【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco

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魔女編:ポントワーブでの休息

【87話】野菜と果物とチーズ

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翌日、双子はトロワの住民に渡す食材の買い付けに行った。ポントワーブの南部は農業や酪農が盛んなため、おいしい果物や野菜、チーズなどがたくさんある。二人は農家の人たちに直接会いに行くことにした。
その日もアーサーはアビーとして出かけた。モニカと色違いのポンチョ、手袋、マフラー、耳当てをして手を繋ぎながら歩いた。通りすがる人たちは二人の仲良さげな様子に思わず顔がほころんだ。

彼らの家から1時間ほど歩くと、畑が一面に広がり始める。あぜ道を歩いていたら畑仕事をしているおじいさんを見つけた。アーサーがそのおじいさんに声をかける。

「こんにちはぁ!」

「んお?おお、こんにちは。お散歩かい?今日は雪が降ってるんだ。足をすべらせないように気を付けるんだよぉ」

「ありがとうおじいさん!ところで、何を作ってるんですか?」

「ジャガイモだよぉ」

おじいさんはそう言って、畑に植わっている葉を引き抜いた。根にはたくさんのジャガイモがなっている。アーサーとモニカは「わあああ!」とワクワクした声を出した。

「なんだいあんたら初めて見るのかい?」

「うん!ジャガイモってそうやってなるんだあ!知らなかった!」

「大きいジャガイモ!おいしそう!」

「にゃはは!うちのジャガイモはうめぇぞぉ。ほっくほくのあまあまだぁ!」

双子は目を見合わせて頷いた。そしておじいさんにお願いする。

「おじいさん!ジャガイモ、僕たちに売ってもらえませんか?!」

「ええぞぉ!!ちっと待っとれい」

おじいさんが引き抜いたジャガイモを土の上に置いてから、よいせよいせと双子の元へ歩いてきた。ふぅ、と額の汗を腕で拭ってからアーサーとモニカに尋ねる。

「で?何個ほしいんだ?」

「えーっと、一人30個の…200人くらいだから…7000個ください!」

「ああ?!7000個?!」

「多すぎますか…?」

「いやいいけどよぉ。そんなにたくさん持って帰れんのかあ?重ぇぞ?」

「大丈夫です!食材入れるためのアイテムボックスを持ってきました」

モニカはそう言ってリュックサックを見せた。革製品店で買ったリュックにモニカが空間魔法をかけたのだ。これだとほぼ無制限に入る上に重さも感じない。
おじいさんは畑の近くにある小屋へ二人を案内し、出荷用に準備していたジャガイモを売ってくれた。代金は金貨56枚だった。

「おじいさん、また買いに来てもいい?」

「もちろん大歓迎だよぉ。あ、そうだ。こっちにおいで。ジャガイモ引き抜かせてやる」

「ええ!本当に?!」

アーサーとモニカはおじいさんに連れられ、再び畑に戻った。泥だらけになりながらじゃがいもを引き抜き、自分たちが採った分を持って帰らせてくれた。

「こんなにいっぱいいいの?!」

「ああ。いっぱい買ってもらったからのぉ。おまけじゃおまけ」

「ありがとうおじいさん!」

「ねえおじいさん!どうしてポントワーブの野菜はおいしいの?」

「気候と、土だよ。うちの土と肥料は野菜が育ちやすいんだぁ」

「土か…」

アーサーは考え込んだ。トロワの畑も、ポントワーブの土と肥料に入れ替えたらいいかもしれない。これはカトリナとジルに相談だな、と決めた。

その他にも農業地を歩き回り、たまねぎ7000個、にんじん5000本、キャベツ1000玉、りんご2000個、オレンジ2000個、バナナ400房を買い付けた。合計で金貨205枚支払った。

次に二人は酪農をしている場所を訪れた。柵の中で数百体の牛がモォ、モォと鳴きながらゆっくりと歩いている。

「おやぁ?女の子が二人。迷子かねえ?」

柵につかまり夢中で牛を眺めている二人に気付き、牛の世話をしていた女性が首を傾げた。女の人と目が合った双子は慌てて挨拶をした。

「こんばんは!ごめんなさい。牛たちがかわいくてつい」

「いいよいいよ!あたいが愛情たっぷり育てた牛、じっくり見てやってくれ」

「わあい!」

「あんたら、ポントワーブの子かい?」

「はい!中心地から来ました」

「ほう、そりゃまたどうして」

「たくさんのチーズを買いたいんです!」

「チーズか。それだとうちの息子がやってるよ。ここからあっちむいて30分ほど歩いたところにちっちゃい家がある。そこで買いな」

女性は南を指さしてそう言った。二人は女性にお礼を言ってから南へ歩いた。女性が言っていた通り、その先には小さな家が建っていた。日が暮れているのに、家の前でいそいそと作業をしている18歳くらいの青年を見つけたので声をかけた。

「こんばんはー」

「うおぁ!!え?!かわいい女の子が二人?!なに?!これ幻?!それとも天使?!」

「えぇ…」

双子がじとっとした目で見ると、青年は顔を赤らめて咳ばらいをした。

「ンンッ、すまない。家族以外の人と話すのが久しぶりでテンパってしまった。それにしてもかわいいな…。あ、いや。なんでもない。で、俺に何の用かな?」

少しこのひと変だぞと警戒したアーサーが、モニカを守るように前へ立った。

「えっと、チーズを売ってくれませんか?200ブロックほど…」

「チーズ!俺の作ったチーズを?!君たちが買うの?!えーー嬉しい…」

「なんなのこの人ォ…」

アーサーの後ろでモニカが引いた声を漏らしている。アーサーもゴミを見るような目で青年を見た。

「ちょ、そんな目で見ないでよ…。傷つくだろぉ?」

「あ、ごめんなさい。ちょっと今まで会ったことのないタイプだったので…」

「タイプ?!君、俺のことタイプなのかい?!奇遇だな、俺も君のことすっごいタイプなんだよ何歳?どこ住み?伝書インコ持ってる?!」

青年は目を輝かせてアーサーの手を握った。モニカが「んひぃぃ!」と奇妙な声をあげている。そんな彼の手をつまみ上げながら、アーサーが地声で声を出した。

「あ、僕男なんで…ごめんなさい」

「なっ…!!」

青年が衝撃を受けて固まっている。アーサーはめんどくさそうにため息をつき、カツラを外した。

「ね?男でしょ?」

「い、いや、俺は信じない。ちょっと声の低いショートカットの少女だ君は」

現実を直視できない青年は首を振ってアーサーの主張を否定した。

「いや男の子ですよ…?」

モニカがドン引きした声でそう言っても、「そんなわけない。こんな可愛い子が女の子じゃないわけがない」と断固として認めない。仕方ない最終手段だ、とアーサーは彼の手を掴み股間に押し付けた。

「これでも女の子ですか?」

「なんだこのフワフワした感触は!!君はししし下着の中にハムスターでも入れているのか?!」

「えぇ…」

「アーサー、ダメだわこの人…」

帰りましょう、とアーサーの手をモニカが引いた。アーサーも「そうだね」と来た道を引き返そうとすると、青年が「ちょっと待ったあ!!」と片方のアーサーの腕をつかんだ。

「君たち、チーズはいいのか?!そのためにこんなところまで来たんだろう?」

「いや、なんだかもう良いかなって気持ちになりました…」

「すまない!先ほどのことは謝るから!君が男の子ということも信じよう。不本意だが!」

「は、はぁ…」

「頼む!チーズが余っているんだ。買ってくれるとすごく嬉しい!」

必死に手を合わせてお願いしている青年を困ったように見てから、アーサーとモニカが目を見合わせた。モニカがコクコクと首を縦に振ったので、アーサーは青年に向き直った。

「そういうことなら、買わせてもらいます」

「やったーーー!!」

「アーサー、この人うるさいよぉ…」

「本当に…変わった人だなあ」

アーサーとモニカは青年に、家の中へ案内された。モニカは彼と近づきたくないらしく、アーサーの後ろに隠れてそろそろと中へ入った。
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