31 / 43
第二節 落日は海鳴りに燃ゆる11
しおりを挟む
その姿を睨むように見たジェスターが、形の良い眉を眉間に寄せる。
彼の肢体を取り囲む紅蓮の爆炎が、轟音を上げて灼熱の焔を散した。
ゆらゆらと揺れる朱の前髪の下で、燃え盛る炎の如き緑玉の両眼が、恐ろしいまでの冷淡さ持って、鋭く細められる。
いつもの彼なら決して用いる事のない、低く鋭利で威厳ある声が、鋭くも冷静な響きでこう言った。
「【鍵たる者】を迎えにいく・・・・・後は、任せる・・・・」
その短い言葉から発せられた、心を直接震わすような凄まじい威圧感が、一瞬、白銀の守護騎士たるシルバと、そして、ロータスの大魔法使いたるスターレットをも圧倒する。
厳しい顔つきをしながらも、思わず言葉を失った二人の視界の中で、真実の闇を持つ者が、鮮やかな朱の衣を翻し、街の東へ向かって静かに歩み出した。
薄い闇と、紅き炎を纏う死人が支配する街中に、彼の纏う紅蓮の炎が、煌々と輝きながら揺れている。
もはや、立っていることすらままならないウィルタールが、がくがくと膝を震わせながら、あどけない顔を蒼白に変えて、搾り出すような声で言うのだった。
「い、い、一体・・・・何が、何が起こっているのです!?スターレット様!?」
「・・・・・・ウィルト・・・真実の闇が・・・・目覚め始めている・・・・」
深紅の瞳を鋭利に細め、遠ざかっていく爆炎の魔王の背中を見つめたまま、スターレットが、低めた声でそう答えた。
「・・・・え?」
その言葉の意味がすぐに理解できなくて、ウィルタールは、ぴくりと華奢な肩を震わせたのである・・・
真実の闇が目覚め始めている・・・・・・・
敬愛する主人は、今、確かにそう言った。
真実の闇・・・・?
その時、ふと何かに気が付いて、彼は、驚愕したようにその両眼を大きく見開いたのである。
「まさか・・・・・!?スターレット様・・・・・っ!?
それは・・・・まるで・・・・・ジェスター様が、ラグナ・ゼラキエルだというような言い方ではありませんか!?
だってラグナ・ゼラキエルは・・・・!!」
「別にいたはずだと言いたいか?」
冷静で沈着な声色でそう言ったのは、白銀の守護騎士シルバ・ガイだった。
驚愕の表情のまま、ウィタールは、咄嗟にシルバの鋭い横顔を仰ぎ見た。
漆黒の長い髪を虚空に揺れる。
広い肩に羽織られた純白のマントを、たゆたうように虚空に棚引かせながら、彼は、こちらを振り返らぬまま言葉を続けた。
「おまえが見ただろうゼラキエルは・・・・意思と記憶の一時的な受け皿、『目覚めさせる者』カイルナーガ・・・・・・あいつの弟だ・・・・」
「弟・・・・!?ジェスター様の弟!?」
「そうだ・・・・」
その答えを聞いて愕然とするウィルタールを尻目に、シルバは、紫水晶の如き隻眼で、ふと、傍らに立つスターレットを顧みたのだった。
「さて、スターレット・・・・この死人の群を片付けねばな・・・・・で、こいつらはどうやって倒せばいい?殺すと言っても、もう死んでいる者達だ・・・・」
広い肩で大きく息を吐きながら、その場に張り詰めた緊張をほぐすかのように、シルバは、どこか愉快そうな口調でそう言った。
その言葉に、スターレットもまた、先程までの緊迫した表情を僅かに緩め、少年のようにあどけなく微笑したのである。
「さぁ・・・・私とて、死人を相手にするのは、これが初めて故・・・・」
そんな二人の会話を聞いていたウィルタールが、思わず言葉を失って、その顔色をますます蒼白にしていく。
重い足音を立てて迫りくる死人の隊列・・・・
此処からの距離も随分と狭まってきていた。
スターレットとシルバは、互いに背中を合わせるようにして立つと、ぐるりと辺りを見回したのだった。
薄闇に支配された天空を渡る風の精霊が、けたたましい警告の声を発したと思うと、次の瞬間・・・・
にわかに街全体がぐらりと大きく震え、突然、辺りに凄まじいばかりの轟音が響き渡ったのである。
どおぉぉぉぉ――――――――んっ!!
