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第一節 鋼色の空13
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『風が吹いているなら・・・・おぬしには届くはずだ!!
何をのんびりしているのだ!!早く来い!!蒼き狼(ロータス)の者よ!!
スターレット――――――――っ!!』
吹き付ける風に入り混じったその声を聞いたのは、つい、先日の事である。
ロータス一族の大魔法使いたる者、時折美しいとも形容される雅で秀麗な青年スターレット・ノア・イクス・ロータスは、王都リタ・メタリカの東北、本来なら広大な荒野と草原を望むことが出来るレスタラス山の断崖に立っていた。
その綺麗な眉が鋭く眉間に寄せられ、美しく澄み渡る銀水色の両眼が、厚い雲に覆われた眼下を鋭利に見つめやっていた。
嵐の気配を予見させる荒ぶる風が、輝くような蒼銀の髪を白く曇る虚空に激しく乱舞させ、その広い肩に羽織られた蒼きローブの裾が、断崖の下から吹き上げてくる湿った空気に押し上げられるように揺れている。
レスタラス山。
そこは、400年前、魔王ラグナ・ゼラキエルとの激しい戦が始まるまで、闇の魔物どもが封印されていたという曰く付きの地であった。
この岩山のどこかに、暗黒の結界で覆い尽くされたラグナ・ゼラキエルの居城があるはずだ。
かつて、このレスタラス山には妖精の女王が住む城があったという。
このシァル・ユリジアン大陸に点々と存在する『妖精の森』とはまた別の、闇の魔物を封じるためだけに作られた城であったと・・・・ロータス一族の伝承には書き記されていた。
この崖から、僅かばかり東に行った岩場の尾根には、広大なリタ・メタリカの地に進軍してくる東や北の国々を監視するために建築された、巨大で屈強な要塞、レスタラス要塞がある。
その要塞を作り上げるために、400年前、リタ・メタリカは、魔物を封じる妖精の女王から、この地を奪ったという・・・・
それは、王宮では禁句とされている歴史上の事実。
400年前の戦が終結すると同時に、魔王ゼラキエルの精鋭達はリタ・メタリカの各地に封印され、残りの魔物は、再び、このレスタラス山に封じられたと聞いた。
だが今、全ての魔物は封印を解かれ傍若無人に各地を荒らしまわっているはず・・・・
何故今更、この地にあの魔王の居城が訪れているのか、スターレットには解せないところがあった。
それに・・・・
本来なら、風など吹いているはずも無い『幻の城』から、風に乗ってあのエストラルダ帝国の美しき女剣士ラレンシェイ・ラージェの声が彼の耳に届いたのだ。
もしかすると、此処に、あの奇妙な城の謎を解く鍵があるのかもしれない・・・
このレスタラス山の山頂には、今でも、妖精の女王が住んでいたとされる城の遺跡が残っている。
スターレットは、ゆっくりとその綺麗な銀水色の眼差しを白い雲に覆われたレスタラス山の天辺へと向けた。
鋭い岩肌と、高い断崖に彩られたこの山。
此処に、一体、何があるというのだろうか・・・・?
