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第4章︰迷い
第45話
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「戻ったか。街の様子はどうだった?」
テントへ戻った私達は、先に戻って来ていたユオダスとジンガに出迎えられた。一緒に行動していたパニは、王子が待っている隣のテントへ向かった。
「...変な果物あった。」
「ついでに変な女にも絡まれたぜ。」
「変な女?」
「アスールの事を天族の生まれ変わりだとか言って、連れ去ろうとしてた。元からこの国は、色々とやべぇと思ってたけど...明日の儀式も、何かありそうで嫌な予感がするな...。」
「グリが付き添っていて良かった。パニ様だけでは、対処しきれない事もあるだろうからな。」
「ったく...飯も自分達で何とかしろって感じだったし、面倒くせぇ国だなここは。」
「...手伝う。」
「お前は少し寝てろ。さっきのガキを治療して、魔力を消耗しただろ。」
「怪我人が居たのか?」
「...居た。」
「俺は宮殿に行って、厨房を借りてくる。飯は無くても、場所くらい貸してくれんだろ。」
「なら俺が手伝う。団長は治癒士の側に居てくれ。」
「分かった。頼んだぞ2人共。」
ジンガを連れ、グリは再びテントから立ち去って行った。
「アスール。横になるなら、そこのベッドを使うと良い。」
彼は部屋の奥を指さし、ベッドで寝るよう促した。私は彼の指示に従い、上着を脱いで薄手のタオルに包まる。
「今はそのくらいで十分だが...夜は冷えるから、しっかり布団を掛けて寝た方がい良いぞ。」
「...今暑いのに、夜寒い?」
「砂漠は寒暖差が激しい場所だ。日が沈めば、氷点下になる。」
「...ひょーてんか?」
「水が凍るような寒さの事をそう言う。要は寒いという事だ。」
これ程の暑さがそこまで寒くなるのには、一体どんな理由があるのだろう?私はふと浮かんだ疑問を彼に問いかけようとした。
しかし、ふとビオレータの顔が思い浮かび、ビエントへ帰ってから彼に聞こうと心に留めた。
「眠くないのか?」
「...無い。」
「アロマを炊くのは夜にしたいからな...。眠らなくても、目を閉じるだけで身体が休まる。話しながらでも構わないから、目を閉じろ。」
「...分かった。」
目を閉じると、先程見かけた不思議な果物が頭に浮かんだ。
「...トアコフーツ、食べた事ある?」
「何だそれは...。聞いた事がないな...。」
「...桃色でトゲトゲしてた。」
「桃色で棘...あぁ。ドラゴンフルーツか。」
「...ユオアス物知り。」
「ビオレータ程じゃない。このくらいは普通だ。」
「...美味しい?」
「まぁ、食べられない事は無いが...それ程好きでは無いな。」
甘い物好きな彼がそれ程好きでは無いと言うなら、グリが言うように甘い果物では無いらしい。
「他にはどんな物があった?」
「...ピカピカ光る板。」
「光る板...か。ガラスか?」
「...違う。黒かった。」
「もしや...ソーラーパネルの事か?」
「...それ何?」
「タナー神国は、太陽の光から電気を作り出している。光を集めて発電する、太陽光発電と言う奴だ。」
「...ふうよくと、かよくは何使う?」
「ビエント王国は、自然の風で風車を動かして発電し...一方のアリファーン帝国は、焼却施設で石炭を燃やして発電している。」
「...難しい。」
「焼却施設はともかく...風車は見た事があるだろう?民家の屋根よりも高い、塔のような構造...」
「団長!大変だ!」
テントへ戻って来たジンガは、どこか様子が変だった。私は中で待つように言われ、ユオダスだけがテントの外へ出て行く。
しばらくしてグリがやって来て、私をテントの裏手へ連れ出した。そこには、テーブルと椅子が用意されていて、彼が用意したと思われる料理が並べられている。
ガルセク王子とアウルム、パニの姿があったが...先程出て行ったジンガとユオダスの姿はどこにも見当たらなかった。
