青女と8人のシュヴァリエ

りくあ

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第4章︰迷い

第44話

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数日後。私は馬車…ではなく、ラクダと呼ばれる動物の上で揺られていた。視界一面に広がる砂の道を、ゆっくりと進んで行く。

「いつ来てもここは熱いッスねー…。アスールは大丈夫ッスか?疲れてないッス?」
「…へーき。」

私に向かって声をかけるのは、王子親衛隊護衛係のアウルムだった。今回はガルセク王子の命令で、彼も任務に同行している。

「ラクダに乗っているだけで、どうして疲れる事がある?」
「アスールちゃんは、か弱い女の子なんだから…気遣ってあげないとー。ねー?グリくん?」
「まぁ…そうですかね…?」

前を歩く彼に声をかけるパニは、いつもと変わらぬ笑顔を浮かべていた。一方グリは、どこかぎこちない笑顔を浮かべている。

「その言い方だと、俺が気遣っていないみたいだな?」
「えー?そんな事言ってないよー?」
「…アニは?」
「ボク?」
「…か弱い女の子?」
「あはは!ボクは可愛いけど、男だからねー。世話係って言っても、か弱くはないよー?」

ローゼと同じようにパニを女性だと思っていた私は、彼の一言に衝撃を受けた。

「でもこの間、仕事が忙し過ぎて廊下でぶっ倒れたッスよね?ジンガが見つけてくれたから良かったッスけど…あのままだと、風邪引いてたかもしれないッスよ?」
「あ、あの時は…!…本当にありがとうジンガくん。」
「大事にならなくて良かったです。」

私が乗っているラクダの手網を引きながら、彼は笑顔と思われる表情を浮かべた。

「ガルセク王子もお疲れではありませんか?今日は気候が良いようなので、かなり暑くなると思われますが…。」
「貴様等が休憩したいのであれば、俺はどちらでも構わん。」

王子が乗っているラクダの手網は、ユオダスが握っている。これ程多くの人数で移動するのには、やむを得ない事情があった。

「なら少し休憩しよ!丁度、腰を下ろせそうな岩もあるしー。」
「アスール。荷物の中から水筒を取ってくれ。」
「…分かった。」

ラクダを降りて砂の上に降り立つと、手に持った水筒をグリに手渡した。
この場所は、砂漠と呼ばれる乾燥地帯だ。昨日、ビオレータに本を読んでもらい、この辺りの気候について少しだけ勉強していた。
雨がほとんど降らないせいで、植物は育たず…空気も乾燥している。もちろん川や湖なども無いので、この辺りでは水が最も貴重なのだ。
私達はこの先にある、タナー神国へ向かっている。今回騎士団が同行したのは、中央都市のタナーで開かれる祭りの警備を任されたからだ。

「…祭り、何する?」
「そっか…内容まで話してなかったよねー。」
「話した所で分かるのか?」
「分からなくても良いんッスよ。まずは、色んな言葉を知る事が大事なんッスから。」
「そもそもタナー神国は、王とか皇帝とか…偉い人が国を治める訳じゃないんだー。ボクもそんなに詳しくは知らないけど、精霊からの祝福を受けた人が国を治めるんだってー。」
「それも、光の属性を宿した女…つまり、治癒魔法を扱える者に限られているとか。」
「簡単に言うと、アスールみたいな人って事ッスね。」
「…子供でもなれる?」
「何で国を治めようとしてんだよ…。素質があっても、お前みたいなガキには無理だ。」

グリは手元の水筒で、私の頭を軽く小突いた。手元に差し出されたカップを握りしめると、彼は水を注ぎ始める。

「でねー?今回ガルセク様が参加するお祭りっていうのが…タナー神国の人達が神と呼んでる天族に、感謝を伝える舞を捧げる儀式をするのー。儀式が行われている間、皆に警備をお願いしたい…って訳!」
「警備とは言え、タナー神国に兵士が居ない訳じゃない。儀式が無事に終わるまで、問題を起こすなと言う事だ。」
「…問題?」
「例えばそうッスねー…不審者に儀式を邪魔されたりとか、魔族が乱入してきて祭りどころじゃなくなったりとか、そういう事を防いで欲しいんッスよ。」
「やる事は街の警備と対して変わらない。俺達が周囲を警戒するから、お前はパニ様と一緒に儀式を見学していれば良い。」
「…分かった。」
「そろそろ休憩も十分だろう?先を急ぐぞ。」

