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淫魔編:1年ぶりの町巡り
【167話】1年ぶりのトロワ
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モニカが寝坊したせいで、二人は化粧もしていないまま馬車に飛び乗った。温厚なアーサーも、30分間氷漬けにされたことで不機嫌そうにムスっとしている。モニカはバツが悪そうにアーサーの体をゆすりながら謝った。
「ごめんってばアーサー」
「モニカのせいで体の芯まで凍えちゃったよもう」
「ごーめーんー」
「僕だから無事だったけど、これ普通の人にしてたら死んじゃうからね?モニカは自分の魔法の強さを自覚しなきゃいけないと思う」
「うう…気を付けます…」
「あと仕事のときはちゃんと起きて。眠いし起きたくないのは分かるけど、大事なときに遅刻しちゃだめ」
「はい…」
たいがいのことは笑って許してくれるのに、この日のアーサーは厳しく妹を叱った。モニカはしょんぼり反省しながらも、脚と腕を組んで不機嫌そうにこちらを見ているアビーがとても綺麗でもっと叱られたいと思ってしまった。
「ん?どうしたのモニカ」
「ううん。なんでもないよ」
「うそ。何か言いたいことがある顔してる」
「…言ったらまた叱られちゃう」
「なに?怒らないから言ってみて」
「…怒ってるアビーもきれいだなあって思ってたの」
「……」
モジモジと照れながらそう言うモニカを、アーサーはジトっとした目で見た。
「反省してないよね?」
「し、してるもん!」
「ふーん」
◇◇◇
トロワへ到着し、貧困層に入ったアーサーとモニカは感嘆の声を上げた。真新しい施設が4棟建っており(どれも白を基調とした品のある建物だった)、地面も整備され白のレンガが敷き詰められている。食料品店に並ぶ女の人、町をおしゃべりしながら楽しそうに歩く男の人などが目に入る。それに児童養護施設からかすかに子どもたちの笑い声が聞こえてきた。双子が最後にトロワへ来たときは、衛生面はかなり改善されていたが辛気臭さの残る場所だった。それが今では一部がこじゃれた町に変貌している。まだまだ手を入れないといけないところがたくさんあるが、1年でここまで発展させたカトリナとジルの手腕に驚きを隠せなかった。
「すごい…1年でこんなに…」
「カトリナとジル、頑張ってくれたんだね…」
街並みを見渡しながら、アーサーとモニカは養護施設の扉を開けた。それに気付いた大人の女性がぱっと顔を輝かせる。
「あら!アビーとモニカじゃないか!!久しぶりだねえ!!」
「マドレーヌさん!!久しぶりぃ!元気だった?!」
「ああ!おかげさんで元気よぉ。おーい子どもたちぃ!!アビーとモニカが来たよぉ!!」
「アビー?!」
「モニカ?!」
「わあああ!!」
マドレーヌの声を聞き、部屋から次々と子どもたちが飛び出してきて双子に抱きついた。1年半前までガリガリだった子どもたちも、今ではふっくらしていてよく笑う。彼らが路地裏で死にかけていたなんて誰が思うだろうか。アーサーとモニカは一人一人に声をかけ、ハグをしたり頭を撫でてじゃれあった。
みんなより遅れてイチがそろそろ双子に近寄ってきた。他の子たちのように抱きついたりはせず、一歩引いて黙って様子を見ている。それに気が付いた双子が手を振った。
「イチー!!元気?」
「わあイチ!この一年で随分逞しくなったねえ!」
「…うん」
「がんばってるんだね!」
「別に」
「畑仕事は順調?」
「うん。ヴァレリアンの育ちが良かったからたくさん収穫できた。他の薬草も干してあるよ。…来る?」
「行く!」
アーサーとモニカはイチのうしろをついていった。施設の一室を薬草保管室にしているらしく、部屋一面に薬草が干してある。丁寧に吊るされた薬草の束を見て双子は感心した。
「わあ!すごく状態がいいわ。さすがね、イチ」
「俺だけじゃない。子どもたちがみんなでやった」
