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第6章︰エーリ学院【後編】
第55話
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「ただいま~。あれ?まだフランだけ?」
「おかえりルナちゃん。うん…まだ僕だけ…」
「お待たせ~…!2人共早いね。」
私がやって来ると直ぐに、支度を済ませたララが戻って来た。
「おかえりララちゃん。」
「わ~!ララの服可愛いね!」
「そ、そうかな…///?」
彼女の服は、いつも来ているエーリの服では無く、レースがあしらわれている可愛らしいワンピースだった。
「ほんとだ。ララちゃんに似合ってるね。」
「あ、ありがとう…///」
ほんのり耳を赤くしている彼女は、頬に手を当てて恥ずかしそうにしていた。すると今度は、門をくぐって見た目がそっくりな2人がやって来た。
「お待たせ。」
「ユノさん!おはようございますっ。」
「おはよう…ルナさん。」
2人はお揃いのスカートをみにつけ、色違いのリボンを髪に付けている。唯一全く違う所と言えば、ユノさんが白い手袋を付けているくらいだった。
「アレクくんまだかなー?」
「あいつ部屋で爆睡してたりしないわよね…?」
「さすがにそれは…ないと思いたいけど…。」
「ごめんごめん!みんなお待たせやでー!」
彼は小走りでこちらにやってくると、その後ろから中級吸血鬼のタクトさんが同じように小走りでやって来た。
「あ、タクトさん!」
「ごめんね、待たせちゃったみたいで…!」
「そんな事ないですよ!あたし達も今来たばかりですし!」
ユイは先程とは別人のようになり、自分の身なりを気にし始め、ソワソワした様子だった。
「じゃあ、みんな集まったし行こっか。」
「裏の森だけど、どこか眺めのいい場所は無いのかな?」
「あ、それならいい場所知ってるよ。」
タクトさんの案内で、森の中にある丘の上にやってきた。辺り一面に花が咲き乱れ、遠くの方に小さくなった街が見える見晴らしのいい場所だった。
「すっげー!ここ、街が一望出来るで!」
「本当だー!家があんなに小さく見える!」
「タクトさん、こんな場所よく知ってましたね。」
「森を歩いてた時に偶然見つけたんだ。たまに来て、ここで寝たり本読んだりしててね。」
「へ~。そうなんですね…。」
草原の上にシートを敷いて、全員で円を書くように丸くなって座った。
「まだ昼には早いし、折角だからみんなでなんかせーへん?」
「なんかって…何するの?」
「んー…何がええかなー?」
「そういえば…君達はもうすぐ昇級試験だったよね?」
「うげ…そうやった…。」
「私達試験って初めてだけど…どんな事をするんですか?」
「下級から中級は、武器の生成が絶対条件。その武器を使用して行う、模擬戦の成績次第で昇級が決まる。」
「武器の生成が絶対って事は…。」
「ど、どうしよう…私まだ出来た事ないよ…。」
ララは、手で口元をおさえて真っ青な顔をしていた。
「だ、大丈夫だよララ!まだ間に合うって…!」
「そういえば、アレクは武器出せるの?」
「ま、まだ1度しか成功した事ないんよね…。俺も自信ないわぁ…。」
「じゃあみんなで、ララとアレクの特訓、手伝おうよ!」
「そうね。そうしましょ。」
「ありがとうなぁ…みんな…。」
私とフランはララを、他の3人はアレクの特訓に付き合う事になった。
「ララちゃんは、武器ってどんなのイメージしてる?」
「えっと…ムチ…。」
「え?どうしてムチなの?」
「私…リーシア様に憧れてて…!あんな風になりたいなって思ってるの。」
「僕のイメージと違ったなぁ。ララちゃんは、打撃系より斬撃系だと思ってた。」
「え、そう…?」
「僕の勝手なイメージだけどね?」
「もしかしたらだけど…憧れが強すぎて、ムチを作るのが難しくなってるんじゃない?」
「憧れが強すぎる?」
「ララにとってムチって言うものは、リーシア様みたいにならないと扱えないって、そういうイメージをしちゃってるのかも。」
「そっか…理想が高くて手が届いてないって事かぁ…。」
「別のものをイメージしてみたら出来るかも!やってみよ!」
「う、うん…。ムチ以外で…武器…。」
彼女は親指を噛んで目を閉じると、詠唱を始めた。
「“血の盟約は互いの友好の証。我が血を糧とし力に変え、我が意思に従え…。”」
今までなんの変化もなかった彼女の手に、顔の大きさ程の短い槍が現れた。
「これ…は…。」
「や、槍?」
「槍にしては短過ぎない…?なんていうか…矢って感じ…。」
「失敗…しちゃった…。」
「でもララ!生成は出来たんだし…ここから少しづく長くしていければ…!」
「そう…だね…。」
上手くいかず落ち込んでいるララを見て、フランは彼女の手を掴んだ。
「ね、ララちゃん。気分転換しに行こ?」
「え///!?でもルナちゃんは…?」
「私はアレクの様子見てくるよ!お昼の鐘には戻って来てね?」
「うん。行こうララちゃん。」
「う、うん…///」
「僕に任せて。」と言いたそうに、私の方を見て軽くウィンクをすると、彼女と手を繋いで森の方へ歩いて行った。
「あれ?ルナ。ララとフランは?」
木の側に座っていたユイとユノさんの元へ行くと、それに気づいたユイが声をかけてきた。
「ちょっと気分転換に森の方に行ったよ。アレクの方はどう?」
「…微妙。」
彼女達の目線の先には、懸命に教えているタクトさんの姿と、必死にそれをやろうとするアレクの姿があった。
「あーもー!また木の棒になってしもたー!」
「何をどうしたら木の棒になるの!?アレク、ちゃんと斧をイメージしてる?」
「してるで!?」
「じゃあなんで棒に…」
「アレク~。」
「お、ルナやん!ララの方はええの?」
「2人で気分転換しに行ったよ。」
「ええな~。俺も気分転換したいわぁ。」
「アレク。君に必要なのは気分転換じゃなくて集中力だよ。」
「そ、そんなぁ~。」
「アレクの武器って斧なんだ?」
「せやで!こーんな大きい斧を目指してるんや。」
彼は、身体の前で大きく手を広げてみせた。
「そんなに大きい斧って…重くて持てないんじゃない?」
「せやなぁ…言われるとそうかもしれんな…。」
「大きいのイメージするのはいいけど、肝心な刃の部分が無かったら意味ないよ?」
「確かに…。」
「俺も最初は…ヴァン様みたいにって憧れてたけど、今になってようやく大きく出せるようになったんだ。最初は、小さい所から始めるのがいいと思うよ。」
「タクトさんは確か…両手剣が武器でしたっけ?」
「そうだよ。ヴァン様には敵わないけど、最終的にあの方みたいになりたいと思ってるんだ!」
「だってさ、アレク。まずは、薪割り用の斧くらいから始めた方がいいんじゃない?」
「言われてみるとそうやな~。棒になるくらいなら薪割り用の方がましやもんな…。」
「うんうん。」
「よっしゃ!ほんならもう少し頑張るわ!」
「その意気だよアレク!頑張って!」
しばらくアレクの頑張りを見守っていると、街の方からお昼の鐘が聞こえてきた。
「遅いわね…2人共…。」
お昼の準備を済ませたが、森に向かったララとフランがまだ戻って来ていなかった。
「探しに行く?」
「そうだね…もしかしたら迷ってたりするかも…」
「なら二手に分かれて…」
その場に立ち上がって森の方を見ると、ララがこちらに歩いて来た。
「あ、ララ!よかった~!遅いから、今から探しに行こうかと…」
「“血の盟約は互いの友好の証。我が血を糧とし力に変え、我が意思に従え。”」
彼女は歩きながら詠唱をし始め、身長と同じくらいの長い槍を手に握りしめて、私を目がけて走り出した。
「!?」
ガキン!と金属がぶつかり合う音が聞こえ、目の前でララの槍とタクトさんの剣が交わっていた。
「ララ…急にどうして…!」
「ラギト様の…敵…。」
