エテルノ・レガーメ

りくあ

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第13章︰吸血鬼の道

第119話

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「よーし!猫を探すぞー!」

澄み渡った青空の元、ソルティ1人を家に残し、僕達は住宅街へやって来た。

「まずは依頼者の話を聞いてみないとね。」
「家はこの辺りのはずだけど…。」

道の両脇に似た構造の家が立ち並び、どこが目的の家なのか全く検討がつかなかった。隣を歩いていたスレイが、前方を歩いていたお爺さんに向かって駆け寄って行った。

「お爺さん!ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかな?」
「ん?なんじゃ?」
「この家に行きたいんだけど…どの家だかわかる?」
「どれどれ…。そこは、わしの家じゃな。」
「えぇ!?じゃあ、飼い猫の捜索を依頼したのってお爺さんなの?」
「ほう!お前達がギルドの者か。わしの可愛いチコちゃんは見つかったのかの?」

偶然道を尋ねたお爺さんが依頼者本人だった事に驚きつつ、慌てて2人の元に駆け寄った。

「えっと…そのチコちゃんを探す上で、詳しい話が聞きたくて来たんです。チコちゃんが居なくなったのは、いつ頃ですか?」
「そうじゃのう…。2、3日前じゃったかのう…。」
「その頃、何か変わった事はありませんでしたか?」
「変わった事と言うと…しばらく食欲が無かったように見えたのぉ。あとは…毎日外へ遊びに行くはずなんじゃが、居なくなる前日は家で大人しくしとったのぉ。」
「家で大人しくしていたのに、急に家を出ていくなんて変じゃないか?」
「もしかして…。」
「どうしたんですか?何か思い当たる節が?」
「それは…後で話すよ。お爺さん、チコちゃんの特徴を教えてもらえませんか?」
「チコちゃんは、白い毛並みの中に茶色と黒が混じった…」

お爺さんは、それはそれは楽しそうに飼い猫の特徴について語り始めた。余程大事に育てていた飼い猫のようで、飼い始めた頃の話から、どんな物を好んで食べていたかなどを事細かく話してくれた。
一旦街の中央にある広場に戻り、今後の予定を立てる事にした。

「さっき言わなかった話なんだけど…猫って、死に際になると飼い主の元を離れるって本で読んだ事があるんだ。」
「確かに爺さんの猫は、かなり歳とってるみたいだったな。」
「もし、死を悟って家を出たとしたら…どこに向かうのかな…?」
「俺等は猫じゃないからわからねーよなぁ~。人間だったら、家を出ないで大人しくしてるもんだろ?」
「自分が信頼している人に、苦しんでいる所を見られたくないんじゃないかな?」
「お前、猫の気持ちがわかるのか?」
「いや…わからないけど、なんとなく…。」
「とにかく歩いて探してみる?」
「どのみちそれしか方法はないな。死にかけてるなら、物陰や路地みたいな所にいる可能性が高そうじゃないか?」
「人気がなくて、目立たない場所を重点的に探すといいかもね。」
「街の中なら4人で行動するより、別行動を取った方が良さそうじゃない…?」
「じゃあそうしよう。日が落ちる前にここに戻って来てね。」

こうして僕達は東西南北の4方向に分かれ、猫の捜索を始めた。



街の中心から北に進むにつれて緑が多くなり、近くに小川が流れているせいか空気が澄んでいるように感じた。

「この辺りは自然が多くて人気がなさそうだし…もしかしたらチコが来てるかも…。」

吸血鬼となった今でも、さすがに猫の考えている事まではわからない。少々強引ではあるが、自分が猫になったつもりで川辺を歩き、さらに北へ向かった。

「こんな時、ミグがいたらなぁ…匂いですぐ見つけられそうなのに…。さすがに僕じゃ動物の匂いは分からないし…。…ん?なんか、変な匂いがするような…?」

草木の匂いの中に別の匂いが混ざっている事に気づき、川辺を離れて茂みを掻き分けた。するとそこには、チコ思われる白い毛並みの猫が横たわっていた。

「まさか…この子がチコ…?」

全身に獣の爪痕が残り、傷の周りが赤く染っている。取り付けられた首輪にはチコの名前がかかれたプレートが下げられていた。
やっとの思いで見つけた依頼主の飼い猫は、僕の推測通り既に亡くなった後だった。押し寄せる悲しみをグッと堪え、自身の上着を脱いでチコの身体を優しく包み込んだ。



「おかえりルカ。そっちはどうだった?」
「見つけたよ、チコ。」
「え、ほんと!?どこにいたの?」
「北の川辺で…既に息を引き取ってたよ。」

僕は腕に抱えた上着をほんの少しだけめくり、安らかに眠っているチコの顔を見せた。

「そんな…もう死んでたなんて…。」
「やっぱりルカの言う通り、死期が近かったって事だろうな。別に俺等が気に病む事じゃない。」
「亡くなったのはどうしようもないけど…誰もいない所でただ置かれるのも可哀想だし、せめてお爺さんの元に連れてってあげようよ。」

こうして僕達は、チコの抜け殻をお爺さんに引き渡し、家へ帰って行った。



「ん~!今日もいい天気だな~…。」
「ほんと、のどかでいい天気だね~。」

翌日、僕達はリビングのソファーに身体を投げ出し、窓から差し込む陽の光を全身に浴びていた。この日はソルティの診療日という事もあり、家の中には僕とガゼルの2人しかいない。
頼まれていた薬草の納品と飼い猫の捜索を終えた事で、ギルドの依頼が全く無い状態になってしまった。オズモールさんにその事を話すと、この街へ来てから休暇を取っていない事を指摘され、この機会に身体を休めた方がいいという結論に至った。
その提案に従ったのはいいものの、何もせずにただ待つというのはとても暇で、時間が過ぎるのがとてもゆっくりに感じた。

「ねえ…やっぱり、オズモールさんの研究を手伝いに行こうよ。なんか…僕達だけこうして休んでるのって、すごく悪い気がしない?」
「そのオズモールから休むように言われたんだぞ?研究室に行ったって、追い払われるだけだろ。」
「そっかぁ…。」
「たまには何もせずにゴロゴロしたっていいんだよ。人も吸血鬼も、適度な休息は必要だ。」
「何か出来そうな事はないかな~…。」
「おい。俺の話聞いてたのか?」

ソファーから立ち上がり、何か手伝える事が無いか家の中を歩き始めた。

「そーだガゼル!家具を作ろうよ!」
「これだけなんでも揃ってるのに、一体何を作るんだよ。」
「ほら、テーブルのこの部分…傷ついちゃってるでしょ?それにほら、この椅子も1箇所だけすり減ってガタガタし始めてるし…。」
「それなら新しく作るより直した方が早いぞ?」
「え!直せるの!?」
「このくらい楽勝だ。まぁ見てろって。」

すると彼は荷物の中にあった道具を駆使し、家にある家具を次々と修理していった。



「おいルカ!」
「あれ?もう終わったの?」

調理場でバケツに水を溜めていると、リビングにいたはずのガゼルが走ってやってきた。

「今度は何を始める気だ!?俺が家具を直してる時に…!」
「ホコリが気になっちゃって、掃除をしようかなって。拭き掃除くらいならいいかなぁと…」
「お前…休暇の意味わかってるのか?これじゃ普段と変わらねーだろ!」 
「どうしてそんなに怒ってるの…?大丈夫!ソルティ達が戻ってくるまでには終わらせるから!ね?」
「怒ってる訳じゃ…!…はぁ。お前に何もするなって言う方が間違ってそうだな…。」

なんとかガゼルをなだめると、雑巾を片手にリビングの掃除を始めた。



「あ、ルカ!ただい…」
「まだまだ行くぞルカ!」
「望むところだ!」
「おらぁ…!」

少し離れた場所から、細い丸太を手にしたガゼルが腕を振りかぶり、僕に向かってそれを投げた。

「“…トルメンタ!”」

目の前に迫って来た複数の丸太に向けて、風属性の魔法を発動した。手から放たれた風の鋭さで丸太が4つに割れ、地面に散らばった。

「ちょ…ちょっと!2人共何やってるの!?喧嘩はやめろよ!」
「あ、おかえりスレイ。レヴィもおかえり!」
「何言ってんだよ…。喧嘩じゃなくて、れっきとした薪割りだ。」
「えっ?これ、薪割りだったの…?」
「それもこんなに沢山…。全部、ルカさんが魔法でやったの?」
「うん、そうだよ。」

リビングの掃除を終えた後、庭に積み上げられた木の山を薪に変える作業をしていた。斧を振るよりも魔法を活用した方が効率もよく、色々と都合がいい。その様子を見た2人には、僕達が喧嘩をしているように見えたようだ。

「すっげえ~!魔法って便利だよなぁ。俺も使えたら良かったのに。」
「そういう兄さんは、魔法の勉強をしなかったじゃないか。」
「だって面倒くさいじゃん…。」
「その調子だと、いつまで経っても無理だろうな。」
「ところで…ルカさんは今日、お休みする日だって聞いたんですけど…。」
「そうなんだよ。そのはず…だったんだけどな…。」
「あはは…僕がじっとしていられなくてね…。何か出来る事はないかなって思ってたら、外に木が積み上げられてるのが見えたから薪割りをしてたんだ。」
「俺等としてはありがたいけど…。オズモールさんが知ったら怒るよ?」
「そうだね…さすがにそろそろやめておこうかな。…あれ?ソルティはどうしたの?」

2人が家を離れていたのは、ソルティの付き添いだと聞いていた。しかし、その彼女の姿はどこにも見当たらない。

「女子会だってさ。」
「なんだそれ?」
「女の子同士で集まって、お茶を飲みながら色んな話をするんだって聞いたことあるよ?」
「なら、僕達もそれしようよ!女子じゃないから…男子会かな?」
「いいねー!やろやろ!」

紅茶とお菓子を用意し、男4人の女子会ならぬ男子会が行われる事となった。
話題は自然とそれぞれの好きな物の話になり、時間はあっという間に過ぎて行った。
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