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ドアを開けて入ってきたのはダン王子だった。突然の登場に静かだった教室が一斉にざわつく。
「うそだろ、ダン様がなんでこんな初級クラスに!?」
「私初めてこんなお傍でお会いできたわ……! ああ、なんて麗しい……!」
ダン王子の登場に驚く男子生徒と、ダン王子の容姿に胸打たれる女子生徒が口々に色々言っている。同性で結婚するのも当たり前な世界とはいえ、やはりイケメンは女子人気が高いようだ。
「どうされましたか、ダン王子。ここは実技初級のクラスで、あなたが受けるような授業ではありませんが……」
「初心を思い出したくて来ました。別に俺が受けても問題ないですよね」
「ああ、それはもちろん……! どうぞおかけください」
ダン王子は敬語を使っているだけで、態度は威圧的で堂々としており、先生は終始低姿勢でペコペコしている。不健全な上下関係が垣間見えた。
(まぁ王子だしな。先生と生徒の関係性にはなり切れないか。社長の息子が新卒で入社してきたようなもんだよ)
などと呑気に例えを考えていたら、なぜかダン王子がまっすぐ俺の方に歩いてきて、俺の横に座っていた生徒に向けて顎をしゃくった。
「退け」
「う、わああ!」
言うが早いか生徒の身体が浮いて、先ほど俺を笑っていたいじめっ子集団の方に吹っ飛んでいく。
「おいおい、ちょっと何してんですか!」
「授業を受けに来た。教師とのやり取りを聞いてなかったのか?」
「聞いてましたけど! 他に空いてる席なんてたくさんあるでしょ!」
「俺がこの席にすると決めた。それ以外に理由はいらん」
ダン王子は堂々と俺の横に座り、大きく脚を組む。
「ただのワガママじゃないですか、それ。あんた、ホントに自分勝手──」
「ちょっと、あいつなんなの? ダン様とあんなに親しげに……!」
「王族か? 見たことない顔だけど。にしても、あの馴れ馴れしい態度はなんだ。生意気にもほどがある」
突き刺さる視線を四方から感じて、俺は頭を抱えた。
(ヘイトがやばい。これ以上目立ったらダメだ、絶対イジメがエスカレートする)
取り急ぎ立ち上がりかけていた腰を椅子に戻し、ダン王子に抗議するのをやめる。
「それでいい。最初から言うことを聞け」
せめてもの反抗心で、満足げに肘をつく王子を無視して、俺は自分だけ先に実技に戻ることにした。羽を浮かせようと手をかざしてみる。
(ま、浮きませんけどね……)
「それでやっているつもりか? なぜ羽ごとき操れないのか、理解不能だな。逆に何ができるんだ、貴様」
「静かにしてください。集中できないんで」
小声で静かに言い返す。本当は「うるっさいな! 黙ってろ!」と大声を出したいところだったが、ダン王子にこれ以上無礼を働いたら、いまだに俺を睨んでいる生徒たちに何をされるかわからない。
「魔力を込める、というのがわかってないな」
「え、ちょ、なに」
俺がかざしていた右手にダン王子が左手を重ねた。周囲から小さい悲鳴が上がる。
(結局悪目立ちしてるじゃん! というか、手が熱い……!)
「な、なんかぞわぞわするんですけど……!」
「魔力を込めているからな。今貴様の手には俺の魔力が流れている。羽が上がるのをイメージしてみろ」
手の接触を早く終わらせたいこともあり、俺は言われた通りに目の前の羽が浮く姿を想像した。すると。
「! あ、浮いた! すごい、ホントに……!」
「今の手の感覚が魔力だ。覚えておけ」
指先を動かすと、それに合わせて羽が動く。正直感動した。面白くてもっと羽を操りたかったが、ダン王子が俺から手を離すと羽も落ちてしまう。
「自分だけでやってみろ」
「は、はい。魔力を込める……魔力、魔力……」
「違う、こうだ。感覚を忘れるな」
ダン王子が再び手を重ねてきて、また悲鳴が上がった。
「それやめてくださいよ……! 周りの反応見えないんですかっ」
「外野などどうでもいい。手っ取り早い教え方をしてやってるんだ、感謝しろ」
(くそ、俺様め……!)