蒼い光を伴う疾風がびゅうんと鋭く鳴き、雅な大魔法使いの姿は、白く煙る虚空へと消えて行った。
リタ・メタリカの北の国境から、このシァル・ユリジアン大陸の東西に伸びる大山脈、セン・ラーヴァ。
その美しく蒼い峰々は、レスタラス山の山頂を覆い尽くす厚い雲によってまったく望めなくなっていた。
疾風と共に空間を越え、スターレットが辿り着いたのは、レスタラスの山頂、俗に【ジルファルコ・ファルマ・カークス(失われた大鷹の城)】と呼ばれる古の遺跡であった。
吹き荒ぶ風に千切れる白い雲の合間、誰が作り上げたかすらわからない二本の巨大な大理石の柱が、そこに荘厳と浮かび上がっている。
それは、この地にあったと伝えられる、妖精の城の入り口を装飾するものであったのだろう・・・
流れる雲の隙間に、その柱に刻み込まれた金色の鷹の紋章が見え隠れしている。
蒼きローブを流れるように揺らすスターレットの足元からは、朱き獅子(アーシェ)一族の古都アシェ・ギヴィシム・シアで感じたものとよく似た、実に奇妙な感覚が伝わってきていた。
雅で秀麗な顔を厳しく歪め、まるで生きていてそこに意思があるかのような地面を踏みしめると、遺跡の残骸だけが騒然と散らばるレスタラスの山頂を、スターレットは、ゆっくりと大理石の柱に向けて歩んで行ったのである。
遺跡に降り積もった砂塵を舞い上げながら、白く煙る虚空を渡る風の音が甲高い音を立てていた。
不思議なことに、この地を渡る風の精霊は何故か皆無口で、スターレットの耳に一切何も伝え来ることがない・・・・
この土地は、実に奇妙な土地だ。
輝くような蒼銀の髪が、白く曇る虚空に乱舞する。
広い肩に羽織られた蒼きローブが、流れるように地面の上を舞い、鋭く細められた銀水色の瞳の先には、朽ち果てて今や瓦礫の山となった城壁の破片が音もなくそこに佇んでいたのだった。
誰の気配もない、まるで、忘れ去られたかのようにひっそりとそこに在る古の遺跡。
城であった・・・と伝えられてはいるが、眼前に立つこの巨大な柱以外、城と思しき他の遺跡はそこにない。
朽ち果てて崩れたにせよ、城壁と柱が残っているのに、城自体の遺跡がないのは実に奇妙な話である。
天を支えるように伸びる巨大な柱の下に立ち、スターレットは、鋭い眼差しをしたまま、そこに刻まれている金色の鷹の紋章にふと、その長い指先を伸ばしたのだった。
紋章のすぐ下に刻まれている、見慣れぬ文字。
それは、彼らが扱う、呪文と呼ばれる古の人にあらざる言語と同じ物であるようだった。
しかし、何故だろう・・・・ロータス一族の大魔法使いであるスターレットでも、それが解読できない。
揺れる蒼銀の前髪の下で綺麗な眉を怪訝そうに歪め、その指先が、微かに文字をなぞった、その時である。
突然、吹き荒ぶ湿った風が渦を巻き、けたたましい悲鳴を上げながら厚い雲を貫くと、柱に刻まれたその文字が眩いばかりの黄金の輝きを解き放ったのだった。
その光の束は、まるで生き物であるかのように、ゆらゆらと揺れながら虚空に金色の帯を引く。
「なに・・・・っ!?」
スターレットは、銀水色の綺麗な両眼を驚愕に満たし、余りの眩しさに片腕で雅なその顔をかばうと、その隙間から、細めた視線で金色に光り輝く柱を見つめ据えたのである。
白く曇る虚空を引き裂くように、幾重にも幾重にも折り重なる金色の光の帯。
やがてそれは、天空に伸び上がるような一筋の太い帯を作り出し、二本ある巨大な柱の調度真中に、誰とも知れぬ人影を緩やかに映し出して行ったのだった。
『・・・・蒼き狼(ロータス)の者よ・・・・』
眩い金色の輝きに彩られながら、棚引くように揺れる長い紅色の髪。
煌く光の帯の中、半透明の姿でそこに浮かび上がる、岩肌に凛と咲き誇る紅い百合の花のような、美しく神秘的な一人の女性・・・・
甘い琥珀色の両眼が、周囲を飛び交う光の粒を映しながら、真っ直ぐに、驚愕の表情をするスターレットの雅な顔を見つめすえていた。
『そなたは・・・・っ!?』
『私は・・・・エメルディナ・・・・遥か古の昔、この地で魔を封じし妖精族の者。
人は私を、ジルファルコ・ナーザー(大鷹の姫)と呼んでいた』
聴覚ではなく、直接その脳裏に聞こえてくる、古の美しき妖精の女王の涼しやかな声。
スターレットは、銀水色の両眼を細めたまま、ゆっくりと己の顔をかばっていた腕を下ろして、真っ直ぐに、エメルディナと名乗ったその女性の凛とした美しい顔を見つめ据えたのだった。
腰まで届きそうな長い紅の髪が、金色の光の帯の中で緩やかに揺れている。
彼女のその顔立ちは、どこか、あのエストラルダの勇ましいアストラ剣士に似ていて、彼は思わず、ハッとその広い肩を振わせたのである。
『風が吹いているなら・・・・おぬしには届くはずだ!!
