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第5章︰帰る場所
第51話
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「アスール!買い出しに行くよー!」
下の階から、アリルの声が響き渡る。
アルトゥンの家で暮らすようになってから数日が経ち、私はすっかり家族の一員となっていた。
「いらっしゃいアスールちゃん。今日は何を買いに来たのかなー?」
「...トアト。」
「はいはいトマトねー。幾つ欲しいのー?」
「...5つ。」
「もうあたしが一緒に来なくても、1人で買い出し出来ちまいそうだねぇ!」
「ほんと偉いわー。アリルさん家じゃなくて、うちに来ないー?毎日美味しいお野菜が食べ放題よー?」
「ちょっとちょっとー!勝手にアスールをあんたん家の子にしないでおくれ!」
アリルに腕を引かれ、彼女の柔らかさに全身が包まれた。彼女は甘く優しい匂いではなく、温かいご飯の様な匂いがする。
「...アイルのご飯、食べ放題が良い。」
「アスール...。」
「あらあら。既に胃袋を掴まれちゃってるなら、私に勝ち目は無いわねー。」
「...胃袋掴む?」
私はお腹の服を掴み、彼女に問いかけた。
「ははは!手で掴むんじゃなくて、料理で心を掴むって事さ。」
「あ、そういえば...最近、ヴァハトゥンで流行病が流行してるそうだけど、本当なのー?」
「どうやらそうらしいねぇ。うちの客も話してたよ。」
「怖いわねぇー。ビエントまで来ないといいけど...。」
「大丈夫大丈夫!こんな所にまで来やしないよ!そんじゃ、また来るよ。」
買い物を済ませ、店を離れる彼女に私は疑問を投げかけた。
「...はりやまいって何?」
「人から人に伝染る病気の事さ。風邪も流行病みたいなもんだよ。」
「...風邪怖い?」
「風邪くらいなら、薬を飲んで寝てればそのうち治るけど...流行病ってのは、薬が効きやしないのさ。下手すりゃ死ぬ事だってある。」
「...はりやまい怖い。」
「ヴァハトゥンは海の向こうの遠い所だから、心配いらないよ。もし来たとしても、あたしが守ってやるからね。」
彼女の言葉は、いつも真っ直ぐで力強い。顔や容姿はアルトゥンと似てはいないが、言葉の素直さや力強さが彼にそっくりだと思った。
「あっ...!」
大通りを歩いていると、前方から私に向けられた視線を感じた。視線の先に、騎士の制服に身を包んだユオダスとローゼの姿が見える。
「おや。騎士様じゃないかい。」
「お久しぶりです。お変わりありませんか?」
アリルが彼等に声をかけると、ユオダスが丁寧な口調で言葉を返した。
「あぁ。この通り元気さ。うちの息子が迷惑かけてすまないねぇ。」
「とんでもありません。彼が居なくて、我々の方が困っているくらいです。」
「ははは!団長様は冗談が上手いねぇ!」
「すみません。我々は見回りがあるので、これで失礼します。」
彼は軽く会釈をすると、私の事など気にも止めずに立ち去って行った。
「え、あ...ちょっ...待ってよユオダスさん...!し、失礼します!」
ローゼも軽く会釈をし、慌てて彼の元へ駆け出す。彼は私とのすれ違いざまに、一瞬だけこちらへ視線を向けたような気がした。
「騎士様ってのは、あぁも冷たいもんのかい?アスールだって、ついこの間まで一緒に暮らしてたはずなのにさ。」
彼女はため息をつきながら腕を伸ばし、私の頭を撫で始めた。
「もう、あたし等が家族になっちまおうか?そしたら毎日美味しい飯を作ってやれるし、賑やかだから楽しいはずさ。」
「...アルトも言ってた。同じ事。」
「そうなのかい?ははは!流石、あたしの自慢の息子だ。」
彼女と手を繋ぎ、再び大通りを歩き出す。大きく温かい手に包まれ、私は温かい気持ちになった。
「アスールー。そっちはどうやー?」
アリルとの買い出しから戻った私は、店の掃除を手伝い始めた。アイリスと共に箒で床を掃き、テーブルや椅子に濡らした布を擦り付けていく。
