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第4章:記憶の欠片
第38話
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「さてと…じゃあ、そろそろエーリに帰ろっか。」
「えっと…イリスシティアは…。」
荷物の中から引っ張り出した紙を、身体の前で広げた。これは昨日タクトから受け取った地図で、人間と吸血鬼の全ての領土が記されている。
「おーいフラン。あんまり離れると迷子になるぞー?」
「あ、すぐ行きま…」
「わ!」
地図をしまおうと鞄に気を取られていると、前方を歩いていた少年を突き飛ばしてしまった。
その場に倒れ込んだ少年の前に跪き、手を差し伸べる。
「ご、ごめんなさい!怪我はありませんか?」
「僕の方こそ…ごめん…なさい。」
「立てますか?」
「う、うん…!」
少年は、差し出された僕の手をゆっくりと握った。
「うっ…ゲホッ…!」
「え…?」
彼の口から、赤い液体が零れ始めた。あまりに突然の事で、僕はその場に座り込んでしまう。
「おい!どうした!」
「フランくん…!大丈夫…!?」
「この子が…と、突然…血を…。」
「とにかくこの子を、早く医者の所に連れていかないと!」
「俺が背負うよ!ミグ、手伝って!」
「わかった!」
「私もタックと一緒に行く!ララは、フランの事お願いね!」
「う、うん!」
少年を背負ったタクトさんは、ルナとミグを連れて広場の方向へ走って行った。
「フランくん。ちょっとそこのベンチで休もう?…立てる?」
「だ、大丈夫です。少し驚いただけなので…。」
「そんな…無理しなくても…。」
「僕ならもう平気です。彼等を追いかけましょう。」
広場を抜けてしばらく歩くと、タクトさんが向かったであろう診療所を見つけた。中に入ると、細長い椅子に座る2人の姿があった。
「タクトさん…!あの少年は、どうなりましたか?」
「今、治療を受けている所だよ。フランはもう、大丈夫?」
「すみません…僕のせいで…。」
「俺等の事は気にしなくていいよ。あの子…大したこと無いといいけど…。」
「今は、とにかく待つしかないみたい。」
「そうですか…。」
それからしばらく待っていると、診療所の扉が荒々しく開かれた。
「我が息子はどこにいる!」
「お、落ち着いてください…!今、診察中で…」
「なぜ診察しなければならない!息子の身に、一体何が起きたというのだ!」
「そちらの方がお連れに…」
受付の女性がタクトさんの方を指さすと、男性は歩み寄って彼の胸ぐらを掴んだ。
「貴様が息子をこんな目にあわせたのか!」
「待って下さい!彼は、ここに連れて来ただけです。僕が息子さんとぶつかって…そしたら急に血を吐き出して…。」
「血を吐き出しただと!?一体何をしたと言うのだ!」
「他の患者様の迷惑になります…!どうか、お話は外で…」
「こい!牢屋にぶち込んでやる!」
「フランくん…!」
男に腕を捕まれ、そのまま外へと引きずり出された。何やら大きな建物に連れていかれ、薄暗い地下の一室に閉じ込められてしまった。
「外に見張りをつけておいてやる。逃げられると思うなよ!」
扉の外から男の怒鳴り声が聞こえ、その足音は遠のいていった。
「はぁ…参ったな…。」
「俺様に任せておけば、こんな事にはならずに済んだだろうがな。」
「そう思うなら、もっと早く助けてよ…。」
「あの男はああ見えて、王族の末裔だ。下手に抵抗すれば、もっと面倒な事になりかねん。」
「そうなんだ…。じゃあ、仕方ないね。」
「ここを出る方法だが…」
「待ってルドルフ。誰か来る。」
「見張りとやらか…。せっかくの機会だ。ゆっくり休む時間もなかったし、今のうちに寝ておけ。どうせ時間はたっぷりあるんだからな。」
