悪役令嬢はなにもしたくない

4話

もう暗闇の中にどれくらいの時間漂い続けたのかもわからない。

数日かもしれないし年単位の可能性もある。

普段聞こえていた何気ない音が聞こえ無くて目も見えないとなると暇つぶしなどあるはずもなく、ひたすら自問自答を繰り返したり思い出に浸っていたりした。

そんな時間を過ごしていると自分の中に違和感を感じ始めた。

「悪役令嬢？ゲーム？何これ私の知らない記憶があるわ。櫻井綾子って誰なの」

櫻井綾子という名前に反応したのか頭の中に前世の記憶が入り込んできて激痛が走る。

「いたい！！何なのこれ！頭が割れそうだわ！」

「や、やばいもう無理ですわ…」

壮絶な痛みでスカーレットは気を失ってしまった。




スカーレットは目を覚ますと今までいた暗闇ではなく綺麗な天蓋の付いたベットの中で眠っていた。

「あ、あれ？私って何でベットで寝ているんですの？」

自分の今置かれている状況に理解できずに放心しているとコンコンと扉をノックする音がした。

「お嬢様、失礼いたします。」

私の部屋に訪れたのはメイド長のアリサで、わたしが起きていることに気がつくと目を見開いた。

「お嬢様！目を覚まされましたか！急いで御当主と奥様をお呼びいたします！」

そう言って私の反応を伺うまでもなく走って行ってしまった。

「？母上を呼んでくる？流行り病で亡くなったはずですが」

「うーん、全然わかりません。考えても疲れますしもう一度寝ましょう…」

すぴーすぴーと可愛い寝息を立てながらまた寝てしまった。

今までのスカーレットであれば1度起きたらすぐに準備をして王妃教育を受けていたのだが、

今のスカーレットは櫻井綾子の記憶も入っている為、性格と生活習慣が彼女に近くなってしまっていた。


ジョセフside

ウロウロ、ウロウロ、

「ああ…大丈夫かなぁスカーレット」

愛娘であるスカーレットがいきなり倒れてから1週間が経ち、心配から執務に集中できずに仕事が溜まり続けていた。

「あなた？仕事しないと民が困ってしまうわ、書類の山１つだけでもいいから終わらせてください。」

妻であるマリアに仕事をするように促されてしまった。

「えぇーでもでもスカーレットが倒れちゃたんだよ？やりたくてもできないんだよぉ」

ジョセフはメソメソと妻の前で情けなく涙を流した。

「はぁ、全く情けないですよ！そんなんじゃいざという時どうするのですか」

「スカーレットや私が倒れたから何もできないでは許されない立場なのですよ！」

「わ、わかってるよマリア、そんなに怒らないでおくれ。」

マリアは呆れたように肩を竦めた。

「別に怒ってなどいません。ただ、公爵家の貴族としてたみを導くものとしての責任感をもっと持って欲しかったのです。」

「いつもはちゃんと仕事してるじゃないか、今回は話が別だと思うんだが…」

「どんな状況であろうとも務めを果たせるくらいにはなって欲しいのものですわ、」


コンコン…ジョセフ様！マリア様！入室してもよろしいでしょうか！