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第1章︰ルカ・クラーレ
第7話
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心地よい風が窓から吹き込んでくる、穏やかな夜。トイレに起きた僕は、眠い目を擦りながら廊下を歩いていた。
「ふわぁ…。眠い…。」
何故か外が明るいような気がして、ふと窓の外を見ると、庭に生えている木が燃えていた。
「な、なにあれ!?火事!?みんなー!起きてー!火事だよ火事ー!」
慌てて庭に出ると、木の側にウナが座り込んでいた。
「ウナ!?危ないからこっちにおいで!」
「ルカ…!」
恐怖のせいか、彼女の目には涙が浮かんでいた。彼女を抱きしめると、落ち着かせる為に頭を撫でた。
「なんで燃えてるんだろう…。火を使った訳でもないのに。」
「ごめんなさい…。火は…ウナが…。」
「え…?」
「わー!なにこれー!?」
「シェリア!リーガルを呼んできて!リアーナは僕と少しでも消火をしよう!」
「は、はいい!」
「ウナは建物の中に入って待ってて!」
「う…うん…。」
リーガルさんの魔法でなんとか消火が終わり、その場にいたメンバーがクラーレさんの部屋に集められた。
「あそこに1番最初にいたのは、ウナだったんだね?」
「はい…。」
「ウナ。ゆっくりでいいから話せる?」
「ごめん…なさ…。暗くて…よく見えなくて…。ウナが魔法…使った…から…。木が…ぱちぱちって…どんどんおっきくなって…。」
「暗くて見えなかったから火の魔法を使って明るくしようとしたんだね?それで木が燃えたと…。」
「ごめんなさい!僕がもっと魔法についてちゃんと話しておけば…。」
「ルカは魔法使いじゃないのだから、教えるにも限界があるだろう。これは誰のせいでもない。」
「そうだよ!誰も怪我してないし、被害もそんなんに大きく無かったしね!」
「でも!」
「ギルドを狙った外部の犯行じゃないことが分かったし、あまりウナを怒らないであげて。」
「ほんとうにごめんなさい。ご迷惑をお掛けしました…。」
「ごめんなさい…。」
「みんな部屋に戻って寝ましょう。ウナ、あまり落ち込まないでね?」
僕達も部屋に戻り、彼女を椅子に座らせた。
「ごめんなさい…。」
「なんで魔法なんて…。まだ使いこなせてないものを使ったらだめだよ!」
「ルカにすごいって言われて…ウナうれしい…から魔法使いたくて…。」
「魔法はたしかにすごいし、便利かもしれない。けど、使い方を間違えたら今日みたいにみんなに迷惑をかけるんだ。それはわかるよね?」
「ウナちがってない!あってるもん!」
「あってない!あんなことしたら危ないんだからね!」
「しらない!アリサと寝る!」
勢いよくドアを開け、彼女は部屋を飛び出していった。どうせすぐ戻ってくるだろうと思い、その日は1人で寝ることにした。
次の日の朝、朝食に顔を出さなかったアリサとウナの元に朝食を届けに行った。
「アリサー入るよー?」
「ん…?何よ…。」
「もう朝だよ?これ、アリサとウナの分の朝食持って…あれ?ウナは?」
「昨日部屋に来てそこのソファーで寝てたけど…。…トイレじゃない?」
「そっか…。なら、これ置いてくから食べるように言っておいて。」
ガゼルと銃の練習をしたり、シェリアさんと掃除をしたり、リアーナと森に薬草を摘みに行ったりと、いつもと変わらない1日を過ごした。日が沈み始め、辺りが夕焼けで赤く染まった頃、今日1日の間ウナの姿を見ていないことが気になってしょうがなかった。
「大丈夫よルカくん。リアーナとガゼルくんが探してくれているもの。お腹がすいたらすぐに帰ってくるわよ。」
「リーガルにも街の方を見てきてくれるように頼んだし、僕達は家の中を探そう。」
「僕…やっぱり…。…外を探してきます!」
「あ、ルカくん!」
街の中を走り回り、すれ違う一人一人に声をかけて情報を集め、海辺までやってきた。
「さすがにこんな所までは来ないかな…。…そういえば、ここまで走ってきた事あったっけ。」
教会でフェリに会った時の事を思い出した。
前に来た時と同じように、教会の中に足を踏み入れると誰かが椅子に座っていた。
「あ、あのー…。シスター…さん?」
「あれ?ルカくん?」
椅子に座ったシスターは、フェリだった。
「なんだー。フェリだったんだ。そこに座って何を…」
「しーっ!静かに!」
彼女の膝を枕にして、気持ちよさそうにウナが寝ていた。
「なんでウナがここに…。」
