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王家室に着くと、他の王子は誰もいなかった。ダン王子に従って王家室の奥に進むと壁にカーテンがあり、くぐったその先は使ったことがないんじゃないかと思うほど汚れのない綺麗な厨房だった。ダン王子は控えていた人に「こいつに何か食べ物を。なんでもいい」と告げる。
(朝来た時はソファスペースにしか気づかなかったけど、王子専用の料理人が常駐してるのか……)
「てことは、もしかして厨房の人に今朝の会話聞かれてませんか……!?」
「そんな馬鹿げたミスをするわけないだろ」
俺はカーテンから出てソファに座るなり重大発見をダン王子に囁いたが、ダン王子は呆れ顔を返した。
「あのカーテンには強固な結界が張ってあり、厨房の者は王家室へ入れないようになっている。王家室は魔法で防音が保たれ、こちらの会話はまるで聞こえん」
じゃ誰が料理を運んでくるんだと思った矢先、魔法によって浮いた皿が運ばれてきた。俺の前に着地したのはトマトソースのペンネだ。ダン王子のところにはデキャンタの赤ワインが届いた。他に料理が来ないのを確認してからペンネを食べようとしたら、ワインを傾けたダン王子が俺を見た。
「ディタとなぜ一緒にいた」
「あ~裏庭で休憩してたら、クシェル王子にディタを紹介されたんです。それで一緒に授業受けてやろうかってディタが言ってくれて。ディタって魔法できないらしいんですけど、俺以外にも魔法使えない人いるって知って、ちょっと親近感が沸いたというかなんか嬉しくて──」
「……」
「え、聞いといてガン無視?」
俺に答えさせておいてなんの反応もしないダン王子は、それが当然といった顔をしていた。傍若無人だ。しかしこの俺様に多少慣れてきている自分がいて、社会人時代に培った適応力の高さを自分で褒めて慰める。
「てか、ディタのこと知ってるんですね。仲良いんですか?」
「……」
「そんなわけないか。ダン王子に友達なんていなそうですもんね」
「…………」
無視は続いたが、若干睨まれる。俺はこいつからの好感度など知ったことではないので、謝らずにしゃべり続けた。
「ディタは不良っぽい雰囲気なのに、喋ってみたらいい人でギャップありました。一緒に授業受けるのも楽しかったです。これからも仲良くしたいなと思ってて。……でも、ひとつ気になったことがあったんですよね」
「……」
「クシェル王子とディタって……そういう関係ですか?」
「あ?」
声を潜めた俺に、ダン王子は思い切り眉を寄せて心底不快そうに口を歪めた。ワイングラスをテーブルに戻すと腕を組む。
「何を言ってるんだ、貴様」
「いや、思い過ごしかもしれないんですけど! でも実は裏庭でそんな感じのやり取り──というか、クシェル王子がディタにキスしようとしてたの見ちゃって……恋人か何かなのかと」
「クシェルは色情魔で誰彼構わず挨拶代わりに迫り、キスくらいなら誰とでもする。ディタがその標的になっただけだ」
「でも2人はちゃんと仲良さそうでしたよ。気さくに話してて」
「それはそういう仲の良さではない。クシェルは誰とも付き合わん。同じやつと2度寝ない男だ」
(もう1度手を出されたいとかいう謎の集団に追いかけられてたけど、マジで1回しか手出さないんだ。なら、本当にディタはそういうんじゃないってことなのか?)
「兄弟の性事情など考えたくもない。金輪際話題にするな」
「はぁ、すいません──は? きょ、兄弟!? えっ、ダン王子とディタが!?」
俺はペンネを刺していたフォークを落とすくらいびっくりして大きい声を出した。
(ふたりともさっき顔合わせたのに、そんな素振り一切見せなかったじゃん!)
