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殺される。
さっきトラックに轢かれて死んだはずの俺は、そう思いながら迫りくる炎の剣を前にきつく目を閉じた。
「っ……!!」
(……ん? ……あれ……)
焼けただれる痛みが走るかと思いきや、何も感じない。
恐る恐る目を開けると、俺の目の前には白い人影が立ちはだかっていた。
「イ、イリスさん!」
「至上様、ご無事ですか」
イリスさんの掲げた手がバリアのようなものを作り、ダン王子の剣を止めてくれていた。
「側近が出しゃばるな」
「あ、あんたこそ、何考えてるんだ! 俺は魔法も使えない、ただの人間で……!」
…──“黙りなさい”──
「え?」
耳元でそう聞こえた。
誰の声だと周りを見ると、突如ぐにゃりと視界が歪んだ。
(っ、なんだ、これ……ッ……急に、めまいが……)
「!? 至上様! どうなさいました──」
イリスさんの声がどんどん遠くなって、揺れる視界に目を見開くダン王子が見えた直後、すべてがブラックアウトした。
……。
…………。
………………リーン──…。
(また、鈴の音……)
俺はぼんやりと目を開けた。
そこは、真っ暗で、何もない空間だった。
(今度はなんだ……まさか地獄?)
「それは違うかな」
「っ!?」
真後ろから声がして、俺は文字通り飛び上がって振り返った。
「はじめまして。私があなたを呼びました」
そこには、口元は笑っているけど、まったく笑顔に見えない男性が立っていた。
でも、よくよく見れば顔は俺と同じだった。
「静かに話を聞いて」
「っ……?」
(あれ、なんで。声が出ない)
声を出そうと思っても出ない、どころか口も開かなかった。
慌てる俺が見えていないかのように、男性は伸びをしている。
「私は、魔界に飽きてしまってね。全部壊して終わりにしようと思っていたんだ。でも、退屈そうで特別なあなたを見つけたから。だから、死と引き換えに全部あげることにしたよ」
(どういうことだよ、あんたが俺を魔界に──)
「最初はうまくいかないかもしれないけれど。いずれ何もかも、あなたのものになる。何をしたっていいんだ。なんだってできる」
男性は楽し気に肩をすくめた。
「楽しんでね、“至上様”。私も私だけの時間を楽しむよ」
(ちょっと待て! 何言ってんだ──)
彼は1度も振り返らず、軽い足取りで闇に消えていく。
「──待てって言ってるだろ! って……あれ……」
やっと声を出せたと思ったら、俺は真っ暗な空間ではなく白いベッドに横たわっていた。
「ここは……また知らない場所だよ……」
ここが自分の家だったらよかったのにと落ち込んで、ふと思いつく。
(もしかして、今までの出来事は全部夢で、トラックに轢かれた俺は病院のベッドで目が覚めた……とか?)
病室にしては天井が高すぎるしベッドはキングサイズだし何より部屋が広すぎるし、どう見ても豪邸のマスタールームにしか見えない部屋だったが、俺は自分に言い聞かせようとした。千切れた脚とコンクリートに打ち付けて潰れた頭のことは、なかったことにして。
「……そうだよ、魔界なんて全部夢でここは病院。このまま俺は退院して──」
「至上様、魔界は夢ではございませんし、死後の世界でもありません」
「うわぁ! イリスさん!?」
さっきまで絶対誰もいなかったベッド脇にイリスさんが立っていた。
「あとここは病院ではなく至上様の寝室です」
「え、今部屋にいなかったですよね!?」
「私は至上様の元へ一瞬で移動できますので」
「ええ……? なんですかそのチート能力……!」
「お言葉ですが、至上様が私だけにお与えになった力です。いつでも側近としての責務を果たせるように、と」
喋りながらイリスさんが指を動かすと、ティーポットとカップが浮いて近づいてくる。
「お加減はいかがですか。急に卒倒されて、取り急ぎベッドへと運ばせていただきました」
「はぁ、体調は大丈夫です。あの、これは魔法ですか?」
宙に浮いたティーポットが宙に浮いたカップに紅茶を注ぎ、カップが勝手に俺の手元に降りてきた。
「ええ、魔法です。至上様は魔界について何もかもお忘れのようなので、ご説明を差し上げたいのはやまやまなのですが……。お身体が問題ないようでしたら早急に話し合うべきことがあるので、王子たちをお呼びしても?」
「あ、はい。どうぞ……?」
神妙な顔で言われて、俺は紅茶に口をつけながら曖昧に頷いた。
「では、お入りください」
イリスさんが部屋の扉に向かって言うと扉がひとりでに開き、4王子がぞろぞろと入ってきた。
「……」
(うわ、ダン王子こっち見てる)
さっきトラックに轢かれて死んだはずの俺は、そう思いながら迫りくる炎の剣を前にきつく目を閉じた。
「っ……!!」
(……ん? ……あれ……)
焼けただれる痛みが走るかと思いきや、何も感じない。
恐る恐る目を開けると、俺の目の前には白い人影が立ちはだかっていた。
「イ、イリスさん!」
「至上様、ご無事ですか」
イリスさんの掲げた手がバリアのようなものを作り、ダン王子の剣を止めてくれていた。
「側近が出しゃばるな」
「あ、あんたこそ、何考えてるんだ! 俺は魔法も使えない、ただの人間で……!」
…──“黙りなさい”──
「え?」
耳元でそう聞こえた。
誰の声だと周りを見ると、突如ぐにゃりと視界が歪んだ。
(っ、なんだ、これ……ッ……急に、めまいが……)
「!? 至上様! どうなさいました──」
イリスさんの声がどんどん遠くなって、揺れる視界に目を見開くダン王子が見えた直後、すべてがブラックアウトした。
……。
…………。
………………リーン──…。
(また、鈴の音……)
俺はぼんやりと目を開けた。
そこは、真っ暗で、何もない空間だった。
(今度はなんだ……まさか地獄?)