何をのんびりしているのだ!!早く来い!!蒼き狼(ロータス)の者よ!!
スターレット――――――――っ!!』
吹き付ける風に入り混じったその声を聞いたのは、つい、先日の事である。
ロータス一族の大魔法使いたる者、時折美しいとも形容される雅で秀麗な青年スターレット・ノア・イクス・ロータスは、王都リタ・メタリカの東北、本来なら広大な荒野と草原を望むことが出来るレスタラス山の断崖に立っていた。
その綺麗な眉が鋭く眉間に寄せられ、美しく澄み渡る銀水色の両眼が、厚い雲に覆われた眼下を鋭利に見つめやっていた。
嵐の気配を予見させる荒ぶる風が、輝くような蒼銀の髪を白く曇る虚空に激しく乱舞させ、その広い肩に羽織られた蒼きローブの裾が、断崖の下から吹き上げてくる湿った空気に押し上げられるように揺れている。
レスタラス山。
そこは、400年前、魔王ラグナ・ゼラキエルとの激しい戦が始まるまで、闇の魔物どもが封印されていたという曰く付きの地であった。
この岩山のどこかに、暗黒の結界で覆い尽くされたラグナ・ゼラキエルの居城があるはずだ。
かつて、このレスタラス山には妖精の女王が住む城があったという。
このシァル・ユリジアン大陸に点々と存在する『妖精の森』とはまた別の、闇の魔物を封じるためだけに作られた城であったと・・・・ロータス一族の伝承には書き記されていた。
この崖から、僅かばかり東に行った岩場の尾根には、広大なリタ・メタリカの地に進軍してくる東や北の国々を監視するために建築された、巨大で屈強な要塞、レスタラス要塞がある。
その要塞を作り上げるために、400年前、リタ・メタリカは、魔物を封じる妖精の女王から、この地を奪ったという・・・・
それは、王宮では禁句とされている歴史上の事実。
400年前の戦が終結すると同時に、魔王ゼラキエルの精鋭達はリタ・メタリカの各地に封印され、残りの魔物は、再び、このレスタラス山に封じられたと聞いた。
だが今、全ての魔物は封印を解かれ傍若無人に各地を荒らしまわっているはず・・・・
何故今更、この地にあの魔王の居城が訪れているのか、スターレットには解せないところがあった。
それに・・・・
本来なら、風など吹いているはずも無い『幻の城』から、風に乗ってあのエストラルダ帝国の美しき女剣士ラレンシェイ・ラージェの声が彼の耳に届いたのだ。
もしかすると、此処に、あの奇妙な城の謎を解く鍵があるのかもしれない・・・
このレスタラス山の山頂には、今でも、妖精の女王が住んでいたとされる城の遺跡が残っている。
スターレットは、ゆっくりとその綺麗な銀水色の眼差しを白い雲に覆われたレスタラス山の天辺へと向けた。
鋭い岩肌と、高い断崖に彩られたこの山。
此処に、一体、何があるというのだろうか・・・・?
蒼い光を伴う疾風がびゅうんと鋭く鳴き、雅な大魔法使いの姿は、白く煙る虚空へと消えて行った。
リタ・メタリカの北の国境から、このシァル・ユリジアン大陸の東西に伸びる大山脈、セン・ラーヴァ。
その美しく蒼い峰々は、レスタラス山の山頂を覆い尽くす厚い雲によってまったく望めなくなっていた。
疾風と共に空間を越え、スターレットが辿り着いたのは、レスタラスの山頂、俗に【ジルファルコ・ファルマ・カークス(失われた大鷹の城)】と呼ばれる古の遺跡であった。
吹き荒ぶ風に千切れる白い雲の合間、誰が作り上げたかすらわからない二本の巨大な大理石の柱が、そこに荘厳と浮かび上がっている。
それは、この地にあったと伝えられる、妖精の城の入り口を装飾するものであったのだろう・・・
流れる雲の隙間に、その柱に刻み込まれた金色の鷹の紋章が見え隠れしている。
蒼きローブを流れるように揺らすスターレットの足元からは、朱き獅子(アーシェ)一族の古都アシェ・ギヴィシム・シアで感じたものとよく似た、実に奇妙な感覚が伝わってきていた。
雅で秀麗な顔を厳しく歪め、まるで生きていてそこに意思があるかのような地面を踏みしめると、遺跡の残骸だけが騒然と散らばるレスタラスの山頂を、スターレットは、ゆっくりと大理石の柱に向けて歩んで行ったのである。
遺跡に降り積もった砂塵を舞い上げながら、白く煙る虚空を渡る風の音が甲高い音を立てていた。
不思議なことに、この地を渡る風の精霊は何故か皆無口で、スターレットの耳に一切何も伝え来ることがない・・・・
この土地は、実に奇妙な土地だ。
輝くような蒼銀の髪が、白く曇る虚空に乱舞する。
広い肩に羽織られた蒼きローブが、流れるように地面の上を舞い、鋭く細められた銀水色の瞳の先には、朽ち果てて今や瓦礫の山となった城壁の破片が音もなくそこに佇んでいたのだった。
誰の気配もない、まるで、忘れ去られたかのようにひっそりとそこに在る古の遺跡。
城であった・・・と伝えられてはいるが、眼前に立つこの巨大な柱以外、城と思しき他の遺跡はそこにない。
朽ち果てて崩れたにせよ、城壁と柱が残っているのに、城自体の遺跡がないのは実に奇妙な話である。
天を支えるように伸びる巨大な柱の下に立ち、スターレットは、鋭い眼差しをしたまま、そこに刻まれている金色の鷹の紋章にふと、その長い指先を伸ばしたのだった。
紋章のすぐ下に刻まれている、見慣れぬ文字。
それは、彼らが扱う、呪文と呼ばれる古の人にあらざる言語と同じ物であるようだった。
しかし、何故だろう・・・・ロータス一族の大魔法使いであるスターレットでも、それが解読できない。
揺れる蒼銀の前髪の下で綺麗な眉を怪訝そうに歪め、その指先が、微かに文字をなぞった、その時である。
突然、吹き荒ぶ湿った風が渦を巻き、けたたましい悲鳴を上げながら厚い雲を貫くと、柱に刻まれたその文字が眩いばかりの黄金の輝きを解き放ったのだった。
その光の束は、まるで生き物であるかのように、ゆらゆらと揺れながら虚空に金色の帯を引く。
「なに・・・・っ!?」
スターレットは、銀水色の綺麗な両眼を驚愕に満たし、余りの眩しさに片腕で雅なその顔をかばうと、その隙間から、細めた視線で金色に光り輝く柱を見つめ据えたのである。
白く曇る虚空を引き裂くように、幾重にも幾重にも折り重なる金色の光の帯。
やがてそれは、天空に伸び上がるような一筋の太い帯を作り出し、二本ある巨大な柱の調度真中に、誰とも知れぬ人影を緩やかに映し出して行ったのだった。
『・・・・蒼き狼(ロータス)の者よ・・・・』
眩い金色の輝きに彩られながら、棚引くように揺れる長い紅色の髪。
煌く光の帯の中、半透明の姿でそこに浮かび上がる、岩肌に凛と咲き誇る紅い百合の花のような、美しく神秘的な一人の女性・・・・
甘い琥珀色の両眼が、周囲を飛び交う光の粒を映しながら、真っ直ぐに、驚愕の表情をするスターレットの雅な顔を見つめすえていた。
『そなたは・・・・っ!?』
『私は・・・・エメルディナ・・・・遥か古の昔、この地で魔を封じし妖精族の者。
人は私を、ジルファルコ・ナーザー(大鷹の姫)と呼んでいた』
聴覚ではなく、直接その脳裏に聞こえてくる、古の美しき妖精の女王の涼しやかな声。
スターレットは、銀水色の両眼を細めたまま、ゆっくりと己の顔をかばっていた腕を下ろして、真っ直ぐに、エメルディナと名乗ったその女性の凛とした美しい顔を見つめ据えたのだった。
腰まで届きそうな長い紅の髪が、金色の光の帯の中で緩やかに揺れている。
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