再びラクダに揺られながら、私達はタナーを目指して歩き出した。



「わぁー…!やっぱりお祭りの期間は賑わってるね!」

砂漠の真ん中に建てられた石造りの建物は、アリファーンとはまた違った雰囲気を感じた。

「…祭り、今日じゃない?」
「儀式があるのは明日なんッスけど、今日は前夜祭で明後日は後夜祭…祭りは、3日間行われるんッス。」
「ねぇねぇアスールちゃん!一緒に街を見てまわろーよ!」
「まずは、ルムア様に会いに行くぞ。遊んでる暇は無い。」
「…誰?」
「タナー神国の神官様だ。」
「…神官?」
「今回の儀式を執り行う人物であり、ビエント王国の王と似たような存在だ。」
「…偉い人。」
「待たせたらどうなるかくらい、貴様でも分かるな?」
「…見るのは後、会いに行く先。」
「パニより青女の方が、よく分かっているようだな。」
「後で絶対行こうね!?約束だからねー!」

歩き出す王子の後を追いかけ、街の奥にある大きな建物へ向かった。
ビエントの城と大きさや造りは似ているが、大きく違っていたのは…私達を案内する人が、鎧を身にまとった兵士である事だった。私の見間違いでなければ、廊下ですれ違う兵士の全員が女性である事も不思議で仕方なかった。
建物の奥にある広い部屋へ案内されると、視線の先に煌びやかな椅子に座る女性の姿が見える。

「ようこそタナー神国へ。儀式への参加、感謝するわガルセク王子。」
「ご無沙汰しておりますルムア様。このような重要な儀式にお呼び頂き、身に余る光栄です。」

椅子を降りてこちらへ歩み寄る彼女と、笑顔をうかべる王子がどこかぎこちない挨拶を交わす。

「後ろの方々が、ビエント王国が誇る騎士達かしら?…女性も居るとは驚きね。」
「彼女は騎士ではなく、僕の付き人の1人なのです。」

彼女は私の前へと歩み寄り、その瞳が真っ直ぐ私を捉えた。私と同じ黄色の瞳、彼女もシトリンアイだった。

「あなたから…微かながら神力を感じるわ。なるほど…男ばかりが優遇される訳では無いのね。」
「他国から見れば、我が国はそのように映るかもしれませんね。特にタナー神国は、女性を強く尊重されていますから。」
「話が逸れてしまったわね。儀式の話に戻りましょう。」

それから彼女は、儀式の段取りや警備の配置について説明をし始めた。押し寄せる眠気と戦いながら話を聞き終え、私達は再び建物の外へやって来た。

「この国は本当に…頭の硬い連中ばかりだな。」
「もーガルセク様…!少しは抑えてっていつも…」

どうやら王子は、この国や神官様に対してあまり良い印象を持っていないらしい。

「わざわざ呼んでおいて、もてなすでも無く放り出すなど…ビエントじゃ考えられないぞ?」
「それがこの国のやり方なんッスから、従うしかないッスよ。招かれているとはいえ、俺達はよそ者なんッスから。」
「寝床を用意して頂いてるだけ、有難いです。」
「そうだよー。砂漠に放り出されないだけマシだと思うけどー?」
「寝床と言っても、ただ布を張っただけのテントだろう?こっちは長旅で疲れていると言うのに…。」

彼はどうやら、テントと呼ばれる場所に寝るのが嫌なのだろう。その口は止まる事なく、次から次へと愚痴がこぼれ出る。
しばらくして、大きな布が垂れ下がる建物が見え始めた。

「…これテント?」
「そうッスね。これだけ大きかったら、1つでも十分そうッスけど…2つ用意してくれるって事は、それなりに歓迎されてるんじゃないッスか?」
「大きさの問題では無い。俺が言いたいのは…」
「はいはい。それじゃあガルセク様は、テントで大人しくしててねー。アスールちゃん、ボク達は観光に行こ!」
「ちょっと待て。何故俺が留守番…」
「さっき、疲れたって言ってたッスよね?遠慮しなくていいんッスよ?ほらほら~。」
「おいアウルム…!やめろ!押し込むな!危な…」

中へ連れて行かれる彼を見送り、私達はテントを離れた。

「俺とジンガで、荷物の運搬と儀式の場所を下見してくる。グリはパニ様と一緒に街へ行って来てくれ。」
「あぁ。分かった。」
「どこから見て回るー?アスールちゃんが気になる所に行こ!」
「…あれ何?」

