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19話
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大都会東京。
スカイツリーに東京タワー。
「優成こっち!これ見て!」
これでもかというほど東京にまみれた観光地。
そこで最高に美形な男が顔ハメ看板を見つけて大喜びしているのを、優成は非現実的な気持ちで見つめた。
(俺は本当に明樹さんと旅行に来たのか)
とある控え室で明樹が「ふたりで旅行行かない?」と優成に言った件が、今日現実となっていた。正直電車に乗るまで『ホントにふたりで旅行行くの?』と優成は半信半疑だったが、電車は当たり前に時間通りに東京の目的地に着いた。
──ブーッ
震えたスマホを見ると、仁からのLINEが表示されている。
『ベタな東京土産よろしくね!』
(ずっと東京で仕事してるのにほしい土産なんてある?)
優成はヨーロッパに行っているはずの仁に疑問を抱いた。
現在、ORCAは一律で休暇期間に入っていた。その休暇期間内でどうにか予定を合わせた優成と明樹は、ふたりで1泊2日の東京旅行にやってきている。東京なんて慣れ親しんだ生活拠点だが、土壇場で決めた旅行で遠出は難しかったし岐阜出身の明樹がちゃんとした東京観光をしたことがないと言うので、ベタな東京名所を回ることになった。
これがただの仲良しメンバーとの旅行なら、なんら杞憂なく心から楽しく過ごせたのだが、と優成が息を吐くと再びスマホが震えた。
『それから、告白絶対しろよ^^』
連投で送られてきた文を見て、優成は反射的に画面を暗転させた。
告白。
それは明樹への告白を意味する。
優成は明樹が好きだった。紆余曲折あって己の感情に気付き、また紆余曲折あって明樹と付き合ってもないのにキスだけはするという、嬉しさともどかしさと多大な煽りをうける関係が構築されてしまっていた。
仁に言われるまでもなく、優成は明樹に想いを伝えるつもりだった。もう告白するとかしないとかで悩む感情より、好きでどうしようもない感情が日に日に大きくなっていた。
「おい、優成」
告白の覚悟と共に暗い画面を睨んでいると、スマホを追いやるように明樹が目前に現れる。
「なにスマホ見てんの」
「あ、いや。なんでもないです」
「も~せっかく旅行来たんだからスマホ禁止!罰として看板でポーズ決めてきて」
怒ったふりをする明樹が可愛くて、ついさっきまで画面を睨んでいたとは思えないほど優成の目尻が下がる。ニコニコしたまま指示に従って、優成はタワーが型取られた看板の肩を抱いた。マスクを下ろしてキメ顔をすると明樹が手を叩いて笑う。
「んははっ、似合ってる!」
写真を撮った明樹が笑ったまま駆け寄ってきて、優成は無意識に抱き締めそうになったが、寸でのところで理性が手を止めた。伸ばしかけた手で不自然にマスクを引き上げて誤魔化す。
「明樹さん、あんまり騒ぐとバレますよ」
「平気平気。マスクしてるし」
目を細めてマスクをつまむ明樹は楽しそうで、優成もつられて頬を緩めた。しかし、今のところ気付かれてないだけで、優成含めふたりとも頭身がおかしいことに変わりはない。移動はタクシーだけにした方がいいかと優成が思っていると、明樹が紙袋を肩に担いだ。
「あーあ、お土産買ったら荷物すごいな」
「手当たり次第に買うからですよ。東京でそんなに土産買える方が才能ある」
「だってこれ、ここにしか売ってないやつだぞ」
東京タワーのキャラクターが描かれた大きなショッパーを見せてくる明樹は無邪気で、優成は再び頬が緩んでしまう。
「邪魔なら俺が持っときましょうか。俺、荷物少ないから」
「えーいや悪いって。あ、それなら一旦ホテル行ってチェックインしちゃうか。そうすれば買ったもの部屋に置けるし」
「あー……そう、ですね」
逡巡を含む返事をした優成を見て、「夕飯はちゃんと出直すよ?」と明樹は笑った。
別に優成は夕飯のことを気にしていたわけではない。ただ、目を背けていた大問題からついに目をそらせなくなり、緊張していた。
そう、この旅行の1番の問題はホテル。
ホテルに明樹とふたりきりで泊まることだ。
スカイツリーに東京タワー。
「優成こっち!これ見て!」
これでもかというほど東京にまみれた観光地。
そこで最高に美形な男が顔ハメ看板を見つけて大喜びしているのを、優成は非現実的な気持ちで見つめた。
(俺は本当に明樹さんと旅行に来たのか)
とある控え室で明樹が「ふたりで旅行行かない?」と優成に言った件が、今日現実となっていた。正直電車に乗るまで『ホントにふたりで旅行行くの?』と優成は半信半疑だったが、電車は当たり前に時間通りに東京の目的地に着いた。
──ブーッ
震えたスマホを見ると、仁からのLINEが表示されている。
『ベタな東京土産よろしくね!』
(ずっと東京で仕事してるのにほしい土産なんてある?)
