5 / 69
3
しおりを挟む
ルカ。
ちょっとキラキラネームで、俺が歳を取った時のことを一切考慮していない名前だと長年思っていたけど、この魔界とかいう場所では妙に馴染んで聞こえた。
「サトウ、ルカ……」
俺の名前をつぶやいて、ダン王子は睨むように目を細める。
(この人こわ……パワハラ上司を思い出すなぁ)
「ルカ? 可愛い名前してるね」
「トーキョーとは、魔界にない地名ですね。この方が至上様ではない、なんて冗談にもほどがありますが……」
「メーカーってなんだろう」
他3王子も三者三様に何やら言っている。
「イリス。こいつが至上様ではなく、ルカというただの男だというのは本当なのか」
「いいえ。この方は至上様に間違いありません。しかし今回の蘇りに限り、至上様としての記憶を失っている、もしくは……」
イリスさんが俺に視線を投げる。
「人格が変わってしまった、という可能性がございます」
「確かに記憶喪失よりは、そっちが近いと思います」
俺には俺の記憶がちゃんと残っている。クリスマスに予定もなく残業しまくることが確定していた、社畜人生の記憶だ。家の住所も覚えているし、好きだった映画や漫画のこともちゃんと思い出せる。
俺が賛同すると、ザッと音がするくらい一斉に王子たちの双眼がこちらを向いた。
「そんなことがあり得るのですか。いや、そうだったとして、これは一大事が過ぎる。露見すれば争いは避けられません」
「マーティアス様のおっしゃる通りです。至上様はつい先ほどお目覚めになられ、私としましても状況の把握が追いついておりません。しばし時間をいただきたい、というのが本音でございます」
「時間って言っても、至上様のお目覚めは魔界中が注目してるし、色々と誤魔化せないんじゃない?」
「うん……。『接吻の儀』はしないと、非常事態なのが国にバレると思う」
俺は蚊帳の外状態で、深刻そうに話すイリスさんと王子たちを見ていた。
俺にどうにかできる問題でもないので他人事のように突っ立っていると、唯一話し合いに参加していなかったダン王子が1歩下がって俺の前に立ち直した。
「中身が元々の至上様でなくなったとしても、力が健在なら問題ない。至上様の人格を知っている者など、イリス以外にいないのだからな」
そう言って、ダン王子が何かをすくうように右手を上げると、そこに一瞬で炎の剣が現れた。熱気が肌を撫でる。
本物の炎だった。
「っ!? え、なに……!?」
「至上様が俺ごときの魔法で死ぬわけない。試させてもらう」
(は、魔法!? いや待て、こいつ俺と戦おうとしてる!?)
「ま、待った! 戦えないです俺! それにここって死後の世界ですよね? 死ぬも何も──」
「何をほざいている。魔界は魔界だ。死後の世界などではない」
(え、死後の世界じゃない……? じゃあ魔界って──)
「ダン様、お待ちください。至上様への反逆行為は絶対死です。お考え直しを」
「至上様の力があれば、俺はこの場で剣など出すこともできない。こうして刃を向けた時点で、至上様による絶対死はすでに発動していなければおかしい。つまり、この男がおかしいのだ」
イリスさんの制止も聞かず、ダン王子が1歩踏み出す。
「至上様であるならば、どうかこの無礼な刃をお避けください」
顔色ひとつ変えずにそう言って、ダン王子は俺に向かって剣を振り下ろした。
ちょっとキラキラネームで、俺が歳を取った時のことを一切考慮していない名前だと長年思っていたけど、この魔界とかいう場所では妙に馴染んで聞こえた。
「サトウ、ルカ……」
俺の名前をつぶやいて、ダン王子は睨むように目を細める。
(この人こわ……パワハラ上司を思い出すなぁ)
「ルカ? 可愛い名前してるね」
「トーキョーとは、魔界にない地名ですね。この方が至上様ではない、なんて冗談にもほどがありますが……」
「メーカーってなんだろう」
他3王子も三者三様に何やら言っている。
「イリス。こいつが至上様ではなく、ルカというただの男だというのは本当なのか」
「いいえ。この方は至上様に間違いありません。しかし今回の蘇りに限り、至上様としての記憶を失っている、もしくは……」
イリスさんが俺に視線を投げる。
「人格が変わってしまった、という可能性がございます」
「確かに記憶喪失よりは、そっちが近いと思います」
俺には俺の記憶がちゃんと残っている。クリスマスに予定もなく残業しまくることが確定していた、社畜人生の記憶だ。家の住所も覚えているし、好きだった映画や漫画のこともちゃんと思い出せる。
俺が賛同すると、ザッと音がするくらい一斉に王子たちの双眼がこちらを向いた。
「そんなことがあり得るのですか。いや、そうだったとして、これは一大事が過ぎる。露見すれば争いは避けられません」
「マーティアス様のおっしゃる通りです。至上様はつい先ほどお目覚めになられ、私としましても状況の把握が追いついておりません。しばし時間をいただきたい、というのが本音でございます」
「時間って言っても、至上様のお目覚めは魔界中が注目してるし、色々と誤魔化せないんじゃない?」
「うん……。『接吻の儀』はしないと、非常事態なのが国にバレると思う」
俺は蚊帳の外状態で、深刻そうに話すイリスさんと王子たちを見ていた。
俺にどうにかできる問題でもないので他人事のように突っ立っていると、唯一話し合いに参加していなかったダン王子が1歩下がって俺の前に立ち直した。
「中身が元々の至上様でなくなったとしても、力が健在なら問題ない。至上様の人格を知っている者など、イリス以外にいないのだからな」
そう言って、ダン王子が何かをすくうように右手を上げると、そこに一瞬で炎の剣が現れた。熱気が肌を撫でる。
本物の炎だった。
「っ!? え、なに……!?」
「至上様が俺ごときの魔法で死ぬわけない。試させてもらう」
(は、魔法!? いや待て、こいつ俺と戦おうとしてる!?)
「ま、待った! 戦えないです俺! それにここって死後の世界ですよね? 死ぬも何も──」
「何をほざいている。魔界は魔界だ。死後の世界などではない」
(え、死後の世界じゃない……? じゃあ魔界って──)
「ダン様、お待ちください。至上様への反逆行為は絶対死です。お考え直しを」
「至上様の力があれば、俺はこの場で剣など出すこともできない。こうして刃を向けた時点で、至上様による絶対死はすでに発動していなければおかしい。つまり、この男がおかしいのだ」
イリスさんの制止も聞かず、ダン王子が1歩踏み出す。
「至上様であるならば、どうかこの無礼な刃をお避けください」
顔色ひとつ変えずにそう言って、ダン王子は俺に向かって剣を振り下ろした。
530
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜
たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話
騎士団長とのじれったい不器用BL
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない
タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。
対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる