エテルノ・レガーメ

りくあ

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第6章︰エーリ学院【後編】

第51話

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「大丈夫か?ルカ…。」
「うん…なんとか…。」

実習の授業を終えて自室に戻りベッドに横になった途端、直ぐに眠りについてしまっていた。
夢の中でソファーに横になり、ミグにマッサージをしてもらっていた。

「前に入れ替わった時は、寝て起きたら戻ってたのにな。」
「だよね…。前回と今回、一体何が違うんだろう…。」
「緊急時のヴェラとの連絡手段を何か考えていた方がいいな…。」
「そういえば…前に、机の手紙を開いたらヴェラが出てきたって事があったけど…。あれは、通信手段の1つだったのかもしれない。」
「手紙か…。どっかの本に書いてないか調べとくよ。」
「ありがとうミグ。」

身体を起こし、ソファーから立ち上がった。

「どうしたルカ。もういいのか?」
「うん。これだけしてもらったら充分だよ!」
「あ、待てルカ…!」

部屋に戻ろうと階段に足をかけた瞬間、後ろからミグに腕を掴まれた。

「え?何?」
「青じゃないか…。今日魔法使ったからな…しばらく血を吸ってなかったし…。」
「あ…本当だ…。でもどうしよう。吸血なんてした事ないよ…。」

ソファーに戻り、再び腰を下ろすとミグも隣に座った。

「歯を立てて…出た血を吸う感じだと思うが…。やってみればわかるだろ。」

彼は腕をまくると僕の前に差し出した。

「え!?今するの!?」
「当たり前だろ。ルナの体調が悪くなっても困るし、この状況じゃどうなるかもわからないしな。」
「そ、それは…そうだけど…。」
「ほら。目覚める時間までにおわさないと。」
「う、うん…。」

血を吸われた事はあったが、僕自身が血を吸う立場になるとは思いもしなかった。血を吸われて、僕のように痛がらないのは珍しく、普通の場合かなり痛いものだと言うことをヴェラから聞いたことがあった。

「い、痛かったら言ってね…?」
「もう何回も吸われてるから慣れたよ。限界だったら言うから心配するな。」
「う…ん…。」

吸血をしている間、彼は顔をそむけて声を押し殺している様に見えた。ミグに申し訳ない気持ちでいっぱいになり、きっとルナも彼から血を吸うのは心苦しいと思っているに違いない。
彼女が魔法の扱いを制限していたのは、目立ち過ぎないのも理由の1つだが、ミグに痛い思いをさせたくないというのも1つの理由なのだと悟った。



「おはよルナちゃん。」
「お、おはよう…!」

教室の扉を開けて直ぐに、近くの席の女子生徒が声をかけてきた。ここに来たばかりの頃は、彼女に無視されていたはずが、突然人が変わったような接し方に驚きつつ、席へと向かった。

「ルナちゃん、おはよう!」
「おはよ、ルナちゃん。」
「おはよう、2人共。」

自分の席の隣で話をしていた、ララとフランの2人と挨拶を交わした。椅子に座り、鞄の中から教科書を取り出して机の中に入れようとすると、中で紙が潰れる音が聞こえた。

「ん?」
「ルナちゃんどうかした?」
「なんか…机に入ってたみたい。」

中からくしゃくしゃになった手紙の封筒が出てきた。差出人の名前はなく、封を開けて中の紙を取り出した。

「何やってるの?」
「あ、ユイちゃん。」

手紙の内容を、目で追いながら読み進めた。

「手紙?誰から?」
「名前は書いてないみたい。なんだろうね?」
「ねぇルナ。なんて書いてあるの?」
「え?あぁ…えと…なんでもないよ!」

慌てて鞄にその手紙をしまおうとすると、横から伸びてきた手に奪い取られてしまった。

「フラン!?」
「一体何が書いてあったの?隠されると余計気になっちゃうよ。見てもいいよね?」
「だ、だめだよ…返し…」

彼から紙を奪い返そうと手を伸ばすが、その手をサラリとかわし、彼は手紙を読み始めた。

「えーっと、ルナソワレーヴェ様。あなたの事を、陰ながらいつも見守っていました…。もしよかったらお話したい事があるので、授業が終わったらホールの2階で待ってます…。」
「そ、それってラブレ…」

驚いてユイが叫び出しそうな所を、慌てて彼女の口を塞いだ。

「ユイ…!声が大きいよ!」
「ご、ごめんごめん…。」
「でもあれだね、陰ながらいつも見守ってるって、ストーカーじゃないの?」
「た、確かにそうだね…。」

恋バナが大好きなユイは興奮を抑えきれない様子で、フランとララは手紙の差出人に少々引いている様子だった。

「ルナ、行くのよね?」
「え?どこに?」
「どこにって、ホールの2階よ。呼び出されたなら行かなきゃ!」
「僕は反対かなぁ。昨日の実習を見た生徒が寄こした、果たし状かもしれないよ?」
「私も…ラブレターじゃないと思う。見守ってるって書いてあるだけで、好きだとは書いてないし…。」
「って事で、多数決で行かないに決定ね!」
「ええー!なによ…つまらないわね…。」