彼はそう言い残すと、口を閉ざして黙り込んだ。
姿は見えないが、見張りと思われる人物が扉の前に立っている気配がする。
彼が最後に言い残した言葉通り、壁にもたれかかってゆっくり目を閉じた。
「遅かったな。待ちくたびれたぞ。」
「え…何この部屋…。」
天井と壁だけでなく、周りを取り囲むように赤い家具ばかりが置かれていた。僕にそっくりの人物が、足を組んでベッドの端に座っている。
「貴様にもわからんか。この素晴らしさが。」
「他に誰か来た事があるの?」
「…さぁな。」
「なんか…自分が目の前に座ってるって変な感じだね。」
「それは俺様も同じだ。」
僕は近くに置かれたソファーに歩み寄り、ゆっくりと腰を下ろした。
「そういえば、脱出方法について何かいい案があるみたいだったけど…なんなの?」
「扉の下に隙間があった。そこから手紙を飛ばしてやれば、奴等に居場所を知らせる事が出来るだろう。」
「それって…脱出なの?」
「さっきも言ったが、あの男は王族の末裔。下手に騒げば大事になりかねない。」
「つまりは、大人しく待つしかないって事だね。」
「そういう事だ。お前にそのソファーを貸してやる。適当に休め。」
「え?ベッドじゃだめなの?」
「これは俺様専用だ。勝手に寝るんじゃないぞ。」
「どこか行くの?」
「手紙を出してくる。」
彼はそう言い残すと、部屋の扉を開けて外に出て行ってしまった。
「休めって言われてもなぁ…。」
座っていたソファーに横たわり、天井を見上げた。これでもかと言う程、鮮やかな赤色が視界いっぱいに広がる。
「こんな目が痛くなるような色してたら、落ち着いて寝られないよ…。」
静まり返った部屋の中で、騎士学校で過ごしていた時の事が頭をよぎった。
「ニアやシューは元気かな…。」
彼女達には何の相談もなく、突然姿を消してしまった。きっと今頃、心配しているに違いない。
「そうだ!後で、ルドルフに手紙を飛ばしてもらおう。でもこの状況、どう伝えるべきかな…。」
しばらく手紙の内容を考えていると、徐々に瞼が重くなっていき、いつの間にか夢の中へと引きずり込まれていった。
「え?僕の血が欲しい?」
向かいのソファーで紅茶を楽しむ男が、僕の一言でその手を止めた。カップをテーブルに置き、組んでいた足を解いてこちらを見つめる。
「はい。実はその…お恥ずかしながら、動物の血を吸うのには…まだ抵抗があって…。こんな事を頼めるのは、ラギト様しか居ないんです。」
「なるほどね…。かわいい愛弟子の為にも、剣の師匠である僕がひと肌脱いであげたい所…なんだけど…。あいにく、同性でのやり取りは僕の趣味じゃないんだ。」
「そうですよね…。すみません。こんな事、お願いしてしまって…。」
「そんな顔しないでよフラン~。そうだ!僕からヴェラに頼んでみるよ。出来るだけ、副作用の少ない薬をお願いするから。ね?」
「ありがとうございます。ラギト様に相談してよかったです。」
「じゃあ、早速話をつけてくるよ。後片付けは任せてもいいかな?」
「もちろんです。よろしくお願いします。」
すると彼は、颯爽と部屋を後にした。紅茶を飲み干したカップを両手に持ち、部屋を出て食堂へ向かう。
彼の血を手に入れるのは、想像以上に難しいらしい。以前も、彼が怪我をした際に血の入手を試みたが、見事に丸め込まれてしまったのだ。
僕がレーガイルラギトの血を欲しがるのには、ある理由があった。僕は、気がついたらレジデンスと呼ばれるこの建物に居た。しかし、それ以前の記憶を全く覚えていないのだ。ここで長年暮らしている、幹部と呼ばれる5人に話を聞いてみても「あなたはここで産まれた。」と、全員が口を揃えてそう言った。
本によると、身体を巡る新鮮な血液にはその人物の記憶が眠っているという。本当に僕はここで産まれたのか、ここへ来る以前は、どこで何をしていたのか…それを知る為に、僕は彼の血が欲しいのだ。
「あら?フランではありませんこと?食堂に来るなんて、珍しいですわね。」
考え事をしていると、いつの間にか食堂の洗い場に辿り着いていた。女性の声が聞こえて我に返り、彼女の方に身体を向けた。
「先程まで、ラギト様とお茶を飲んでいたんです。僕はその片付けに…リーシア様は、どうしてここに?」
「私は、これから食事の準備ですわ。あなたの分もありますわよ。」
「あ、すみません…僕、これからエーリに行く用事があるので…。」
「あら…そうですの?それは残念ですわ。」
「せっかく用意して下さってるなら…帰ってきてから頂いてもいいですか?」
「えぇ、もちろんですわ。」
「ありがとうございます。」
「そのカップ、ついでに私が片付けておきますわ。」
「い、いえ!これは僕が…」
「少しは、お姉さんである私を頼ってくださいまし。早くしないと、用事に遅れてしまいますわよ?」
「じゃあ…お言葉に甘えて。ありがとうございますリーシア様。」
彼女にカップを手渡し、食堂を後にした。部屋に戻って荷物をまとめ、外へ向かう。
僕は先程、彼女に嘘をついた。用事があるのは本当だが、向かう場所はエーリではない。身にまとった白いローブを深々と被り、人通りの少ない裏路地へと入っていった。
「お。ランじゃねぇか。久しぶりだな。」
しばらく路地を進んでいくと、見覚えのある男に声をかけられた。彼は、これから向かう目的地の見張り役である。
「頭領は今どこに?」
「アジトにいると思うぞ?」
「わかった。」
男の横を通り過ぎると、僕の行く手を阻むように彼が立ち塞がった。
「おいおい。それだけかよ~。久しぶりに会ったんだから、少しくらい話そうや~。」
「そんな時間はない。」
「ちぇ。相変わらず釣れねぇ奴だな。」
「これから頭領に会う。邪魔だからどいて。」
彼の身体を押し退け、路地の奥へと歩みを進めた。
「えっと…イリスシティアは…。」
荷物の中から引っ張り出した紙を、身体の前で広げた。これは昨日タクトから受け取った地図で、人間と吸血鬼の全ての領土が記されている。
「おーいフラン。あんまり離れると迷子になるぞー?」
「あ、すぐ行きま…」
「わ!」
地図をしまおうと鞄に気を取られていると、前方を歩いていた少年を突き飛ばしてしまった。
その場に倒れ込んだ少年の前に跪き、手を差し伸べる。
「ご、ごめんなさい!怪我はありませんか?」
「僕の方こそ…ごめん…なさい。」
「立てますか?」
「う、うん…!」
少年は、差し出された僕の手をゆっくりと握った。
「うっ…ゲホッ…!」
「え…?」
彼の口から、赤い液体が零れ始めた。あまりに突然の事で、僕はその場に座り込んでしまう。
「おい!どうした!」
「フランくん…!大丈夫…!?」
「この子が…と、突然…血を…。」
「とにかくこの子を、早く医者の所に連れていかないと!」
「俺が背負うよ!ミグ、手伝って!」
「わかった!」
「私もタックと一緒に行く!ララは、フランの事お願いね!」
「う、うん!」
少年を背負ったタクトさんは、ルナとミグを連れて広場の方向へ走って行った。
「フランくん。ちょっとそこのベンチで休もう?…立てる?」
「だ、大丈夫です。少し驚いただけなので…。」
「そんな…無理しなくても…。」
「僕ならもう平気です。彼等を追いかけましょう。」
広場を抜けてしばらく歩くと、タクトさんが向かったであろう診療所を見つけた。中に入ると、細長い椅子に座る2人の姿があった。
「タクトさん…!あの少年は、どうなりましたか?」
「今、治療を受けている所だよ。フランはもう、大丈夫?」
「すみません…僕のせいで…。」
「俺等の事は気にしなくていいよ。あの子…大したこと無いといいけど…。」
「今は、とにかく待つしかないみたい。」
「そうですか…。」
それからしばらく待っていると、診療所の扉が荒々しく開かれた。
「我が息子はどこにいる!」
「お、落ち着いてください…!今、診察中で…」
「なぜ診察しなければならない!息子の身に、一体何が起きたというのだ!」
「そちらの方がお連れに…」
受付の女性がタクトさんの方を指さすと、男性は歩み寄って彼の胸ぐらを掴んだ。
「貴様が息子をこんな目にあわせたのか!」
「待って下さい!彼は、ここに連れて来ただけです。僕が息子さんとぶつかって…そしたら急に血を吐き出して…。」
「血を吐き出しただと!?一体何をしたと言うのだ!」
「他の患者様の迷惑になります…!どうか、お話は外で…」
「こい!牢屋にぶち込んでやる!」
「フランくん…!」
男に腕を捕まれ、そのまま外へと引きずり出された。何やら大きな建物に連れていかれ、薄暗い地下の一室に閉じ込められてしまった。
「外に見張りをつけておいてやる。逃げられると思うなよ!」
扉の外から男の怒鳴り声が聞こえ、その足音は遠のいていった。
「はぁ…参ったな…。」
「俺様に任せておけば、こんな事にはならずに済んだだろうがな。」
「そう思うなら、もっと早く助けてよ…。」
「あの男はああ見えて、王族の末裔だ。下手に抵抗すれば、もっと面倒な事になりかねん。」
「そうなんだ…。じゃあ、仕方ないね。」
「ここを出る方法だが…」
「待ってルドルフ。誰か来る。」
「見張りとやらか…。せっかくの機会だ。ゆっくり休む時間もなかったし、今のうちに寝ておけ。どうせ時間はたっぷりあるんだからな。」
彼はそう言い残すと、口を閉ざして黙り込んだ。
姿は見えないが、見張りと思われる人物が扉の前に立っている気配がする。
彼が最後に言い残した言葉通り、壁にもたれかかってゆっくり目を閉じた。
「遅かったな。待ちくたびれたぞ。」
「え…何この部屋…。」
天井と壁だけでなく、周りを取り囲むように赤い家具ばかりが置かれていた。僕にそっくりの人物が、足を組んでベッドの端に座っている。
「貴様にもわからんか。この素晴らしさが。」
「他に誰か来た事があるの?」
「…さぁな。」
「なんか…自分が目の前に座ってるって変な感じだね。」
「それは俺様も同じだ。」
僕は近くに置かれたソファーに歩み寄り、ゆっくりと腰を下ろした。
「そういえば、脱出方法について何かいい案があるみたいだったけど…なんなの?」
「扉の下に隙間があった。そこから手紙を飛ばしてやれば、奴等に居場所を知らせる事が出来るだろう。」
「それって…脱出なの?」
「さっきも言ったが、あの男は王族の末裔。下手に騒げば大事になりかねない。」
「つまりは、大人しく待つしかないって事だね。」
「そういう事だ。お前にそのソファーを貸してやる。適当に休め。」
「え?ベッドじゃだめなの?」
「これは俺様専用だ。勝手に寝るんじゃないぞ。」
「どこか行くの?」
「手紙を出してくる。」
彼はそう言い残すと、部屋の扉を開けて外に出て行ってしまった。
「休めって言われてもなぁ…。」
座っていたソファーに横たわり、天井を見上げた。これでもかと言う程、鮮やかな赤色が視界いっぱいに広がる。
「こんな目が痛くなるような色してたら、落ち着いて寝られないよ…。」
静まり返った部屋の中で、騎士学校で過ごしていた時の事が頭をよぎった。
「ニアやシューは元気かな…。」
彼女達には何の相談もなく、突然姿を消してしまった。きっと今頃、心配しているに違いない。
「そうだ!後で、ルドルフに手紙を飛ばしてもらおう。でもこの状況、どう伝えるべきかな…。」
しばらく手紙の内容を考えていると、徐々に瞼が重くなっていき、いつの間にか夢の中へと引きずり込まれていった。
「え?僕の血が欲しい?」
向かいのソファーで紅茶を楽しむ男が、僕の一言でその手を止めた。カップをテーブルに置き、組んでいた足を解いてこちらを見つめる。
「はい。実はその…お恥ずかしながら、動物の血を吸うのには…まだ抵抗があって…。こんな事を頼めるのは、ラギト様しか居ないんです。」
「なるほどね…。かわいい愛弟子の為にも、剣の師匠である僕がひと肌脱いであげたい所…なんだけど…。あいにく、同性でのやり取りは僕の趣味じゃないんだ。」
「そうですよね…。すみません。こんな事、お願いしてしまって…。」
「そんな顔しないでよフラン~。そうだ!僕からヴェラに頼んでみるよ。出来るだけ、副作用の少ない薬をお願いするから。ね?」
「ありがとうございます。ラギト様に相談してよかったです。」
「じゃあ、早速話をつけてくるよ。後片付けは任せてもいいかな?」
「もちろんです。よろしくお願いします。」
すると彼は、颯爽と部屋を後にした。紅茶を飲み干したカップを両手に持ち、部屋を出て食堂へ向かう。
彼の血を手に入れるのは、想像以上に難しいらしい。以前も、彼が怪我をした際に血の入手を試みたが、見事に丸め込まれてしまったのだ。
僕がレーガイルラギトの血を欲しがるのには、ある理由があった。僕は、気がついたらレジデンスと呼ばれるこの建物に居た。しかし、それ以前の記憶を全く覚えていないのだ。ここで長年暮らしている、幹部と呼ばれる5人に話を聞いてみても「あなたはここで産まれた。」と、全員が口を揃えてそう言った。
本によると、身体を巡る新鮮な血液にはその人物の記憶が眠っているという。本当に僕はここで産まれたのか、ここへ来る以前は、どこで何をしていたのか…それを知る為に、僕は彼の血が欲しいのだ。
「あら?フランではありませんこと?食堂に来るなんて、珍しいですわね。」
考え事をしていると、いつの間にか食堂の洗い場に辿り着いていた。女性の声が聞こえて我に返り、彼女の方に身体を向けた。
「先程まで、ラギト様とお茶を飲んでいたんです。僕はその片付けに…リーシア様は、どうしてここに?」
「私は、これから食事の準備ですわ。あなたの分もありますわよ。」
「あ、すみません…僕、これからエーリに行く用事があるので…。」
「あら…そうですの?それは残念ですわ。」
「せっかく用意して下さってるなら…帰ってきてから頂いてもいいですか?」
「えぇ、もちろんですわ。」
「ありがとうございます。」
「そのカップ、ついでに私が片付けておきますわ。」
「い、いえ!これは僕が…」
「少しは、お姉さんである私を頼ってくださいまし。早くしないと、用事に遅れてしまいますわよ?」
「じゃあ…お言葉に甘えて。ありがとうございますリーシア様。」
彼女にカップを手渡し、食堂を後にした。部屋に戻って荷物をまとめ、外へ向かう。
僕は先程、彼女に嘘をついた。用事があるのは本当だが、向かう場所はエーリではない。身にまとった白いローブを深々と被り、人通りの少ない裏路地へと入っていった。
「お。ランじゃねぇか。久しぶりだな。」
しばらく路地を進んでいくと、見覚えのある男に声をかけられた。彼は、これから向かう目的地の見張り役である。
「頭領は今どこに?」
「アジトにいると思うぞ?」
「わかった。」
男の横を通り過ぎると、僕の行く手を阻むように彼が立ち塞がった。
「おいおい。それだけかよ~。久しぶりに会ったんだから、少しくらい話そうや~。」
「そんな時間はない。」
「ちぇ。相変わらず釣れねぇ奴だな。」
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