「この子もギルドにいるのね。昨日の火事の話聞いたわ。」
「魔法は危ないって教えなかったからこんなことに…。」
「ウナ、ルカくんに褒められたのがすごく嬉しくて、魔法の練習してたんですって。でも、強くやりすぎたせいで燃えちゃったって言ってたわ。」
「練習を…?いつの間に…。」
「ルカくんの事とっても好きなのね。君の話ばっかりしてた。」
「ウナ…。」
「ん…。」
「あら、起きた?」
彼女の膝の上で目覚めて身体を起こすと、フェリの後ろに立っている僕に気づき顔を強ばらせた。
「ル、ルカ?」
「ウナ…。」
「ウナ、わるくない!」
「うん。ウナは悪くない。悪いのは僕だったよ。」
「ルカが…?」
「怒ったりして…ごめんね。でも……ウナが心配で…。ウナが……怪我でもしたら…僕は…っ。」
彼女の目線に合わせるように椅子の前にしゃがむと、自然と目から涙が溢れてきた。
「泣くの…だめだよ…。なんで泣くの…?」
「…っ。ご、ごめ…。」
「ごめんなさい…ウナ、失敗して…。」
「…失敗したら、次から失敗しないように努力すればいいんだよ。」
「どりょく?」
「もっと沢山練習しましょうって事よ。でも、ウナが怪我したらルカくんは悲しくなっちゃうの。ウナは、ルカくんが怪我したらどう思う?」
「やだ!怪我したら…痛い…。」
「ルカくんも、あなたと同じ気持ちなのよ。あなたが大好きから怒っちゃったの。」
「そうなの?ルカ。」
「うん。…さぁ、みんなの所に帰ろう。お腹すいたでしょ?」
「うん!」
彼女は椅子から降りると、差し出した手を握り返した。
「まさか、走ってたら海に来ちゃったーなんて、ルカくんと同じことするとは思わなかったわ。」
「た、確かに同じだね…。僕達、親子か兄妹なのかも。」
「いつでも遊びに来てね。ウナ。」
「ありがとうお姉ちゃん!またねー!」
こうして無事にウナを保護すると、その日の夜は彼女と一緒に同じベッドで寝る事にした。
「ん…?」
目を開けると、辺りは薄暗く、物がたくさん置いてある埃っぽい場所だった。広い部屋の天井に、ぽつんぽつんと裸の豆電球がぶら下がっている。
「どこだろ…ここ。」
「…だ…誰か……。」
「女の子の声?ウナ…かな…?」
「………お兄…ちゃ……ん。」
「お兄ちゃん…?」
か細い少女の声が微かに聞こえて来る。辺りを見渡すが、暗いせいで少女の姿はどこにも見つからなかった。
「えっと…どこにいるの?」
「助け…て…お兄ちゃ……ん…。」
「なんだか様子がおかしい…。…とにかく助けなきゃ!この辺りを探し…」
ーガチャ!
金属がぶつかり合う音と共に、動かそうとした足の動きが止まる。足元を見ると、足枷がはめられて動けない状態になっていた。
「な、なにこれ…。」
「……い…や…やだ………やめ…て!」
「大丈夫!?…どうにかして、この足枷を…!」
ガチャン!ガチャン!と音を立てるものの、一向に外れる気配がない。
「やだ…!…すけ……いやあああぁぁぁー!!!」
「ルカ!!!」
「っ!?」
目を開けると、驚いた様子のウナと目が合った。身体を起こすと、自室のベッドの上で夢を見ていた様だった。
「ルカ…よかった…。大丈夫?苦しそうしてた。」
「だ、大丈夫…。ごめんね心配かけて。」
「汗すごいよルカ。お水もってくるね!」
こんなにも、汗をかく夢を見たことは中々ない。しかし、夢の内容は断片的にしか思い出せなかった。
「じゃあ、よろしくね。ルカくん。」
「はい!行ってきます!」
今回の依頼は、森で薪になりそうな木を集めてくるという、至って簡単なものだった。
簡単とはいえ、危ない場所にウナを連れていくわけには行かないので、シェリアさんと一緒に待っていてもらうことになった。
前回の依頼で一緒に行動したガゼルは、リアーナの依頼の手伝いをしていて居ない為、1人で森へ向かった。
「これだけあれば十分かな…。ついでにシェリアさんに薬草を摘んでくるように言われたし、探そっと。えーっと…」
ーガサガサ…
近くの茂みが揺れ、反射的に腰から銃を抜き、音のした方向に向けた。しばらくじっと構えてていると、草の間からリスの尻尾が現れた。
「なんだ…。リスかぁ…。」
銃を下ろし、茂みに背を向け歩き出した。
「…おい。お前。」
「!?」
背後から声をかけられ、振り返ろうとした瞬間、首を掴まれ近くの木に押さえつけられた。
「っ…!?だ…れ……?」
「吸血鬼だ。悪いが血を貰うぞ。」
「…や……。やめ…。」
「少し…分け……。」
