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EP4
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うつ伏せの俺の横に、ダン王子が腰かけて手元を覗き込んでいる。俺はものすごい勢いで本を閉じ、起き上がった。
「ちょ、か、勝手に部屋入ってこないでくださいよ!!」
「俺に転位を許可しているのはお前だが」
それはそう。
俺が至上様として、ダン王子にのみこの自室へいつでも転位してよいと許可を出している。つまり俺の発言は支離滅裂な主張だった。
(でも、今までこんな夜に来たことなかったし……!)
心の中で言い訳を続けながら、俺は『イラストつき! たのしく学べる性教育』をゆっくり背中の方に移動させて隠す。
「いやあの、すみません。こんな遅くに来るの珍しいから驚いちゃって……」
「公務が終わってお前に会いに来た。ロットで過ごしても辛気臭いだけだからな」
大袈裟にロットに向けてため息を吐いたダン王子は、俺の手を握って引き寄せた。それだけではなく甲にキスまでされて、俺は目を泳がせるしかない。
(夜に来たのって初めてだよな。これって……もしかして、今夜“ある”のか……?)
さっきやっと参考書を手に入れたところで、俺はまだ何も学べていない。実践編に進むには予習不足過ぎて、目が泳ぎ続けた。
「ってことは、もしかして、今日泊まります……?」
「なんだ、嫌なのか」
当然泊まるつもりだったらしいダン王子は、俺の問いに目を瞬いて首を傾げた。夜分遅くにベッドの上で手の甲にキスして「では、さようなら」と帰るわけがない。流石に俺がダン王子の立場でも帰らないだろう。
俺を見る視線に、今ので傷つけたかもしれないと思って俺は急いで頭を振った。
「嫌とかではないです、全然!」
俺が否定してもダン王子は首を傾げたままだ。傷ついた様子はなくてよかったが、不思議そうにしている。
「えーっと、じゃ早速寝ま──」
「恋仲になる前も共に寝たことくらい何度もあった。何を今さら気にする必要がある」
無理やり就寝の流れにしようとした俺を遮って、ダン王子は俺の手を引き寄せた。顔が近くなり、俺の顔だけ熱くなる。
「いや、ホントにあの……久しぶりだから緊張してるだけっていうか」
しどろもどろで返す俺をじっと見ていたダン王子だったが、ふと俺の背後に目をやった。
「ところで、さっき読んでいたものはなんだ?」
言うが早いか俺の後ろから本が飛んで出てきて、俺は今日1番大きい声を出した。
「ああー!!! ダメ、それ見ちゃダメ!!」
「ほう、わかりやすいな。隠し事か」
取り返そうとしても時既に遅し。ダン王子の手中に収まった本は、その表紙を堂々と見せつけていた。
『イラストつき! たのしく学べる性教育』。
思っていたものと違ったのか、ダン王子は表紙を見つめてから無言のまま中を見始めて、数回ページをめくったところで本を閉じた。
「これは?」
この本が何かはわかっているだろうが、なんでこれを俺が隠れて読んでいるのかという意味の問いだろうと俺は思いながら、恥ずかしさでまともにダン王子を見られなかった。
「え、えーっと……。俺、男同士の経験がないんで事前に勉強しておこうと思って……」
恋人を目の前にしてこんなことを言うのはとんだ羞恥プレイである。反応が怖くて目を背け続けていると、ため息が聞こえた。
「……遠慮していたのが馬鹿みたいだな」
「え?」
何やら呟いたダン王子はポイっと本を投げて──正確には魔法で部屋の隅の方に飛ばして、俺の頬に触れてくる。
「こんなもので学ばずとも、俺が実践で教えてやる」
「じ、実践って……」
羞恥心と好奇心が胸中渦巻いて、言葉が続かない。
「したいのか、したくないのか。それだけ素直に言え。俺も無理やりは好かん」
赤い瞳に囚われて、俺は唾を飲みこんだ。いつまでも生娘のように恥ずかしがっていたいわけじゃない。俺にも当たり前のように健全な欲があった。
予習ができていないとか、そういう理性的な部分は取り去って、俺は本能に従うことにした。
「……し、したい、です……」
小さい声でどうにか答えると、俺の身体はベッドに沈まされていた。
「ちょ、か、勝手に部屋入ってこないでくださいよ!!」
「俺に転位を許可しているのはお前だが」
それはそう。
俺が至上様として、ダン王子にのみこの自室へいつでも転位してよいと許可を出している。つまり俺の発言は支離滅裂な主張だった。
(でも、今までこんな夜に来たことなかったし……!)
心の中で言い訳を続けながら、俺は『イラストつき! たのしく学べる性教育』をゆっくり背中の方に移動させて隠す。
「いやあの、すみません。こんな遅くに来るの珍しいから驚いちゃって……」
「公務が終わってお前に会いに来た。ロットで過ごしても辛気臭いだけだからな」
大袈裟にロットに向けてため息を吐いたダン王子は、俺の手を握って引き寄せた。それだけではなく甲にキスまでされて、俺は目を泳がせるしかない。
(夜に来たのって初めてだよな。これって……もしかして、今夜“ある”のか……?)
さっきやっと参考書を手に入れたところで、俺はまだ何も学べていない。実践編に進むには予習不足過ぎて、目が泳ぎ続けた。
「ってことは、もしかして、今日泊まります……?」
「なんだ、嫌なのか」
当然泊まるつもりだったらしいダン王子は、俺の問いに目を瞬いて首を傾げた。夜分遅くにベッドの上で手の甲にキスして「では、さようなら」と帰るわけがない。流石に俺がダン王子の立場でも帰らないだろう。
俺を見る視線に、今ので傷つけたかもしれないと思って俺は急いで頭を振った。
「嫌とかではないです、全然!」
俺が否定してもダン王子は首を傾げたままだ。傷ついた様子はなくてよかったが、不思議そうにしている。
「えーっと、じゃ早速寝ま──」
「恋仲になる前も共に寝たことくらい何度もあった。何を今さら気にする必要がある」
無理やり就寝の流れにしようとした俺を遮って、ダン王子は俺の手を引き寄せた。顔が近くなり、俺の顔だけ熱くなる。
「いや、ホントにあの……久しぶりだから緊張してるだけっていうか」
しどろもどろで返す俺をじっと見ていたダン王子だったが、ふと俺の背後に目をやった。
「ところで、さっき読んでいたものはなんだ?」
言うが早いか俺の後ろから本が飛んで出てきて、俺は今日1番大きい声を出した。
「ああー!!! ダメ、それ見ちゃダメ!!」
「ほう、わかりやすいな。隠し事か」
取り返そうとしても時既に遅し。ダン王子の手中に収まった本は、その表紙を堂々と見せつけていた。
『イラストつき! たのしく学べる性教育』。
思っていたものと違ったのか、ダン王子は表紙を見つめてから無言のまま中を見始めて、数回ページをめくったところで本を閉じた。
「これは?」
この本が何かはわかっているだろうが、なんでこれを俺が隠れて読んでいるのかという意味の問いだろうと俺は思いながら、恥ずかしさでまともにダン王子を見られなかった。
「え、えーっと……。俺、男同士の経験がないんで事前に勉強しておこうと思って……」
恋人を目の前にしてこんなことを言うのはとんだ羞恥プレイである。反応が怖くて目を背け続けていると、ため息が聞こえた。
「……遠慮していたのが馬鹿みたいだな」
「え?」
何やら呟いたダン王子はポイっと本を投げて──正確には魔法で部屋の隅の方に飛ばして、俺の頬に触れてくる。
「こんなもので学ばずとも、俺が実践で教えてやる」
「じ、実践って……」
羞恥心と好奇心が胸中渦巻いて、言葉が続かない。
「したいのか、したくないのか。それだけ素直に言え。俺も無理やりは好かん」
赤い瞳に囚われて、俺は唾を飲みこんだ。いつまでも生娘のように恥ずかしがっていたいわけじゃない。俺にも当たり前のように健全な欲があった。
予習ができていないとか、そういう理性的な部分は取り去って、俺は本能に従うことにした。
「……し、したい、です……」
小さい声でどうにか答えると、俺の身体はベッドに沈まされていた。
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