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コボルト・ゴブリン奴隷編

奴隷の炭鉱での出来事2

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 小汚い炭鉱に、ここのオーナーとも言える貴族の方が見学に来られることになった。
ゴブリンノ数匹に、埃塗れの炭鉱ではあるが余所向けに清掃を行わせる。
大きめの石を歩きやすそうに退けさせて、見学する場所には簡単な松明での明かりを用意させた。

「お前ら、キビキビ働けよ。今回の訪問で、うちの炭鉱にどれくらい融資してもらえるか決まるからな」
いつも通りに鞭で叩きながら、奴隷どもに働かせる。

そして、数日後に貴族の方が炭鉱の見学を始めた。この日だけは俺も酒を飲まずに、真面目に働いているように装う。
「相変わらず、ここには…埃っぽくて体に悪いな…」
「すみませんね。ここの魔法石の産出量が他のところよりも良いので作業量も多いんですよ」
「…最近、一番産出量の高かったこの炭鉱ですら、ここ数日の魔法石の産出量が目に見えて、減って来ているからな。炭鉱自体が限界に近づいてるもかもな…」
「…そうですか、出来る限りゴブリン共に仕事をさせて、もっと掘って掘って掘り尽くさせて、なるべく成果を出すように善処します」
確かに、ここ最近の魔法石が取れていないのは事実だ。
だが、この炭鉱は俺の唯一の働き口であり、こんな楽で稼ぎもいい仕事場には無くなってもらっては困る。
「ゴブリン達!しっかりと働け、お前らが働かないから、発掘の量も減ってるんだぞ」
貴族の前で、念入りに見せつけるように、勤勉に仕事をしているように見せるために鞭で叩く。

「ギィ!ギギギ!!ギィィ!!ギィ!ギィィ!!!」
「ギィィ!ギギギ!ギィィ!!!ギィギッギ!!」
ゴブリン達は悲鳴を上げて、涙を床にこぼしながら、ツルハシを振るう。

「これからも、ゴブリン共を出来る限りコキ使って、しっかりと成果を出せよ。これ以上魔法石が取れなくなればお前もここでの仕事がなくなると思っておけ。次の仕事までは斡旋してやれないぞ」
「…はい」

ただ貴族に生まれて、いい身分で生活を出来ているだけのクズに命令されているのが本当に苛立って仕方ない。
「覚えてろ…俺は絶対にこの炭鉱での仕事を捨てないからな…」
力を込めて、精一杯ゴブリン共を叩く。
必死になって採掘を始めるゴブリン達。
光る魔法石がポロポロと落ちていくのだった。
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