「それは違うかな」
「っ!?」
真後ろから声がして、俺は文字通り飛び上がって振り返った。
「はじめまして。私があなたを呼びました」
そこには、口元は笑っているけど、まったく笑顔に見えない男性が立っていた。
でも、よくよく見れば顔は俺と同じだった。
「静かに話を聞いて」
「っ……?」
(あれ、なんで。声が出ない)
声を出そうと思っても出ない、どころか口も開かなかった。
慌てる俺が見えていないかのように、男性は伸びをしている。
「私は、魔界に飽きてしまってね。全部壊して終わりにしようと思っていたんだ。でも、退屈そうで特別なあなたを見つけたから。だから、死と引き換えに全部あげることにしたよ」
(どういうことだよ、あんたが俺を魔界に──)
「最初はうまくいかないかもしれないけれど。いずれ何もかも、あなたのものになる。何をしたっていいんだ。なんだってできる」
男性は楽し気に肩をすくめた。
「楽しんでね、“至上様”。私も私だけの時間を楽しむよ」
(ちょっと待て! 何言ってんだ──)
彼は1度も振り返らず、軽い足取りで闇に消えていく。
「──待てって言ってるだろ! って……あれ……」
やっと声を出せたと思ったら、俺は真っ暗な空間ではなく白いベッドに横たわっていた。
「ここは……また知らない場所だよ……」
ここが自分の家だったらよかったのにと落ち込んで、ふと思いつく。
(もしかして、今までの出来事は全部夢で、トラックに轢かれた俺は病院のベッドで目が覚めた……とか?)
病室にしては天井が高すぎるしベッドはキングサイズだし何より部屋が広すぎるし、どう見ても豪邸のマスタールームにしか見えない部屋だったが、俺は自分に言い聞かせようとした。千切れた脚とコンクリートに打ち付けて潰れた頭のことは、なかったことにして。
「……そうだよ、魔界なんて全部夢でここは病院。このまま俺は退院して──」
「至上様、魔界は夢ではございませんし、死後の世界でもありません」
「うわぁ! イリスさん!?」
さっきまで絶対誰もいなかったベッド脇にイリスさんが立っていた。
「あとここは病院ではなく至上様の寝室です」
「え、今部屋にいなかったですよね!?」
「私は至上様の元へ一瞬で移動できますので」
「ええ……? なんですかそのチート能力……!」
「お言葉ですが、至上様が私だけにお与えになった力です。いつでも側近としての責務を果たせるように、と」
喋りながらイリスさんが指を動かすと、ティーポットとカップが浮いて近づいてくる。
「お加減はいかがですか。急に卒倒されて、取り急ぎベッドへと運ばせていただきました」
「はぁ、体調は大丈夫です。あの、これは魔法ですか?」
宙に浮いたティーポットが宙に浮いたカップに紅茶を注ぎ、カップが勝手に俺の手元に降りてきた。
「ええ、魔法です。至上様は魔界について何もかもお忘れのようなので、ご説明を差し上げたいのはやまやまなのですが……。お身体が問題ないようでしたら早急に話し合うべきことがあるので、王子たちをお呼びしても?」
「あ、はい。どうぞ……?」
神妙な顔で言われて、俺は紅茶に口をつけながら曖昧に頷いた。
「では、お入りください」
イリスさんが部屋の扉に向かって言うと扉がひとりでに開き、4王子がぞろぞろと入ってきた。
「……」
(うわ、ダン王子こっち見てる)
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