ってられるか!9

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 テーブルには、思った以上によくできた料理が並んでいて、正直ほんとに驚いた。
 しかも和食で、だし巻きたまごに、焼き鮭に、浅漬けに、納豆に、味噌汁に、めちゃくちゃオーソドックスで古風な朝飯。

「わー・・・・ガチだぁ」

「でしょでしょ??」

 きなこは得意げにどや顔して笑った。
 俺一人だとあまり使われない炊飯器も、朝から稼働したらしい。

 ベッドの上できなこに泣かれる奇妙な夜の後に、こんな飯が待っているとは思ってもなかった。
 時間は朝10時の少し前。
 俺は午後から禁煙外来、きなこは夕方から出勤。
 二人揃って病院だわな・・・w

 朝飯を食いながら、目の前でやっぱり飯を食ってるきなこを、俺はまじまじと見てしまう。

「とりあえず、きなこが、ちゃんと料理ができることはわかった・・・」

「ちゃんとできますぅ!」

 不満そうにそう言った後、きなこは何かを思い出したように俺に聞く。

「あ・・・そういえば、てっちゃん禁煙外来いくんでしょ??」
 
「うん、まぁな」

「うちの病院にもあるよぉ!禁煙外来!
でも、てっちゃんがタバコやめる決意するとか、すごいね~?
どしたの?あおちぃ効果?」

「いやぁ・・・・まぁ・・・・
マーボさんにもタバコやめろ言われたし
あおいのアルバムとかツアーとかに参加とかになると・・・
ヘビースモーカーなのは、やっぱよくないよなって思ってさ
あおいも、他のミュージシャンも真剣にやってんだし
たとえ俺がオプションだとしても、俺だってできることは全部やらないとなって・・・
なんかそう思って
真剣に人生生きてるあおいの仕事、足引っ張ることになるのは俺だって嫌だしな」

 気づいたら、俺は真面目にそんなこと語ってた。
 そんな俺の顔を、何故かきなこも真剣な面持ちで見つめてる。
 きなこは、手に持った茶碗をテーブルに置くと、やけに真面目な口調で言った。

「てっちゃん、いつもへらへらしてるのに、語ってた時の顔
ほんっとにめちゃくちゃ真剣だった
あたし、いいと思う
そうやって、てっちゃんが、やれることやるって思うこと
あおちぃもきっと嬉しいと思う
てっちゃんが真剣にやるなら、あたしも、これまで以上に真剣にてっちゃんを応援する」

 いつもへらへらしてるのはお前も一緒だろ!と、一瞬つっこみを入れたくなったが、きなこもやけに真剣な顔をしてそんなことを言うもんだから、俺は一瞬黙った。
 そして、少しの間で頭に浮かんで、この口をついて出た言葉はこうだった。

「ありがとうな、きなこ」

 きなこは、まるで花が咲くみたいに嬉しそうに笑った。

「いいんだよ!あたしはずっと、てっちゃんのファンでてっちゃんを真剣に応援するから!
もうクズに戻っちゃだめだよ!」

「いや・・・まだクズだけど?」

「クズなのはわかってるけど!
でも、焼却処分されるようなクズゴミじゃなくて、ちゃんとリサイクルできるようなクズゴミになった!」

「おまえwww俺はペットボトルレベルかよww
全然褒めてねーだろそれwwwwふざけんなwww」

「えー!全力で褒めてるよ!!疑り深いなぁてっちゃんは!」

「いやwぜってー褒めてねーwwwぜってー褒めてねーよなwwww」

「えー?」

「えー?じゃねーわww」

 結局こうして、安定の会話に戻るのはきっと運命なんだと思う。
 まぁ、それが俺ときなこの関係なんで、なんか今、きなことどうこうなろうとは、ちょっと思えないのかもしれない。
 味噌汁を飲みつつ、そんな事が頭に廻った時、不意に、きなこがやけに不満そうに口を開いた。

「あー!てっちゃん!っていうかね!!
昨夜なんで・・・・
なんであたしに何もしなかったの!?」

「ぶっwww」

 飲んでいた味噌汁を吹きかけて、俺は思い切りむせる。

「おま・・・っ!
一体・・・・っ
急にまた・・・何言ってんの?www」

 きなこは、ご飯茶碗を手に取ると、鮭をつつきながら、ますます不満そうになって言うだ。

「えー!!だってぇ!!普通ああなったら!!!男の人ってきっと何かしてくるかと思ってた!!!」

「おまえwww何かされたかったのかよwww」

「えー・・・・・?」

 何故かトーンダウンするきなこ。

 おまえw
 ほんとww
 何が言いたいんだww

「えー・・・じゃねーww
そういうのは、本当に何かされたい時に言えwww」

「えー・・・・???」

「もういいよwwwいいから飯食えよwww」

「だって、てっちゃん・・・!」

「なんだよ?」

「きなこのおっぱい、触るつもり全然なかったの!?」

「おまえwww
そんな答えずらい質問してくんじゃねーwww
朝から疲れるわwww」

「てっちゃんはさぁ・・・」

「なんだよww」

「・・・・・なんでもない」

 妙にトーンダウンして、拗ねたように口をとがらせるきなこ。
 なんでそんな顔すんのか、まるで見当もつかない俺は、とりあえず、スマホのカレンダーを見た。

「あ・・・そうそう、金利18%枠の水族館、行けそうなのはなぁ・・・来週の金曜かな?
地味に東京レッスンと通常レッスンと、バンドの練習入ってるから・・・
もうその日しかないわ、今月」 

「え?!ほんと!?」

 拗ねてたてきなこの顔が急に明るくなった。
 やけに嬉しそうに、きらきらと目を輝かせる。

「じゃああ!むりやり有給ねじ込むね!!!!」

「え?まじ?そこまでする?」

「する!!!」

「そっか・・・w」

 余りにも、きなこが嬉しそうな顔をするもんだから、俺もつい笑ってしまった。
 
 人生を真剣に生きる努力する。
 いまだに俺は、クズでゴミみたいな存在であることには、まるで変わりないけど・・・
 きなこの言う通り、焼却処分されるはずのゴミが、リサイクルできるようになってきたなら、それもそれでいいのかもしれないよな。
 
 さて、タバコやめる努力・・・するかw
 未練はあるけど仕方ないわな。
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