エテルノ・レガーメ

りくあ

文字の大きさ
66 / 165
第7章︰それぞれの過去

第60話

しおりを挟む
「おーい、ルナ。そろそろおき…」
「っ!?」

閉じていた目を開き、身体を勢いよく起こした。目の前に見覚えのない部屋が広がり、隣に立っていたガゼルが驚いた顔をしていた。

「あ、あれ…ガゼル…?」
「びっくりした…。そんなに強く起こしたつもりなかったんだが…。」
「ご、ごめん!変な夢…見てたみたいで…。」
「そうか。朝食出来たから、着替えたら来いよ?そこのクローゼットの中の服、適当に着ていいから。」
「うん…!」

部屋を出ていく彼の背中を見送ると、ベッドを降りてクローゼットを開けた。女の子が着るであろうワンピースが並んでいるのを見て、今の自分がルナである事を思い出し、白いワンピースを手に取った。恥ずかしさを感じつつ、手早く着替えを済ませると、扉を開けて部屋の外へ出た。

「おはようルナちゃん。」
「おはようフラン!」
「よく寝れたみたいでよかったな。」
「あ、はい…お陰様で…。」

席に着くと、目の前にはパンとサラダが用意された。

「ごめんなさい…お手伝い出来なくて…。」
「お前は謝ってばっかりだな…。こういう時はお礼を言った方が、相手は嬉しいもんだぞ?」
「そ、そう…ですね…。」
「ガゼルくんの考え方ってすごく素敵だよね。説得力があるっていうか、ほんとにその通りだなって思えるよ。」
「まぁ…ほとんどマスターの受け売りなんだが…。」
「マスター?」
「ギルドのマスターだよ。他のメンバー達をまとめてる奴さ。」
「へ~。そうなんだね。」
「ほらルナ。早く食べて仕事するぞ?」
「あ、うん!頂きます…!」



ガゼルの仕事が無かった為、3人で森へ薬草を摘みにやって来た。

「この本に載ってるやつなら、なんでもいいんだよね?」
「あぁ。けど種類が多いから覚えきれ…」
「大丈夫。全部覚えたよ。」
「え、こんな短時間で?」
「フランは記憶力がすごいの。わた…しは、少しなら頭に入ってるけど…全部覚えるのは無理かな…。」
「あ、ちょっと待てフラン。この剣、護身用に使ってくれ。ルナは俺と一緒に行動しよう。」
「わかった。しばらく借りるね。」
「う、うん…。」
「あとは地図を…」
「地形なら昨日頭に入れたから大丈夫だよ。」
「じゃ、じゃあ…もしもの時の為に、発煙筒を持ってってくれ。」
「ガゼルくんは、心配性なんだね。」
「…誰かさんに似たせいかもな。」
「あはは。まぁ…万が一の自体に備えるのは大事だよね。預かっておくよ。」

そしてフランは、1人で森の奥へと進んで行った。僕とガゼルは2人で周囲の茂みを掻き分けながら、別の方向へと向かった。



「ルナ。どうだ?集まったか?」
「うん。結構集まったと思うよ。」
「手際がいいな。前にも集めた事があるのか?」
「あ…うん。薬を作るのが好きで…。」
「へー。なら、協会の仕事も出来るんじゃないか?自信ないって言ってたけど。」
「魔力が安定しないんだよね…!難しいのはまだ作れないし…。」
「そっか…そういう事なんだな。さて…と。そろそろ引き上げて、ウナの迎えに行…」

彼の背後から、身体の大きな猪が迫っているのが見えた。

「ガゼル危ない!」

僕は咄嗟にガゼルを突き飛ばし、彼の腰にあった銃を引き抜くと、猪に向けて弾を発射した。相手の急所を撃ち抜き、猪は彼の側で大きな音を立てて倒れた。

「ふぅ…。」
「ルナ…お前凄いな…。銃を扱えたのか?」
「え、あ…うん。少しだけ…。」
「助かったよルナ。ありがとな。」
「そんな…大した事は…!」
「せっかくだから…こいつを一旦、家に持って帰るか。ルナは猪、食べた事あるか?」

