神在(いず)る大陸の物語~月闇の戦記~【第一章】

坂田 零

文字の大きさ
24 / 79

第二節 白銀の守り手 青珠(せいじゅ)の守り手7

しおりを挟む
『おぉ・・・そのお方は・・・!?もしや、ディアネテル様のご息女か?』

 サリオは、馬の手綱をシルバの手に渡しながら、その虹色の瞳で、リューインダイルの方をゆっくりと振り返ったのだった。

『はい、青珠の守護者様・・・サリオ・リリスと申します』 

 あどけなく微笑んだ彼女のエメラルドグリーンの髪を、透明な風の両手が浚って通り過ぎていく。
 シルバは、そんな彼女の顔を横目で見やり、ふと、その深き地中に眠る紫水晶のような右目を、先程から、無言のまま憮然とこちらを見つめている、青珠の森の美しき弓士レダ・アイリアスに向けたのだった。
 揺れる前髪の下で、未だに深い憎しみを宿したままの鮮やかな紅色の瞳が、激しい敵意を持ち、爛と輝きながらシルバの端正な顔を凝視している。

「・・・・・・・・」

 緑の木々をざわりと揺らして、カルダタス山脈からの冷たい風が、シルバの漆黒の髪と純白のマントを虚空に乱舞させた。

 その透明な風の両手は、レダの藍に輝く艶やかな黒髪をもさらって、深い森の中へと消えていく。
 澄んだ紫色の右目を僅かに細めた彼の脳裏に、確かに蘇る、遠い夕闇の記憶。
 リタ・メタリカとフレドリック・ルードの国境の森で遭遇した父子が、確かにいたはずだ・・・・

 そうか・・・・あの時の・・・・・

 彼女が、七年前のあの日、彼が斬り捨てた者の娘であるとすれば、あの状況だ、彼女の憎しみが自分に向いてもおかしくはないのだろう。 
 シルバは何も言わず、ただ、僅かにその右側だけの視線を緑に萌える地面へと落とした。
 真っ直ぐに彼を見つめる、深い憎しみに満ちた彼女の鮮やかな紅の両眼。
 冷たい風が緑の木々を揺らして、今、二人の合間を駆け抜けていく。
 
 世には、白銀の守護騎士と呼ばれる白銀の森の守り手と、青珠の森の守り手。
 
 そんな奇妙な形で再会することになったこの二人が、後に、焦(や)け付く程の想いで互いに惹かれ合うことになるだろう事を、この時、当人達ですら知る術(すべ)も無いでいた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...