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2.和やかな宴という名の歓迎会
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「ほう」
この店は鍋が有名らしく、菜单表には鍋料理の具材と湯の名がずらりと明記されている。
数種類の湯と具材の中から、好きな物を選び注文する事が出来るとあって、どの客も店員に菜单表を見せながら、何度も注文を繰り返している。
「肉と魚・・・野菜に団子・・・ほうほう」
昂遠自身、まだ火鍋は食べた事が無い。だからではないが、具材と湯の名前をジッと眺めてみても、それがいったいどのような味なのか、皆目見当がつかないままだ。
「決まったか?」
「ああ、決まった」
熊の獣人族、梠の声に同じ席についていた鳥の獣人族、寉が頷く。
栗色の短い髪に、のんびりとした口調が魅力的な青年だ。
はたと見ただけでは気付かないが、人族と変わらぬ腕には透明な鳥の羽がうっすらと生えており、鳥の血を引く獣人族なのだとすぐに分かる。
彼は隣の席に着いている同じ鳥の獣人族の青年を見ながら、優しい口調で問いかけた。
「お前も何にするか決まった?」
「あ・・・うん」
彼の名前は竺といい、寉と同じく鳥の獣人族だ。
愁いを帯びた紫黒色の瞳に、肩まで伸びた漆黒の髪。
陶器のような白い肌に、薄く紅を差したような艶のある唇と美しく高い声が神秘的な美青年だ。
ただ、寉とは違い、左側の上半身は人族と何ら変わらないが、右の上半身は黒羽が生えており、鳥の羽では物を上手く掴めない為、左側を使う事が多いらしい。
自分と違う者に対して、嫌悪や偏見を抱いたとしても、それに対して異を唱える事は難しい。
けれどこの国では、違いを認め、受け入れる文化が根底にあるようで、羽を引っかけて頁を捲れるようにと補助具が付いた菜単表を渡してくれた。
きっとそういった事は、この店以外でも変わらない日常の一コマなのだろう。
なんだかそれがとても嬉しくて、昂遠は心の奥が温かくなるのを感じていた。
「あー・・・今日は歩いたなぁぁ」
その隣では、サラサラと透き通るような金髪が魅力的な狐の獣人族の青年、洓が席に着いたまま、うーんと腕を伸ばしている。
その隣では猫の獣人族、匝が「おなかすいたよー。腹減ったよー」と唇を尖らせながら椅子を揺らしていた。
「おうい」
「はい!ただいま!」
「あっそうだ!しまった!」
隣に座っていた熊耳の梠が店員を呼ぶ声に、若干の焦りを感じつつ、ここは皆が注文する料理に合わせてみるのも悪くはないなと考えた昂遠は、まずは皆の声に耳を傾けてみる事にした。
この店は鍋が有名らしく、菜单表には鍋料理の具材と湯の名がずらりと明記されている。
数種類の湯と具材の中から、好きな物を選び注文する事が出来るとあって、どの客も店員に菜单表を見せながら、何度も注文を繰り返している。
「肉と魚・・・野菜に団子・・・ほうほう」
昂遠自身、まだ火鍋は食べた事が無い。だからではないが、具材と湯の名前をジッと眺めてみても、それがいったいどのような味なのか、皆目見当がつかないままだ。
「決まったか?」
「ああ、決まった」
熊の獣人族、梠の声に同じ席についていた鳥の獣人族、寉が頷く。
栗色の短い髪に、のんびりとした口調が魅力的な青年だ。
はたと見ただけでは気付かないが、人族と変わらぬ腕には透明な鳥の羽がうっすらと生えており、鳥の血を引く獣人族なのだとすぐに分かる。
彼は隣の席に着いている同じ鳥の獣人族の青年を見ながら、優しい口調で問いかけた。
「お前も何にするか決まった?」
「あ・・・うん」
彼の名前は竺といい、寉と同じく鳥の獣人族だ。
愁いを帯びた紫黒色の瞳に、肩まで伸びた漆黒の髪。
陶器のような白い肌に、薄く紅を差したような艶のある唇と美しく高い声が神秘的な美青年だ。
ただ、寉とは違い、左側の上半身は人族と何ら変わらないが、右の上半身は黒羽が生えており、鳥の羽では物を上手く掴めない為、左側を使う事が多いらしい。
自分と違う者に対して、嫌悪や偏見を抱いたとしても、それに対して異を唱える事は難しい。
けれどこの国では、違いを認め、受け入れる文化が根底にあるようで、羽を引っかけて頁を捲れるようにと補助具が付いた菜単表を渡してくれた。
きっとそういった事は、この店以外でも変わらない日常の一コマなのだろう。
なんだかそれがとても嬉しくて、昂遠は心の奥が温かくなるのを感じていた。
「あー・・・今日は歩いたなぁぁ」
その隣では、サラサラと透き通るような金髪が魅力的な狐の獣人族の青年、洓が席に着いたまま、うーんと腕を伸ばしている。
その隣では猫の獣人族、匝が「おなかすいたよー。腹減ったよー」と唇を尖らせながら椅子を揺らしていた。
「おうい」
「はい!ただいま!」
「あっそうだ!しまった!」
隣に座っていた熊耳の梠が店員を呼ぶ声に、若干の焦りを感じつつ、ここは皆が注文する料理に合わせてみるのも悪くはないなと考えた昂遠は、まずは皆の声に耳を傾けてみる事にした。
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