無職無双 ~現実世界で無職になって絶望。異世界転生しても無職のままで絶望。だが、無職こそ最強の世界だった無職転生物語~

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第二章 アースガルズの層

第三十話 ヴァルキュリアと共闘しよう ~巨人討伐の件~

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 オーディンが執事に伝え誰か呼び出したようだ。
 数分も立たず、さっそうとその人物は現れた。

「我が名はヴァルキュリア。この国の平和を守る者である!」

 青い甲冑に赤いマント。
 赤いマントに槍を持った姿は精悍そのもの。
 金色の長い髪に白い肌に整った顔、まるで天使のように美しい。

「ホッホッホ。
 このヴァルキュリアはこの街イザヴェルの平和を守る者である。
 街の外の魔物の討伐を担当してるのじゃが、今暴れている1つ目の巨人『キュプロクス』は強敵でな。
 心配なのでお主達に同行して欲しいのじゃ」
「オーディン様。お言葉ですがこのような人間の力は必要ありません。我のみで十分です」
「ホッホッホ。まあ、そう言うな。ワシは心配なのじゃ」

 1つ目の巨人『キュプロクス』なんだか心惹かれるものがある見てみたいな。
 しかし、ヴァルキュリアは嫌がっているようだ。

「へーカッコいいじゃん。巨人とか。やろうぜアルス!」

 カールが軽いノリで話かけてきた。

「そうだな。俺も見てみたい」

 フレイヤ、ノル、アイラも賛成のようだ。
 とにかく今は何でもいいから動きたい。
 そして、この世界について知りたい。
 そんな思いが俺達を動かしたような気がした。

「ホッホッホ。みなさん賛成ということで。頼むぞヴァルキュリア」

 オーディンはヴァルキュリアへと念を押すように言った。

「オーディン様がそうおっしゃるのであれば、畏まりました」

 ヴァルキュリアは、やはり不満なのかぶっきらぼうに答えた。


---


 翌日、ヴァルハラの中央広場に集まった。
 「CH-47 チヌーク」に揺られキュプロクス討伐へと向かう。
 今回は大野が同行している。
 キュプロクスの居場所をチヌークに搭載されたRP測定レーダーで特定するためらしい。
 また、戦闘データの収集もかねるということだ。

「楽しみですねぇ。ヴァルキュリアさんとあなた方がどういう戦いをするのか? シッシ」

 大野は相変わらず気持ち悪い笑い方をしている。

「我が戦闘で全て終わる。お主達の手を煩わせることは無い」

 なぜかヴァルキュリアは俺を睨みつけながら言った。
 やっぱりRPが一番デカイからかな?
 やはり目立っているんだろう。

(RPを抑える訓練しないとな……)

 このヘリコプターにもRP測定レーダーなるものが搭載されているぐらいだ。
 ゼロは無理でもせめて一般人レベルまでRPを抑えられるようにしたい。

「シーッシッシッシ!
 居ましたよ!
 キュプロクスです!
 ここから10キロ、あと2分で遭遇します。
 RPは180万です! シッシッシ」

 大野が興奮して叫んだ。

「180万か。
 なかなか巨大だが我が相手にはならん!」

 ヴァルキュリアは言った。

「うおおおお! すげええ!」

 カールが外を見ながら叫んだ。
 窓の外を見ると東京タワーぐらいの大きさの巨人が歩いている。
 1つ目がギロリとこちらを睨んだのがわかった。

「おっきいニャ!」

 ノルもカールの後ろからのぞいて興奮して叫んだ。
 カールとノルの騒ぎに我関せずという様子でヴァルキュリアは立ち上がった。

「参る!」

 ヴァルキュリアはヘリ後方から飛び出すとキュプロクスへ向けて一直線に向かった。
 ヴァルキュリアは空中を自身が投げられた槍のようにまっすぐに空中を進んでいる。

「すげええ! 空飛んでる?」

 思わず叫んでしまった。
 RPを自在に操れば空を飛ぶことも可能なのだろうか?

 それはそうとヴァルキュリアのRPが気になるいくつだろうか?
 ヴァルキュリアへ意識を集中しRPを感じる。

 RP280万。

 余裕なはずだ。
 これなら本当に俺達の出番は本当に無さそうだな。

 ヴァルキュリアは槍を前方に構えまるで自身が巨大な槍のようにキュプロクスへ突っ込んだ。
 巨大な衝撃音と共にキュプロクスの右肩あたりにヴァルキュリアが衝突。
 キュプロクスの右肩は吹っ飛び、右腕は無残に地面へと落ちた。
 
 しかし、次の瞬間。
 キュプロクスは残った左手でヴァルキュリアを掴んだ。

「うわああああああああああ!」

 握りしめられたヴァルキュリアの悲鳴が辺りに響く。
 え? なんで?
 