息が出来ず、少しずつ意識が薄れていく中で、首元に顔が近づいてきた。血を吸われるのを覚悟し、ぎゅっと目をつぶると、首を絞めている力が徐々に弱まっていくのを感じた。その隙をついて手を払い除けると、地面に落としてしまった銃を掴み、吸血鬼に銃先を向けた。
「げほっ…!っ…動いたら撃……って…あれ…?」
銃を向けた先では、さっきまで首を絞めていたはずの吸血鬼が、地面にうつ伏せになり倒れていた。
「…あれ…?」
「あ、気がついた?」
彼女が目を覚まして身体を起こすと、茶色の瞳を懸命に動かし、辺りを不思議そうに眺めていた。歳はウナと同じくらいに見え、身長も彼女と同じくらいだと思われる。身体の半分以上の長さがありそうな金色の髪は、クルクルと巻かれてカールしている。
「あんた…誰?…ここは?どこなの?」
「ここは、僕の部屋だよ。森で倒れちゃったからここまで連れて来たんだ。覚えてない?」
「覚えてない…。」
「そ、そっか…。えっと…お腹空いてる?何か持ってこようか?」
「その…あんたに言ったか覚えてないけど…。あたし吸血鬼よ?」
「それはさっき聞いたよ?」
「こ、怖く…ないの?」
「え?どうして?」
「え、あ、いや…。…まあいっか。」
「何食べる?パンとご飯どっちがいいかな?何か作っ…」
「お目覚めですか主。」
「うわぁ!?な、なんで猫がここに…っていうか今、喋っ…」
いつの間にか扉の前に座り込んでいた黒猫が、スタスタと部屋を歩きベッドに寝ている少女の元に駆け寄った。
「ルルー!よかった~はぐれてなくて~。」
「心配致しましたよ…。あ、どうも、申し遅れました。私、こちらにおります、ヴェル様の使い魔のルルでございます。」
「つ、使い魔…?ヴェルって…君の名前?」
「そうだよー。」
「ルカ様と申されましたかな?あなた様は我が主の命の恩人です…。何か私どもで出来ることがありましたらなんなりとお申し付けを…」
「そんな、大げさだよ!」
「ここまで運んでもらったのはすごくありがたいもん!ありがとうルカ。」
「さっき倒れたばかりだし、もう少し休んでいきなよ。」
「ううん!もう大丈…」
ベッドから勢いよく飛び降りた瞬間、またしてもその場に倒れてしまった。
「ヴェル様!?」
「全然大丈夫じゃないじゃん!」
彼女を持ち上げると、再びベッドに寝かせた。すると、ルルが側に駆け寄っていった。
「これは…深刻な状況です…。」
「え…?それってどういう…。」
「ヴェル様はお腹が空いておられます。」
「なんだ…お腹が空いてるだけなんだ…。」
「ルカ様!吸血鬼にとって、空腹は死を意味するのです!」
「え!そうなの!?」
「左様です。詳しく説明したい所ですが、一刻も早くこの状態から脱しなければ…。」
「ぼ、僕に出来ることならなんでもするよ!どうしたらいい?」
「ルカ様…なんと広いお心をお持ちなのでしょうか…。私はこの恩を決して忘れ…」
「危険なんだよね!?早くなんとかしないと!」
「ではルカ様。腕を出して頂けますか?ヴェル様の口元に、腕を近づけて下さい。」
「腕?こ、こう…?」
わけも分からず服の袖をまくり、腕を彼女の前に出した。ルルが彼女の耳元に何やら呟くと、彼女の口が開き、腕に噛み付いた。
「痛…!?」
「大丈夫ですか?ルカ様。痛いでしょうがしばらく我慢なさってください…。」
「だ、大丈夫…噛まれた瞬間は痛かったけど今は何とか…。」
「しばらくこのまま、血を吸わせて頂きます。」
「え?血?」
「せっかくですからこの時間を活用して吸血鬼についてお教えしましょう。」
「え、このままなの…?」
「吸血鬼は血を吸うことによって寿命を伸ばし、生きることが出来ます。」
「そっか。お腹が空いたから、僕の血を吸ってるんだね?」
「その通りでございます。ヴェル様は血が足りなくなり、森にいる動物の血を吸おうとされていたのですが…。中々見つけられずにいた所、ルカ様と出会ったようですね。」
「そっか…。あの時も血を吸うって言ってたっけ…。」
「きちんとお断りをしてから、頂くように伝えていたのですが…。主に変わって謝罪を申し上げます。」
「大丈夫だよ。ちょっと苦しかったけど…。」
「ところでルカ様。徐々に眠くはなりませんか?」
「眠くは無いけど…?」
「人間が血を吸われると、血の気が無くなり眠くなります。寝てしまうほど吸うと命に関わるので、その前に吸うのを止めなければいけないのですが…身体の方はどのような感じですか?」
「なんか…ムズムズする…?身体中くすぐられてる…みたいな…。」
「変ですね…。まあ、意識を失わないようなら大丈夫でしょう。」
「ぅ…ん…。」
「あ、ヴェルが目を覚ましたみたいだよ?」