ダン王子はそれからも俺が成果を上げられない度に、俺の手に触れた。やめてくれといくら伝えても効果はなく、何度も教室から非難の悲鳴が上がることとなった。
「うそだろ、ダン様がなんでこんな初級クラスに!?」
「私初めてこんなお傍でお会いできたわ……! ああ、なんて麗しい……!」
ダン王子の登場に驚く男子生徒と、ダン王子の容姿に胸打たれる女子生徒が口々に色々言っている。同性で結婚するのも当たり前な世界とはいえ、やはりイケメンは女子人気が高いようだ。
「どうされましたか、ダン王子。ここは実技初級のクラスで、あなたが受けるような授業ではありませんが……」
「初心を思い出したくて来ました。別に俺が受けても問題ないですよね」
「ああ、それはもちろん……! どうぞおかけください」
ダン王子は敬語を使っているだけで、態度は威圧的で堂々としており、先生は終始低姿勢でペコペコしている。不健全な上下関係が垣間見えた。
(まぁ王子だしな。先生と生徒の関係性にはなり切れないか。社長の息子が新卒で入社してきたようなもんだよ)
などと呑気に例えを考えていたら、なぜかダン王子がまっすぐ俺の方に歩いてきて、俺の横に座っていた生徒に向けて顎をしゃくった。
「退け」
「う、わああ!」
言うが早いか生徒の身体が浮いて、先ほど俺を笑っていたいじめっ子集団の方に吹っ飛んでいく。
「おいおい、ちょっと何してんですか!」
「授業を受けに来た。教師とのやり取りを聞いてなかったのか?」
「聞いてましたけど! 他に空いてる席なんてたくさんあるでしょ!」
「俺がこの席にすると決めた。それ以外に理由はいらん」
ダン王子は堂々と俺の横に座り、大きく脚を組む。
「ただのワガママじゃないですか、それ。あんた、ホントに自分勝手──」
「ちょっと、あいつなんなの? ダン様とあんなに親しげに……!」
「王族か? 見たことない顔だけど。にしても、あの馴れ馴れしい態度はなんだ。生意気にもほどがある」
突き刺さる視線を四方から感じて、俺は頭を抱えた。
(ヘイトがやばい。これ以上目立ったらダメだ、絶対イジメがエスカレートする)
取り急ぎ立ち上がりかけていた腰を椅子に戻し、ダン王子に抗議するのをやめる。
「それでいい。最初から言うことを聞け」
せめてもの反抗心で、満足げに肘をつく王子を無視して、俺は自分だけ先に実技に戻ることにした。羽を浮かせようと手をかざしてみる。
(ま、浮きませんけどね……)
「それでやっているつもりか? なぜ羽ごとき操れないのか、理解不能だな。逆に何ができるんだ、貴様」
「静かにしてください。集中できないんで」
小声で静かに言い返す。本当は「うるっさいな! 黙ってろ!」と大声を出したいところだったが、ダン王子にこれ以上無礼を働いたら、いまだに俺を睨んでいる生徒たちに何をされるかわからない。
「魔力を込める、というのがわかってないな」
「え、ちょ、なに」
俺がかざしていた右手にダン王子が左手を重ねた。周囲から小さい悲鳴が上がる。
(結局悪目立ちしてるじゃん! というか、手が熱い……!)
「な、なんかぞわぞわするんですけど……!」
「魔力を込めているからな。今貴様の手には俺の魔力が流れている。羽が上がるのをイメージしてみろ」
手の接触を早く終わらせたいこともあり、俺は言われた通りに目の前の羽が浮く姿を想像した。すると。
「! あ、浮いた! すごい、ホントに……!」
「今の手の感覚が魔力だ。覚えておけ」
指先を動かすと、それに合わせて羽が動く。正直感動した。面白くてもっと羽を操りたかったが、ダン王子が俺から手を離すと羽も落ちてしまう。
「自分だけでやってみろ」
「は、はい。魔力を込める……魔力、魔力……」
「違う、こうだ。感覚を忘れるな」
ダン王子が再び手を重ねてきて、また悲鳴が上がった。
「それやめてくださいよ……! 周りの反応見えないんですかっ」
「外野などどうでもいい。手っ取り早い教え方をしてやってるんだ、感謝しろ」
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