彼と猪の話をしながら、一旦家に戻る事にした。帰り道でフランと合流して家に着いた後、僕達を置いてガゼルは1人でウナの元へ向う事になった。

「これまた凄い量を取ってきたね…フラン…。」
「ついつい手が伸びて…ね。いつの間にか、薬草摘むの好きになっちゃったよ。」
「僕も結構好きなんだよね。ルナが居ない間、それくらいしかやる事がないから。」
「身体の中って…どんな感じ?」
「どんなって言われても…うーん…。草原が広がってて…家があって…森と湖があって…。」
「へぇ~。結構住みやすそうに出来てるんだね。楽しそうだなぁ。」

彼と話をしていると、突然玄関の扉が開き、フェリが家に戻って来た。

「あら、2人共戻ってたのね。」
「あ、フェリ…。」
「…って、凄い量の薬草ね。これ2人で集めたの?」
「ううん。3人でだよ。7割くらいフランがとったけど…。」
「ふんふん…。どれも教会で必要としてる薬草だわ。これだけ取ってきて貰えたら大助かりね。」
「よかった。集めたかいがあったよ。」
「兄さんは?」
「ウナを迎えに行ったよ。そろそろ来ると思うけど…。」
「なら、先にこれ運んじゃいましょ。2人共手伝ってくれる?」
「はーい。」
「う、うん!」

大量の薬草を木箱に詰め込み、車輪のついた荷台に乗せて教会へ向かった。尖った屋根が特徴的な建物の前にやってくると、荷台から木箱を降ろして中に入っていった。
扉を開けてすぐの所に沢山の椅子が並んでいて、色とりどりの窓に光が差し込み、床が鮮やかな色に染まっている。

「綺麗な所だね。僕、教会って初めて来たよ。」
「そうなの?あなたの街にはなかったのね。」
「そ、そうだね…。」

赤い絨毯が敷かれている廊下を進んで行き、奥の部屋に木箱を置いた。

「ひとまずこの辺に置いてくれる?」
「うん。」
「もう兄さんも戻ってる頃だろうから、呼んでくるわ。2人はここで待ってて。」
「はぁい。」

彼女が部屋から出て行くと、僕達は椅子に腰を下ろした。

「はぁ…嘘をつくのってドキドキするね…。」
「僕は嘘をついてるつもりないけどなぁ。あ、でも、言葉は選んで喋ってるつもりだよ?」
「そういうのが疲れない?なんていうか…騙してるような気分になるなぁって。」
「言えないならしょうがないよ。ここで放り出されても困るし、2人でなんとか頑張ろ?ね?」
「うん…。そうだね。フランが居てくれるから心強いかも。」

扉の奥から聞こえてくる声が次第に大きくなり、ガゼル、フェリ、ウナの3人が揃って部屋にやって来た。

「待たせたな。」
「おかえり。」
「さて…と、じゃあ、薬を作れるかどうか、一緒にやってみましょ。」
「うん。わかった。」
「フラン…無理しないでね?」
「大丈夫だよ。程々に頑張るから。」

こうして5人でテーブルを囲み、大量の薬草を薬に変える作業が進められた。



「よし…なんとか今日中に終わったな。」

薬草の山を処理し終えると、フランはテーブルの上に倒れ込んだ。

「はぁ~…終わった~…。」
「お疲れ様…フラン…。」
「自分で集めた薬草が、自分の首を絞める事になるとは思わなかったよ…。」
「これだけの量を作るのは、流石に疲れたわね…。明日からは薬草を摘むのと、薬を作るの、2手に別れた方がいいかしら?」
「なら、俺とフランが摘んで来て、3人で薬を作るのがいいんじゃないか?」
「それが1番効率が良さそうね。ウナは、それでいい?」
「ん。」
「ひとまず今日はお疲れさん。家に帰って夕飯にしよう。」
「あ、手伝います…!」
「私達は、掃除してから戻るわ。」