「!?」
その場にいた全員が、咄嗟にそちらを振り返った。
彼の肢体を取り囲む紅蓮の爆炎が、轟音を上げて灼熱の焔を散した。
ゆらゆらと揺れる朱の前髪の下で、燃え盛る炎の如き緑玉の両眼が、恐ろしいまでの冷淡さ持って、鋭く細められる。
いつもの彼なら決して用いる事のない、低く鋭利で威厳ある声が、鋭くも冷静な響きでこう言った。
「【鍵たる者】を迎えにいく・・・・・後は、任せる・・・・」
その短い言葉から発せられた、心を直接震わすような凄まじい威圧感が、一瞬、白銀の守護騎士たるシルバと、そして、ロータスの大魔法使いたるスターレットをも圧倒する。
厳しい顔つきをしながらも、思わず言葉を失った二人の視界の中で、真実の闇を持つ者が、鮮やかな朱の衣を翻し、街の東へ向かって静かに歩み出した。
薄い闇と、紅き炎を纏う死人が支配する街中に、彼の纏う紅蓮の炎が、煌々と輝きながら揺れている。
もはや、立っていることすらままならないウィルタールが、がくがくと膝を震わせながら、あどけない顔を蒼白に変えて、搾り出すような声で言うのだった。
「い、い、一体・・・・何が、何が起こっているのです!?スターレット様!?」
「・・・・・・ウィルト・・・真実の闇が・・・・目覚め始めている・・・・」
深紅の瞳を鋭利に細め、遠ざかっていく爆炎の魔王の背中を見つめたまま、スターレットが、低めた声でそう答えた。
「・・・・え?」
その言葉の意味がすぐに理解できなくて、ウィルタールは、ぴくりと華奢な肩を震わせたのである・・・
真実の闇が目覚め始めている・・・・・・・
敬愛する主人は、今、確かにそう言った。
真実の闇・・・・?
その時、ふと何かに気が付いて、彼は、驚愕したようにその両眼を大きく見開いたのである。
「まさか・・・・・!?スターレット様・・・・・っ!?
それは・・・・まるで・・・・・ジェスター様が、ラグナ・ゼラキエルだというような言い方ではありませんか!?
だってラグナ・ゼラキエルは・・・・!!」
「別にいたはずだと言いたいか?」
冷静で沈着な声色でそう言ったのは、白銀の守護騎士シルバ・ガイだった。
驚愕の表情のまま、ウィタールは、咄嗟にシルバの鋭い横顔を仰ぎ見た。
漆黒の長い髪を虚空に揺れる。
広い肩に羽織られた純白のマントを、たゆたうように虚空に棚引かせながら、彼は、こちらを振り返らぬまま言葉を続けた。
「おまえが見ただろうゼラキエルは・・・・意思と記憶の一時的な受け皿、『目覚めさせる者』カイルナーガ・・・・・・あいつの弟だ・・・・」
「弟・・・・!?ジェスター様の弟!?」
「そうだ・・・・」
その答えを聞いて愕然とするウィルタールを尻目に、シルバは、紫水晶の如き隻眼で、ふと、傍らに立つスターレットを顧みたのだった。
「さて、スターレット・・・・この死人の群を片付けねばな・・・・・で、こいつらはどうやって倒せばいい?殺すと言っても、もう死んでいる者達だ・・・・」
広い肩で大きく息を吐きながら、その場に張り詰めた緊張をほぐすかのように、シルバは、どこか愉快そうな口調でそう言った。
その言葉に、スターレットもまた、先程までの緊迫した表情を僅かに緩め、少年のようにあどけなく微笑したのである。
「さぁ・・・・私とて、死人を相手にするのは、これが初めて故・・・・」
そんな二人の会話を聞いていたウィルタールが、思わず言葉を失って、その顔色をますます蒼白にしていく。
重い足音を立てて迫りくる死人の隊列・・・・
此処からの距離も随分と狭まってきていた。
スターレットとシルバは、互いに背中を合わせるようにして立つと、ぐるりと辺りを見回したのだった。
薄闇に支配された天空を渡る風の精霊が、けたたましい警告の声を発したと思うと、次の瞬間・・・・
にわかに街全体がぐらりと大きく震え、突然、辺りに凄まじいばかりの轟音が響き渡ったのである。
どおぉぉぉぉ――――――――んっ!!
「!?」
その場にいた全員が、咄嗟にそちらを振り返った。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる