エテルノ・レガーメ

りくあ

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第6章︰エーリ学院【後編】

第52話

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授業が休みの日、僕はルナの部屋にミグとフランの3人で集まり、ルナに身体を戻す為の方法について話し合う事にした。

「まずは、私が調べた事についてご報告します。」
「ミグくん。無理しないで普通にしゃべってくれていいよ?僕そういうの気にしないから。」

彼はさらっとミグの喋り方に無理がある事を見抜くと、目の前に置いていた紅茶を口に運んだ。

「そ、そうですか…?なら…そうする。」
「えと…本は見つかった?」
「いいや。見つからなかった。身体の事を書いてあるのはいくつか見つけたけど、入れ替わるなんていう事例を書いてある本はなかった。」
「そっか…。魔法についてはどうだった?」
「そっちも見つけられなかったよ。やっぱり、ヴェラが実習で来る時に話をしてみるしかないだろうな…。」
「魔法って?」
「前にヴェラが、僕に手紙を送ってきた事があったんだけど、その手紙を開いたら彼女が目の前に現れて、会話をする事が出来たんだ。」
「その方法を使って、俺達もヴェラと会話が出来ないかと思ったんだが…。」
「それなら、ファブリケで作っちゃえばいいんじゃない?」
「ファブリケって…物を作る魔法だよね?」
「うん。イメージすればどんな物でも作れる魔法だよ。君が1度見た事のあるものならイメージしやすいだろうし、ルナちゃんの魔力を利用すれば出来るかもしれないでしょ?」
「確かにそうだな…。」
「やってみるよ!」
   
指を噛んで血を出すと、目を閉じてイメージを膨らませた。
あの時、机の上に置いてあった手紙の封筒は、手に持った瞬間ドロドロと溶け始め赤い液体が床に広がっていた。恐らく血で作られていると思われ、封を開けた瞬間にその人の元へ移動する事が出来るはずだ。そして、ヴェラの元にこれを届けるには、封筒自身が彼女の元に飛んでいけるように、自分なりのイメージをつけ加えた。

「“血の盟約は互いの友好の証。我が血を糧とし力に変え、我が意思に従え。ファブリケ!”」

テーブルの上に血が集まり、1枚の封筒を作り上げた。

「成功したか?」
「使ってみないとわからないけど…これ、どうやってルシュ様に渡すの?」
「後ろに羽をつけて、飛んで行けるようにしたよ。ヴェラの所まで飛んでいってくれればいいけど…。」

僕の声に反応し、封筒はパタパタと羽ばたき始めた。部屋の窓の隙間から、封筒は外へ飛び出し、空高く羽ばたいて行った。

「羽の生えた封筒か…これまた変わったやつを作り出したな…。」
「い、いいでしょ別に…。これが、一生懸命考えた結果だよ。」
「僕は凄くいいと思うよ。ルナちゃんも同じ事考えそうだし。」
「そうかな…ありがとうフラン。」
「僕は、君達が元に戻る方法より、交代で出てこられる方法があったらいいのになって思ったよ。」
「確かに僕も、フランやララ、ユイと話してみて、こんな生活を送れるルナがちょっと羨ましいなって思ったよ…。けど、この身体じゃなんだか借り物みたいで…馴染まないというか…。」
「あ、そういや…前にルナが、見た目を変える魔法使った事があるって話を聞いたような…。」
「僕も聞いた事あるよ。ラギト様が、人間達の街に出かける時にそうしてるって。」
「それも…ファブリケなのかな…?でも、さすがに性別まで替えるなんて出来るのかな?」
「それもそうだな…。そのへんも含めてヴェラに聞いておきたい所だな。」
「うん。」
「あ、ルナちゃん。紅茶のお代わり貰ってもいい?」
「うん!もちろん!フランにはいいアイディア出してもら…」

その場に立ち上がった瞬間、足元に黒い霧が発生し、身体が床に沈み始めた。

「わ!?な、なに!?」
「落ち着いてルカくん。これは転移魔法だよ。多分、飛ばした封筒がルシュ様の元に届いたんじゃないかな?」
「そ、そっか…!」
「俺も一緒に行く。フランはこの部屋で待っててくれ。」
「うん。気をつけていってきてね。」
「いってきます!」

完全に身体が沈み込むと、視界は真っ暗になり光が失われた。
しばらくすると、上から光が差し込み、頭上に光の輪が現れた。それは徐々に大きくなり、その中に潜り込んだ。

「ルナ。一体何の用だ?」
「ヴェラ!」

床から身体を出し切ると、足元の黒い霧が消えていった。
彼女は目の前にあるベッドに座り、本を膝の上に乗せていた。その脇には本棚があり、びっしり本が並べられている。窓際には見たことの無い植物の鉢植えも並んでいる。

「あまりジロジロ見るな。ここは私の部屋だ。用事あってきたんだろう?話はお前の中で聞く。このベッドを使いなさい。」

彼女はベッドから立ち上がると、僕にその場所を譲った。

「う、うん。わかった。」

彼女のベッドの上で眠りにつくと、ルナとミグが待つ夢の中に意識が移動して行った。
自室のベッドで目が覚めると、階段を降りてリビングへ向かった。すると既に夢の中に来ていたヴェラが、ソファーに座りミグが用意した紅茶をすすっていた。

「ん?ルカか。どうした。」
「ルナの事で話があって。」
「なんだ?」
「ルナがここで眠ったままになってるんだ。ルナの部屋に来てくれる?」
「何…?わかった。行こう。」

3人でルナの部屋に入ると、何日か前に布団を掛け直したあの日から、全く変わっていない彼女の姿があった。

「眠ったままということは…さっき私の部屋に封筒を届けて、転移して来たのはルカか?」
「うん。ファブリケの魔法で封筒を作ったんだ。」
「この子にも教えていなかった事をやってのけるとは…。お前に膨大な魔力があったら、とてつもない魔法使いになれただろうに。残念だ。」
「そ、そんな事より、身体が入れ替わっちゃった原因と、元に戻る方法が知りたいんだ。あと、他にも聞きたいことが…」
「まずはルナを起こそう。それから話をすればいいだろう。」
「う、うん。」

彼女はルナの額に触れると、続いて鼻の下に指を当て、手首、胸元、お腹、足の裏と身体のあちこちに手を当てた。

「頭を強く打ったか?血の流れがそこで止まっている。」
「あ、うん。地面の岩に頭をぶつけたんだ。それから入れ替わっちゃって…。」
「血の流れが止まるってまずいんじゃ…。」
「ああ。このままあと2、3日経っていたら、腕か脚が麻痺していたかもしれない。」
「そんな…。ど、どうしたら…」
「慌てるな。ツボを押して血の流れを戻す。服を脱ぐ必要があるから、お前らは下で待っていろ。」
「う、うん…!わかった。」

ソファーに座り、そわそわしていると隣にミグが座り僕の背中を撫でた。

「大丈夫だルカ。ヴェラがちゃんと治してくれるさ。」
「う、うん…。」
「これでも飲め。クッキーもあるぞ?」

彼は紅茶とクッキーを差し出した。紅茶をすすり、クッキーにも口をつけると彼の優しさに思わず涙腺が緩んだ。

「どうしたんだよ…泣くなって…。」
「う…ん…。ごめ…」
「全く…泣き虫な所までルナにそっくりだな。お前ら本当は双子なんじゃないだろうな?」
「そ、それはないよ…!僕に兄弟は…」

「居ない。」と断言しようとして、言葉を詰まらせた。ギルドに拾われる前の記憶を無くしたままになっていて、兄弟の有無を断言出来なかったからだった。

「わ、悪い…。」
「う、ううん。大丈夫。」
「何もしないでいるのも落ち着かないな…。薬草の整理でもするか?」
「そうだね…そうしよっか。」

棚にしまってある薬草を種類別に仕分けしていると、2階から降りてくる足音が聞こえ、慌てて階段の方へかけていった。

「ルナ!」
「ルカ…。ごめんね…。」
「どうして謝るの?確かに心配はしたけど…。」
「ひとまず座ろう。ルカからあった事を話してやるといい。」

ルナの隣にミグが座り、僕の隣にヴェラが座った。僕は、ルナと入れ替わってからの事を話し始めた。

「そっか…ありがとうルカ。私の身体守ってくれて…。」
「それはもちろん…!ルナの身体なんだから…。」
「…俺も守ったぞ?」
「はいはい。ありがと。」
「おい…その言い方…。」
「冗談だよ~。…いつもありがとうミグ。」

彼女は隣に座っている彼に向かって手を伸ばし、頭を撫でた。

「…。」
「あれ?ミグ?」

彼は頬を赤く染め、目と口を開いたまま固まっていた。

「はぁ…。」

僕の隣に座っていたヴェラがソファーから立ち上がり、2本の指で彼の額を小突いた。

「痛っ!?」
「全く…しっかりしなさい。」
「す、すいません…。」
「あ、ねぇ、ヴェラ。ルナが起きたってことは、僕達元に戻れるの?」
「そうだな。恐らくここから出た時点でルナに戻っているはずだ。」
「よかった…。」
「そういえば、フランが言ってたんだが…。気絶する以外に、ルナとルカが入れ替わる方法は無いのか?」
「聞いた事がないな。そもそも身体を作る材料になった人間が表に出るなんて事すら、ありえない状況だ。」
「そ、そっか…。」
「まあ、ひとまずルナが起きられてよかったな。」
「またこうなった時の為に、本にまとめておこう。他にも、急用があったら手紙を飛ばしなさい。」
「ありがとうヴェラ!」
「その代わり、血を貰うぞ?」
「「えっ!?」」
「ぼ、僕は構わないけど…。」
「お前に血は存在しない。魂なのだからな。」
「あ…そうなんだ…。」
「お、俺はルナの使い魔だから…ルナ以外には吸われたくない!」

ミグはソファーから立ち上がり、奥の部屋の方へ消えていった。

「ミグの裏切り者ー!」
「さすがの私でも、他の奴の使い魔から血を吸うのは気が引ける。大丈夫だルナ。青になる直前までにしておいてやろう。」
「え、や、ちょっと待っ……っ!」

ルナの隣に移動したヴェラが、彼女をソファーに押し倒すと、首元に口をつけて血を吸い始めた。

「まっ………っあ…ふ……っ…。」
「ヴェ、ヴェラ…!ルナ、まだ病み上がりだし…。」
「動いてないせいで血が溜まりに溜まっている。抜かなければそれこそ問題だ。」
「やぁ…!…ヴェラ……っ…そん…な………ゃ…めっ……。」

目の前で起こっている光景を見ていられなくなり、両手で顔を隠すとその場から立ち上がった。

「ぼ、僕、部屋に戻ってるから…///!」
「これが終わったら本を作って持っていく。もう少し待っていなさい。」
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