「今日は僕も、お菓子持ってきたよ。」

授業を終えて部屋に集まると、フランがチョコレートの入った箱を開けてみせた。僕の隣に座っていたララが、目を輝かせてそれに見入っていた。

「わぁ…!かわいい!なんだか食べるの勿体ないね。」
「ルナちゃんはチョコレート好き?」

彼は、僕がチョコレートを食べれるかどうか確認するかのように、わざと質問を投げかけた。

「うん!好きだよ。」
「よかった。ララちゃんはチョコレート好きだもんね。勿体ないなんて言わないで食べて?」
「う、うん!いただきます。」
「ありがとうフラン。いただきます!」

赤くコーティングされたチョコレートを指で摘んで口に放り込むと、その甘さが口いっぱいに広がった。

「ところでユイは?今日来れないの?」
「うーん…来れないとは聞いてないけど…。急用かなぁ?」
「ユノさんの所に行ったのかもしれないよ?」
「そうかもね!」
「なんか私達ばっかり食べたら悪い気がしちゃうなぁ…。」
「そのうちまた買ってくるから、食べちゃお?溶けちゃいそうだし。」
「そっか…用事があったならしょうがないよね…!」

僕もルナの代わりに食べていると思うと、少々気が引ける思いだったが、仕方ないと肯定する彼女と同じようにチョコレートの甘さでそれを誤魔化した。



「ユイちゃん今日やすみかな…?」

次の日になり教室に来たが、彼女の姿はなかった。その代わりにルナの机の中に、昨日みた手紙と同じものが入れられていた。

「ルナちゃん。なんて書いてある?」
「ルナソワレーヴェ様…。あなたが来て下さると信じ、ずっと待っていました。しかしあなたは来て下さらなかった。本日も同じ時間、同じ場所で待っています。金髪の少女と一緒にお待ちしております…?」
「金髪の…少女ってまさか…!」
「ユイの事…?」

僕は席から立ち上がると、教室の扉に向かって歩き出した。

「待ってルナちゃん。」

後ろから腕を掴まれ、身体の動きを止められた。

「離してよフラン!ユイが酷いことされてるかもしれないのに、待ってなんていられないよ!」
「僕だって今すぐ助けにいきたいよ。けど、手紙には同じ時間で待つって書いてある。多分エーリの生徒だろうから、授業が終わるまで危害は加えられないと思う。」
「でも…。」
「ルナちゃん…私も同じ気持ちだよ?フラン君の言う通り、授業が終わるまで待とう?」
「う、うん…。」

授業を終えた後、僕達は3人でホールの2階へと向かった。2階は、ホールで行われている試合や催し物を上から見る事が出来るように、沢山のベンチが備え付けられている。

「ルナちゃん、あそこ…!」

ララの指さした方向を見ると、柱にもたれかかるようにして腕を組んで立っている緑色の髪をした生徒がいた。
彼の元に近づくと、短髪の男がこちらに気づき歩み寄った。彼のオレンジ色の鮮やかな瞳と目が合った。

「おー…!よかったよかった。今日は来てくれたんや。」
「だ、誰ですか?」
「俺か?俺はアレクセイルージってもんや。手紙読んで来てくれたんやろ?」

彼の独特な話し方と手紙の文面があまりにも違いすぎて、頭を抱えていると、隣に立っていたフランが1歩前に出た。

「手紙は見たけど、あれは君が書いたの?話し方随分違ってるから、別の人みたいに感じるんだけど。」
「あー…書いた奴は俺ちゃうんやけど、書かせたのは俺やで?」
「は、はぁ…。」

なんとなくだが、彼がユイの事を傷つけようとしているようには思えなかった。彼の近くに彼女の姿はなく、ほっと胸をなで下ろした。

「あの…どうして私と話がしたいって言ったんですか?」
「あんた、ラギト様を打ち負かして、いい気になっとるんやないかと思て、一言ガツンと言っとかんと!って思ったんや。」
「あ、じゃあ、本当に話をする為だったんですね…。」
「そう書いてあったやろ!?…いつまで待ってもあんたが来なくて、代わりに気の強い女が来たんや。」
「その子はどうしたの?」
「訳分からんこと言い始めて、それから暴れ出してな?その拍子に、転んで頭を打って気を失ってしまったんや。せやから医務室に連れてったわ。俺がここに来る前見てきたけど、まだ寝てるみたいやったわ。」
「ララちゃんは、ユイちゃんの所に行ってくれる?」
「う、うん…わかった。」

彼女は来た道を戻り、ユイの元へ向かった。

「ごめん。君の事誤解してたみたいだよ。」
「なんで謝るん?」
「あなたが果たし状を送り付けてきて、来なかったからユイを人質にしたのかと思ってて…。」
「そんなこと俺はせーへん!一応、ラギト様を倒せる程の実力があるって事やし、俺1人じゃ勝てる気がせーへんしな。」
「じゃあ、どうしてルナちゃんに?僕も彼女と一緒に、ラギト様と戦ってたけど?」
「あんたは名前を知らんかったからな。ルナは、来た初日に名乗ったやろ?他の奴の名前なんて覚えてへんもん。」
「まぁ…確かに僕も同じクラスなのに君の事覚えてないしね…。」
「せやろ?」
「ちなみに聞いておくけど…。君がガツンと言いたい一言ってなんだい?」
「そうやった。それが本題やったな…。えーっと………なんやったかなぁ…。」
「え…?」
「俺、記憶力悪いんよなぁ~。悪い悪い!堪忍な!」

こうして、何事もなくひと騒動が収まり、アレクと友達になった事でめでたしめでたしとなった。
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