優成はヨーロッパに行っているはずの仁に疑問を抱いた。
現在、ORCAは一律で休暇期間に入っていた。その休暇期間内でどうにか予定を合わせた優成と明樹は、ふたりで1泊2日の東京旅行にやってきている。東京なんて慣れ親しんだ生活拠点だが、土壇場で決めた旅行で遠出は難しかったし岐阜出身の明樹がちゃんとした東京観光をしたことがないと言うので、ベタな東京名所を回ることになった。
これがただの仲良しメンバーとの旅行なら、なんら杞憂なく心から楽しく過ごせたのだが、と優成が息を吐くと再びスマホが震えた。
『それから、告白絶対しろよ^^』
連投で送られてきた文を見て、優成は反射的に画面を暗転させた。
告白。
それは明樹への告白を意味する。
優成は明樹が好きだった。紆余曲折あって己の感情に気付き、また紆余曲折あって明樹と付き合ってもないのにキスだけはするという、嬉しさともどかしさと多大な煽りをうける関係が構築されてしまっていた。
仁に言われるまでもなく、優成は明樹に想いを伝えるつもりだった。もう告白するとかしないとかで悩む感情より、好きでどうしようもない感情が日に日に大きくなっていた。
「おい、優成」
告白の覚悟と共に暗い画面を睨んでいると、スマホを追いやるように明樹が目前に現れる。
「なにスマホ見てんの」
「あ、いや。なんでもないです」
「も~せっかく旅行来たんだからスマホ禁止!罰として看板でポーズ決めてきて」
怒ったふりをする明樹が可愛くて、ついさっきまで画面を睨んでいたとは思えないほど優成の目尻が下がる。ニコニコしたまま指示に従って、優成はタワーが型取られた看板の肩を抱いた。マスクを下ろしてキメ顔をすると明樹が手を叩いて笑う。
「んははっ、似合ってる!」
写真を撮った明樹が笑ったまま駆け寄ってきて、優成は無意識に抱き締めそうになったが、寸でのところで理性が手を止めた。伸ばしかけた手で不自然にマスクを引き上げて誤魔化す。
「明樹さん、あんまり騒ぐとバレますよ」
「平気平気。マスクしてるし」
目を細めてマスクをつまむ明樹は楽しそうで、優成もつられて頬を緩めた。しかし、今のところ気付かれてないだけで、優成含めふたりとも頭身がおかしいことに変わりはない。移動はタクシーだけにした方がいいかと優成が思っていると、明樹が紙袋を肩に担いだ。
「あーあ、お土産買ったら荷物すごいな」
「手当たり次第に買うからですよ。東京でそんなに土産買える方が才能ある」
「だってこれ、ここにしか売ってないやつだぞ」
東京タワーのキャラクターが描かれた大きなショッパーを見せてくる明樹は無邪気で、優成は再び頬が緩んでしまう。
「邪魔なら俺が持っときましょうか。俺、荷物少ないから」
「えーいや悪いって。あ、それなら一旦ホテル行ってチェックインしちゃうか。そうすれば買ったもの部屋に置けるし」
「あー……そう、ですね」
逡巡を含む返事をした優成を見て、「夕飯はちゃんと出直すよ?」と明樹は笑った。
別に優成は夕飯のことを気にしていたわけではない。ただ、目を背けていた大問題からついに目をそらせなくなり、緊張していた。
そう、この旅行の1番の問題はホテル。
ホテルに明樹とふたりきりで泊まることだ。
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