【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco

文字の大きさ
146 / 718
淫魔編:ポントワーブでの日常

【166話】金欠

しおりを挟む
ユーリの薬屋をあとにして、双子は商人ギルドへ残りのエリクサーを卸しに行った。アーサーとモニカを見つけた受付嬢が慌ててギルドマスターを呼びに行く。すぐに息をきらせたギルドマスターが二人に挨拶しに来た。

「アビーさん!モニカさん!!今までどこへ行ってらしたんですかぁ!!10カ月もエリクサーの仕入れが止まってしまって、国中から問い合わせが殺到しているんですよぉ~!!」

「ええ?!」

「今やこの国にエリクサーは必要不可欠な希少品なんです!!中には金貨10枚出すからエリクサーを買わせてくれという人たちもいたくらいで…。しかし商品がないので売れず、本当に本当に困っていたんです!!」

「そ、そんなことになってたなんて…。ごめんなさい…」

「いいんですいいんです!こうしてまた卸してくださるのなら!!あーよかったぁ…。で、今日は何本卸していただけますか?!」

「えっと、12万8千本です」

「おお!!良かった…それだけあれば問い合わせて来てる人たちに回せます!ささ、買い取らせてください」

大勢の人に急かされていて余裕がないのか、ギルドマスターは従業員を呼び、アイテムボックスから取り出されたエリクサーをその場で箱に梱包し始めた。約13万本を梱包し終えると、受付嬢に出荷の準備を任せてギルドマスターは双子に白金貨1536枚を支払った。お金を受け取り店を出ようとする双子をギルドマスターが引き留める。

「お二人にお願いがあるんだ」

「なんでしょうか?」

「もしよければ、エリクサーを他の商人ギルドに降ろさないでくれないかな?そうしてくれるのなら、今まで1本小銀貨12枚で買い取っていたが、次からは小銀貨13枚で買い取るから…!」

「え?」

「くっ…やはりだめか…じゃ、じゃあ小銀貨14枚で買い取ろう!」

「え、いや…」

「むぅぅ…分かった!じゃあ小銀貨15枚で買い取る!!」

「えぇ…?」

アーサーとモニカは困ったように目を見合わせた。買い取り金額を引き上げなくとも、二人はポントワーブの商人ギルドにしか卸すつもりはなかったのだ。

「ど、どうするアビー?」

「ギルドマスターがそう言ってくれてるんだから…いいんじゃない?」

「じゃあ…ギルドマスターさん、それでお願いします…」

「本当か!!ありがとう!!!」

「ちゃんとお客さんに大銀貨2枚で行きわたるようにしてくださいね」

「もちろんだよ!そこは必ず守る!」

ギルドマスターは喜びで今にも泣きだしそうだった。双子の手を握りブンブンと振る。何度も頭を下げて、二人がギルドを出るのを見送った。

◇◇◇
家に戻ったアーサーは、モニカをダイニングチェアに座らせた。テーブルに今二人が所持している全財産を広げて見せる。モニカは驚いた顔で兄に尋ねた。

「え…?それだけ?」

「そうなんだよ。僕たち、今お金がないんだ」

テーブルに広げられた貨幣を数えると、白金貨1780枚と金貨8枚、大銀貨5枚だった。これだけあれば一軒家を7軒建てられるほどの資産なのだが、ひとつの町を預かっている二人としてはあまりにも少ない金額だった。

「学院に行く前は白金貨6100枚あったんだ。でもトロワの発展資金でほとんどなくなっちゃった。潜入捜査の報酬も、薬素材を買いとるのに全部使っちゃったし。今日エリクサーを売ったから1700枚になったけど、今朝の時点では白金貨90枚しかなかったんだ…。明日にはキャネモに白金貨300枚渡さないといけないのにどうしようかとヒヤヒヤしたよ…」

「そうだったの…。服で14枚も使ってる場合じゃないじゃないの」

「ま、まああれは、捜査を頑張った自分たちのご褒美ってことで…。モニカ、しばらく本気でエリクサーを作らないと、トロワを維持できないよ」

「分かった!頑張りましょう。私も粒薬をたくさん作って、エリクサー以外の収入を得られるように頑張るわ!」

「そうだね。僕もがんばるよ」

「トロワにエリクサーにダンジョンに…やることがいっぱいねアビー!」

「ふふ。忙しくなるねえ」

昼食(モニカ特製サンドウィッチ)を食べてから、双子はその日の分のエリクサーをしこしこ作った。エリクサー3000本、粒薬500こを作り終わった頃には夕方になっていた。一仕事終えたアーサーとモニカは、ほどよい疲れ(アーサーはかなり疲れていたが)を感じながら晩御飯を食べ、荷造りをした。

「トロワ楽しみだねアビー!」

「うん楽しみ!どんな風になってるのかなあ」

「1年前は養護施設が1棟建っただけだったもんね!えへへーみんな元気かなあ」

「早くイチに会いたいなあ」

「明日お寝坊しちゃだめよ?」

「しないよ!モニカこそちゃんと起きるんだよ?」

「しないもん!シャキッと起きるもん!!」

「へえー?」

「信じてないわね?!」

アーサーの予想通り、残念ながらモニカは翌朝シャキっと起きることはできなかった。熟睡して全く起きる気配のない妹を揺り動かしても不機嫌そうに唸られるだけだった。キャネモとの約束の時間に間に合わないと焦ったアーサーは、モニカの頬をつねったり腰をくすぐったりと思いつく限りのことをした。寝ぼけているモニカはうざったいことをする兄を氷漬けにして、そのまま30分気持ち良く眠った。
しおりを挟む
感想 494

あなたにおすすめの小説

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。