「アスールちゃん、こっちこっちー。」
パニに招かれ、隣の椅子に腰を下ろす。すると、彼は私にスプーンとフォークを差し出した。
「さっき、ジンガくんの声が聞こえたけど...何か問題が起きたの?」
「詳しくは俺も分かりません。今、ユオダスとジンガが話を聞きに行ってます。」
「俺も行けば良かったッスね...。2人に任せっきりで、何だか申し訳ないッス。」
「その為に連れて来たようなものだろう?これが奴等の仕事だ。」
王子は手馴れた様子でナイフを使い、切り分けた肉を口の中へ運ぶ。その様子を眺めていると、私の前に彼と同じ料理が運ばれて来た。
焼いた肉が中央に置かれていて、周りに様々な野菜が彩りを添えている。
しかし、肉の大きさが彼の物とは随分違っていた。大きな塊ではなく、既に一口大の大きさに切り分けられている。
「あ、ほらアスールちゃん。ドラゴンフルーツあるよー?」
「...どこ?」
「これこれ!この白いやつ。」
パニが指をさしたのは、肉の周りに置かれた白い塊だった。
「...桃色じゃない。」
「あれは皮だから食べられないよー。皮を剥いた後の、この白いのが柔らかくて美味しいの。どんな味か気になってたでしょ?食べてみて!」
「...いただきます。」
彼に急かされ、フォークで果物を突き刺した。とろりとした食感だが、甘味はほとんど感じられなかった。
「...味しない。」
「ちょっと酸味があるくらいで、ほとんど無味だよねー。ボクはキウイにちょっと似てるなーって思うけど。」
「...キーイ?」
「酸味が強い果物だよ。冬が旬の果物だから、食べられるのはまだまだ先になるかもね。」
「...果物、酸っぱい...多い。」
「酸っぱいと言えば…レモンとか、パイナップルなんかも...」
彼と果物について話をしていると、先程外へ出て行ったユオダスが帰って来た。
彼は詳しく聞いた話を、私達に説明し始める。
「つまり...ルムア様が、何者かに連れ去られたと?」
「そのようです。犯人の狙いは明らかではありませんが...恐らく、儀式を邪魔したい者による仕業でしょう。」
ジンガが慌ててユオダスの元へやって来たのは、神官のルムア様が行方不明になったという話を耳にしたからだった。彼女は私達と話をした後、儀式の準備をしていたそうだが、忽然と姿を消してしまったと言う。
「...まさかな。」
「グリ?何か思いある節があるのか?」
「いいや、確証じゃない。ただの独り言だ...気にすんな。」
グリは何か言いたげだったが、それ以上多くを語る事は無かった。
「手分けして探すしかあるまいな。俺はパニと、アウルムは青女と街の中を見て回れ。」
「了解ッス。」
「俺達はそれぞれ手分けして、街の周辺を探そう。」
「分かった。」
私はアウルムと共に再び街へ繰り出し、ルムア様を探す事になった。
彼は私の歩幅に合わせ、ゆっくりと通りを進んで行く。
「こうしてると、ローゼを探した時の事を思い出すッスねー。」
「...ルウアさまも、せんのーされてる?」
「いやいや。まだそうと決まった訳じゃないッス。彼女の場合、操るよりも...人質にした方が色々と便利そうッスからね。」
「...ひとじじ?」
「地位や権力のある人を捕まえて、金や物を要求する悪事ッス。こいつを返して欲しければ、金を用意しろー!...ってな感じで。」
「...買い物みたい。」
「まぁ...物を交換するっていう意味では...って、これは全然違うッスよ!人を売買するなんて、人間のやる事じゃないッス。」
「...人じゃないなら、魔族?」
「そうか...。盗賊か何かの仕業かと思ってたッスけど、魔族の可能性も...。」
「...魔族もお金欲しい?」
「奴等は金を持っていても、使い道がないッスから...何か、他の理由があるかもしれないッスね。だとすると...うーん…。」
身体の前で腕を組み、考え込む姿がアルトゥンにそっくりだった。
ふと...私の耳に、ルムア様の名前が聞こえて来る。
「...ルウアさま。」
「え!?どこッスか!?」
「...話してる。」
彼女の話をしていたのは、店の前で買い物をしている2人の女性だった。指をさした彼女達の元にアウルムが駆け寄り、私も後を追いかける。
「今、ルムア様の話をしてたッスか?」
「え?...え、えぇ。まぁ...。」
「突然なんですの?」
「俺達、ルムア様にお会いしたいんッスけど...どこに行ったら会えるッスかね?」
「明日は精霊祭だから、きっとお忙しいと思うわよ?先程も、儀式が行われる祭壇に向かっていらしたし...。」
「さっきって、いつの話ッスか?」
「そうねぇ...どのくらい前だったかしら?」
「私達、ここで数時間は喋ってたものねぇ。いつだったかなんて覚えてないわ。」
「そうッスか...。なら、諦めるしかなさそうッスね。ありがとうッス。」
女性達の元を離れたアウルムは、再び腕を組み始めた。
「ルムア様の場所が分かるかと思ったんッスけど...数時間も前の話となると、かなり曖昧ッスねぇ。」
「...祭壇、行ってみる?」
「他に手がかりもないし...行ってみるのもありッスね。」
「アスール。ちょっと待つッス。」
街の出入口である門をくぐろうとした時、アウルムが私の名前を呼んだ。
「...何?」
彼はこちらへ歩み寄りながら、肩から垂れ下がる赤い布を取り外した。私の前にしゃがみ込み、頭上で布を広げて首に巻き付け始める。
「これからどんどん寒くなるッスから、風邪ひかないように温かくした方がいいッスよ。」
「...アウムは?」
「俺は暑がりだから、平気ッス。マントはこうした使い方も出来るから、覚えておくと便利ッスよ。」
「...マント?」
「今首に巻いたこれッス。突然雨が降ってきた時に雨避けにしたりとか、怪我をした時に巻き...」
「治癒士!」
門をくぐり、街の外からジンガがやって来た。どうやら彼は、街の外を捜索していたらしい。
「2人は、街中を見ていたはずじゃ...。」
「散々見て回ったけど、どこにも見当たらなかったッス。住民が儀式の祭壇に向かうルムア様を見かけたって聞いて、今から行こうとしてたんッスよ。」
「祭壇へは、調理師が行きました。俺はもう少し、この辺りを見回ります。」
「了解ッス。」
再び門の外へ駆けて行くジンガを見送り、先に向かったと言うグリの元へ急いだ。
テントへ戻った私達は、先に戻って来ていたユオダスとジンガに出迎えられた。一緒に行動していたパニは、王子が待っている隣のテントへ向かった。
「...変な果物あった。」
「ついでに変な女にも絡まれたぜ。」
「変な女?」
「アスールの事を天族の生まれ変わりだとか言って、連れ去ろうとしてた。元からこの国は、色々とやべぇと思ってたけど...明日の儀式も、何かありそうで嫌な予感がするな...。」
「グリが付き添っていて良かった。パニ様だけでは、対処しきれない事もあるだろうからな。」
「ったく...飯も自分達で何とかしろって感じだったし、面倒くせぇ国だなここは。」
「...手伝う。」
「お前は少し寝てろ。さっきのガキを治療して、魔力を消耗しただろ。」
「怪我人が居たのか?」
「...居た。」
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「なら俺が手伝う。団長は治癒士の側に居てくれ。」
「分かった。頼んだぞ2人共。」
ジンガを連れ、グリは再びテントから立ち去って行った。
「アスール。横になるなら、そこのベッドを使うと良い。」
彼は部屋の奥を指さし、ベッドで寝るよう促した。私は彼の指示に従い、上着を脱いで薄手のタオルに包まる。
「今はそのくらいで十分だが...夜は冷えるから、しっかり布団を掛けて寝た方がい良いぞ。」
「...今暑いのに、夜寒い?」
「砂漠は寒暖差が激しい場所だ。日が沈めば、氷点下になる。」
「...ひょーてんか?」
「水が凍るような寒さの事をそう言う。要は寒いという事だ。」
これ程の暑さがそこまで寒くなるのには、一体どんな理由があるのだろう?私はふと浮かんだ疑問を彼に問いかけようとした。
しかし、ふとビオレータの顔が思い浮かび、ビエントへ帰ってから彼に聞こうと心に留めた。
「眠くないのか?」
「...無い。」