「...終わった。」
「今日も手伝ってくれておおきに!これはお礼の飴ちゃんや!」
彼女はエプロンのポケットからお菓子の包みを取り出し、私に差し出した。
「...ありがとう。」
「こんなんお安い御用やでー。うち、アスールが手伝ってくれる様になって、毎日の掃除が楽しくなったんや!」
「...楽しい?」
「せやでー。前まではな?掃除なんて面倒いわーって思っとったけど...。一生懸命綺麗にしようとするアスールを見とったら、うちも頑張らな!って思える様になったんよ。それで気が付いたんや...掃除って、こんなに楽しいんやーって!」
「...楽しい、分からない。」
私には、掃除という行為が面倒だとは思わないが楽しいとも思えない。ただ彼女の真似をして、箒や雑巾を使う事しか考えていなかった。
「分からへん事は、これから知っていけばええんよ。むしろ、羨ましいくらいやわぁ~。」
「...何で?」
「楽しいかどうか分からへんかったら、うちみたいに、今までは楽しく無かった事も楽しいって思えるかもしれへんやろ?」
今までは、分からない事を知りたいと思い、失った家族を必死に見つけようとしていた。
そんな私にかけられた彼女の言葉は、私にとって意外な一言だった。
「あれー?どうしたんアレリ。うちらに何か用?」
「その...アスールに、ちょっと手伝って欲しい事があるんだけど...。」
「後はうちが片付けとくから、行ってき!」
「...分かった。」
アレリヴェに呼ばれ、私は奥の調理場へ向かった。部屋の中は美味しい匂いが充満し、奥のテーブルでアリルが料理をしている姿が見える。
「新メニューを考えてみたんだけど、味見してくれない?」
「...新メニー?」
「これ、僕が新しく考えた料理なんだ。食べて感想を聞かせてくれない...?」
彼の前に置かれていたのは、こんがりと焼かれた鶏の肉だった。茶色のソースがかかっていて、周りに色とりどりの野菜が添えられている。
私は彼に渡されたフォークを使い、切り分けられた1切れの肉を口へ運んでみる。
「...美味しい。」
「それ以外の感想は...?」
「...美味しいだけじゃダメ?」
「なんかこう...物足りないような気がするんだよね。味に深みが無いと言うか…。」
彼の料理を見て、私はタナー神国で食べたグリの料理を思い出した。彼も似たような肉料理を作っていたが、ソースはもっと甘かったような気がする。しかしそれは砂糖の甘味ではなく、花の香りが微かに感じられる甘味だった。
「...はちいつ。」
「え?もしかして...蜂蜜の事?」
「...ソース甘いと良いかも。」
「蜂蜜かぁ...。ありがとうアスール!もう一度、作り直してみる!」
彼は木製のボウルをテーブルに置き、調味料の入った瓶を手に取る。再び料理を始めた彼に、私は気になった事を問いかけた。
「...何で?」
「え、何が...?」
「...何で私に聞いた?」
「ほら...僕達だと、母ちゃんの料理を食べ慣れてるでしょ?アスールもそれなりに食べただろうけど...僕達とは違う味の感じ方が出来るかなって思って...。」
少し前、彼はアリルのような料理人になりたいと話していた。それなら尚更、彼女に聞いた方が良かったのではないか...という、新たな疑問が頭に浮かぶ。
「...アイルと同じはダメ?」
「ダメって事は無いけど...。これは僕の料理だから、僕らしい味を見つけたいんだ。って...アスールの意見を取り入れてる時点で、僕らしいかは怪しいけどね...あはは...。」
真似をするだけでなく、自分や他人の考えを取り入れる事も時には大切なのかもしれない。静かに笑う彼を見て、私はそう思った。
「アスールー!お客さんやでー!」
遠くの方からアイリスの声が聞こえ、私は再び店の方へ戻った。
すると、店の出入口に背の高い茶髪の青年が立っていた。彼はいつも着ている騎士の制服では無く、淡い色合いの服を着ている。
「あ、アスールくん...!」