「か、敵?」
「…グラシエ。」
私達の間を抜けて、氷の粒がララに向かって飛んで行った。彼女は身を反らせてそれを避けると、華麗にバク転をして距離をとった。
「ユノさん…!どうしてララを攻撃し…」
「この子。魔法で操られてる。正気じゃない。」
「ま、魔法で操る!?」
「そんな魔法があるんか!?」
「確か念力魔法。私はやった事ない。」
「一体誰がこんな…。」
彼女は再び槍を構えると、私の方へ向かって走り出した。その間に入るようにして、タクトさんが彼女の槍を受け止める。
「どうしてルナを攻撃しようとする!」
「ラギト様の…敵…。」
「何なんだ敵って…!」
ララの攻撃から私を守るように、大きな剣で彼女の槍を弾いている。
「ねえユノ!ララを元に戻す方法は無いの!?」
「魔法使った本人を攻撃するか、魔法にかけられた彼女を気絶させるしかない。」
「気絶って…そんな事出来へんて!」
「全くもう!フランの奴は何をやってるのよ!」
「私、ここに残ってタクトに加勢する…。2人はフランくん、探してきて。」
「わかったわ。行くわよアレク!」
「お、おう!」
ユイとアレクが森に向かって走り出した。それには全く目もくれず、ララはひたすら攻撃を繰り返していた。
「“血の盟約は互いの友好の証。我が血を糧とし力に変え、我が意思に従え。アヴァランシュ”」
ユノさんが魔法を詠唱し、タクトさんの動きに合わせて氷の攻撃を繰り出す。しかし操られている状態のララは、別人と思えるほどの軽い身のこなしで、空から降ってくる氷柱を見事に回避している。
「これじゃあキリがないね…。」
「大丈夫か?ルナ。」
「ミグ…!」
私の前にミグが姿を現した。
「悪い、遅くなって。」
「それはいいんだけど…ララが…。」
「ミグ。なんとか操ってる犯人を見つけ出してくれないか?ララの狙いはルナだけみたいだから、ここはなんとか俺が持ち堪える。」
「わかりました。周囲を探してみます。」
それからしばらくララとの攻防は続き、タクトさんの腕や脚は彼女の槍で、所々擦り切れていた。
「タクトさん…。」
「大丈夫。ルナは俺が守る…!」
「でも…!」
彼の死角から、ララの槍が迫って来ていた。
「タクトさん!」
私は彼の肩を押すと、ララの目の前に飛び出して手を広げた。
「ララ!お願い目を覚まして!」
「ルナ!!!」
彼女の槍が私の身体を貫きかけた瞬間、槍の先端がお腹の前でピタリと止まった。
「…あ…れ?……私…何して…。」
「ララ…!」
「え、ルナちゃん…?な、なんで私…槍なんか持って…。」
正気に戻った彼女は、手から槍を離すと地面に叩きつけられて槍は粉々に砕けた。私は彼女を抱きしめると、そのまま2人で一緒に地面に座り込んだ。
「ルナ。見つけたぞ。こいつが犯人だ。」
エーリの服を身につけた1人の青年が、植物のツタで腕を縛られた状態で連れてこられた。背が高く、スタイルのいい青年は、薄紫色の髪をしていた。前髪を中央で分け、長い髪を後ろに1つにまとめている。
「ユーリ…。」
「ユノちゃん…知り合い?」
「やぁユノじゃないか。ご機嫌はいかがかな?」
「…普通。」
「ありゃ。それは残念だなぁ。」
「お喋りはそれくらいにしてくださいますか?どうぞここにお座りになって下さい。」
「はいはい。」
彼はシートの上に腰を下ろすと、赤紫色の鮮やかな瞳が私の方を睨みつけた。
「折角見つけたのに…ついてないなぁ僕。」
「見つけたって…私を…?」
「そうだよ君さ。他に誰がいるって言うの?」
「どうしてルナを狙うのですか!一体何の目的が… 」
「ラギト様の敵を撃つ為だよ。」
「敵って…そういえばララもそんな事を…。」
「私、ラギト様に何かした覚えは…。」
「したじゃないか。ラギト様の授業であの方に恥をかかせた。それがどれだけ重い罪なのか、わかっていないようだね?」
「罪って…。」
「ルナとフランが、模擬戦でラギト様に勝った事は俺も聞いています。しかし、それで恥をかいたとは限らないはずです…!」
「タクト。君はラギトファンクラブの会員でありながら、彼女の肩を持つのかい?」
「ラギト…ファンクラブ…?」
「どうして俺の名前を…?ファ…ファンクラブは…アレクに勝手に入れられただけで…。」
「おーい。みんな~。」
森へ行っていたアレクとユイが戻ってくると、そこにはフランの姿もあった。
「ララちゃん…!よかった…無事で…。」
「フランくんこそ…!」
「感動の再会はいいんだけど…あんまりイチャイチャしないでよね。」
「ユ、ユイちゃん///!そんなんじゃ…///」
「あれ!?ユーリ先輩!なんでツタで縛られてるん!?」
「え?アレク知り合いなの?」
私達は、お互いにあった事を話し合った。
まず、森に向かった2人をユーリさんが襲い、フランを気絶させてララに念力魔法をかけた。そして、ララを操ってラギト様の敵を打つ為、私に襲いかかった。彼はラギトファンクラブの会長をしている、上級吸血鬼のユーリィタレットだった。アレクとタクトも同じクラブに所属しているらしく、その時に彼等は友達になったらしい。
「あんたらどんな繋がりなのよ…。」
「世界って狭いね…。」
「ほんまやな~。」
「うーん。どうやら僕の勘違いだったようだね…。すまなかったね。ルナさん。」
「い、いえ…大丈…」
「大丈夫じゃないです!ララの槍で、タクトさんがこんなにも怪我をしたじゃないですか!」
「だ、大丈夫だよ…ユイ。かすり傷だから…!」
「そ、そうですか…?」
「なーなー。腹減りすぎてもう、力出ないんやけど~。」
「そういえば、まだお昼を食べてなかったね…。」
「ユーリさんも一緒に食べましょうお弁当!」
「いいのかい?」
「はい!お互い、今日の事は水に流しましょう!」
「ありがとうルナ。そうだ、君もラギトファンクラブ入らない?歓迎するよ?」
「い、いえ…。それは遠慮しておきます…。」
こうしてなんとか誤解は解け、私達は日が暮れるまでピクニックを楽しんだ。
「おかえりルナちゃん。うん…まだ僕だけ…」
「お待たせ~…!2人共早いね。」
私がやって来ると直ぐに、支度を済ませたララが戻って来た。
「おかえりララちゃん。」
「わ~!ララの服可愛いね!」
「そ、そうかな…///?」
彼女の服は、いつも来ているエーリの服では無く、レースがあしらわれている可愛らしいワンピースだった。
「ほんとだ。ララちゃんに似合ってるね。」
「あ、ありがとう…///」
ほんのり耳を赤くしている彼女は、頬に手を当てて恥ずかしそうにしていた。すると今度は、門をくぐって見た目がそっくりな2人がやって来た。
「お待たせ。」
「ユノさん!おはようございますっ。」
「おはよう…ルナさん。」
2人はお揃いのスカートをみにつけ、色違いのリボンを髪に付けている。唯一全く違う所と言えば、ユノさんが白い手袋を付けているくらいだった。
「アレクくんまだかなー?」
「あいつ部屋で爆睡してたりしないわよね…?」
「さすがにそれは…ないと思いたいけど…。」
「ごめんごめん!みんなお待たせやでー!」
彼は小走りでこちらにやってくると、その後ろから中級吸血鬼のタクトさんが同じように小走りでやって来た。
「あ、タクトさん!」
「ごめんね、待たせちゃったみたいで…!」
「そんな事ないですよ!あたし達も今来たばかりですし!」
ユイは先程とは別人のようになり、自分の身なりを気にし始め、ソワソワした様子だった。
「じゃあ、みんな集まったし行こっか。」
「裏の森だけど、どこか眺めのいい場所は無いのかな?」
「あ、それならいい場所知ってるよ。」
タクトさんの案内で、森の中にある丘の上にやってきた。辺り一面に花が咲き乱れ、遠くの方に小さくなった街が見える見晴らしのいい場所だった。
「すっげー!ここ、街が一望出来るで!」
「本当だー!家があんなに小さく見える!」
「タクトさん、こんな場所よく知ってましたね。」
「森を歩いてた時に偶然見つけたんだ。たまに来て、ここで寝たり本読んだりしててね。」
「へ~。そうなんですね…。」
草原の上にシートを敷いて、全員で円を書くように丸くなって座った。
「まだ昼には早いし、折角だからみんなでなんかせーへん?」
「なんかって…何するの?」
「んー…何がええかなー?」
「そういえば…君達はもうすぐ昇級試験だったよね?」
「うげ…そうやった…。」
「私達試験って初めてだけど…どんな事をするんですか?」
「下級から中級は、武器の生成が絶対条件。その武器を使用して行う、模擬戦の成績次第で昇級が決まる。」
「武器の生成が絶対って事は…。」
「ど、どうしよう…私まだ出来た事ないよ…。」
ララは、手で口元をおさえて真っ青な顔をしていた。
「だ、大丈夫だよララ!まだ間に合うって…!」
「そういえば、アレクは武器出せるの?」
「ま、まだ1度しか成功した事ないんよね…。俺も自信ないわぁ…。」
「じゃあみんなで、ララとアレクの特訓、手伝おうよ!」
「そうね。そうしましょ。」
「ありがとうなぁ…みんな…。」
私とフランはララを、他の3人はアレクの特訓に付き合う事になった。
「ララちゃんは、武器ってどんなのイメージしてる?」
「えっと…ムチ…。」
「え?どうしてムチなの?」
「私…リーシア様に憧れてて…!あんな風になりたいなって思ってるの。」
「僕のイメージと違ったなぁ。ララちゃんは、打撃系より斬撃系だと思ってた。」
「え、そう…?」
「僕の勝手なイメージだけどね?」
「もしかしたらだけど…憧れが強すぎて、ムチを作るのが難しくなってるんじゃない?」
「憧れが強すぎる?」
「ララにとってムチって言うものは、リーシア様みたいにならないと扱えないって、そういうイメージをしちゃってるのかも。」
「そっか…理想が高くて手が届いてないって事かぁ…。」
「別のものをイメージしてみたら出来るかも!やってみよ!」
「う、うん…。ムチ以外で…武器…。」
彼女は親指を噛んで目を閉じると、詠唱を始めた。
「“血の盟約は互いの友好の証。我が血を糧とし力に変え、我が意思に従え…。”」
今までなんの変化もなかった彼女の手に、顔の大きさ程の短い槍が現れた。
「これ…は…。」
「や、槍?」
「槍にしては短過ぎない…?なんていうか…矢って感じ…。」
「失敗…しちゃった…。」
「でもララ!生成は出来たんだし…ここから少しづく長くしていければ…!」
「そう…だね…。」
上手くいかず落ち込んでいるララを見て、フランは彼女の手を掴んだ。
「ね、ララちゃん。気分転換しに行こ?」
「え///!?でもルナちゃんは…?」
「私はアレクの様子見てくるよ!お昼の鐘には戻って来てね?」
「うん。行こうララちゃん。」
「う、うん…///」
「僕に任せて。」と言いたそうに、私の方を見て軽くウィンクをすると、彼女と手を繋いで森の方へ歩いて行った。
「あれ?ルナ。ララとフランは?」
木の側に座っていたユイとユノさんの元へ行くと、それに気づいたユイが声をかけてきた。
「ちょっと気分転換に森の方に行ったよ。アレクの方はどう?」
「…微妙。」
彼女達の目線の先には、懸命に教えているタクトさんの姿と、必死にそれをやろうとするアレクの姿があった。
「あーもー!また木の棒になってしもたー!」
「何をどうしたら木の棒になるの!?アレク、ちゃんと斧をイメージしてる?」
「してるで!?」
「じゃあなんで棒に…」
「アレク~。」
「お、ルナやん!ララの方はええの?」
「2人で気分転換しに行ったよ。」
「ええな~。俺も気分転換したいわぁ。」
「アレク。君に必要なのは気分転換じゃなくて集中力だよ。」
「そ、そんなぁ~。」
「アレクの武器って斧なんだ?」
「せやで!こーんな大きい斧を目指してるんや。」
彼は、身体の前で大きく手を広げてみせた。
「そんなに大きい斧って…重くて持てないんじゃない?」
「せやなぁ…言われるとそうかもしれんな…。」
「大きいのイメージするのはいいけど、肝心な刃の部分が無かったら意味ないよ?」
「確かに…。」
「俺も最初は…ヴァン様みたいにって憧れてたけど、今になってようやく大きく出せるようになったんだ。最初は、小さい所から始めるのがいいと思うよ。」
「タクトさんは確か…両手剣が武器でしたっけ?」
「そうだよ。ヴァン様には敵わないけど、最終的にあの方みたいになりたいと思ってるんだ!」
「だってさ、アレク。まずは、薪割り用の斧くらいから始めた方がいいんじゃない?」
「言われてみるとそうやな~。棒になるくらいなら薪割り用の方がましやもんな…。」
「うんうん。」
「よっしゃ!ほんならもう少し頑張るわ!」
「その意気だよアレク!頑張って!」
しばらくアレクの頑張りを見守っていると、街の方からお昼の鐘が聞こえてきた。
「遅いわね…2人共…。」
お昼の準備を済ませたが、森に向かったララとフランがまだ戻って来ていなかった。
「探しに行く?」
「そうだね…もしかしたら迷ってたりするかも…」
「なら二手に分かれて…」
その場に立ち上がって森の方を見ると、ララがこちらに歩いて来た。
「あ、ララ!よかった~!遅いから、今から探しに行こうかと…」
「“血の盟約は互いの友好の証。我が血を糧とし力に変え、我が意思に従え。”」
彼女は歩きながら詠唱をし始め、身長と同じくらいの長い槍を手に握りしめて、私を目がけて走り出した。
「!?」
ガキン!と金属がぶつかり合う音が聞こえ、目の前でララの槍とタクトさんの剣が交わっていた。
「ララ…急にどうして…!」
「ラギト様の…敵…。」
「か、敵?」
「…グラシエ。」
私達の間を抜けて、氷の粒がララに向かって飛んで行った。彼女は身を反らせてそれを避けると、華麗にバク転をして距離をとった。
「ユノさん…!どうしてララを攻撃し…」
「この子。魔法で操られてる。正気じゃない。」
「ま、魔法で操る!?」
「そんな魔法があるんか!?」
「確か念力魔法。私はやった事ない。」
「一体誰がこんな…。」
彼女は再び槍を構えると、私の方へ向かって走り出した。その間に入るようにして、タクトさんが彼女の槍を受け止める。
「どうしてルナを攻撃しようとする!」
「ラギト様の…敵…。」
「何なんだ敵って…!」
ララの攻撃から私を守るように、大きな剣で彼女の槍を弾いている。
「ねえユノ!ララを元に戻す方法は無いの!?」
「魔法使った本人を攻撃するか、魔法にかけられた彼女を気絶させるしかない。」
「気絶って…そんな事出来へんて!」
「全くもう!フランの奴は何をやってるのよ!」
「私、ここに残ってタクトに加勢する…。2人はフランくん、探してきて。」
「わかったわ。行くわよアレク!」
「お、おう!」
ユイとアレクが森に向かって走り出した。それには全く目もくれず、ララはひたすら攻撃を繰り返していた。
「“血の盟約は互いの友好の証。我が血を糧とし力に変え、我が意思に従え。アヴァランシュ”」
ユノさんが魔法を詠唱し、タクトさんの動きに合わせて氷の攻撃を繰り出す。しかし操られている状態のララは、別人と思えるほどの軽い身のこなしで、空から降ってくる氷柱を見事に回避している。
「これじゃあキリがないね…。」
「大丈夫か?ルナ。」
「ミグ…!」
私の前にミグが姿を現した。
「悪い、遅くなって。」
「それはいいんだけど…ララが…。」
「ミグ。なんとか操ってる犯人を見つけ出してくれないか?ララの狙いはルナだけみたいだから、ここはなんとか俺が持ち堪える。」
「わかりました。周囲を探してみます。」
それからしばらくララとの攻防は続き、タクトさんの腕や脚は彼女の槍で、所々擦り切れていた。
「タクトさん…。」
「大丈夫。ルナは俺が守る…!」
「でも…!」
彼の死角から、ララの槍が迫って来ていた。
「タクトさん!」
私は彼の肩を押すと、ララの目の前に飛び出して手を広げた。