「キュプロクスはRPを自在に操れるようですよ。ヒッヒッヒ」

 大野がそう言った瞬間、キュプロクスの吹っ飛んだ右肩と腕が一気に再生した。
 
「キュプロクスのRPは540万です! ヒッヒッヒ」

 大野は叫んだ。
 元のRPの3倍。
 ヴァルキュリアを凌駕している。

「行くぞ! カール! フレイヤ、アイラ、ノルはここでヘリを守ってくれ!」

 俺はカールに500万のRPを渡すと同時にヘリの後方から飛び出した。
 
「カール! キュプロクス近くに来たら俺をヤツの方に向けて思いっきりふっ飛ばしてくれ」
「オーケイ! 考えたね。RPをそのまま一気に放出するから相当な衝撃だぜ」
「大丈夫だ。頼む!」

 キュプロクスまで300メートルほど。
 やはり、位置がずれている。

「カール! 頼む!」
「オーケイ!」

 カールが放出したRPのエネルギーは噴火口から吹き出す蒸気のように爆発的に俺を包んだ。
 一気にキュプロクスへ向けて吹っ飛ばされる。
 レーヴァテインを抜いてRPを込める。
 レーヴァテインは300メートルほど伸びる。
 一気にキュプロクスを薙ぎ払う。

 キュプロクスの体を右肩上から左腹まで斜めに断裂が走る。
 真っ二つにたたっ斬った。
 キュプロクスは雄叫びとともに崩れ落ち地面に倒れ込んだ。
 
「アルス! こっちは問題ない!」

 カールの方を見るとキュプロクスの左手から落下したヴァルキュリアを受け止めていた。
 俺も今回はRPを300万ほど残して置いたので余裕で着地することが出来た。


---


 倒れたキュプロクスの顔あたりにヘリも着地し合流した。
 
「す、すまなかった……」

 ヴァルキュリアはカールの肩を借りてかろうじて立っている。
 負けた事が、よほどショックだったのだろう。
 口数少なく押し黙っている。

「アルスさん。いいですよ。いいですよ。シッシッシ」

 大野はうれしそうにキュプロクスを調べている。

「大野さん気をつけて下さい。
 RPはまだ1000ほど残っています」
「お気遣いなく。シッシッシ」
「なぜ、この巨人はここに居たのでしょうか? それに暴れても居なかったような」

 フレイヤがキュプロクスを見ながら寂しそうに言った。
 確かにこの巨人、少なくとも俺達の知る範囲では街を攻撃してきたりはしていない。
 むしろ、街から離れる方向へ歩いていた。

「巨人さん泣いてるニャ!」

 ノルが叫んだ。
 キュプロクスの顔を見上げると、
 キュプロクスの1つ目は、なんとなく潤んでいるように見えた。

「この者も何か理由があったのではないか?」

 突然、キュプロクスを眺めていたアイラが静かに口を開いた。
 言葉も通じないしこの瀕死の状態だ。
 今となっては真相はわからない。

 そうだ!
 以前、俺がRPをうまくコントロール出来ない時にやってしまった同化だ。
 キュプロクスと同化するイメージでこいつの意識を探れば理由がわかるはずだ。
 
 目をつぶりキュプロクスと同化するようイメージした。


---


「や、やめてくれ!」

 俺は叫んだ。
 いや、キュプロクスは叫んだ。
 キュプロクスの記憶だ。
 ここは街の中?
 キュプロクスは頭を抱えてしゃがみこんでいる。

「ハッハッハ! 化物め!」
「ここから出ていけ!」
「1つ目の化物め!」

 周囲を囲む男達が石を投げつけたり、蹴ったり、しながら暴言を浴びせてくる。

(助けて。助けて。助けて)

 キュプロクスは怯えている。
 周囲を囲む男達。
 周囲の町並み。
 キュプロクスが普通の人間に思えるほど巨大だ。
 ここは巨人の街だろうか?

 キュプロクスは走った。
 男達から逃げるように。
 走って。
 走って逃げる。

 そして巨大な穴に落ちた。
 穴を抜けると空が広がり眼下には雲が見える。
 空気が薄い。
 意識が遠のいてゆく……。

 気づくと平原に大の字になって倒れていた。
 周囲には木々が生い茂っているがとても小さい。
 クマも昆虫みたいに小さい。
 今までに居た世界の100分の1ほどの大きさだろうか。

(かわいいなぁ)

 自分の巨体で触ると壊れてしまいそうだ。
 そっと眺め愛でる。
 キュプロクスは生まれた時から差別されていた。

 1つ目の醜い姿。
 両親にでさえ忌み子(いみご)だと疎まれた。
 小さな頃から近所の子供達にはいじめられた。
 大人になってもそれは変わらない。
 草木や虫、動物は、そんなオレのことを避けるわけでもなく一緒にすごしてくれる。

 オレがこんな場所に居たら小さな動物や木々を踏み潰してしまいそうだ。
 一刻も早く何も無い場所に移動しなくては。
 遠くの海岸に砂地が見える。
 あそこなら誰も傷つけないだろう。
 移動しよう。

 遠くを眺めると街がある。
 ずいぶんと小さな街だ。
 小さな動物達と同じぐらい小さな者達が住んでいるんだろう。
 オレはこの海岸から見張り、何かあったら守ってあげよう。

 そっと、何も傷つけないに立ち上がると海岸の砂地へ向かって動き出した。


---


 もうみんなに嫌われながら生きたくない。

「殺してくれ」

 キュプロクスがそう言った気がした。 
 キュプロクスの1つ目からは涙が溢れていた。
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