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学院編:オヴェルニー学院
【129話】合流
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「はっ」
「……」
アーサーの意識が戻ったとき、セルジュ先生に強く抱きしめられていた。ミモレスが消えたことを察した先生がぼそりと呟く。
「…アーサーか?」
「あ…はい。あの、僕、また意識を失ってたみたいです。すみません。でも、ミモレスの…」
「彼女と話をした」
「えっ?」
「君の体に一瞬だけミモレスの人格が入った。少しだけ言葉を交わしたよ」
「そうですか。よかった…」
「ふふ。君は本当に人が良いね。こんなひどい目に遭わされていながら、私とミモレスが話せて良かったなんて」
「もっ、もちろんあなたのことは許しません!あなたは生徒たちにひどいことをしたんですからね。だけど…それでも、大好きな人と話せたことは良かったです」
「ミモレスでも君ほど優しくはなかったよ。やっぱり君はミモレスとは違う」
「当然です。僕は僕だし、モニカはモニカですから」
「そうだね」
甘えるようにアーサーの首元に頭を預けていたセルジュ先生がピクリと反応した。
「…誰か来たね」
「えっ?」
聞き耳を立てると、確かに足音がこちらへ向かってくる。部屋のドアがゆっくり開き、モニカが顔を覗かせた。
「あなたはそこで隠れててね。…あっ、いた!アーサー!」
「モニカ!来るな!吸血鬼だ!」
「吸血鬼…?!って…ちょっとあんた…」
モニカは兄にべったりくっついているセルジュ先生を見てかたまった。歯形のついた首元からは血を流し、シャツのボタンを外されて肌が見えているアーサー。ズボンまで下ろされかけている。モニカがかたかたと震えながら拳を握った瞬間、部屋全体が冷気に包まれた。
「モッ…モニカ…」
「…のよ…」
セルジュ先生はアーサーから顔を離してモニカを見た。
「あはは、その氷魔法、怒ったときのミモレスとそっくりだ」
「何笑ってるのよ…!わたしの…アーサーに…なにしてんのって聞いてんの!!!」
モニカがそう叫ぶと同時に先生がカチコチに凍結した。それを見たアーサーとウィルク王子は「ひぇぇぇ…」と情けない声をあげている。冷たくなったセルジュ先生の膝から降りたアーサーに駆け寄りアイテムボックスを渡す。
「アーサー、大丈夫?!ああ…顔が真っ青じゃない!」
「大丈夫だよ。血を飲まれただけだから」
「血を飲まれただけなのにどうして服がはだけてるの?!この変態教師になにされたの!!正直に言いなさい!!」
「ひっ…」
「なんなのこいつ!!アーサーの首にかじりついて!!きもちわるい!!変態!!私のアーサーになにしたの!!このっ!!このっ!!」
氷漬けにされたセルジュ先生をげしげしと蹴りながらモニカが絶叫している。アーサーは暴れる妹の腕を掴んで落ち着かせようと頑張った。
「モニカ落ち着いて!僕は大丈夫だから…ヒッ」
モニカの拳が凍結された先生のみぞおちにのめり込んでいる。氷にひびが入り、凍っている先生の口から血がこぼれた。パラパラと氷の破片をこぼしながらモニカが拳を引き抜いてアーサーに笑顔を向けた。
「アーサー?何されたか教えて?」
この目が笑っていない笑顔と一見穏やかに聞こえる口調は、モニカが本気で怒っているときに見せるものだ。アーサーは妹から目を逸らして小声で答えた。妹が怖すぎて青ざめぷるぷる震えている。
「…キスされました…」
「キッ…」
雷が近くで落ちた音がした。アーサーはゆっくりと後ずさる。正直セルジュ先生より今のモニカの方が怖い。しばらくの沈黙のあと、部屋に吹雪が吹き荒れモニカが泣き叫んだ。
「きゃあああああ!!!なんですって?!やだぁぁぁあぁ!!このっ…!!このっ…!!…アーサーもアーサーよ!!!なんでこんなやつと抱き合ってるのよ!!なんなの!!アーサーのばか!!ばかぁぁぁ!!!」
「色々あったんだよぉ…」
「精霊に!!吸血鬼に…!!!あんたってのはどうしてそう無防備なの!!!そのぷるぷるの唇を一体何人に奪われるつもりなの?!」
「ごめんよモニカぁ…これからは気を付けるから…」
「で?!この変態吸血鬼にあとはなにされたの?!体は?!体は無事?!」
モニカが兄のシャツをばっと広げた。肌に直接吹雪が当たりアーサーは「ひぃぃぃっ!!さむっ!!さむぅぅぅ!!」と歯を鳴らす。大声で騒ぎ問い詰めてくるモニカに肩を掴まれ、ガックンガックン揺らされながらアーサーは考えた。
(口の中に舌を入れられたなんて言ったらモニカが発狂しちゃう…。ここはうまくごまかしてモニカを落ち着かせないと…。でも落ち着いてって言っても絶対落ち着いてくれないし…。あっ、そうだ。モニカは僕を大事にしてくれてるし、こう言ったら気持ちを抑えてくれるはず)
「モニカぁ、僕貧血でクラクラしてるからあまり大声出さないで…」
「むぅっ…むぅぅぅっ…!!!」
「あと吹雪を止めて…寒すぎて死んじゃう…」
「むぅぅぅっぅぅっ!」
アーサーの予想通り、あからさまに体調が悪そうな顔をしたらモニカはすぐに吹雪を止めてくれた。氷魔法(感情)を抑えることがかなり大変なようで、血が出そうなほど唇を噛み自分の腕に爪を食いこませている。大声を出すなと言われたので、部屋をうろうろ歩き回って心を落ち着かせようとしたり、アーサーの体に障らないようソファに顔をうずめて大声で叫んだりしていた。アーサーはそんな妹の頭を優しく撫でる。
「無理をさせてごめんねモニカ」
「もごっ…わたしこそごめんなさい。アーサーの体のこと気遣ってなかったわ…。あともう少しだけ待ってね。あと1分で落ち着いてみせるから」
扉から覗いているウィルク王子は誰にともなく呟いた。
「何を見せられているんだ僕は…」
「……」
アーサーの意識が戻ったとき、セルジュ先生に強く抱きしめられていた。ミモレスが消えたことを察した先生がぼそりと呟く。
「…アーサーか?」
「あ…はい。あの、僕、また意識を失ってたみたいです。すみません。でも、ミモレスの…」
「彼女と話をした」
「えっ?」
「君の体に一瞬だけミモレスの人格が入った。少しだけ言葉を交わしたよ」
「そうですか。よかった…」
「ふふ。君は本当に人が良いね。こんなひどい目に遭わされていながら、私とミモレスが話せて良かったなんて」
「もっ、もちろんあなたのことは許しません!あなたは生徒たちにひどいことをしたんですからね。だけど…それでも、大好きな人と話せたことは良かったです」
「ミモレスでも君ほど優しくはなかったよ。やっぱり君はミモレスとは違う」
「当然です。僕は僕だし、モニカはモニカですから」
「そうだね」
甘えるようにアーサーの首元に頭を預けていたセルジュ先生がピクリと反応した。
「…誰か来たね」
「えっ?」
聞き耳を立てると、確かに足音がこちらへ向かってくる。部屋のドアがゆっくり開き、モニカが顔を覗かせた。
「あなたはそこで隠れててね。…あっ、いた!アーサー!」
「モニカ!来るな!吸血鬼だ!」
「吸血鬼…?!って…ちょっとあんた…」
モニカは兄にべったりくっついているセルジュ先生を見てかたまった。歯形のついた首元からは血を流し、シャツのボタンを外されて肌が見えているアーサー。ズボンまで下ろされかけている。モニカがかたかたと震えながら拳を握った瞬間、部屋全体が冷気に包まれた。
「モッ…モニカ…」
「…のよ…」
セルジュ先生はアーサーから顔を離してモニカを見た。
「あはは、その氷魔法、怒ったときのミモレスとそっくりだ」
「何笑ってるのよ…!わたしの…アーサーに…なにしてんのって聞いてんの!!!」
モニカがそう叫ぶと同時に先生がカチコチに凍結した。それを見たアーサーとウィルク王子は「ひぇぇぇ…」と情けない声をあげている。冷たくなったセルジュ先生の膝から降りたアーサーに駆け寄りアイテムボックスを渡す。
「アーサー、大丈夫?!ああ…顔が真っ青じゃない!」
「大丈夫だよ。血を飲まれただけだから」
「血を飲まれただけなのにどうして服がはだけてるの?!この変態教師になにされたの!!正直に言いなさい!!」
「ひっ…」
「なんなのこいつ!!アーサーの首にかじりついて!!きもちわるい!!変態!!私のアーサーになにしたの!!このっ!!このっ!!」
氷漬けにされたセルジュ先生をげしげしと蹴りながらモニカが絶叫している。アーサーは暴れる妹の腕を掴んで落ち着かせようと頑張った。
「モニカ落ち着いて!僕は大丈夫だから…ヒッ」
モニカの拳が凍結された先生のみぞおちにのめり込んでいる。氷にひびが入り、凍っている先生の口から血がこぼれた。パラパラと氷の破片をこぼしながらモニカが拳を引き抜いてアーサーに笑顔を向けた。
「アーサー?何されたか教えて?」
この目が笑っていない笑顔と一見穏やかに聞こえる口調は、モニカが本気で怒っているときに見せるものだ。アーサーは妹から目を逸らして小声で答えた。妹が怖すぎて青ざめぷるぷる震えている。
「…キスされました…」
「キッ…」
雷が近くで落ちた音がした。アーサーはゆっくりと後ずさる。正直セルジュ先生より今のモニカの方が怖い。しばらくの沈黙のあと、部屋に吹雪が吹き荒れモニカが泣き叫んだ。
「きゃあああああ!!!なんですって?!やだぁぁぁあぁ!!このっ…!!このっ…!!…アーサーもアーサーよ!!!なんでこんなやつと抱き合ってるのよ!!なんなの!!アーサーのばか!!ばかぁぁぁ!!!」
「色々あったんだよぉ…」
「精霊に!!吸血鬼に…!!!あんたってのはどうしてそう無防備なの!!!そのぷるぷるの唇を一体何人に奪われるつもりなの?!」
「ごめんよモニカぁ…これからは気を付けるから…」
「で?!この変態吸血鬼にあとはなにされたの?!体は?!体は無事?!」
モニカが兄のシャツをばっと広げた。肌に直接吹雪が当たりアーサーは「ひぃぃぃっ!!さむっ!!さむぅぅぅ!!」と歯を鳴らす。大声で騒ぎ問い詰めてくるモニカに肩を掴まれ、ガックンガックン揺らされながらアーサーは考えた。
(口の中に舌を入れられたなんて言ったらモニカが発狂しちゃう…。ここはうまくごまかしてモニカを落ち着かせないと…。でも落ち着いてって言っても絶対落ち着いてくれないし…。あっ、そうだ。モニカは僕を大事にしてくれてるし、こう言ったら気持ちを抑えてくれるはず)
「モニカぁ、僕貧血でクラクラしてるからあまり大声出さないで…」
「むぅっ…むぅぅぅっ…!!!」
「あと吹雪を止めて…寒すぎて死んじゃう…」
「むぅぅぅっぅぅっ!」
アーサーの予想通り、あからさまに体調が悪そうな顔をしたらモニカはすぐに吹雪を止めてくれた。氷魔法(感情)を抑えることがかなり大変なようで、血が出そうなほど唇を噛み自分の腕に爪を食いこませている。大声を出すなと言われたので、部屋をうろうろ歩き回って心を落ち着かせようとしたり、アーサーの体に障らないようソファに顔をうずめて大声で叫んだりしていた。アーサーはそんな妹の頭を優しく撫でる。
「無理をさせてごめんねモニカ」
「もごっ…わたしこそごめんなさい。アーサーの体のこと気遣ってなかったわ…。あともう少しだけ待ってね。あと1分で落ち着いてみせるから」
扉から覗いているウィルク王子は誰にともなく呟いた。
「何を見せられているんだ僕は…」
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