オカ研部長は最強霊媒師なのに幽霊が視えない

タタミ

文字の大きさ
36 / 42

修学旅行

しおりを挟む
 車窓の景色がものすごい速さで流れていく。
 東京駅を出発した新幹線は先程名古屋を出たところで、車内の同級生たちはお菓子を交換したり写真を撮ったりして、みんな修学旅行の高揚感に浸っていた。
 俺を除いては。

「……ぁあ~……きもちわる……」

 流れる景色を見ることもなく、座席に寄りかかって目を瞑る。
 東京駅を出たあたりから薄っすらと体に違和感を覚え始め、横浜を過ぎたあたりで疑念が確信に変わり、今では完全に気分が悪くなっていた。吐き気に動悸、眩暈とどんどん症状が増えている。
 先輩にもらったお札と何かの役立てばと思い持ってきた塩はポケットの中にあり、先輩がお手製と言っていたお守りは常に握りしめていた。

(それでこんなに体調に影響が出るなんて……)

 まだ関西に入ってもいないのに。
 明るく考えればこの程度で済んでいるといえるのかもしれないが、不調はマイナス思考を強めるものだ。

「善本。これも一応」

 隣に座る菩提寺がバッグから木でできたお札と数珠を取り出して、テーブルに置いた。テーブルにはそれ以外に水やエチケット袋が並び、既に菩提寺が俺を甲斐甲斐しく看病した痕跡が残されている。
 クラスメイトに見られたら何事だと思われるラインナップだが、俺はありがたく受け取った。

「数珠は手首につけておくといい。そろそろ一度静に会うか?」
「そうしようかな……。大阪まで耐えられる気がしない……」
「わかった。俺から連絡する」

 言いながら菩提寺が俺の手を持って数珠を通してくれる。過保護な行いに照れる余裕もなくされるがままになっていると、ふと通路に人が立った。
 担任だったら病院行けとか言われて面倒かもなと力なく見上げると、田島さんが心配そうな顔で俺を見ていた。

「善本くん、大丈夫? 顔色が……。先生呼んでこようか?」
「へ、平気……! ありがとう、田島さん。気にしないで──うっ……」

 先生を呼ばれて俺だけ帰宅させられるのは絶対に避けたい。
 しかし無理に明るい声を出したら吐き気がぶり返してきて、田島さんの顔はより強く心配に染まってしまった。
 どうしようと思っていると、俺に数珠をはめて静先輩にメッセージを送っていた菩提寺が、田島さんに顔を向けた。見られた田島さんは反射的に前髪を整える。

「田島さん。俺は善本をトイレに連れて行く。もし先生に聞かれたらトイレだと伝えておいてほしい。ただ、なるべく大事にしたくない。突っ込まれたら適当に誤魔化してくれるか」
「あっうん! 私に任せて。いい感じに言っておくね。でも2人とも無理しないでね」

 好きな人に頼られた田島さんは、喜びと使命感に駆られた表情で大きく頷き、俺たちを見送ってくれた。
 俺は菩提寺に付き添われて、トイレのあるデッキに向かう。何かあれば事前に静先輩と落ち合う場所として指定してあった。
 幸いデッキには誰もいなかったが、静先輩もいない。

「先輩、座席遠かったっけ……?」
「いや、後続の車両に乗ってるはずだ。電波が悪いのか既読がつかない」 

 その時、窓の外が突如明るく光った。
 気付けばついさっきまで晴れていた空は分厚い曇天に覆われている。
 その直後耳を裂くような衝撃音がして、新幹線に急ブレーキがかかった。座席の方から女子の悲鳴が聞こえる。

「ら、落雷……?」
「ああ。線路に落ちたのかもしれない」

 窓から見える空は大粒の雨を吐きながら不規則に光り、再び衝撃音が走った。

「静のところに行こう。席は確か……」
「あ、いた。2人とも平気? ごめん、スマホの調子悪くて」

 菩提寺が座席を確認するのと同時に、車両に続くドアが開いて静先輩が現れた。

「先輩、よかった……。あの、俺気分悪くなちゃって……。怨霊の影響、ですかね」
「たぶんそうだね。まだ大阪にも着いてないってのに厄介だ。マコトくんはしばらく僕と一緒にいよう」
「今の落雷で安全確認があるかもしれない。担任に怪しまれないように、善本は体調不良でトイレだと俺からも伝えてくる」