私に気付いたルスケアは、こちらに向かって手を振った。先程のユオダスやローゼと全く違う反応に、少々驚きつつ歩み寄る。
「良かった...元気そうで。」
「...何しに来た?」
「これを渡しに来たんだ。」
彼は手に持っていた紙袋から、アロマを1つ取り出した。ほんのり匂う甘い香りが、シュヴァリエメゾンで過ごしていた日々を思い出させる。
「もっと早く持って来れたら良かったんだけど...忙しくて中々来られなかったんだ。」
「...仕事、忙しい?」
「うん...。アルトゥンくんが居ない分、私達が頑張らないといけないからね。」
話をしている私達の元に、調理場に居たアリルがやって来た。彼女は腕に抱えたお盆からコップを掴み、テーブルの上に並べていく。
「店が開くまで時間あるし、良かったら座って茶でも飲んで行きな。」
「あ、ありがとうございます!じゃあ...お言葉に甘えて。」
彼は近くの椅子に腰を下ろし、コップのお茶を1口含んだ。
「皆、心配してるよ。アスールくんの事。」
「...そうなの?」
「口には出さないけど、見たら分かるよ。特にユオダスさんは、団長っていう立場だから...ガルセク王子に逆らえないしね。」
「...おーじさまは元気?」
「あー…うん。しばらく会ってないから分からないけど...多分元気だと思うよ。」
「...城居ない?」
「別の国へ行ってるって聞いたよ。どこへ行ったかまでは知らないけど...。」
「...他のみんなは?」
「あ、えーと...。元気と言えば元気だけど...元気じゃないね。」
「...どっち?」
「怪我とか病気はしてないけど、気分が落ち込んでる...って感じかな。特にヴィーズ様は、ショックが大きかったみたい...。2、3日寝込んじゃったんだ。」
「...心配だから?」
「私にはそう見えたよ。アスールくんがいつでも戻って来られるように、部屋を綺麗にしておくからね。」
「...ありがとう。」
「じゃあ...そろそろ帰るよ。あんまり長居すると怒られちゃうかもしれないから。」
そして彼は、アロマの入った紙袋をテーブルに残し、店から出て行った。
下の階から、アリルの声が響き渡る。
アルトゥンの家で暮らすようになってから数日が経ち、私はすっかり家族の一員となっていた。
「いらっしゃいアスールちゃん。今日は何を買いに来たのかなー?」
「...トアト。」
「はいはいトマトねー。幾つ欲しいのー?」
「...5つ。」
「もうあたしが一緒に来なくても、1人で買い出し出来ちまいそうだねぇ!」
「ほんと偉いわー。アリルさん家じゃなくて、うちに来ないー?毎日美味しいお野菜が食べ放題よー?」
「ちょっとちょっとー!勝手にアスールをあんたん家の子にしないでおくれ!」
アリルに腕を引かれ、彼女の柔らかさに全身が包まれた。彼女は甘く優しい匂いではなく、温かいご飯の様な匂いがする。
「...アイルのご飯、食べ放題が良い。」
「アスール...。」
「あらあら。既に胃袋を掴まれちゃってるなら、私に勝ち目は無いわねー。」
「...胃袋掴む?」
私はお腹の服を掴み、彼女に問いかけた。
「ははは!手で掴むんじゃなくて、料理で心を掴むって事さ。」
「あ、そういえば...最近、ヴァハトゥンで流行病が流行してるそうだけど、本当なのー?」
「どうやらそうらしいねぇ。うちの客も話してたよ。」
「怖いわねぇー。ビエントまで来ないといいけど...。」
「大丈夫大丈夫!こんな所にまで来やしないよ!そんじゃ、また来るよ。」
買い物を済ませ、店を離れる彼女に私は疑問を投げかけた。
「...はりやまいって何?」
「人から人に伝染る病気の事さ。風邪も流行病みたいなもんだよ。」
「...風邪怖い?」
「風邪くらいなら、薬を飲んで寝てればそのうち治るけど...流行病ってのは、薬が効きやしないのさ。下手すりゃ死ぬ事だってある。」
「...はりやまい怖い。」
「ヴァハトゥンは海の向こうの遠い所だから、心配いらないよ。もし来たとしても、あたしが守ってやるからね。」
彼女の言葉は、いつも真っ直ぐで力強い。顔や容姿はアルトゥンと似てはいないが、言葉の素直さや力強さが彼にそっくりだと思った。
「あっ...!」
大通りを歩いていると、前方から私に向けられた視線を感じた。視線の先に、騎士の制服に身を包んだユオダスとローゼの姿が見える。
「おや。騎士様じゃないかい。」
「お久しぶりです。お変わりありませんか?」
アリルが彼等に声をかけると、ユオダスが丁寧な口調で言葉を返した。
「あぁ。この通り元気さ。うちの息子が迷惑かけてすまないねぇ。」
「とんでもありません。彼が居なくて、我々の方が困っているくらいです。」
「ははは!団長様は冗談が上手いねぇ!」
「すみません。我々は見回りがあるので、これで失礼します。」
彼は軽く会釈をすると、私の事など気にも止めずに立ち去って行った。
「え、あ...ちょっ...待ってよユオダスさん...!し、失礼します!」
ローゼも軽く会釈をし、慌てて彼の元へ駆け出す。彼は私とのすれ違いざまに、一瞬だけこちらへ視線を向けたような気がした。
「騎士様ってのは、あぁも冷たいもんのかい?アスールだって、ついこの間まで一緒に暮らしてたはずなのにさ。」
彼女はため息をつきながら腕を伸ばし、私の頭を撫で始めた。
「もう、あたし等が家族になっちまおうか?そしたら毎日美味しい飯を作ってやれるし、賑やかだから楽しいはずさ。」
「...アルトも言ってた。同じ事。」
「そうなのかい?ははは!流石、あたしの自慢の息子だ。」
彼女と手を繋ぎ、再び大通りを歩き出す。大きく温かい手に包まれ、私は温かい気持ちになった。
「アスールー。そっちはどうやー?」
アリルとの買い出しから戻った私は、店の掃除を手伝い始めた。アイリスと共に箒で床を掃き、テーブルや椅子に濡らした布を擦り付けていく。
「...終わった。」
「今日も手伝ってくれておおきに!これはお礼の飴ちゃんや!」
彼女はエプロンのポケットからお菓子の包みを取り出し、私に差し出した。
「...ありがとう。」
「こんなんお安い御用やでー。うち、アスールが手伝ってくれる様になって、毎日の掃除が楽しくなったんや!」
「...楽しい?」
「せやでー。前まではな?掃除なんて面倒いわーって思っとったけど...。一生懸命綺麗にしようとするアスールを見とったら、うちも頑張らな!って思える様になったんよ。それで気が付いたんや...掃除って、こんなに楽しいんやーって!」
「...楽しい、分からない。」
私には、掃除という行為が面倒だとは思わないが楽しいとも思えない。ただ彼女の真似をして、箒や雑巾を使う事しか考えていなかった。
「分からへん事は、これから知っていけばええんよ。むしろ、羨ましいくらいやわぁ~。」
「...何で?」
「楽しいかどうか分からへんかったら、うちみたいに、今までは楽しく無かった事も楽しいって思えるかもしれへんやろ?」
今までは、分からない事を知りたいと思い、失った家族を必死に見つけようとしていた。
そんな私にかけられた彼女の言葉は、私にとって意外な一言だった。
「あれー?どうしたんアレリ。うちらに何か用?」
「その...アスールに、ちょっと手伝って欲しい事があるんだけど...。」
「後はうちが片付けとくから、行ってき!」
「...分かった。」
アレリヴェに呼ばれ、私は奥の調理場へ向かった。部屋の中は美味しい匂いが充満し、奥のテーブルでアリルが料理をしている姿が見える。
「新メニューを考えてみたんだけど、味見してくれない?」
「...新メニー?」
「これ、僕が新しく考えた料理なんだ。食べて感想を聞かせてくれない...?」
彼の前に置かれていたのは、こんがりと焼かれた鶏の肉だった。茶色のソースがかかっていて、周りに色とりどりの野菜が添えられている。
私は彼に渡されたフォークを使い、切り分けられた1切れの肉を口へ運んでみる。
「...美味しい。」
「それ以外の感想は...?」
「...美味しいだけじゃダメ?」
「なんかこう...物足りないような気がするんだよね。味に深みが無いと言うか…。」
彼の料理を見て、私はタナー神国で食べたグリの料理を思い出した。彼も似たような肉料理を作っていたが、ソースはもっと甘かったような気がする。しかしそれは砂糖の甘味ではなく、花の香りが微かに感じられる甘味だった。
「...はちいつ。」
「え?もしかして...蜂蜜の事?」
「...ソース甘いと良いかも。」
「蜂蜜かぁ...。ありがとうアスール!もう一度、作り直してみる!」
彼は木製のボウルをテーブルに置き、調味料の入った瓶を手に取る。再び料理を始めた彼に、私は気になった事を問いかけた。
「...何で?」
「え、何が...?」
「...何で私に聞いた?」
「ほら...僕達だと、母ちゃんの料理を食べ慣れてるでしょ?アスールもそれなりに食べただろうけど...僕達とは違う味の感じ方が出来るかなって思って...。」
少し前、彼はアリルのような料理人になりたいと話していた。それなら尚更、彼女に聞いた方が良かったのではないか...という、新たな疑問が頭に浮かぶ。
「...アイルと同じはダメ?」
「ダメって事は無いけど...。これは僕の料理だから、僕らしい味を見つけたいんだ。って...アスールの意見を取り入れてる時点で、僕らしいかは怪しいけどね...あはは...。」
真似をするだけでなく、自分や他人の考えを取り入れる事も時には大切なのかもしれない。静かに笑う彼を見て、私はそう思った。
「アスールー!お客さんやでー!」
遠くの方からアイリスの声が聞こえ、私は再び店の方へ戻った。
すると、店の出入口に背の高い茶髪の青年が立っていた。彼はいつも着ている騎士の制服では無く、淡い色合いの服を着ている。
「あ、アスールくん...!」
私に気付いたルスケアは、こちらに向かって手を振った。先程のユオダスやローゼと全く違う反応に、少々驚きつつ歩み寄る。
「良かった...元気そうで。」
「...何しに来た?」
「これを渡しに来たんだ。」
彼は手に持っていた紙袋から、アロマを1つ取り出した。ほんのり匂う甘い香りが、シュヴァリエメゾンで過ごしていた日々を思い出させる。
「もっと早く持って来れたら良かったんだけど...忙しくて中々来られなかったんだ。」
「...仕事、忙しい?」
「うん...。アルトゥンくんが居ない分、私達が頑張らないといけないからね。」
話をしている私達の元に、調理場に居たアリルがやって来た。彼女は腕に抱えたお盆からコップを掴み、テーブルの上に並べていく。
「店が開くまで時間あるし、良かったら座って茶でも飲んで行きな。」
「あ、ありがとうございます!じゃあ...お言葉に甘えて。」
彼は近くの椅子に腰を下ろし、コップのお茶を1口含んだ。
「皆、心配してるよ。アスールくんの事。」
「...そうなの?」
「口には出さないけど、見たら分かるよ。特にユオダスさんは、団長っていう立場だから...ガルセク王子に逆らえないしね。」
「...おーじさまは元気?」
「あー…うん。しばらく会ってないから分からないけど...多分元気だと思うよ。」
「...城居ない?」
「別の国へ行ってるって聞いたよ。どこへ行ったかまでは知らないけど...。」
「...他のみんなは?」
「あ、えーと...。元気と言えば元気だけど...元気じゃないね。」
「...どっち?」
「怪我とか病気はしてないけど、気分が落ち込んでる...って感じかな。特にヴィーズ様は、ショックが大きかったみたい...。2、3日寝込んじゃったんだ。」
「...心配だから?」
「私にはそう見えたよ。アスールくんがいつでも戻って来られるように、部屋を綺麗にしておくからね。」
「...ありがとう。」
「じゃあ...そろそろ帰るよ。あんまり長居すると怒られちゃうかもしれないから。」
そして彼は、アロマの入った紙袋をテーブルに残し、店から出て行った。
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