「ララ!お願い目を覚まして!」
「ルナ!!!」
彼女の槍が私の身体を貫きかけた瞬間、槍の先端がお腹の前でピタリと止まった。
「…あ…れ?……私…何して…。」
「ララ…!」
「え、ルナちゃん…?な、なんで私…槍なんか持って…。」
正気に戻った彼女は、手から槍を離すと地面に叩きつけられて槍は粉々に砕けた。私は彼女を抱きしめると、そのまま2人で一緒に地面に座り込んだ。
「ルナ。見つけたぞ。こいつが犯人だ。」
エーリの服を身につけた1人の青年が、植物のツタで腕を縛られた状態で連れてこられた。背が高く、スタイルのいい青年は、薄紫色の髪をしていた。前髪を中央で分け、長い髪を後ろに1つにまとめている。
「ユーリ…。」
「ユノちゃん…知り合い?」
「やぁユノじゃないか。ご機嫌はいかがかな?」
「…普通。」
「ありゃ。それは残念だなぁ。」
「お喋りはそれくらいにしてくださいますか?どうぞここにお座りになって下さい。」
「はいはい。」
彼はシートの上に腰を下ろすと、赤紫色の鮮やかな瞳が私の方を睨みつけた。
「折角見つけたのに…ついてないなぁ僕。」
「見つけたって…私を…?」
「そうだよ君さ。他に誰がいるって言うの?」
「どうしてルナを狙うのですか!一体何の目的が… 」
「ラギト様の敵を撃つ為だよ。」
「敵って…そういえばララもそんな事を…。」
「私、ラギト様に何かした覚えは…。」
「したじゃないか。ラギト様の授業であの方に恥をかかせた。それがどれだけ重い罪なのか、わかっていないようだね?」
「罪って…。」
「ルナとフランが、模擬戦でラギト様に勝った事は俺も聞いています。しかし、それで恥をかいたとは限らないはずです…!」
「タクト。君はラギトファンクラブの会員でありながら、彼女の肩を持つのかい?」
「ラギト…ファンクラブ…?」
「どうして俺の名前を…?ファ…ファンクラブは…アレクに勝手に入れられただけで…。」
「おーい。みんな~。」
森へ行っていたアレクとユイが戻ってくると、そこにはフランの姿もあった。
「ララちゃん…!よかった…無事で…。」
「フランくんこそ…!」
「感動の再会はいいんだけど…あんまりイチャイチャしないでよね。」
「ユ、ユイちゃん///!そんなんじゃ…///」
「あれ!?ユーリ先輩!なんでツタで縛られてるん!?」
「え?アレク知り合いなの?」
私達は、お互いにあった事を話し合った。
まず、森に向かった2人をユーリさんが襲い、フランを気絶させてララに念力魔法をかけた。そして、ララを操ってラギト様の敵を打つ為、私に襲いかかった。彼はラギトファンクラブの会長をしている、上級吸血鬼のユーリィタレットだった。アレクとタクトも同じクラブに所属しているらしく、その時に彼等は友達になったらしい。
「あんたらどんな繋がりなのよ…。」
「世界って狭いね…。」
「ほんまやな~。」
「うーん。どうやら僕の勘違いだったようだね…。すまなかったね。ルナさん。」
「い、いえ…大丈…」
「大丈夫じゃないです!ララの槍で、タクトさんがこんなにも怪我をしたじゃないですか!」
「だ、大丈夫だよ…ユイ。かすり傷だから…!」
「そ、そうですか…?」
「なーなー。腹減りすぎてもう、力出ないんやけど~。」
「そういえば、まだお昼を食べてなかったね…。」
「ユーリさんも一緒に食べましょうお弁当!」
「いいのかい?」
「はい!お互い、今日の事は水に流しましょう!」
「ありがとうルナ。そうだ、君もラギトファンクラブ入らない?歓迎するよ?」
「い、いえ…。それは遠慮しておきます…。」
こうしてなんとか誤解は解け、私達は日が暮れるまでピクニックを楽しんだ。
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※※※
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