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第二節 落日は海鳴りに燃ゆる16
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そんな彼の傍らに立ち、もう一人の青珠の守り手レダ・アイリアスが、繊細な指先で『水の弓(アビ・ローラン)』に光の矢をつがえると、豪速で解き放たれた閃光が、寸分たがわぬ正確な軌跡を描いて、眼前に迫り来る無数の死人を貫き通していく。
清らかな水の波紋が虚空に描かれ、その末端に触れた死人もまた、青き光を伴い一瞬にして消滅していった。
強力な封魔と鎮めの業を、妖精王レイルから与えられている青珠の守り手ならば、死人の隊列を蹴散らすことなど、造作も無いことなのかもしれない・・・・
「流石、青珠の森の守り手だ・・・・感服するよ」
どこか愉快そうにそう呟いて、純白のマントを翻すと、天空を走る雷光のような鋭い斬撃が、左舷の死人の半身を虚空に跳ね上げ、その背後から伸びてきた赤黒い両腕をも浚って静止する。
空を舞う死人の部位を、青き閃光の清らかな軌跡が貫き通し、一瞬にして塵のような粒子に変えていく。
高く結われた藍に輝く艶やかな黒髪がふわりと揺れ、シルバの傍らに、やけに懐かしく感じる、芳しい花の香が漂った。
跳ね上がる前髪の隙間から、流した視線でこちらを見やる鮮やかな紅の瞳。
甘い色香を漂わせる桜色の唇が、小さく微笑した。
「少しは見直した?貴方に助けられてばかりで、それがずっと癪に障っていたのよ」
それは、彼女の精一杯の強がりだった。
本当は、胸が痛い程焦れながらも、ずっと此処に来ることを躊躇っていた彼女であったが、見かねたリュ―インダイルが、『死人を鎮める』と言う口実を作ってくれたため、やっと、こうして来ることができたのだ・・・・
そんな事など、口が避けても言える訳はないが・・・・
それに気付いているのかいないのか、シルバは、もう一度、唇だけで微笑すると、相も変わらず洗練された身のこなしで、再び、その手に携えた優美な白銀の剣を翻したのだった。
猛るリュ―インダイルが、殊更激しい咆哮上げて、青き鬣を虚空に棚引かせながら死人の合間を疾走する。
その鋭利に湾曲した爪が、十数人と言う死人を一気に虚空に投げ、青き光の渦に容赦なく叩き込んでいく。
金色の鋭い牙が、凄まじい勢で死人の体を噛み砕き、千々に弾けた紅の炎が生暖かい風に舞い踊った。
にわかに、その場に姿を現した青珠の守り手達の術が、死の縁から蘇った死人の群れをみるみる激減させて行ったのである。
混迷を極めるサーディナに、まもなく、日が落ちる・・・・
清らかな水の波紋が虚空に描かれ、その末端に触れた死人もまた、青き光を伴い一瞬にして消滅していった。
強力な封魔と鎮めの業を、妖精王レイルから与えられている青珠の守り手ならば、死人の隊列を蹴散らすことなど、造作も無いことなのかもしれない・・・・
「流石、青珠の森の守り手だ・・・・感服するよ」
どこか愉快そうにそう呟いて、純白のマントを翻すと、天空を走る雷光のような鋭い斬撃が、左舷の死人の半身を虚空に跳ね上げ、その背後から伸びてきた赤黒い両腕をも浚って静止する。
空を舞う死人の部位を、青き閃光の清らかな軌跡が貫き通し、一瞬にして塵のような粒子に変えていく。
高く結われた藍に輝く艶やかな黒髪がふわりと揺れ、シルバの傍らに、やけに懐かしく感じる、芳しい花の香が漂った。
跳ね上がる前髪の隙間から、流した視線でこちらを見やる鮮やかな紅の瞳。
甘い色香を漂わせる桜色の唇が、小さく微笑した。
「少しは見直した?貴方に助けられてばかりで、それがずっと癪に障っていたのよ」
それは、彼女の精一杯の強がりだった。
本当は、胸が痛い程焦れながらも、ずっと此処に来ることを躊躇っていた彼女であったが、見かねたリュ―インダイルが、『死人を鎮める』と言う口実を作ってくれたため、やっと、こうして来ることができたのだ・・・・
そんな事など、口が避けても言える訳はないが・・・・
それに気付いているのかいないのか、シルバは、もう一度、唇だけで微笑すると、相も変わらず洗練された身のこなしで、再び、その手に携えた優美な白銀の剣を翻したのだった。
猛るリュ―インダイルが、殊更激しい咆哮上げて、青き鬣を虚空に棚引かせながら死人の合間を疾走する。
その鋭利に湾曲した爪が、十数人と言う死人を一気に虚空に投げ、青き光の渦に容赦なく叩き込んでいく。
金色の鋭い牙が、凄まじい勢で死人の体を噛み砕き、千々に弾けた紅の炎が生暖かい風に舞い踊った。
にわかに、その場に姿を現した青珠の守り手達の術が、死の縁から蘇った死人の群れをみるみる激減させて行ったのである。
混迷を極めるサーディナに、まもなく、日が落ちる・・・・
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