「アロマを炊くのは夜にしたいからな...。眠らなくても、目を閉じるだけで身体が休まる。話しながらでも構わないから、目を閉じろ。」
「...分かった。」
目を閉じると、先程見かけた不思議な果物が頭に浮かんだ。
「...トアコフーツ、食べた事ある?」
「何だそれは...。聞いた事がないな...。」
「...桃色でトゲトゲしてた。」
「桃色で棘...あぁ。ドラゴンフルーツか。」
「...ユオアス物知り。」
「ビオレータ程じゃない。このくらいは普通だ。」
「...美味しい?」
「まぁ、食べられない事は無いが...それ程好きでは無いな。」
甘い物好きな彼がそれ程好きでは無いと言うなら、グリが言うように甘い果物では無いらしい。
「他にはどんな物があった?」
「...ピカピカ光る板。」
「光る板...か。ガラスか?」
「...違う。黒かった。」
「もしや...ソーラーパネルの事か?」
「...それ何?」
「タナー神国は、太陽の光から電気を作り出している。光を集めて発電する、太陽光発電と言う奴だ。」
「...ふうよくと、かよくは何使う?」
「ビエント王国は、自然の風で風車を動かして発電し...一方のアリファーン帝国は、焼却施設で石炭を燃やして発電している。」
「...難しい。」
「焼却施設はともかく...風車は見た事があるだろう?民家の屋根よりも高い、塔のような構造...」
「団長!大変だ!」
テントへ戻って来たジンガは、どこか様子が変だった。私は中で待つように言われ、ユオダスだけがテントの外へ出て行く。
しばらくしてグリがやって来て、私をテントの裏手へ連れ出した。そこには、テーブルと椅子が用意されていて、彼が用意したと思われる料理が並べられている。
ガルセク王子とアウルム、パニの姿があったが...先程出て行ったジンガとユオダスの姿はどこにも見当たらなかった。
「アスールちゃん、こっちこっちー。」
パニに招かれ、隣の椅子に腰を下ろす。すると、彼は私にスプーンとフォークを差し出した。
「さっき、ジンガくんの声が聞こえたけど...何か問題が起きたの?」
「詳しくは俺も分かりません。今、ユオダスとジンガが話を聞きに行ってます。」
「俺も行けば良かったッスね...。2人に任せっきりで、何だか申し訳ないッス。」
「その為に連れて来たようなものだろう?これが奴等の仕事だ。」
王子は手馴れた様子でナイフを使い、切り分けた肉を口の中へ運ぶ。その様子を眺めていると、私の前に彼と同じ料理が運ばれて来た。
焼いた肉が中央に置かれていて、周りに様々な野菜が彩りを添えている。
しかし、肉の大きさが彼の物とは随分違っていた。大きな塊ではなく、既に一口大の大きさに切り分けられている。
「あ、ほらアスールちゃん。ドラゴンフルーツあるよー?」
「...どこ?」
「これこれ!この白いやつ。」
パニが指をさしたのは、肉の周りに置かれた白い塊だった。
「...桃色じゃない。」
「あれは皮だから食べられないよー。皮を剥いた後の、この白いのが柔らかくて美味しいの。どんな味か気になってたでしょ?食べてみて!」
「...いただきます。」
彼に急かされ、フォークで果物を突き刺した。とろりとした食感だが、甘味はほとんど感じられなかった。
「...味しない。」
「ちょっと酸味があるくらいで、ほとんど無味だよねー。ボクはキウイにちょっと似てるなーって思うけど。」
「...キーイ?」
「酸味が強い果物だよ。冬が旬の果物だから、食べられるのはまだまだ先になるかもね。」
「...果物、酸っぱい...多い。」
「酸っぱいと言えば…レモンとか、パイナップルなんかも...」
彼と果物について話をしていると、先程外へ出て行ったユオダスが帰って来た。
彼は詳しく聞いた話を、私達に説明し始める。
「つまり...ルムア様が、何者かに連れ去られたと?」
「そのようです。犯人の狙いは明らかではありませんが...恐らく、儀式を邪魔したい者による仕業でしょう。」
ジンガが慌ててユオダスの元へやって来たのは、神官のルムア様が行方不明になったという話を耳にしたからだった。彼女は私達と話をした後、儀式の準備をしていたそうだが、忽然と姿を消してしまったと言う。
