魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ

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「そもそもの発端は、接吻の儀の完了が遅かったことだ。それで試しに至上宮へ攻撃を仕掛けたが、結界が至上によって強化されなかった。攻撃者に絶対死が発動することもなかった。この時点で至上に何かイレギュラーが起きていると俺たちは考えた」

 ディタは勝利を確信した悪役がやるように、経緯を話し始めた。

「もちろん最初からルカを至上だと思ってたわけじゃない。だが魔法は出来ないのに魔力を異常に持ってるやつがいたら、怪しんでみたくもなるだろ。だから舞踏会の時に、魔力がある者ほど行動不能になる呪具を使った。お前が本当に周りと違う異常者なのかを確かめるためだ」

(ああ……やっぱり俺目当てで引き起こされた事件だったんだ。俺のせいで)

 話に参加したくてたまらない様子で、ユーリがイリスさんの横に立って俺に手を振る。

「あの時、動けてたやろ? 魔力量があるくせに呪具が効いてへん。つまりお前が異常なんは決まりや。で、至上かどうか確定させるために側近を使った。こいつは至上の身に危険が迫ると強制犠牲が発動する生きた盾やからな。指標になるってわけ」
「っ、う……」
「イリスさん!」

 ユーリに足蹴にされると、イリスさんが弱く呻いた。

(まだ息がある……! どうにかしてイリスさんだけでも──)

「まだ生きとった。元気やねえ」
「っ、おい……! やめろ!おい!!」

 可笑しそうに口角を上げながら、ユーリが腰の剣を抜いた。嫌でも何をするのかわかってしまい、俺は思うようにならない身体でもがく。

「死んどけ、下僕」
「このッ、やめろって言ってんだろ!!」

 叫んだ。
 瞬間、ユーリに向かって地面が割れた。抑えられない強い感情に自分を見失う感覚がして、終わらない地響きにユーリが体勢を崩した。

「! こいつ……!」

 周囲の木々に亀裂が入り、倒れていく。雑兵の切先が一斉に俺を捉えたが、俺は怒りしか感じていなかった。

「離れろ、今すぐ」

 心が殺意に満ちる。ひと際大きい音がして、ユーリを中心とした地面が大きく沈んだ。

「イリスさんに触れたら、殺してや──」
「“絶縁枷に付す”」

 ──バキバキバキッ。

 背後からディタの声がして、俺は全身の骨が折れるような音を聞いた。

「っ!? あ……!」

 手首の枷が熱い。そう思った時には景色が回転して、俺は地面に倒れ込んでいた。
 地響きは収まり、体勢を直したユーリが俺の顔を見て口を歪めて笑った。

「お~こわ。やっぱ腐っても至上やな」

 動けない。瞬きすらできない。思考がぼやける。
 意識が沈んでいく中で、ユーリがイリスさんに剣を振り上げるのが見えた。その瞬間を見たくないのに、目を背けることもできなかった。

「……絶縁枷。対象の魔力と五感を無力化し、この世と絶縁させる呪具だ。使われたら、何もわからない廃人になっちまう。至上相手でも効果があるかは賭けだったが……もう聞こえてねえか」

(……どうして……ディタ……)

 頭に靄がかかる。何も感じなくなっていく。

「じゃあな、ルカ。お前が次目覚めたら……魔界はもうないかもな」

 最後に聞こえたディタの声は、どこか悲しそうだった。
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