フェリとウナの2人を残し、先に3人で家に戻って行った。

「ルナは料理の手際もいいんだな。よく作るのか?」
「自分で食べる分を作るくらいかな…。でも、料理するの嫌いじゃないよ。」
「ふぅん…。お前は包丁の扱いだけは、料理人みたいだよな。」

魚を捌いているフランの背中に向かって彼は声をかけた。魚の捌き方を教わったフランは、慣れた手つきで次々と魚を処理していく。

「酷いなぁガゼルくん。もう僕は、立派な料理人だよー?」
「なら、これから毎日フランに作ってもらわないとな?」
「それは…流石にちょっと…。」
「あはは。」

帰ってきた2人と一緒に夕飯を食べ、楽しい時間を過ごした。



みんなが眠りについた頃、こっそり部屋を抜け出して海辺にやって来た。砂浜に腰を下ろして、果てしなく広がっている海を眺めた。

「はぁ…。」
「…どうしたの?ため息なんかついて。」

後ろを振り返ると、フランがこちらに向かって歩いて来た。隣までやってくると、彼もその場に腰を下ろした。

「眠れないの?」
「………うん。」
「なら一緒に寝てあげようか?」
「え!?………男だってわかって言ってる…?」 
「もちろん。」
「…フランって変わってるよね。」
「そうかな?よく言われるけど、僕にはわからないや。…好きなものは好きだし、嫌いなものは嫌い。ルナちゃんでもルカくんでも、僕は好きだよ。」
「フランみたいな考え方、出来たらいいのにな…。」
「ルナちゃんの事を考えてたの?」
「うん…。昨日、夢の中でルナに突き飛ばされて、湖に落ちたんだ。私はそんなの望んでない…ってそう言ってた。」
「ルナちゃんの望み…かぁ。なんだろうね?」
「…わかんない。」
「僕の望みは、君達が笑顔になる事かな。」
「え…?」
「ん?どうかした?」
「そ、それがフランの望みなの?」
「うん。」
「…変なの。」
「えー?僕と仲良くしてくれる、君達の方が変だと思うけど?」
「あはは。」
「一緒に居てくれる人達を、嫌いになんてなれないよ。もしその人が、僕の事を殺したい程憎んでいたとしても。僕はそれも含めて、全てを受け入れるつもりでいる。」

彼は珍しく真剣な顔をして、そう口にした。

「憎しみも含めて…全てを受け入れる…かぁ。」
「さて…と。身体冷やしちゃう前に、部屋に戻ろう?」
「そうだね。…ありがとうフラン。」
「んー?僕は言いたい事、言っただけだよ?」
「…そっか。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。 知らない生物、知らない植物、知らない言語。 何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。 臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。 いや、変わらなければならない。 ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。 彼女は後にこう呼ばれることになる。 「ドラゴンの魔女」と。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

遥かなる物語

うなぎ太郎
ファンタジー
スラーレン帝国の首都、エラルトはこの世界最大の都市。この街に貴族の令息や令嬢達が通う学園、スラーレン中央学園があった。 この学園にある一人の男子生徒がいた。彼の名は、シャルル・ベルタン。ノア・ベルタン伯爵の息子だ。 彼と友人達はこの学園で、様々なことを学び、成長していく。 だが彼が帝国の歴史を変える英雄になろうとは、誰も想像もしていなかったのであった…彼は日々動き続ける世界で何を失い、何を手に入れるのか? ーーーーーーーー 序盤はほのぼのとした学園小説にしようと思います。中盤以降は戦闘や魔法、政争がメインで異世界ファンタジー的要素も強いです。 ※作者独自の世界観です。 ※甘々ご都合主義では無いですが、一応ハッピーエンドです。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

処理中です...