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(えっ……)
重なった唇は少し冷たくて、花に触れるような繊細な交わりだった。
「……」
「……何か、言ったらどうだ」
目を見開く俺に、唇だけを離した至近距離でダン王子が囁く。
「……え、あの、なんで……っ」
「わからないのか」
「いや、わかんない、というか……」
心臓の高鳴りが、もう誤魔化せないほどになっていた。熱い。顔が熱い。うまく考えがまとまらなくて、目が泳ぐ。
「お前、俺をどう思っている」
「そ、それ俺に聞くんですか……!? どうって──」
開いた口を塞ぐように、またキスされる。何度か唇を食まれる間、俺はただされるがままだった。
「っ……、ダン王子……ッ」
「嫌なら拒絶しろ。なぜ口づけを許す」
「! そ、れは……」
(なんでって。それは……だって──)
──好きだから。
流れるように出てきた理由が、俺の胸を支配した。否定したくても、それ以外の答えは浮かばなかった。
(俺……好き、なんだ……)
好きだから。そう、それだけ。簡単だが飲み込みがたかった感情を受け入れると、喉のつかえが取れたように呼吸ができた。
水面下でずっと自覚はあった気がする。でも、同時に魔界での恋愛なんて空しいだけだと思っていた。
配偶者候補が俺を構うのは、俺に好意があるからじゃない。元来至上様は誰も愛さない。結婚にあるのは利権だけで、そこに愛はない。
(でも、俺の気持ちは……)
1度認めてしまったら、尋常ではなく顔が熱くなって冷静ではいられなかった。
「な、なんだって……いいじゃないですかっ……!」
答えがわかっても答えられない俺から、ダン王子は目を離さない。
「答えろ。自分の行動の理由がわからない、などという逃げを聞く気はない」
「……それなら、ダン王子はなんで俺に……キスするんですか。理由、あるんですよね」
ダン王子と視線が絡む。
俺が至上様だから?至上様の俺を懐柔したいから?
聞きたい言葉はそんなことじゃなかったけど、そんなことしか浮かばない。
「……理由を知りたいなら、言ってやる。俺は──」
「失礼いたします。ルカ様、そろそろお部屋へお戻りください」
頬を両手で包まれ、至近距離でダン王子に見つめられる俺のすぐ横に、転位したイリスさんが立っていた。
「!? イ、イイイリスさん!?」
イリスさんは俺たちの様子を見て目を瞬く。
「なんと……これは。お邪魔でしたか」
「ああ、邪魔だ」
「!? んん……!」
即答したダン王子が、いまだ固まっている俺の顔を引き寄せてキスをしてきた。さすがの俺も流されている場合ではないと、自ら顔を離して立ち上がる。
「ちょっ、やめっ……! イリスさんの前で何してんですか!」
「不躾な側近にわからせてやっている」
当たり前だと言わんばかりの返答に、イリスさんが頭を下げた。
「無粋なことをいたしました。終わるまで待機いたします。ルカ様、心ゆくまで──」
「待って待って待って、見せる趣味とかないです!! 今すぐ部屋に戻りますから……!!」
また引き寄せようとしてくるダン王子の手から、色気のない抵抗をして逃れる。それ以上追ってキスを迫られることはなかったが、何か言いたげな視線はついてきた。
(いや、ホントに今のなんだったんだよ……!? なんで俺にキスなんて……)
唇の感触はまだ残っていて、顔が熱い。誰がどう見ても今の俺は赤面しているだろう。
「ルカ様、本当によろしいのですか?」
「よろしいです! ダン王子、おやすみなさい!」
俺は一方的にそう言って、ダン王子の顔を見ないようにした。というより見ることができなかった。
キスの真意がわからなくて、それなのに自分の気持ちは嫌というほどわかってしまって、俺の心臓はいつまでもうるさいままだった。
重なった唇は少し冷たくて、花に触れるような繊細な交わりだった。
「……」
「……何か、言ったらどうだ」
目を見開く俺に、唇だけを離した至近距離でダン王子が囁く。
「……え、あの、なんで……っ」
「わからないのか」
「いや、わかんない、というか……」
心臓の高鳴りが、もう誤魔化せないほどになっていた。熱い。顔が熱い。うまく考えがまとまらなくて、目が泳ぐ。
「お前、俺をどう思っている」
「そ、それ俺に聞くんですか……!? どうって──」
開いた口を塞ぐように、またキスされる。何度か唇を食まれる間、俺はただされるがままだった。
「っ……、ダン王子……ッ」
「嫌なら拒絶しろ。なぜ口づけを許す」
「! そ、れは……」
(なんでって。それは……だって──)
──好きだから。
流れるように出てきた理由が、俺の胸を支配した。否定したくても、それ以外の答えは浮かばなかった。
(俺……好き、なんだ……)
好きだから。そう、それだけ。簡単だが飲み込みがたかった感情を受け入れると、喉のつかえが取れたように呼吸ができた。
水面下でずっと自覚はあった気がする。でも、同時に魔界での恋愛なんて空しいだけだと思っていた。
配偶者候補が俺を構うのは、俺に好意があるからじゃない。元来至上様は誰も愛さない。結婚にあるのは利権だけで、そこに愛はない。
(でも、俺の気持ちは……)
1度認めてしまったら、尋常ではなく顔が熱くなって冷静ではいられなかった。
「な、なんだって……いいじゃないですかっ……!」
答えがわかっても答えられない俺から、ダン王子は目を離さない。
「答えろ。自分の行動の理由がわからない、などという逃げを聞く気はない」
「……それなら、ダン王子はなんで俺に……キスするんですか。理由、あるんですよね」
ダン王子と視線が絡む。
俺が至上様だから?至上様の俺を懐柔したいから?
聞きたい言葉はそんなことじゃなかったけど、そんなことしか浮かばない。
「……理由を知りたいなら、言ってやる。俺は──」
「失礼いたします。ルカ様、そろそろお部屋へお戻りください」
頬を両手で包まれ、至近距離でダン王子に見つめられる俺のすぐ横に、転位したイリスさんが立っていた。
「!? イ、イイイリスさん!?」
イリスさんは俺たちの様子を見て目を瞬く。
「なんと……これは。お邪魔でしたか」
「ああ、邪魔だ」
「!? んん……!」
即答したダン王子が、いまだ固まっている俺の顔を引き寄せてキスをしてきた。さすがの俺も流されている場合ではないと、自ら顔を離して立ち上がる。
「ちょっ、やめっ……! イリスさんの前で何してんですか!」
「不躾な側近にわからせてやっている」
当たり前だと言わんばかりの返答に、イリスさんが頭を下げた。
「無粋なことをいたしました。終わるまで待機いたします。ルカ様、心ゆくまで──」
「待って待って待って、見せる趣味とかないです!! 今すぐ部屋に戻りますから……!!」
また引き寄せようとしてくるダン王子の手から、色気のない抵抗をして逃れる。それ以上追ってキスを迫られることはなかったが、何か言いたげな視線はついてきた。
(いや、ホントに今のなんだったんだよ……!? なんで俺にキスなんて……)
唇の感触はまだ残っていて、顔が熱い。誰がどう見ても今の俺は赤面しているだろう。
「ルカ様、本当によろしいのですか?」
「よろしいです! ダン王子、おやすみなさい!」
俺は一方的にそう言って、ダン王子の顔を見ないようにした。というより見ることができなかった。
キスの真意がわからなくて、それなのに自分の気持ちは嫌というほどわかってしまって、俺の心臓はいつまでもうるさいままだった。
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