無職無双 ～現実世界で無職になって絶望。異世界転生しても無職のままで絶望。だが、無職こそ最強の世界だった無職転生物語～

第一章 ミズガルズの層

第二十六話 １００層フロアボスを倒そう 中編 ～集団詠唱魔法発動した件～

　ダイアナが発した集団詠唱落雷(クラスターサンダー)は餓鬼(ガキ)へと向かって一直線に進む。
　その時、餓鬼は異常に大きな口を更に大きく開けた。
　大きな口は周囲の大気を吸い込み渦を巻いている。
　集団詠唱落雷(クラスターサンダー)は餓鬼の口の中へと吸収された。

「グアップ！」

　餓鬼はゲップのような気持ち悪い鳴き声を発した。
　ガマガエルのような顔で恍惚の表情を浮かべている。
　餓鬼は美味しくRPを頂いたようだ。
　餓鬼のRPが上がった。

「ま、まずい。師匠！　餓鬼のRPが１１００万へ上がりました！」
「餓鬼は口から全ての攻撃を吸収するわさ。
　まさか自分自身の１０倍の出力まで食ってしまうなんて誤算だわさ」

　餓鬼の口が再度大きく開くと奥から青い光が溢れ出してきた。
　
「攻撃がくるわさ！」

　俺とイズン師匠はダイアナの元へと駆け出した。
　カール、アイラ、ノルも後に続く。
　
　餓鬼の口から発せられた。
　巨大な閃光がダイアナへと向けて発せられた。

「アルス！　RP５０万の攻撃だわさ！」
「わかりました！」
「フレイヤ！　障壁を展開だわさ！」
「はい！」

　餓鬼の口から発せられた青い光はフレイヤの張った障壁で完全に遮断された。
　俺が１００万のRPをフレイヤへわけ、フレイヤが６０万の障壁を張ったのだ。
　訓練の成果が出た。
　力尽きて地面へと座り込んだダイアナが驚いた表情で言った。

「ご、ごめんね。アルスちゃん。
　だけど、ここまで強くなっているなんてうれしいわ。
　イズンもありがとう。期待以上よ」
「あんたは後ろへ下がって休んでなさい」

　イズン師匠はダイアナへそう言うと餓鬼へ向かって構えた。

「アルス！　訓練の通りやるわよ！
　予定通りRPを全員が２００万になるようにわけてちょうだい！」
「まかせて下さい！」

　カールへ１００万。
　イズン師匠へ１５０万。
　フレイヤ、アイラ、ノルへ２００万ずつRPをわけた。

　餓鬼　１０５０万
　イズン師匠、カール、フレイヤ、アイラ、ノル　各２００万
　俺　４５０万

「みんな！　やるわさ！」
「はい！」

　イズン師匠がRP１０万を消費した魔法攻撃。
　カール、アイラ、ノルがRP１０万を消費した直接攻撃。
　フレイヤは回復魔法のため待機。
　俺はRP配分のため待機しつつRPの測定、餓鬼のスキが出来たら一気に攻撃する。

　餓鬼はイズン師匠の発した落雷魔法(サンダー)をまたしても吸収。
　餓鬼のRPが１０６０万へとアップ。
　しかし、カールの手刀による斬撃が餓鬼の左手を切り裂き、
　アイラの爆炎を伴った拳は餓鬼の横っ腹にヒット、
　ノルのナイフが餓鬼の左足を切り裂いた。
　RPは９９０万へとダウン。

「なーんだ。ちょっともの足りないかもね」

　カールは余裕の表情で言った。

「カール。油断するんじゃないわさ。こいつの攻撃はまだ未知数な所があるわさ」
「そうだね。でも一気に決めちゃうよ」
「ノルも決めるニャ！」

　カールとノルの調子は最高潮のようだ。

「久しぶりの戦い。ワタシも全力でいくわよ！」

　アイラも戦いに高揚している。

「ダメージを受けたら私が居ます。安心して下さい！」

　フレイヤのサポートも完璧だ。
　これまでの訓練の成果。
　チームワーク。
　全てが完璧に調和している。

　周囲で俺たちの様子を眺めていたウルージの大隊(バタリアン)は俺達の戦いを唖然と見とれていた。
　ウルージとダイアナも遠くから様子を見ている。
　
「いけるわさ！　このまま攻撃よ！」

　イズン師匠が叫ぶとウルージの大隊(バタリアン)も鼓舞されたように一斉に沸き立った。
　ウルージと大隊(バタリアン)の声援があたりの大気を震えさせる。

「イズン！　少年達よ！　お前たちが頼りである！　頼むぞ！」

　ウルージ大佐が叫んだ。

「行くぞおおおおおおおおおおおおおおおお！」

　俺も叫んだ！

　イズン師匠の落雷魔法(サンダー)、
　カールの手刀、
　アイラの爆撃拳、
　ノルのナイフが餓鬼を次々と襲う。

　RP９５０万……。
　RP８７０万……。
　RP７３０万……。
　RP６４０万……。
　RP５２０万……。
　RP３３０万……。
　RP２１０万……。
　RP１５０万……。
　RP　８０万……。

　餓鬼のRPは残りわずか。
　俺が一気にここでレーヴァテインによる一撃をお見舞いすればいける！

「アルス！　今だわさ！」

　RP１００万をレーヴァテインに込めて餓鬼へ向かって一撃を放った。
　
「な、なん……だと？」

　餓鬼の両腕が顔となり。
　俺の攻撃を右腕の顔の口が吸収した。
　餓鬼のRPは４８０万へと回復した。

　餓鬼　４８０万
　イズン師匠、カール、フレイヤ、アイラ、ノル　各１０万
　俺　３５０万

「ま、まずいわさ。
　全体のRPを合計しても餓鬼単体を上回れない。
　それにこちらの５回攻撃に対して３回吸収されてしまうと餓鬼にダメージを与えられないわさ」

　ウルージの大隊(バタリアン)も力を使い果たし残RPは各個人０に近い。
　かなり戦局はまずい状況だ。

　餓鬼が三頭の口から青い光を放ち光弾を発した。
　フレイヤの障壁を展開。

「RP１０万の攻撃が三連！　３０万だわさ！」

　すかさずフレイヤへ３０万のRPを渡してフレイヤは障壁を強化する。
　なんとか餓鬼の攻撃を防ぐことが出来た。

「迷ってる暇は無い！　いくぜ！」

　カールは餓鬼へと切り込む。
　しかし、攻撃は餓鬼へと吸収された。
　続くアイラ、ノルの攻撃も次々と吸収された。

「仕方ないわさ！」

　イズン師匠の放った落雷魔法(サンダー)は餓鬼を直撃。
　餓鬼のRPは４８０万のままだ。
　カール、アイラ、ノルの攻撃１０万が吸収されて５１０万。
　しかし、イズン師匠の攻撃で４８０万まで削れた。
　これが魔法の効果というやつか。
　そう言えば俺のレーヴァテインの攻撃もRP以上のダメージを相手に与えていた。
　それに餓鬼が一度に吸収できるのは頭の数の攻撃だけ。
　もしかすると、いけるかもしれない。