「ヴェル様。お加減はいかがですか?」
「何この血!すごいうまい!」
「ちょっとヴェル…!つ…強く…吸わないで…。」
「ごめんごめん!つい美味しくて~。」
パッと腕から口を離すと、彼女に噛まれた跡がくっきりと残っていた。
「ルカ様。噛み跡を消しますので、腕を出してください。」
「そんな事も出来るの?ありがとうルル。」
ルルの前に噛み跡のついた腕を出すと、ぺろぺろと舐め始めた。すると、垂れていた血も傷跡もみるみるうちに消えていった。
「すごい…本当に消えちゃった。」
「たしかにルカ様の血はとても美味ですね。」
「そ、そんなに?」
「そんなに!…ねールカ。私ここに住みたいなー?」
「それは…どうだろう…。クラーレさんに聞いてみないと…。」
「その人の所に行こ!今すぐ!」
「え、でも今は…。」
「ヴェル様。今すぐには無理です。落ち着いてください。」
「だってー。人間の暮らしやってみたいんだもん~。」
「ルカ様はこちらに住んでおられるのですから、すぐにでも会いにこれます。ひとまず今日は帰りましょう。」
「わかったよぉ…。」
「住めるかどうかは聞いておくから、またいつでも遊びに来てね。あ、玄関まで見送るよ。」
彼女を見送ってから数日経ったある日、夕飯を食べ終えて部屋に戻ると、机の上に手紙が置いてあった。
「ん?何この手紙…。」
手に持った手紙が、ドロドロと溶け始め赤い液体が床に広がった。
「わ!な、なにこれ…。」
「驚いたか?」
床に溜まった液体の中から、金髪の女性が姿を現した。高さのある靴を履いているせいか、背の高い彼女を少しだけ見上げた。
「え、誰!?」
「お久しぶりですルカ様。」
見覚えのない女性の足元に、喋る黒猫が座っている。
「あれ…ルル?じゃあ、もしかしてヴェルなの!?」
「そういえば、ヴェルがお前の血をとても気に入っていたな…。」
「え?」
ルルの主であるはずの彼女は、まるで他人事のように自分の名前を口にしていた。
「こちらは、ヴェル様の夜のお姿。ヴェラ様でございます。」
「夜の姿…?」
「本来の姿…と言うのが正しいだろうな。まあ、細かい事はどうでもいい。まずは血を貰って、話はそれからに…」
「え!ちょっと!?」
「ヴェラ様。きちんと了承を得てからとあれほど…」
「お前は吸われても痛くないのだろう?なら、減るものでもないしいいだろう。」
「いやいやいや…血は減るものだから!」
「ルカ様は血の生成量が多いので多少減っても問題ないようですがね…。」
「ルル…!」
「よし。…いただきます。」
「ちょ!?ぅあ…っ。」
抵抗虚しくベッドに押し倒され、首元に噛みつかれ血を吸われる。
「ね、ねぇ…ルル…。」
「なんでしょうか?」
「この…ムズムズ…何とかならないの…?くすぐったくて…我慢が…っ。それと…首からって…大丈夫?」
「よくその状態で喋れますね。さすがルカ様。素晴らしい素質ですよ。」
「そ、それは…嬉しくないかな…。」
「以前もくすぐったいと仰ってましたね。普通の反応と違いますが問題ないかと思われます。それと首からですが…。量は一気に抜けますが、短時間で終わりますよ。」
「うん!こんな美味い血は初めてだ!」
「あ、終わった…。」
彼女はベッドに座り直すと、1つの提案を持ちかけてきた。
「…え?契約?」
「はい。ヴェラ様…とヴェル様に血を下さる代わりに、ルカ様も欲しいものを手に入れる。つまり等価交換というものですね。」
「吸血鬼は血を使って色々と便利な事が出来る。しかし、自分で作る量が少ないからすぐに足りなくなる。そこでお前の血を貰うと。」
「僕は、血をあげる代わりにヴェラから何を貰うの?」
「ヴェラ様は強大な魔力をお持ちです。力を授かるというのはどうでしょう?」
「力ってパワーの事?重いものが持てるようになるのかな…?」
「力はパワーだけじゃない。適応力や洞察力、身体能力とか他にも色々あるだろう?」
「なんだか難しいね…。」
「では、身体能力の向上がよろしいかと、ヴェラ様と同等…とではいきませんが、何かと役に立つでしょう。わからないことがあれば、いつでも私にお聞きください。」
「色々とよく分からないけど…ありがとうルル。」
「では、契約成立だな。お前にこれをやろう。」
「…指輪?」
「契約の証と、あとは色々な便利機能がある。常に身につけるようにな。」
「色々…というのは、身につけていればわかると思いますので、その都度お教えしましょう。」
「うん…わかった。」
「では、また会おう。ルカ・クラーレ。」
彼女の足元からドロドロと赤い液体が溢れ、その中に入るようにして姿を消した。何が起こっているのか状況を飲み込めないまま、その日はそのまま眠りについた。
「ふわぁ…。眠い…。」
何故か外が明るいような気がして、ふと窓の外を見ると、庭に生えている木が燃えていた。
「な、なにあれ!?火事!?みんなー!起きてー!火事だよ火事ー!」
慌てて庭に出ると、木の側にウナが座り込んでいた。
「ウナ!?危ないからこっちにおいで!」
「ルカ…!」
恐怖のせいか、彼女の目には涙が浮かんでいた。彼女を抱きしめると、落ち着かせる為に頭を撫でた。
「なんで燃えてるんだろう…。火を使った訳でもないのに。」
「ごめんなさい…。火は…ウナが…。」
「え…?」
「わー!なにこれー!?」
「シェリア!リーガルを呼んできて!リアーナは僕と少しでも消火をしよう!」
「は、はいい!」
「ウナは建物の中に入って待ってて!」
「う…うん…。」
リーガルさんの魔法でなんとか消火が終わり、その場にいたメンバーがクラーレさんの部屋に集められた。
「あそこに1番最初にいたのは、ウナだったんだね?」
「はい…。」
「ウナ。ゆっくりでいいから話せる?」
「ごめん…なさ…。暗くて…よく見えなくて…。ウナが魔法…使った…から…。木が…ぱちぱちって…どんどんおっきくなって…。」
「暗くて見えなかったから火の魔法を使って明るくしようとしたんだね?それで木が燃えたと…。」
「ごめんなさい!僕がもっと魔法についてちゃんと話しておけば…。」
「ルカは魔法使いじゃないのだから、教えるにも限界があるだろう。これは誰のせいでもない。」
「そうだよ!誰も怪我してないし、被害もそんなんに大きく無かったしね!」
「でも!」
「ギルドを狙った外部の犯行じゃないことが分かったし、あまりウナを怒らないであげて。」
「ほんとうにごめんなさい。ご迷惑をお掛けしました…。」
「ごめんなさい…。」
「みんな部屋に戻って寝ましょう。ウナ、あまり落ち込まないでね?」
僕達も部屋に戻り、彼女を椅子に座らせた。
「ごめんなさい…。」
「なんで魔法なんて…。まだ使いこなせてないものを使ったらだめだよ!」
「ルカにすごいって言われて…ウナうれしい…から魔法使いたくて…。」
「魔法はたしかにすごいし、便利かもしれない。けど、使い方を間違えたら今日みたいにみんなに迷惑をかけるんだ。それはわかるよね?」
「ウナちがってない!あってるもん!」
「あってない!あんなことしたら危ないんだからね!」
「しらない!アリサと寝る!」
勢いよくドアを開け、彼女は部屋を飛び出していった。どうせすぐ戻ってくるだろうと思い、その日は1人で寝ることにした。
次の日の朝、朝食に顔を出さなかったアリサとウナの元に朝食を届けに行った。
「アリサー入るよー?」
「ん…?何よ…。」
「もう朝だよ?これ、アリサとウナの分の朝食持って…あれ?ウナは?」
「昨日部屋に来てそこのソファーで寝てたけど…。…トイレじゃない?」
「そっか…。なら、これ置いてくから食べるように言っておいて。」
ガゼルと銃の練習をしたり、シェリアさんと掃除をしたり、リアーナと森に薬草を摘みに行ったりと、いつもと変わらない1日を過ごした。日が沈み始め、辺りが夕焼けで赤く染まった頃、今日1日の間ウナの姿を見ていないことが気になってしょうがなかった。
「大丈夫よルカくん。リアーナとガゼルくんが探してくれているもの。お腹がすいたらすぐに帰ってくるわよ。」
「リーガルにも街の方を見てきてくれるように頼んだし、僕達は家の中を探そう。」
「僕…やっぱり…。…外を探してきます!」
「あ、ルカくん!」
街の中を走り回り、すれ違う一人一人に声をかけて情報を集め、海辺までやってきた。
「さすがにこんな所までは来ないかな…。…そういえば、ここまで走ってきた事あったっけ。」
教会でフェリに会った時の事を思い出した。
前に来た時と同じように、教会の中に足を踏み入れると誰かが椅子に座っていた。
「あ、あのー…。シスター…さん?」
「あれ?ルカくん?」
椅子に座ったシスターは、フェリだった。
「なんだー。フェリだったんだ。そこに座って何を…」
「しーっ!静かに!」
彼女の膝を枕にして、気持ちよさそうにウナが寝ていた。
「なんでウナがここに…。」
「この子もギルドにいるのね。昨日の火事の話聞いたわ。」
「魔法は危ないって教えなかったからこんなことに…。」
「ウナ、ルカくんに褒められたのがすごく嬉しくて、魔法の練習してたんですって。でも、強くやりすぎたせいで燃えちゃったって言ってたわ。」
「練習を…?いつの間に…。」
「ルカくんの事とっても好きなのね。君の話ばっかりしてた。」
「ウナ…。」
「ん…。」
「あら、起きた?」
彼女の膝の上で目覚めて身体を起こすと、フェリの後ろに立っている僕に気づき顔を強ばらせた。
「ル、ルカ?」
「ウナ…。」
「ウナ、わるくない!」
「うん。ウナは悪くない。悪いのは僕だったよ。」
「ルカが…?」
「怒ったりして…ごめんね。でも……ウナが心配で…。ウナが……怪我でもしたら…僕は…っ。」
彼女の目線に合わせるように椅子の前にしゃがむと、自然と目から涙が溢れてきた。
「泣くの…だめだよ…。なんで泣くの…?」
「…っ。ご、ごめ…。」
「ごめんなさい…ウナ、失敗して…。」
「…失敗したら、次から失敗しないように努力すればいいんだよ。」
「どりょく?」
「もっと沢山練習しましょうって事よ。でも、ウナが怪我したらルカくんは悲しくなっちゃうの。ウナは、ルカくんが怪我したらどう思う?」
「やだ!怪我したら…痛い…。」
「ルカくんも、あなたと同じ気持ちなのよ。あなたが大好きから怒っちゃったの。」
「そうなの?ルカ。」
「うん。…さぁ、みんなの所に帰ろう。お腹すいたでしょ?」
「うん!」
彼女は椅子から降りると、差し出した手を握り返した。
「まさか、走ってたら海に来ちゃったーなんて、ルカくんと同じことするとは思わなかったわ。」
「た、確かに同じだね…。僕達、親子か兄妹なのかも。」
「いつでも遊びに来てね。ウナ。」
「ありがとうお姉ちゃん!またねー!」
こうして無事にウナを保護すると、その日の夜は彼女と一緒に同じベッドで寝る事にした。
「ん…?」
目を開けると、辺りは薄暗く、物がたくさん置いてある埃っぽい場所だった。広い部屋の天井に、ぽつんぽつんと裸の豆電球がぶら下がっている。
「どこだろ…ここ。」
「…だ…誰か……。」
「女の子の声?ウナ…かな…?」
「………お兄…ちゃ……ん。」
「お兄ちゃん…?」
か細い少女の声が微かに聞こえて来る。辺りを見渡すが、暗いせいで少女の姿はどこにも見つからなかった。
「えっと…どこにいるの?」
「助け…て…お兄ちゃ……ん…。」
「なんだか様子がおかしい…。…とにかく助けなきゃ!この辺りを探し…」
ーガチャ!
金属がぶつかり合う音と共に、動かそうとした足の動きが止まる。足元を見ると、足枷がはめられて動けない状態になっていた。
「な、なにこれ…。」
「……い…や…やだ………やめ…て!」
「大丈夫!?…どうにかして、この足枷を…!」
ガチャン!ガチャン!と音を立てるものの、一向に外れる気配がない。
「やだ…!…すけ……いやあああぁぁぁー!!!」
「ルカ!!!」
「っ!?」
目を開けると、驚いた様子のウナと目が合った。身体を起こすと、自室のベッドの上で夢を見ていた様だった。
「ルカ…よかった…。大丈夫?苦しそうしてた。」
「だ、大丈夫…。ごめんね心配かけて。」
「汗すごいよルカ。お水もってくるね!」
こんなにも、汗をかく夢を見たことは中々ない。しかし、夢の内容は断片的にしか思い出せなかった。
「じゃあ、よろしくね。ルカくん。」
「はい!行ってきます!」
今回の依頼は、森で薪になりそうな木を集めてくるという、至って簡単なものだった。
簡単とはいえ、危ない場所にウナを連れていくわけには行かないので、シェリアさんと一緒に待っていてもらうことになった。
前回の依頼で一緒に行動したガゼルは、リアーナの依頼の手伝いをしていて居ない為、1人で森へ向かった。
「これだけあれば十分かな…。ついでにシェリアさんに薬草を摘んでくるように言われたし、探そっと。えーっと…」
ーガサガサ…
近くの茂みが揺れ、反射的に腰から銃を抜き、音のした方向に向けた。しばらくじっと構えてていると、草の間からリスの尻尾が現れた。
「なんだ…。リスかぁ…。」
銃を下ろし、茂みに背を向け歩き出した。
「…おい。お前。」
「!?」
背後から声をかけられ、振り返ろうとした瞬間、首を掴まれ近くの木に押さえつけられた。
「っ…!?だ…れ……?」
「吸血鬼だ。悪いが血を貰うぞ。」
「…や……。やめ…。」
「少し…分け……。」
息が出来ず、少しずつ意識が薄れていく中で、首元に顔が近づいてきた。血を吸われるのを覚悟し、ぎゅっと目をつぶると、首を絞めている力が徐々に弱まっていくのを感じた。その隙をついて手を払い除けると、地面に落としてしまった銃を掴み、吸血鬼に銃先を向けた。
「げほっ…!っ…動いたら撃……って…あれ…?」
銃を向けた先では、さっきまで首を絞めていたはずの吸血鬼が、地面にうつ伏せになり倒れていた。
「…あれ…?」
「あ、気がついた?」
彼女が目を覚まして身体を起こすと、茶色の瞳を懸命に動かし、辺りを不思議そうに眺めていた。歳はウナと同じくらいに見え、身長も彼女と同じくらいだと思われる。身体の半分以上の長さがありそうな金色の髪は、クルクルと巻かれてカールしている。
「あんた…誰?…ここは?どこなの?」
「ここは、僕の部屋だよ。森で倒れちゃったからここまで連れて来たんだ。覚えてない?」
「覚えてない…。」
「そ、そっか…。えっと…お腹空いてる?何か持ってこようか?」
「その…あんたに言ったか覚えてないけど…。あたし吸血鬼よ?」
「それはさっき聞いたよ?」
「こ、怖く…ないの?」
「え?どうして?」
「え、あ、いや…。…まあいっか。」
「何食べる?パンとご飯どっちがいいかな?何か作っ…」
「お目覚めですか主。」
「うわぁ!?な、なんで猫がここに…っていうか今、喋っ…」
いつの間にか扉の前に座り込んでいた黒猫が、スタスタと部屋を歩きベッドに寝ている少女の元に駆け寄った。
「ルルー!よかった~はぐれてなくて~。」
「心配致しましたよ…。あ、どうも、申し遅れました。私、こちらにおります、ヴェル様の使い魔のルルでございます。」
「つ、使い魔…?ヴェルって…君の名前?」
「そうだよー。」
「ルカ様と申されましたかな?あなた様は我が主の命の恩人です…。何か私どもで出来ることがありましたらなんなりとお申し付けを…」
「そんな、大げさだよ!」
「ここまで運んでもらったのはすごくありがたいもん!ありがとうルカ。」
「さっき倒れたばかりだし、もう少し休んでいきなよ。」
「ううん!もう大丈…」
ベッドから勢いよく飛び降りた瞬間、またしてもその場に倒れてしまった。
「ヴェル様!?」
「全然大丈夫じゃないじゃん!」
彼女を持ち上げると、再びベッドに寝かせた。すると、ルルが側に駆け寄っていった。
「これは…深刻な状況です…。」
「え…?それってどういう…。」
「ヴェル様はお腹が空いておられます。」
「なんだ…お腹が空いてるだけなんだ…。」
「ルカ様!吸血鬼にとって、空腹は死を意味するのです!」
「え!そうなの!?」
「左様です。詳しく説明したい所ですが、一刻も早くこの状態から脱しなければ…。」
「ぼ、僕に出来ることならなんでもするよ!どうしたらいい?」
「ルカ様…なんと広いお心をお持ちなのでしょうか…。私はこの恩を決して忘れ…」
「危険なんだよね!?早くなんとかしないと!」
「ではルカ様。腕を出して頂けますか?ヴェル様の口元に、腕を近づけて下さい。」
「腕?こ、こう…?」
わけも分からず服の袖をまくり、腕を彼女の前に出した。ルルが彼女の耳元に何やら呟くと、彼女の口が開き、腕に噛み付いた。
「痛…!?」
「大丈夫ですか?ルカ様。痛いでしょうがしばらく我慢なさってください…。」
「だ、大丈夫…噛まれた瞬間は痛かったけど今は何とか…。」
「しばらくこのまま、血を吸わせて頂きます。」
「え?血?」
「せっかくですからこの時間を活用して吸血鬼についてお教えしましょう。」
「え、このままなの…?」
「吸血鬼は血を吸うことによって寿命を伸ばし、生きることが出来ます。」
「そっか。お腹が空いたから、僕の血を吸ってるんだね?」
「その通りでございます。ヴェル様は血が足りなくなり、森にいる動物の血を吸おうとされていたのですが…。中々見つけられずにいた所、ルカ様と出会ったようですね。」
「そっか…。あの時も血を吸うって言ってたっけ…。」
「きちんとお断りをしてから、頂くように伝えていたのですが…。主に変わって謝罪を申し上げます。」
「大丈夫だよ。ちょっと苦しかったけど…。」
「ところでルカ様。徐々に眠くはなりませんか?」
「眠くは無いけど…?」
「人間が血を吸われると、血の気が無くなり眠くなります。寝てしまうほど吸うと命に関わるので、その前に吸うのを止めなければいけないのですが…身体の方はどのような感じですか?」
「なんか…ムズムズする…?身体中くすぐられてる…みたいな…。」
「変ですね…。まあ、意識を失わないようなら大丈夫でしょう。」
「ぅ…ん…。」
「あ、ヴェルが目を覚ましたみたいだよ?」
「ヴェル様。お加減はいかがですか?」
「何この血!すごいうまい!」
「ちょっとヴェル…!つ…強く…吸わないで…。」
「ごめんごめん!つい美味しくて~。」
パッと腕から口を離すと、彼女に噛まれた跡がくっきりと残っていた。
「ルカ様。噛み跡を消しますので、腕を出してください。」
「そんな事も出来るの?ありがとうルル。」
ルルの前に噛み跡のついた腕を出すと、ぺろぺろと舐め始めた。すると、垂れていた血も傷跡もみるみるうちに消えていった。
「すごい…本当に消えちゃった。」
「たしかにルカ様の血はとても美味ですね。」
「そ、そんなに?」
「そんなに!…ねールカ。私ここに住みたいなー?」
「それは…どうだろう…。クラーレさんに聞いてみないと…。」
「その人の所に行こ!今すぐ!」
「え、でも今は…。」
「ヴェル様。今すぐには無理です。落ち着いてください。」
「だってー。人間の暮らしやってみたいんだもん~。」
「ルカ様はこちらに住んでおられるのですから、すぐにでも会いにこれます。ひとまず今日は帰りましょう。」
「わかったよぉ…。」
「住めるかどうかは聞いておくから、またいつでも遊びに来てね。あ、玄関まで見送るよ。」
彼女を見送ってから数日経ったある日、夕飯を食べ終えて部屋に戻ると、机の上に手紙が置いてあった。
「ん?何この手紙…。」
手に持った手紙が、ドロドロと溶け始め赤い液体が床に広がった。
「わ!な、なにこれ…。」
「驚いたか?」
床に溜まった液体の中から、金髪の女性が姿を現した。高さのある靴を履いているせいか、背の高い彼女を少しだけ見上げた。
「え、誰!?」
「お久しぶりですルカ様。」
見覚えのない女性の足元に、喋る黒猫が座っている。
「あれ…ルル?じゃあ、もしかしてヴェルなの!?」
「そういえば、ヴェルがお前の血をとても気に入っていたな…。」
「え?」
ルルの主であるはずの彼女は、まるで他人事のように自分の名前を口にしていた。
「こちらは、ヴェル様の夜のお姿。ヴェラ様でございます。」
「夜の姿…?」
「本来の姿…と言うのが正しいだろうな。まあ、細かい事はどうでもいい。まずは血を貰って、話はそれからに…」
「え!ちょっと!?」
「ヴェラ様。きちんと了承を得てからとあれほど…」
「お前は吸われても痛くないのだろう?なら、減るものでもないしいいだろう。」
「いやいやいや…血は減るものだから!」
「ルカ様は血の生成量が多いので多少減っても問題ないようですがね…。」
「ルル…!」
「よし。…いただきます。」
「ちょ!?ぅあ…っ。」
抵抗虚しくベッドに押し倒され、首元に噛みつかれ血を吸われる。
「ね、ねぇ…ルル…。」
「なんでしょうか?」
「この…ムズムズ…何とかならないの…?くすぐったくて…我慢が…っ。それと…首からって…大丈夫?」
「よくその状態で喋れますね。さすがルカ様。素晴らしい素質ですよ。」
「そ、それは…嬉しくないかな…。」
「以前もくすぐったいと仰ってましたね。普通の反応と違いますが問題ないかと思われます。それと首からですが…。量は一気に抜けますが、短時間で終わりますよ。」
「うん!こんな美味い血は初めてだ!」
「あ、終わった…。」
彼女はベッドに座り直すと、1つの提案を持ちかけてきた。
「…え?契約?」
「はい。ヴェラ様…とヴェル様に血を下さる代わりに、ルカ様も欲しいものを手に入れる。つまり等価交換というものですね。」
「吸血鬼は血を使って色々と便利な事が出来る。しかし、自分で作る量が少ないからすぐに足りなくなる。そこでお前の血を貰うと。」
「僕は、血をあげる代わりにヴェラから何を貰うの?」
「ヴェラ様は強大な魔力をお持ちです。力を授かるというのはどうでしょう?」
「力ってパワーの事?重いものが持てるようになるのかな…?」
「力はパワーだけじゃない。適応力や洞察力、身体能力とか他にも色々あるだろう?」
「なんだか難しいね…。」
「では、身体能力の向上がよろしいかと、ヴェラ様と同等…とではいきませんが、何かと役に立つでしょう。わからないことがあれば、いつでも私にお聞きください。」
「色々とよく分からないけど…ありがとうルル。」
「では、契約成立だな。お前にこれをやろう。」
「…指輪?」
「契約の証と、あとは色々な便利機能がある。常に身につけるようにな。」
「色々…というのは、身につけていればわかると思いますので、その都度お教えしましょう。」
「うん…わかった。」
「では、また会おう。ルカ・クラーレ。」
彼女の足元からドロドロと赤い液体が溢れ、その中に入るようにして姿を消した。何が起こっているのか状況を飲み込めないまま、その日はそのまま眠りについた。
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