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ACT1 暴言吐きまくり女子だけどなんか可愛いのは何故だろう?5

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 きなこは、俺より二歳年下の23歳。
 今年に入ってから、正看護師になったんだそうだ。
 俺といえば、あわよくばメジャーデビューとか思いつつ、バーテンのバイトで食いつなぐ毎日。

 人生設計なんて何も無い。
 このぐだぐだな人生観のまま、俺はずっと、生きていくんじゃないのかと思ってみたりもする。

 すっかり機嫌を損ねて、いまだに、ぐずぐずとぐずっているきなこを連れて、とりあえず、駅前のカラオケ屋に来てはみた。
 部屋に入った俺ときなこ。
 遠慮もしないで、俺の隣に座ったきなこが、なにげにメニュー表を見ていた俺に、甘えるようにこう言った。

「てっちゃん・・・お腹すいたお~・・・」

 マスカラで一層長く見える睫毛。
 その睫毛に縁取られた大きな瞳が、上目遣いに俺を見る。

「・・・・あぁ、もぉ・・・っ」

 俺はくしゃくしゃと自分の銀髪をかき回すと、メニュー表をきなこに放り投げながら、ため息をついた。

「好きなの食えよ!おごってやるから!!!!」

「わーい!!」

 きなこ、おまえ・・・
 どう考えても、おごってやるって俺に言わせるのが・・・狙いだったよな?
 とは、口にしないで、俺はもう一度ため息をつくのだった。

 やけに嬉しそうに、しかも悪びれもせず、その上妙に可愛く笑ったきなこは、「何たべよ~♪」とか言いながら、メニュー表をめくる。
 プリーツのミニスカから伸びた、すらっと細い足が、否応なしに俺の視界に入る。

 白くて形の良いきなこの足を、ついついちら見しながら、俺は、さりげなくカラオケのリモコンをいじった。
 きなこは、危険なほどに甘え上手な女だ。
 そんなきなこには、兄貴が二人に姉貴が一人いるらしい。

 いまどき珍しい四人兄妹の末っ子って訳だ、そりゃ誰かに甘えるのも上手くて当然。

 俺の知る限り、異性だろうが同性だろうが、きなこは誰にだってこんな感じだった。
 別に、俺だからって特別に甘えてくるんじゃない。
 うちのバンドのメンバーに対してもこんな感じだ。

 こいつは誰に対してもこうなんだ。
 しかも、こいつには何の悪気も策略もないくさい。
 真性の天然系甘え上手。
 得な性格してるって思う。
 どことなくムカつきながら、それでも、まぁしゃーないと諦める俺の気持ちを知ってか知らずか、きなこは、やけに無邪気な笑顔でこう言った。

「あたし、シーザーサラダとぉ、モッツアレラのトマトパスタがいい~!
あとね~ストロベリーパフェ~!!
飲み物はアイスカフェラテ~!
頼んで頼んで~!!」

「・・・はいはい・・・」

 思わず肩をすくめた俺は、手を伸ばしてインターフォンを取る。
 すると、何故かきなこは、そんな俺の腕を、意味不明に撫で始まったんだ・・・

「なんだよ、キモいな?」

「ひどーい!キモくないよぉ!来てくれてありがとって言っただけじゃーん!」

「言ってねーじゃん。触ってるだけじゃん。あほかおまえ?」

「ちゃんと言ってるよ~・・・あたしの指が!」

「は??」

 面食らってる俺に向かって、きなこは無邪気に笑う。

 こいつ、どこまで厨二病なんだ・・・?

 なんかげんなりした俺は、インターフォンの向こうにいる店員に向かって、一通り飯の注文を済ませると、ソファに寄りかかって、ジーパンのポケットから煙草を取り出す。

 そんな俺の仕草を横目で見たきなこが、細い足を組み替えて、その視線を俺の顔に移した。

 きなこの大きな瞳が、まっすぐに、何か物言いたげに俺を見る。

 俺は、眉間にしわをよせて、煙草を口にくわえたまま、そんなきなこを振り返るのだった。
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