「……あいつ、話さなかったのか」
「なんにも言われてないですよ! ディタが弟ってことですよね!? 全然見えない──」
「違う。あっちが兄だ。見ればわかるだろ」
「え? いやでも、ダン王子が第1王子でしょ? ディタがお兄さんなら、第1王子はディタになるはずじゃ」
「魔法ができない者に王位継承権を与えるわけがないだろ。国は後から生まれた俺を第1王子にせざるを得なかっただけだ。ディタは王と王妃の間に生まれた正真正銘の直系王族だが、王子として扱われたことはない。王は魔力を僅かにしか持たぬ嫡男を生まれた瞬間から恥じ、最終的にアクラマに押しやった。魔法が使えるようになるまで国に戻ることは許さないと命じてな」
ダン王子は世間話のように喋ったが、俺は唖然としてしまって反応が遅れる。
「それ……酷すぎませんか。ディタのことを実の親が見捨てたってことですよね」
「魔法を使えない直系王族など、咲かない花と同じだ。価値がない」
ダン王子はテーブルに置かれた花──俺がディタに貰ったスパークルフラワーを見ていた。
「そんな言い方は──」
「魔力量の少ない者に、魔力を付すため行う術がある。背中を開き、魔力を生み出す源とされる背骨の椎を、正常な魔力を持つ者の椎と入れ替える術だ」
(朝来た時はソファスペースにしか気づかなかったけど、王子専用の料理人が常駐してるのか……)
「てことは、もしかして厨房の人に今朝の会話聞かれてませんか……!?」
「そんな馬鹿げたミスをするわけないだろ」
俺はカーテンから出てソファに座るなり重大発見をダン王子に囁いたが、ダン王子は呆れ顔を返した。
「あのカーテンには強固な結界が張ってあり、厨房の者は王家室へ入れないようになっている。王家室は魔法で防音が保たれ、こちらの会話はまるで聞こえん」
じゃ誰が料理を運んでくるんだと思った矢先、魔法によって浮いた皿が運ばれてきた。俺の前に着地したのはトマトソースのペンネだ。ダン王子のところにはデキャンタの赤ワインが届いた。他に料理が来ないのを確認してからペンネを食べようとしたら、ワインを傾けたダン王子が俺を見た。
「ディタとなぜ一緒にいた」
「あ~裏庭で休憩してたら、クシェル王子にディタを紹介されたんです。それで一緒に授業受けてやろうかってディタが言ってくれて。ディタって魔法できないらしいんですけど、俺以外にも魔法使えない人いるって知って、ちょっと親近感が沸いたというかなんか嬉しくて──」
「……」
「え、聞いといてガン無視?」
俺に答えさせておいてなんの反応もしないダン王子は、それが当然といった顔をしていた。傍若無人だ。しかしこの俺様に多少慣れてきている自分がいて、社会人時代に培った適応力の高さを自分で褒めて慰める。
「てか、ディタのこと知ってるんですね。仲良いんですか?」
「……」
「そんなわけないか。ダン王子に友達なんていなそうですもんね」
「…………」
無視は続いたが、若干睨まれる。俺はこいつからの好感度など知ったことではないので、謝らずにしゃべり続けた。
「ディタは不良っぽい雰囲気なのに、喋ってみたらいい人でギャップありました。一緒に授業受けるのも楽しかったです。これからも仲良くしたいなと思ってて。……でも、ひとつ気になったことがあったんですよね」
「……」
「クシェル王子とディタって……そういう関係ですか?」
「あ?」
声を潜めた俺に、ダン王子は思い切り眉を寄せて心底不快そうに口を歪めた。ワイングラスをテーブルに戻すと腕を組む。
「何を言ってるんだ、貴様」
「いや、思い過ごしかもしれないんですけど! でも実は裏庭でそんな感じのやり取り──というか、クシェル王子がディタにキスしようとしてたの見ちゃって……恋人か何かなのかと」
「クシェルは色情魔で誰彼構わず挨拶代わりに迫り、キスくらいなら誰とでもする。ディタがその標的になっただけだ」
「でも2人はちゃんと仲良さそうでしたよ。気さくに話してて」
「それはそういう仲の良さではない。クシェルは誰とも付き合わん。同じやつと2度寝ない男だ」
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「……あいつ、話さなかったのか」
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「え? いやでも、ダン王子が第1王子でしょ? ディタがお兄さんなら、第1王子はディタになるはずじゃ」
「魔法ができない者に王位継承権を与えるわけがないだろ。国は後から生まれた俺を第1王子にせざるを得なかっただけだ。ディタは王と王妃の間に生まれた正真正銘の直系王族だが、王子として扱われたことはない。王は魔力を僅かにしか持たぬ嫡男を生まれた瞬間から恥じ、最終的にアクラマに押しやった。魔法が使えるようになるまで国に戻ることは許さないと命じてな」
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ダン王子はテーブルに置かれた花──俺がディタに貰ったスパークルフラワーを見ていた。
「そんな言い方は──」
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