 菩提寺はそう言って踵を返し、クラスの車両の方へと向かっていった。

「雷はびっくりしましたけど、新幹線止まったのはちょっと嬉しいです……。関西入る前に小休止できて」
「つらそうだね。ほら、座って。手繋ごう」

 先輩に促され乗降口のドアに寄りかかりながら座る。
 隣に座る先輩に先んじて目を閉じ先輩の力に浸ろうとしたら、パンッ!と手首に衝撃が走った。

「えっ」

 菩提寺につけてもらった数珠が弾けて床に散乱する。
 そして、先輩と驚きを共有する間もなく、もたれていたドアが突然開いた。
 支えをなくした体が浮遊感に包まれ、背中から線路に落ちていく。何かが俺の肩を掴み、物凄い力で引きずり降ろしていく。

「マコトくん!!」

 目を見開いた先輩が手を伸ばし、俺も必死に腕を伸ばした。
 周囲が見えなくなるほどの稲光が俺達を照らし、次の瞬間、俺の目の前に雷が落ちた。
 そこで、俺の記憶は途切れている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

君に捧げる、魔法のレシピ〜さえない動画配信者の僕が、クラスの王子様的男子に恋をした結果〜

ryon*
BL
地味でおとなしい性格の高校生 佐藤 理人は、趣味でこっそりお菓子のレシピ動画を公開している人気配信者でありスイーツ研究家。 ある日理人は、幼なじみの太陽に味見用としてクッキーを手渡すところを、大路に見られてしまう。 しかも清雅は大の甘党で、理人が配信している動画の大ファンだったことが判明。 しかし清雅は、理人=推し配信者の『りとる』だとはまったく気付いていなくて……!?

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。

或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。 自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい! そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。 瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。 圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって…… ̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶ 【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ 番外編、牛歩更新です🙇‍♀️ ※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。 少しですが百合要素があります。 ☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました! 第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!

この胸の高鳴りは・・・

暁エネル
BL
電車に乗りいつも通り大学へと向かう途中 気になる人と出会う男性なのか女性なのかわからないまま 電車を降りその人をなぜか追いかけてしまった 初めての出来事に驚き その人に声をかけ自分のした事に 優しく笑うその人に今まで経験した事のない感情が・・・

猫と王子と恋ちぐら

真霜ナオ
BL
高校一年生の橙(かぶち)は、とある理由から過呼吸になることを防ぐために、無音のヘッドホンを装着して過ごしていた。 ある時、電車内で音漏れ警察と呼ばれる中年男性に絡まれた橙は、過呼吸を起こしてしまう。 パニック状態の橙を助けてくれたのは、クラスで王子と呼ばれている千蔵(ちくら)だった。 『そうやっておまえが俺を甘やかしたりするから』 小さな秘密を持つ黒髪王子×過呼吸持ち金髪の高校生BLです。

【完結】君とカラフル〜推しとクラスメイトになったと思ったらスキンシップ過多でドキドキします〜

星寝むぎ
BL
お気に入りやハートなど、本当にありがとうございます! ひとつひとつが心から嬉しいです( ; ; ) ✩友人たちからドライと言われる攻め(でも受けにはべったり) × 顔がコンプレックスで前髪で隠す受け✩ スカウトをきっかけに、KEYという芸名でモデルをしている高校生の望月希色。華やかな仕事だが実は顔がコンプレックス。学校では前髪で顔を隠し、仕事のこともバレることなく過ごしている。 そんな希色の癒しはコーヒーショップに行くこと。そこで働く男性店員に憧れを抱き、密かに推している。 高二になった春。新しい教室に行くと、隣の席になんと推し店員がやってきた。客だとは明かせないまま彼と友達になり――

不器用に惹かれる

タッター
BL
月影暖季は人見知りだ。そのせいで高校に入って二年続けて友達作りに失敗した。 といってもまだ二年生になって一ヶ月しか経っていないが、悲観が止まらない。 それは一年まともに誰とも喋らなかったせいで人見知りが悪化したから。また、一年の時に起こったある出来事がダメ押しとなって見事にこじらせたから。 怖い。それでも友達が欲しい……。 どうするどうすると焦っていれば、なぜか苦手な男が声をかけてくるようになった。 文武両道にいつも微笑みを浮かべていて、物腰も声色も優しい見た目も爽やかイケメンな王子様みたいな男、夜宮。クラスは別だ。 一年生の頃、同じクラスだった時にはほとんど喋らず、あの日以降は一言も喋ったことがなかったのにどうして急に二年になってお昼を誘ってくるようになったのか。 それだけじゃない。月影君月影君と月影攻撃が止まない。 にこにことした笑顔になんとか愛想笑いを返し続けるも、どこか夜宮の様子がおかしいことに気づいていく。 そうして夜宮を知れば知るほどーー

処理中です...