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2.和やかな宴という名の歓迎会
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「それで?これからどうするんだ?」
「これから?うーん。そうですね」
白い湯気が香る飯屋の一角にて、昂遠は手にした箸を卓上に戻しながらフウムと唸った。
店内は本日も満員御礼らしく、どこからかワイワイガヤガヤと賑やかな声が飛び交っている。
【無事に仮の民札を受け取ったぜ記念】に、一緒に飯でもどうだ?今日は祝いだ!じゃんじゃん頼もう!酒も飲もう!心配するな!勿論、金は割り勘だ!と皆に誘われるまま、肩を組み、拳を揺らし足取り軽く飯屋の戸を叩いた昂遠達ご一行は、やや広い六名がけの席に案内されるや否や、どっかと椅子に腰を下ろすと、こげ茶色の机に置かれた菜单表を手に取った。
獣人族ばかりのこの店に、ちょこんと人族の昂遠が混ざっていても誰も気にしないのは、友のおかげだなとふと思う。
「どれにする?」
「そうだなぁ・・・」
「昂遠は?何が食べたい?」
「好きな物があったら遠慮すんな」
「そうだ。この店は何でも美味いぞ」
「え。あっ、私ですか?そうですね・・・」
ほらと渡された菜单表にちらりと目を通していると、慌しく通り過ぎる店員の姿が目に留まった。
小さな木箱を両手に抱えた店員が客の席で何やら黒く光る小さな物を取り出している、かと思えば、入れ違いに鍋を両手に抱えた店員が「熱いので気をつけて下さい!触らないで!」と叫びながら、客の卓に鍋を置き、一礼して去ってしまった。
ここまではよくある普通の光景だったが、昂遠を驚かせたのはその後だった。
鍋をのぞき込んだ客達が一斉に両手を挙げると、待ってましたと言わんばかりに歓声を上げ始めたのだ。
しかしそれは一席では終わらず、周辺の席をも巻き込んでたちまち店内は賑やかな宴と化した。
「・・・えっ?」
その異常な程の熱気を前にして昂遠の眉間には皺が寄り、ポカンと口が開いていく。
「・・・えぇ?」
まさに困惑の一声である。
「何か祝い事でもあったのだろうか・・・いやしかし・・・」
何処からどう見ても常連らしき客と、ご近所さんなのか。はたまた全く見知らぬ誰かさんなのかは定かでは無いけれど、笑顔のままで杯を互いに揺らす光景は端から見て、とても心地の良いものだった。
ただひとつ、「摩訶不思議な料理を注文して始まった」事を除いて・・・。
「普通の鍋料理にしか見えないが・・・はて?」
疑問符飛び交う昂遠を余所に、今度は別の店員が大皿を両手に抱え、客の元へと駆けて行く。
恐らく注文した鍋の具が盛られているのだろう。
その皿を前にした瞬間、ピタリと歓声が止まってしまった。
「?」
良く見れば、どの客も姿勢を正したまま、静かに席に着いている。しかし客の視線は正面に置かれた鍋に向けられており、若干の緊張感さえ漂う始末。
「そっそんなに美味い物が・・・」
無意識にそんな言葉が口から出てしまう。
ふと友獣人達に視線を向けてみれば、彼らはただ苦笑いを繰り返すだけで、熱気とはかけ離れているようだった。
「・・・?」
唐辛子特有の香りを感じながら、客の熱気に圧倒されていた昂遠の視線が店員の蒸籠に向かう。
ここは鍋料理専門の店かと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。
「おっと?」
一瞬、軽く鳴りかけた自身の腹の虫の声に我に返った昂遠は、慌てて菜单表に視線を戻すと、ゆっくりと息を吐きだした。
「これから?うーん。そうですね」
白い湯気が香る飯屋の一角にて、昂遠は手にした箸を卓上に戻しながらフウムと唸った。
店内は本日も満員御礼らしく、どこからかワイワイガヤガヤと賑やかな声が飛び交っている。
【無事に仮の民札を受け取ったぜ記念】に、一緒に飯でもどうだ?今日は祝いだ!じゃんじゃん頼もう!酒も飲もう!心配するな!勿論、金は割り勘だ!と皆に誘われるまま、肩を組み、拳を揺らし足取り軽く飯屋の戸を叩いた昂遠達ご一行は、やや広い六名がけの席に案内されるや否や、どっかと椅子に腰を下ろすと、こげ茶色の机に置かれた菜单表を手に取った。
獣人族ばかりのこの店に、ちょこんと人族の昂遠が混ざっていても誰も気にしないのは、友のおかげだなとふと思う。
「どれにする?」
「そうだなぁ・・・」
「昂遠は?何が食べたい?」
「好きな物があったら遠慮すんな」
「そうだ。この店は何でも美味いぞ」
「え。あっ、私ですか?そうですね・・・」
ほらと渡された菜单表にちらりと目を通していると、慌しく通り過ぎる店員の姿が目に留まった。
小さな木箱を両手に抱えた店員が客の席で何やら黒く光る小さな物を取り出している、かと思えば、入れ違いに鍋を両手に抱えた店員が「熱いので気をつけて下さい!触らないで!」と叫びながら、客の卓に鍋を置き、一礼して去ってしまった。
ここまではよくある普通の光景だったが、昂遠を驚かせたのはその後だった。
鍋をのぞき込んだ客達が一斉に両手を挙げると、待ってましたと言わんばかりに歓声を上げ始めたのだ。
しかしそれは一席では終わらず、周辺の席をも巻き込んでたちまち店内は賑やかな宴と化した。
「・・・えっ?」
その異常な程の熱気を前にして昂遠の眉間には皺が寄り、ポカンと口が開いていく。
「・・・えぇ?」
まさに困惑の一声である。
「何か祝い事でもあったのだろうか・・・いやしかし・・・」
何処からどう見ても常連らしき客と、ご近所さんなのか。はたまた全く見知らぬ誰かさんなのかは定かでは無いけれど、笑顔のままで杯を互いに揺らす光景は端から見て、とても心地の良いものだった。
ただひとつ、「摩訶不思議な料理を注文して始まった」事を除いて・・・。
「普通の鍋料理にしか見えないが・・・はて?」
疑問符飛び交う昂遠を余所に、今度は別の店員が大皿を両手に抱え、客の元へと駆けて行く。
恐らく注文した鍋の具が盛られているのだろう。
その皿を前にした瞬間、ピタリと歓声が止まってしまった。
「?」
良く見れば、どの客も姿勢を正したまま、静かに席に着いている。しかし客の視線は正面に置かれた鍋に向けられており、若干の緊張感さえ漂う始末。
「そっそんなに美味い物が・・・」
無意識にそんな言葉が口から出てしまう。
ふと友獣人達に視線を向けてみれば、彼らはただ苦笑いを繰り返すだけで、熱気とはかけ離れているようだった。
「・・・?」
唐辛子特有の香りを感じながら、客の熱気に圧倒されていた昂遠の視線が店員の蒸籠に向かう。
ここは鍋料理専門の店かと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。
「おっと?」
一瞬、軽く鳴りかけた自身の腹の虫の声に我に返った昂遠は、慌てて菜单表に視線を戻すと、ゆっくりと息を吐きだした。
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