無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話

タタミ

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21話

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「あ~美味しかった。お腹いっぱい」

 ぽん、と腹を叩いて明樹は満足げに両腕を広げる。明樹が希望した日本食の店から出る頃には、すっかり星空が輝いていた。

「星、綺麗ですね」
「ホントだ。久しぶりにちゃんと星見た。東京でも綺麗に見えるんだな~」

 空を見上げながら歩く明樹の横で、優成は不自然にならないように周囲を見渡して、目当ての場所を捉えた。

「ちょっとあの公園行ってみませんか」

 食後に寄って邪魔が入らなそうな場所として、調べて見つけた公園だ。

「お、いいね。俺も言おうと思ってた」

 同調した明樹は、小走りで優成を追い抜いていき、優成は笑いながら追いかけた。
 入ってみると、その公園は東京のど真ん中とは思えないほど広く、静かだった。少し歩いた先にベンチを見つけ腰掛けると、明樹も何も言わず隣に座る。

「……あっという間ですね、もう休暇も終わりですよ」
「ね。今度は北海道とか行こうよ、もっと長く泊まってさ」
「はは、ぜひ」

 そこで会話が途切れて、優成は芝生を、明樹は夜空を見つめる沈黙が流れた。膝の上で組んだ両手に力を込めて、優成は息を吸う。

「あの」
「あのさ」

 声が重なった。
 同時に顔を向け合ったふたりは、目を瞬いてからお互い少しはにかむ。

「なんですか?」
「あ、俺からでいいの?」

 どうぞ、という意味を込めて手を差し出すと、明樹は背もたれに預けていた背中を離した。

「なんで、いきなり旅行なんて誘うんだって思わなかった?」
「あー……少しは、思いました」

 本当は『なんで』で頭が一杯だったが、優成は過小に伝える。

「実は……ずっと答えがほしい悩みがあったんだ。頭で考えてもわかんないけど、優成とふたりきりで過ごしたらわかるかもって思って。だから旅行に誘った」

 明樹の声は落ち着いていて、これから何を言われるのかと優成の心は波立ち始める。

「それで今日、優成と過ごしてすごい楽しくて、嬉しくてさ」
「俺も……楽しくて、嬉しかったです」
「ホント?でも俺の気持ちはそれだけじゃないよ」

 俺の気持ちはそれだけじゃない。
 つまり、それはどういうことなのか、考えたいのに頭が回らなくて、優成はただ明樹を見ていた。

「楽しくて嬉しくて、優成とずっと一緒にいたいなって思って。……誰にも渡したくないって思った」

 明樹の手が優成の手に重なる。明樹の言葉、行動のすべてに、優成は思考を奪われて、その意味を飲み込み切れないうちに明樹は言葉を続けていく。

「前に、優成が俺のこと好きだったらどう思うかって聞いてきたことあったでしょ」
「……はい」

 追い付かない思考を置き去りに先走る心臓を押さえて、優成は小さく返した。

「あの時は、何て言ったらいいか気持ちの整理がついてなかったんだけどね。俺は優成が俺のこと好きならうれしい。ホントにうれしいって、今日ちゃんとわかった」

 明樹が優成の手を撫でて、そこから熱が広がっていく。

「今のが、俺がほしかった答え」

 そこで言葉を区切って、明樹が優成を見る。ゆっくり微笑まれて、優成は身体を明樹に向けた。

「俺の話をしてもいいですか」

 明樹は何も言わなかった。何を言うのか、言われるのか、既に通じ合っているかのようだった。
優成は短く息を吸って、重ねられていた手を上から掴んだ。

「俺は、明樹さんのことが好きです」

 明樹は瞬きもせずに優成を見つめた。

「女性だからとか、男性だからとか。そんなの関係なしに、あなたのことだけが好きです。明樹さんの笑顔のためなら何でもします。愛なら誰にも負けません」

 言い切って、握る手に力を込める。
 優成の眼差しを受け止めて、明樹は唇を舐めた。そして何か言おうと口を開くと同時に、抑えきれずに破顔して片手で顔を隠した。

「あー待って、照れる。すごいこと言うね、優成」

 明樹は本当に照れていて、はにかみがこぼれ落ちていく。

「俺もね、優成が好き」

 瞬間、痛いくらいに優成の心臓が脈打った。

「優成が女の子と仲良くしてるの見て『あー優成はこういう子と付き合うんだろうな』って思ったんだ。そしたら、それがどうしようもなく……辛くて」

 明樹は本当に寂しそうに目を伏せてから、淡い笑みを称えた。

「こんなこと、普通の友達相手に思うわけないからさ。ホントは、もうずっと、ずっと前から俺は優成が好きだったんだよ。今さら実感してる」

 明樹は、優成の頬を撫でた。伝わる温もりに涙腺が緩む。
 渇く喉を潤すために唾を飲んで、優成は最後に言うべき言葉を伝えるために口を開く。

「俺と、付き合ってくれますか」

 明樹の慈しむような優しい目に見守られて尚、語尾は少し震えた。

「うん。俺の恋人になって」

 返事を最後まで待てずに、優成は明樹を抱き締めていた。抱き締め返されると視界がぼやけてしまって、優成は涙を散らすように瞬きを繰り返す。

「ありがとう、ございます」
「はは、なんか恥ずかしい。誰かと付き合ってこんな気持ちになったの、初めて」

 明樹の声が幸せそうに弾んでいて、優成は抱き締める力を強めた。誰かに見られるかもなんて考えられなくて、誰に見られてもいいと本気で思った。
 そうしてしばらく、やっと形になった想いを確かめるように、ふたりは抱き締め合っていた。
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