65 / 88
第6章︰家族
第64話
しおりを挟む
目的の宿屋へ辿り着き、私達は荷物を置いてベッドや椅子に腰を下ろした。役所へ行っていたグリとアルトゥンが合流したのは、外が暗くなり始めた頃の事だった。
「2人共おかえりー。随分遅かったけど...やっぱり大変だったー?」
「時間がかかったのは役所ではなく、変じ...あ、いえ…。祈祷師と名乗る男に、呼び止められたんです。」
「祈祷師って...霊とかを除霊する人の事だよねー?その人が、グリくん達に何の用で?」
「実はこの辺で、夜な夜な徘徊する霊の姿が目撃されてるらしいんです。んで...周りの住民からどうにかしてくれへんかって、その祈祷師に要望が来てるそうで...。」
「ま、まさかとは思うけど、それを僕達に手伝えって言ってるんじゃ...。」
「そのまさかだ。丁度役所に居た所を見られて、俺達ならと思ったらしい。」
「ぼ、僕は無理だよ!?霊とかそう言う類のものは、専門外だから!」
お化けや霊が苦手なローゼは、手と顔を大きく振りながら、身振り手振りで拒絶を示した。
「そんなん言うたら、俺等だって同じやと思うけど...。」
「ローゼはともかく、パニ様とアスールはここで待っていて下さい。これから祈祷師の所に行って、墓地の調査へ向かいます。」
「...私も行く。」「僕は行かない!」
共に調査へ向かいたい私と、絶対に向かいたく無いローゼの真逆の言葉が重なり合う。
「アスール。お前は行った所で、何も出来ないだろ。ローゼ。てめぇは来い。」
「来いって何!?行かないって言ってるのに!」
「うるせぇなぁ。ごちゃごちゃ言ってねぇで着いてくりゃあ良いんだよ。」
「嫌だってば!絶対に行かないからね!」
2人の口論を見兼ねたパニが、彼等の側へゆっくり歩み寄る。
「ねぇグリくん。苦手な事を強要するのは良くないよ。ローゼくんにはここに残ってもらって、アスールちゃんとボクが代わりに行くのはどうかなー?」
「え?いや...でも...。」
「ボク達は、光魔法で道を照らすくらいは出来るし...霊は光に弱いって聞くでしょ?そこそこ役に立てると思うんだけどなぁ。」
「役立たずだと言いたい訳ではなく...これは、俺とアルトゥンが引き受けた厄介事です。それにパニ様を巻き込みたくないんです。」
「それを言うなら、ボクだってガルセク様のお使いに皆を巻き込んでるんだよ?せっかく一緒に来たんだから、ボクにも何か手伝わせて欲しいなー。」
「...分かりました。パニ様がそこまで言って下さるなら...そうしましょう。」
「アルトゥンくんもそれで良い?」
「俺は構いませんけど...それやったら、ローゼが1人で留守番する事になるんよね?」
「えっ...?」
「確かにそうだな。この辺りで霊が徘徊するなら、宿屋に現れる可能性...」
「ぼ、僕も行くよ!パニ様が行くのに、僕だけ待つなんて出来ない...でしょ?」
こうして、祈祷師とやらの頼みで近くにある墓地を調査する事になった。
「ね、ねぇ...。街で見かける霊を、何で墓地まで探しに来る必要があるの...?」
隣を歩くローゼは私の手を握りながら、後から着いてくるグリに疑問を投げかける。
「祈祷師の話では、霊の発生源はここしか有り得ないって言ってた。...そいつの話が嘘じゃ無ければな。」
街の外なので周囲に建物の明かりや街灯は無く、足元がかなり見えづらい。前方を歩くパニとアルトゥンが、魔法の力で周囲を照らしながら慎重に奥へ進んで行く。
細長い石が規則正しく並べられているこの場所を、人々は墓地と呼ぶらしい。
「う、嘘だったら無駄足じゃん...!」
「けど...嘘つく必要はあらへんやろ?いつまでも解決せーへんかったら、困るのは俺等やなくて祈祷師の方なんやから。」
「で...その祈祷師くんは、先に来てるんだよね?今の所、姿が見えないけ...」
「墓地に集いしナイトさん!ミーをお探しですか!?」
「うわぁぁぁー!?」
後方から男性の声が聞こえ、ローゼは叫びながら私の背後に身を隠した。私達の元へやって来たのは、白いローブに身を包んだ1人の青年だった。
「驚かせてしまってソーリー!ユー達が、ナイトのチームですか?」
「...ソーリー?」
「おやおや?ユーのような、キッズが居るとは思わなかったですね!ユーもナイトなのですか?」
「...ナイト?」
彼の言葉は独特で、話の内容が全く頭に入って来ない。騎士達もどう返事を返すべきか分からず、困惑した表情を浮かべていた。
「彼女は騎士じゃないよ?でも、ボク達と一緒にここを調査しに来たんだー。彼女の魔法は頼りになるから、心配要らないよ。」
「オーケーオーケー!それじゃあ、一緒にゴーストバスターしちゃいましょう!」
「パニ様...この人の言葉、分かるんですか?」
「ヴァハトゥンに似たような言語で喋る人達が居たから、何となく分かるよ。」
「俺もグリも役所で会った時は、言葉がさっぱり分からんくて困っとったんですよー。パニ様が来て下さって、ほんまに助かりましたわ!」
「ミーのネームはトム。よろしくでーす!」
「よ、よう分からへんけど...よろしゅうな!」
「この人...本当に祈祷師なのかな...?」
トムと名乗る青年と共に、私達は墓地の敷地内を歩き回る事にした。
「ねぇトムさん。霊が出るようになったのは、どのくらい前からなの?」
「ツーウィーク...くらいでしょうか?」
「...ツーイーク?」
「2週間前だってー。」
「随分前だな...。それまでずっと放っておいたのか?」
「ミーに話が来たのは、イエスタデイなのでーす。」
「イエス…タデイ...?」
「昨日聞いたばっかりって事だねー。じゃあ...ここへ調査に来たのは、今日が初めて?」
「イエス!ですが、この墓地がゴーストの発生源である事はミーがつきとめました!」
「じゃあ、実際に霊が居るのを見た訳じゃないんだねー。」
強ばっていたローゼの表情が、ほんの少し緩んだ様に見えた。かすかに感じていた手の震えも無くなったように感じる。
「おい。何でホッとしてんだよ。霊を見つけない事には、どうしようもねぇだろうが。」
「トムさんは、霊の姿が見えるんですよね?」
「ノー!見えませーん!」
「え?」
彼の一言に、前を歩いていたアルトゥンとパニが歩みを止めた。
「う、嘘やろ!?そしたら、どうやって調査したらええんよ!」
「それじゃあ…どうしてここが霊の発生源だって分かったの?」
「ゴーストのハウスと言えば、墓地!そうに決まってまーす!」
私達の歩みは完全に止まり、沈黙が流れる。
「なぁ…今、俺達が歩いてた意味ってあったのか?」
「意味…無いかも…?」
「ノーノー!意味ありまーす!ミーは、ゴーストを見る事は出来ないですが…ボディに宿す事が出来るのでーす。」
「身体に宿すって…霊に取り憑かれるって事…?」
「おいおい。あんたが取り憑かれちまったら、誰が除霊するんだ?」
「ユー達です!」
トムは前方を歩くアルトゥンとパニの方を指さし、得意げな表情を浮かべた。どうやら彼等に、やって欲しい事があるらしい。
「お、俺とパニ様?でも俺…除霊なんて、した事あらへんよ?」
「やり方は、とってもイージーです!霊を宿したミーに、強い光を浴びせて下さーい。そうする事でゴーストをバスター出来まーす!」
「なるほど…!トムさんが身体の中に霊を吸収して、ボク達が浄化すれば良いんだね。」
「イエス!こうして墓地をウォークしていれば、いずれゴーストの方から来てくれるでしょう。」
「そういう事なら、もう少し歩く必要がありそうだな。」
「えぇー!まだ歩くの!?」
「仕方ねぇだろ。どう見てもこいつに霊が宿ってるとは思えねぇからな。」
彼等はトムの話を理解しているようだが、私にはどうしたらいいか分からなかった。
「トムさんトムさん。霊ってやっぱり、夜じゃないと姿を現さないものなの?」
「オフコース!ゴーストは光に弱いですから、日没から日の出までの時間しか現れませーん。」
「となると…霊が見つかるまで、この辺を歩き回らなあかんって事?」
「俺等は構わねぇけど、こいつに徹夜はキツイだろ。」
グリの発言で、彼等の視線が私に集まる。
「…徹夜?」
「夜になっても寝ないで、朝まで起きてるって事。子供のアスールには大変だろうって、みんなが心配してるんだ。」
「…徹夜、へーき。」
「流石に無理はさせられないよー。ボクとローゼくんでここに残るから、アルトゥンくんとグリくんは先に宿屋に戻ってて。」
「え、でもパニ様…。」
「さっきは、2人が率先して役所に運んでくれたでしょ?だから、ここから先はボク達に任せて。」
「…だとよローゼ。てめぇは良いのか?」
「よ、良くは無いけど…。パニ様1人に任せる訳にもいかないし…。」
するとパニはローゼの手を握り、胸の辺りへ持ち上げた。
「ずっと一緒に居るから大丈夫!ね?ローゼくん。」
「え?あ…は、はい…。」
「むしろ、俺等は邪魔になりそうやね…。」
「では、よろしくお願いします。…アスール。お前も帰るぞ。」
「…分かった。」
宿屋へ戻って来た私達は普段着に着替え、1階にある食堂で食事をする事にした。受付の女性に料理を頼むと、しばらくしてテーブルの上に人数分の料理が並べられた。
「ん?餃子なんて、メニューにあったか?」
「…さっきパニが買った。アルトとグイにお礼って。」
「え、そうなん?餃子なんて久しぶりや~!あ、アスールは食べるの初めてなんちゃう?」
「…初めて。」
「熱いだろうから、気を付けて食べろよ?」
「…分かった。」
フォークを使って餃子を口に運ぶと、中から肉の油が溢れ出した。シャキシャキとした野菜の食感と、モチモチとした食感が口の中に広がる。
「どや?美味しいか?」
「…美味しい。」
「その割には反応薄くねぇか?」
「そうかぁ…?いつもこんなもんやと思うけどなぁ。」
「…グイのご飯の方が美味しい。」
「は…?」
驚いた表情を浮かべ、彼の食事の手が止まった。聞こえなかったのだろうと思い、私は再び口を開く。
「…グイのごは…」
「聞こえなかったんじゃねぇよ!…冗談かと思っただけだ。」
「ほんまか?実は照れ…」
「てめぇは黙って飯を食え。」
「別にええやん!褒められたら、嬉しいに決まっとるもんなぁ?」
「うるせぇ!そんなんじゃねぇよ…!」
グリはその場から立ち上がり、手に持ったフォークをテーブルに叩きつけるように置いた。
「え?もう食べへんの?」
「パニ様の所へ行ってくる。向こうは何も食べてねぇだろ?適当にその辺で買って届けてくるから、お前等は先に寝てろ。」
彼は食事を途中で切り上げ、足早に私達の元を去って行ってしまった。
「2人共おかえりー。随分遅かったけど...やっぱり大変だったー?」
「時間がかかったのは役所ではなく、変じ...あ、いえ…。祈祷師と名乗る男に、呼び止められたんです。」
「祈祷師って...霊とかを除霊する人の事だよねー?その人が、グリくん達に何の用で?」
「実はこの辺で、夜な夜な徘徊する霊の姿が目撃されてるらしいんです。んで...周りの住民からどうにかしてくれへんかって、その祈祷師に要望が来てるそうで...。」
「ま、まさかとは思うけど、それを僕達に手伝えって言ってるんじゃ...。」
「そのまさかだ。丁度役所に居た所を見られて、俺達ならと思ったらしい。」
「ぼ、僕は無理だよ!?霊とかそう言う類のものは、専門外だから!」
お化けや霊が苦手なローゼは、手と顔を大きく振りながら、身振り手振りで拒絶を示した。
「そんなん言うたら、俺等だって同じやと思うけど...。」
「ローゼはともかく、パニ様とアスールはここで待っていて下さい。これから祈祷師の所に行って、墓地の調査へ向かいます。」
「...私も行く。」「僕は行かない!」
共に調査へ向かいたい私と、絶対に向かいたく無いローゼの真逆の言葉が重なり合う。
「アスール。お前は行った所で、何も出来ないだろ。ローゼ。てめぇは来い。」
「来いって何!?行かないって言ってるのに!」
「うるせぇなぁ。ごちゃごちゃ言ってねぇで着いてくりゃあ良いんだよ。」
「嫌だってば!絶対に行かないからね!」
2人の口論を見兼ねたパニが、彼等の側へゆっくり歩み寄る。
「ねぇグリくん。苦手な事を強要するのは良くないよ。ローゼくんにはここに残ってもらって、アスールちゃんとボクが代わりに行くのはどうかなー?」
「え?いや...でも...。」
「ボク達は、光魔法で道を照らすくらいは出来るし...霊は光に弱いって聞くでしょ?そこそこ役に立てると思うんだけどなぁ。」
「役立たずだと言いたい訳ではなく...これは、俺とアルトゥンが引き受けた厄介事です。それにパニ様を巻き込みたくないんです。」
「それを言うなら、ボクだってガルセク様のお使いに皆を巻き込んでるんだよ?せっかく一緒に来たんだから、ボクにも何か手伝わせて欲しいなー。」
「...分かりました。パニ様がそこまで言って下さるなら...そうしましょう。」
「アルトゥンくんもそれで良い?」
「俺は構いませんけど...それやったら、ローゼが1人で留守番する事になるんよね?」
「えっ...?」
「確かにそうだな。この辺りで霊が徘徊するなら、宿屋に現れる可能性...」
「ぼ、僕も行くよ!パニ様が行くのに、僕だけ待つなんて出来ない...でしょ?」
こうして、祈祷師とやらの頼みで近くにある墓地を調査する事になった。
「ね、ねぇ...。街で見かける霊を、何で墓地まで探しに来る必要があるの...?」
隣を歩くローゼは私の手を握りながら、後から着いてくるグリに疑問を投げかける。
「祈祷師の話では、霊の発生源はここしか有り得ないって言ってた。...そいつの話が嘘じゃ無ければな。」
街の外なので周囲に建物の明かりや街灯は無く、足元がかなり見えづらい。前方を歩くパニとアルトゥンが、魔法の力で周囲を照らしながら慎重に奥へ進んで行く。
細長い石が規則正しく並べられているこの場所を、人々は墓地と呼ぶらしい。
「う、嘘だったら無駄足じゃん...!」
「けど...嘘つく必要はあらへんやろ?いつまでも解決せーへんかったら、困るのは俺等やなくて祈祷師の方なんやから。」
「で...その祈祷師くんは、先に来てるんだよね?今の所、姿が見えないけ...」
「墓地に集いしナイトさん!ミーをお探しですか!?」
「うわぁぁぁー!?」
後方から男性の声が聞こえ、ローゼは叫びながら私の背後に身を隠した。私達の元へやって来たのは、白いローブに身を包んだ1人の青年だった。
「驚かせてしまってソーリー!ユー達が、ナイトのチームですか?」
「...ソーリー?」
「おやおや?ユーのような、キッズが居るとは思わなかったですね!ユーもナイトなのですか?」
「...ナイト?」
彼の言葉は独特で、話の内容が全く頭に入って来ない。騎士達もどう返事を返すべきか分からず、困惑した表情を浮かべていた。
「彼女は騎士じゃないよ?でも、ボク達と一緒にここを調査しに来たんだー。彼女の魔法は頼りになるから、心配要らないよ。」
「オーケーオーケー!それじゃあ、一緒にゴーストバスターしちゃいましょう!」
「パニ様...この人の言葉、分かるんですか?」
「ヴァハトゥンに似たような言語で喋る人達が居たから、何となく分かるよ。」
「俺もグリも役所で会った時は、言葉がさっぱり分からんくて困っとったんですよー。パニ様が来て下さって、ほんまに助かりましたわ!」
「ミーのネームはトム。よろしくでーす!」
「よ、よう分からへんけど...よろしゅうな!」
「この人...本当に祈祷師なのかな...?」
トムと名乗る青年と共に、私達は墓地の敷地内を歩き回る事にした。
「ねぇトムさん。霊が出るようになったのは、どのくらい前からなの?」
「ツーウィーク...くらいでしょうか?」
「...ツーイーク?」
「2週間前だってー。」
「随分前だな...。それまでずっと放っておいたのか?」
「ミーに話が来たのは、イエスタデイなのでーす。」
「イエス…タデイ...?」
「昨日聞いたばっかりって事だねー。じゃあ...ここへ調査に来たのは、今日が初めて?」
「イエス!ですが、この墓地がゴーストの発生源である事はミーがつきとめました!」
「じゃあ、実際に霊が居るのを見た訳じゃないんだねー。」
強ばっていたローゼの表情が、ほんの少し緩んだ様に見えた。かすかに感じていた手の震えも無くなったように感じる。
「おい。何でホッとしてんだよ。霊を見つけない事には、どうしようもねぇだろうが。」
「トムさんは、霊の姿が見えるんですよね?」
「ノー!見えませーん!」
「え?」
彼の一言に、前を歩いていたアルトゥンとパニが歩みを止めた。
「う、嘘やろ!?そしたら、どうやって調査したらええんよ!」
「それじゃあ…どうしてここが霊の発生源だって分かったの?」
「ゴーストのハウスと言えば、墓地!そうに決まってまーす!」
私達の歩みは完全に止まり、沈黙が流れる。
「なぁ…今、俺達が歩いてた意味ってあったのか?」
「意味…無いかも…?」
「ノーノー!意味ありまーす!ミーは、ゴーストを見る事は出来ないですが…ボディに宿す事が出来るのでーす。」
「身体に宿すって…霊に取り憑かれるって事…?」
「おいおい。あんたが取り憑かれちまったら、誰が除霊するんだ?」
「ユー達です!」
トムは前方を歩くアルトゥンとパニの方を指さし、得意げな表情を浮かべた。どうやら彼等に、やって欲しい事があるらしい。
「お、俺とパニ様?でも俺…除霊なんて、した事あらへんよ?」
「やり方は、とってもイージーです!霊を宿したミーに、強い光を浴びせて下さーい。そうする事でゴーストをバスター出来まーす!」
「なるほど…!トムさんが身体の中に霊を吸収して、ボク達が浄化すれば良いんだね。」
「イエス!こうして墓地をウォークしていれば、いずれゴーストの方から来てくれるでしょう。」
「そういう事なら、もう少し歩く必要がありそうだな。」
「えぇー!まだ歩くの!?」
「仕方ねぇだろ。どう見てもこいつに霊が宿ってるとは思えねぇからな。」
彼等はトムの話を理解しているようだが、私にはどうしたらいいか分からなかった。
「トムさんトムさん。霊ってやっぱり、夜じゃないと姿を現さないものなの?」
「オフコース!ゴーストは光に弱いですから、日没から日の出までの時間しか現れませーん。」
「となると…霊が見つかるまで、この辺を歩き回らなあかんって事?」
「俺等は構わねぇけど、こいつに徹夜はキツイだろ。」
グリの発言で、彼等の視線が私に集まる。
「…徹夜?」
「夜になっても寝ないで、朝まで起きてるって事。子供のアスールには大変だろうって、みんなが心配してるんだ。」
「…徹夜、へーき。」
「流石に無理はさせられないよー。ボクとローゼくんでここに残るから、アルトゥンくんとグリくんは先に宿屋に戻ってて。」
「え、でもパニ様…。」
「さっきは、2人が率先して役所に運んでくれたでしょ?だから、ここから先はボク達に任せて。」
「…だとよローゼ。てめぇは良いのか?」
「よ、良くは無いけど…。パニ様1人に任せる訳にもいかないし…。」
するとパニはローゼの手を握り、胸の辺りへ持ち上げた。
「ずっと一緒に居るから大丈夫!ね?ローゼくん。」
「え?あ…は、はい…。」
「むしろ、俺等は邪魔になりそうやね…。」
「では、よろしくお願いします。…アスール。お前も帰るぞ。」
「…分かった。」
宿屋へ戻って来た私達は普段着に着替え、1階にある食堂で食事をする事にした。受付の女性に料理を頼むと、しばらくしてテーブルの上に人数分の料理が並べられた。
「ん?餃子なんて、メニューにあったか?」
「…さっきパニが買った。アルトとグイにお礼って。」
「え、そうなん?餃子なんて久しぶりや~!あ、アスールは食べるの初めてなんちゃう?」
「…初めて。」
「熱いだろうから、気を付けて食べろよ?」
「…分かった。」
フォークを使って餃子を口に運ぶと、中から肉の油が溢れ出した。シャキシャキとした野菜の食感と、モチモチとした食感が口の中に広がる。
「どや?美味しいか?」
「…美味しい。」
「その割には反応薄くねぇか?」
「そうかぁ…?いつもこんなもんやと思うけどなぁ。」
「…グイのご飯の方が美味しい。」
「は…?」
驚いた表情を浮かべ、彼の食事の手が止まった。聞こえなかったのだろうと思い、私は再び口を開く。
「…グイのごは…」
「聞こえなかったんじゃねぇよ!…冗談かと思っただけだ。」
「ほんまか?実は照れ…」
「てめぇは黙って飯を食え。」
「別にええやん!褒められたら、嬉しいに決まっとるもんなぁ?」
「うるせぇ!そんなんじゃねぇよ…!」
グリはその場から立ち上がり、手に持ったフォークをテーブルに叩きつけるように置いた。
「え?もう食べへんの?」
「パニ様の所へ行ってくる。向こうは何も食べてねぇだろ?適当にその辺で買って届けてくるから、お前等は先に寝てろ。」
彼は食事を途中で切り上げ、足早に私達の元を去って行ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる