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大切なモノ
52話 手形
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数日後、中島さまから電話があった。電話はご主人からで、保険の申し込み手続きをしたいとのことだ。私は切電してからガッツポーズをした。
「よっしゃ!」
「お、申込希望の電話?」
コピー機の前で立っていた北窪さんが話しかけた。私は親指を立ててニカっと笑う。
「はい!やったー!」
「おめでとう。今夜はお寿司だ」
「ですね!」
二人でおどけながら、一件成約を喜んだ。早速手続き書類を揃えて鞄の中へ入れる。中島さまのアポは金曜日。案件配信から一週間以内に成約できるなんてはじめてだ。アポなし訪問、当たれば早いな…。いやでもやっぱり嫌いだけどね!
◇◇◇
「おかえりなさい、花雫」
「あ!花雫おかえりー!!」
「ただいまあああ!!」
仕事から帰り、リビングで川柳を書いているあやかしたちに飛びついた。この花の香りを嗅ぐだけでしあわせな気分になれるよね。癒されるわー…。
「早速お風呂入ろうね花雫!」
「いやぁぁ…」
1年経っても夜風呂はめんどくさい。綾目がいなかったら絶対に入ってない。
「綾目ぇ…。頭洗ってぇ…」
「だめ!昨日洗ってあげたばっかりでしょ!甘えないの!」
「うぅぅ…。じゃあお風呂入ってる間話し相手になって…」
「それだったらいいよ」
「ありがとう…」
お風呂につかりながら、今日一日綾目たちがどんなふうに過ごしていたかを聞いた。今日は蓮華と蕣が遊びに来たようだ。
綾目を溺愛している私は、蓮華と蕣に彼をあまりいじめないようにお願いした。貢物として大量の飴玉を渡すと、彼女たちはコクコク頷いた。それからは結構仲良くやってるみたいだ。よかった。
今日も4人で楽しく過ごしてたみたい。といっても花を眺めながらボーっとしたり、各々が好きなことをして過ごすだけみたいだけど。彼らにとってそれが一番心地いい過ごし方なのだろう。
お風呂からあがると、薄雪がグラスにビールを注いでくれた。乾杯をしてまったりと談笑する。一年間もほとんど毎日晩酌してるのに話が尽きることがない。私が仕事の愚痴をこぼすだけで何時間も話せるし、薄雪の何千年にも渡る思い出話をじっくり聞くだけであっという間に夜が更ける。
「さて花雫。そろそろ眠らなければ」
「ええ…。もうそんな時間…?はぁ…仕事行きたくない…」
「もう仕事のことを考えているのですか?眠れば仕事のことを忘れられます」
薄雪が布団をぺらりとめくる。私と綾目がその中へ潜り込み、せまい布団の中でぴったりくっついて眠った。薄雪と綾目はやっぱり不思議で、夏はひんやり冷たいし、冬はふんわりあたたかい。彼らがいたらひんやり布団も電気毛布ない。とても心地がいい。
◇◇◇
「綾目、起きているかい」
「はい」
夜中2時。花雫が夢を見ているときに、薄雪が小声で綾目を呼び掛けた。綾目も小さく返事をする。
「また、来ているね」
「…はい」
「これで二度目だ。偶然じゃないようだけど…家には入ってこないのか」
「薄雪さまがいらっしゃるからでしょうか。森の花のおかげでこの部屋は清らかさを保っていますし」
「だが…アレは私に怒りを覚えているようだ」
薄雪が和室の窓に目を向ける。そこには青白い手が伸び、窓にガリガリと爪を立てていた。
「よっしゃ!」
「お、申込希望の電話?」
コピー機の前で立っていた北窪さんが話しかけた。私は親指を立ててニカっと笑う。
「はい!やったー!」
「おめでとう。今夜はお寿司だ」
「ですね!」
二人でおどけながら、一件成約を喜んだ。早速手続き書類を揃えて鞄の中へ入れる。中島さまのアポは金曜日。案件配信から一週間以内に成約できるなんてはじめてだ。アポなし訪問、当たれば早いな…。いやでもやっぱり嫌いだけどね!
◇◇◇
「おかえりなさい、花雫」
「あ!花雫おかえりー!!」
「ただいまあああ!!」
仕事から帰り、リビングで川柳を書いているあやかしたちに飛びついた。この花の香りを嗅ぐだけでしあわせな気分になれるよね。癒されるわー…。
「早速お風呂入ろうね花雫!」
「いやぁぁ…」
1年経っても夜風呂はめんどくさい。綾目がいなかったら絶対に入ってない。
「綾目ぇ…。頭洗ってぇ…」
「だめ!昨日洗ってあげたばっかりでしょ!甘えないの!」
「うぅぅ…。じゃあお風呂入ってる間話し相手になって…」
「それだったらいいよ」
「ありがとう…」
お風呂につかりながら、今日一日綾目たちがどんなふうに過ごしていたかを聞いた。今日は蓮華と蕣が遊びに来たようだ。
綾目を溺愛している私は、蓮華と蕣に彼をあまりいじめないようにお願いした。貢物として大量の飴玉を渡すと、彼女たちはコクコク頷いた。それからは結構仲良くやってるみたいだ。よかった。
今日も4人で楽しく過ごしてたみたい。といっても花を眺めながらボーっとしたり、各々が好きなことをして過ごすだけみたいだけど。彼らにとってそれが一番心地いい過ごし方なのだろう。
お風呂からあがると、薄雪がグラスにビールを注いでくれた。乾杯をしてまったりと談笑する。一年間もほとんど毎日晩酌してるのに話が尽きることがない。私が仕事の愚痴をこぼすだけで何時間も話せるし、薄雪の何千年にも渡る思い出話をじっくり聞くだけであっという間に夜が更ける。
「さて花雫。そろそろ眠らなければ」
「ええ…。もうそんな時間…?はぁ…仕事行きたくない…」
「もう仕事のことを考えているのですか?眠れば仕事のことを忘れられます」
薄雪が布団をぺらりとめくる。私と綾目がその中へ潜り込み、せまい布団の中でぴったりくっついて眠った。薄雪と綾目はやっぱり不思議で、夏はひんやり冷たいし、冬はふんわりあたたかい。彼らがいたらひんやり布団も電気毛布ない。とても心地がいい。
◇◇◇
「綾目、起きているかい」
「はい」
夜中2時。花雫が夢を見ているときに、薄雪が小声で綾目を呼び掛けた。綾目も小さく返事をする。
「また、来ているね」
「…はい」
「これで二度目だ。偶然じゃないようだけど…家には入ってこないのか」
「薄雪さまがいらっしゃるからでしょうか。森の花のおかげでこの部屋は清らかさを保っていますし」
「だが…アレは私に怒りを覚えているようだ」
薄雪が和室の窓に目を向ける。そこには青白い手が伸び、窓にガリガリと爪を立てていた。
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