私は屋根のついた店らしき場所に気になるものを発見し、彼に問いかけた。

「あれは果物だね…名前は何て言ったっけー?」
「ドラゴンフルーツですね。ヴァハトゥン諸島連国で栽培されてた…と思います。」
「そーだそーだ!そんな名前だったね。」
「…甘い?」
「いや…どちらかと言うと、酸味が強かった気がするな。」
「買っていって、後で食べてみるー?」
「…食べたい。」
「なら、俺が買ってきます。少し待ってて下さい。」

桃色の棘が生えている不思議な果物を手に入れ、私達は次なる店へ向かった。

「ねーねーグリくん。この服、可愛いと思わないー?」
「は、はぁ…。可愛いとか、俺にはよく分かりません。」
「そう?アスールちゃんに似合うと思うんだけどなー。」
「…似合う?」
「ねぇ、ちょっと試着してみない?試しに着てみようよー。」
「…分かった。」

私は彼に渡された服を持って、試着室と呼ばれる部屋で着替えた。
カーテンを開けて出てきた私を見て、パニは手を叩きながら笑顔を浮かべている。

「やっぱりー!アスールちゃんは肌が白いから、赤い色が合うと思ったんだよねー!」

得意げに語る彼の側に、グリの姿が見当たらない事に気が付いた。

「…グイは?」
「グリくんなら、近くのお店で買い物して来るって言ってたよー。さっきの果物も、買い物が終わったらテントに置いてくるってー。」
「…アニは私に似合う服、何で分かる?」
「ボク、服とか帽子とかアクセサリーとか…オシャレが好きなんだー。だからかな?何となく分かるんだよねー。」
「…好きって凄い。」
「そーだね。好きな物を見るとテンション上がるし、もっと頑張ろーって気持ちになるからね!」
「…好きはどうやったら分かる?」
「どうやったら…かぁ…。うーん…そうだなぁ…。」

彼が首を傾げるのを眺めていると、外から女性の叫び声が聞こえてきた。私はその場から駆け出し、店の外へ飛び出す。

「ど、どうしたの!?」

辺りを見渡すが、倒れている人や揉めている人は見当たらない。しばらくして再び聞こえた女性の声を頼りに、大通りを走り出した。
すると、道の真ん中で倒れる子供の姿を見つけた。私が聞いた叫び声は、側に座り込む女性のものだとすぐに分かった。

「…怪我してる?」

側に駆け寄って女性に尋ねると、彼女は少年の胸元を指さした。彼は表情を歪めながら、胸元の服を強く握りしめている。

「急に倒れたと思ったら苦しみ出して…!」
「…分かった。」

少年の胸元に両手をかざし、目を閉じた。何度も魔法を使っているうちに、分かった事がある。
目を閉じるせいで怪我の治りが分からなかった私は、限界まで魔法を使い続けていた。しかしそれでは必要以上に魔力を使い、魔力切れを起こしてしまう。そこで私は、手の温度によって魔力の流れを感じ取る事を覚えたのだ。
普段は冷えている手が、魔法を使う事で温まっていく。それは、魔法の光が私の手を包み込むからだ。つまりその手が冷えていく瞬間…それが怪我の完治を意味している。
私は手が冷え始めた頃合を見計らって、ゆっくり目を開いた。少年は先程と違い、穏やかな表情で眠りについている。目に見えた外傷が無かったせいで分かりづらいが、どうやら治療は成功したようだ。

「て、天族...。」
「...天族?」
「あなたは天族の生まれ変わりだわ!」

女性は私の手を包み込み、意味の分からない言葉を口にした。

「あなた様のお名前は!?」
「...アスール。」
「アスール様!私の息子を助けて下さったお礼をさせて下さい...!是非、私の家に...」

少年をその場に残したまま、彼女は私の手を引き始めた。

「ちょ、ちょっと待って!この子はどうするの!?それに、アスールちゃんを勝手に連れて行か...」
「邪魔しないで下さい!」

制止しようとするパニを女性が突き飛ばすと、後ろによろけた彼をグリが受け止めた。彼は買い物を終えたのか、食材の入った紙袋を抱えている。

「あっ...グリくん...。」
「あんた。そいつをどこに連れて行く気だ?」
「あなた誰?私の邪魔をするなら、神が許さないわよ?」
「生憎俺は神なんてもの...信じてねぇよ。」

彼は女性の腕を掴むと、私達を引き剥がした。彼女の手を逃れた私は、パニの元へ駆け寄る。

「天罰が怖くないの?」
「罰ならもう受けてる。これ以上増えた所で、対して変わらねぇだけだ。」
「そう...。なら、私の邪魔をした罰...震えて待つといいわ。」

女性は少年を抱きかかえ、私達の元を去って行った。
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