「...まさかな。」
「グリ?何か思いある節があるのか?」
「いいや、確証じゃない。ただの独り言だ...気にすんな。」
グリは何か言いたげだったが、それ以上多くを語る事は無かった。
「手分けして探すしかあるまいな。俺はパニと、アウルムは青女と街の中を見て回れ。」
「了解ッス。」
「俺達はそれぞれ手分けして、街の周辺を探そう。」
「分かった。」
私はアウルムと共に再び街へ繰り出し、ルムア様を探す事になった。
彼は私の歩幅に合わせ、ゆっくりと通りを進んで行く。
「こうしてると、ローゼを探した時の事を思い出すッスねー。」
「...ルウアさまも、せんのーされてる?」
「いやいや。まだそうと決まった訳じゃないッス。彼女の場合、操るよりも...人質にした方が色々と便利そうッスからね。」
「...ひとじじ?」
「地位や権力のある人を捕まえて、金や物を要求する悪事ッス。こいつを返して欲しければ、金を用意しろー!...ってな感じで。」
「...買い物みたい。」
「まぁ...物を交換するっていう意味では...って、これは全然違うッスよ!人を売買するなんて、人間のやる事じゃないッス。」
「...人じゃないなら、魔族?」
「そうか...。盗賊か何かの仕業かと思ってたッスけど、魔族の可能性も...。」
「...魔族もお金欲しい?」
「奴等は金を持っていても、使い道がないッスから...何か、他の理由があるかもしれないッスね。だとすると...うーん…。」
身体の前で腕を組み、考え込む姿がアルトゥンにそっくりだった。
ふと...私の耳に、ルムア様の名前が聞こえて来る。
「...ルウアさま。」
「え!?どこッスか!?」
「...話してる。」
彼女の話をしていたのは、店の前で買い物をしている2人の女性だった。指をさした彼女達の元にアウルムが駆け寄り、私も後を追いかける。
「今、ルムア様の話をしてたッスか?」
「え?...え、えぇ。まぁ...。」
「突然なんですの?」
「俺達、ルムア様にお会いしたいんッスけど...どこに行ったら会えるッスかね?」
「明日は精霊祭だから、きっとお忙しいと思うわよ?先程も、儀式が行われる祭壇に向かっていらしたし...。」
「さっきって、いつの話ッスか?」
「そうねぇ...どのくらい前だったかしら?」
「私達、ここで数時間は喋ってたものねぇ。いつだったかなんて覚えてないわ。」
「そうッスか...。なら、諦めるしかなさそうッスね。ありがとうッス。」
女性達の元を離れたアウルムは、再び腕を組み始めた。
「ルムア様の場所が分かるかと思ったんッスけど...数時間も前の話となると、かなり曖昧ッスねぇ。」
「...祭壇、行ってみる?」
「他に手がかりもないし...行ってみるのもありッスね。」
「アスール。ちょっと待つッス。」
街の出入口である門をくぐろうとした時、アウルムが私の名前を呼んだ。
「...何?」
彼はこちらへ歩み寄りながら、肩から垂れ下がる赤い布を取り外した。私の前にしゃがみ込み、頭上で布を広げて首に巻き付け始める。
「これからどんどん寒くなるッスから、風邪ひかないように温かくした方がいいッスよ。」
「...アウムは?」
「俺は暑がりだから、平気ッス。マントはこうした使い方も出来るから、覚えておくと便利ッスよ。」
「...マント?」
「今首に巻いたこれッス。突然雨が降ってきた時に雨避けにしたりとか、怪我をした時に巻き...」
「治癒士!」
門をくぐり、街の外からジンガがやって来た。どうやら彼は、街の外を捜索していたらしい。
「2人は、街中を見ていたはずじゃ...。」
「散々見て回ったけど、どこにも見当たらなかったッス。住民が儀式の祭壇に向かうルムア様を見かけたって聞いて、今から行こうとしてたんッスよ。」
「祭壇へは、調理師が行きました。俺はもう少し、この辺りを見回ります。」
「了解ッス。」
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