イチはぶっきらぼうにそう言った。笑わないしあまり人を好きではないように見えるが、意外にも面倒見がよく子どもたちに好かれている。イチも子どもたちを大切にしていることは、言葉の節々から感じ取れた。
「そうだイチ、仕事を頼まれてくれない?」
「なに?」
「薬素材の調合を手伝ってほしいんだ。お給金は、エリクサー1本分で小銀貨2枚。薬草代が小銀貨2枚だから、合計小銀貨4枚。どう?」
「エリクサー1本分ってどのくらい?」
「えっとね。このくらい」
アーサーはアイテムボックスから1本分の薬素材を取り出してイチに見せた。
「ちょっとじゃん。こんなんで小銀貨4枚も?」
「うん。お願いできるかな?1日1500本分作ってほしいんだ。作り方は僕が教えるよ」
「分かった。やるよ」
「できたら手の空いてる子たちにも仕事を回してあげてくれる?」
「うん。俺は畑もしてるから稼ぎあるし。稼ぎのない子どもに声をかけとくよ」
「あっそうだわイチ。あと、魔法を使える子っていないかしら?」
「分からない。聞いとく」
「わーイチ!ありがとう!」
「頼れるお兄さんだわ!イチぃ!」
「ちょっ!抱きつくなようっとうしい!!」
抱きついて離れない二人を引きはがそうとジタバタするイチだったが、やたらと力の強いアーサーと何をしても面白がるだけのモニカには勝てず、最終的にはうんざりした目で双子になされるがままになっていた。
「ごめんってばアーサー」
「モニカのせいで体の芯まで凍えちゃったよもう」
「ごーめーんー」
「僕だから無事だったけど、これ普通の人にしてたら死んじゃうからね?モニカは自分の魔法の強さを自覚しなきゃいけないと思う」
「うう…気を付けます…」
「あと仕事のときはちゃんと起きて。眠いし起きたくないのは分かるけど、大事なときに遅刻しちゃだめ」
「はい…」
たいがいのことは笑って許してくれるのに、この日のアーサーは厳しく妹を叱った。モニカはしょんぼり反省しながらも、脚と腕を組んで不機嫌そうにこちらを見ているアビーがとても綺麗でもっと叱られたいと思ってしまった。
「ん?どうしたのモニカ」
「ううん。なんでもないよ」
「うそ。何か言いたいことがある顔してる」
「…言ったらまた叱られちゃう」
「なに?怒らないから言ってみて」
「…怒ってるアビーもきれいだなあって思ってたの」
「……」
モジモジと照れながらそう言うモニカを、アーサーはジトっとした目で見た。
「反省してないよね?」
「し、してるもん!」
「ふーん」
◇◇◇
トロワへ到着し、貧困層に入ったアーサーとモニカは感嘆の声を上げた。真新しい施設が4棟建っており(どれも白を基調とした品のある建物だった)、地面も整備され白のレンガが敷き詰められている。食料品店に並ぶ女の人、町をおしゃべりしながら楽しそうに歩く男の人などが目に入る。それに児童養護施設からかすかに子どもたちの笑い声が聞こえてきた。双子が最後にトロワへ来たときは、衛生面はかなり改善されていたが辛気臭さの残る場所だった。それが今では一部がこじゃれた町に変貌している。まだまだ手を入れないといけないところがたくさんあるが、1年でここまで発展させたカトリナとジルの手腕に驚きを隠せなかった。
「すごい…1年でこんなに…」
「カトリナとジル、頑張ってくれたんだね…」
街並みを見渡しながら、アーサーとモニカは養護施設の扉を開けた。それに気付いた大人の女性がぱっと顔を輝かせる。
「あら!アビーとモニカじゃないか!!久しぶりだねえ!!」
「マドレーヌさん!!久しぶりぃ!元気だった?!」
「ああ!おかげさんで元気よぉ。おーい子どもたちぃ!!アビーとモニカが来たよぉ!!」
「アビー?!」
「モニカ?!」
「わあああ!!」
マドレーヌの声を聞き、部屋から次々と子どもたちが飛び出してきて双子に抱きついた。1年半前までガリガリだった子どもたちも、今ではふっくらしていてよく笑う。彼らが路地裏で死にかけていたなんて誰が思うだろうか。アーサーとモニカは一人一人に声をかけ、ハグをしたり頭を撫でてじゃれあった。
みんなより遅れてイチがそろそろ双子に近寄ってきた。他の子たちのように抱きついたりはせず、一歩引いて黙って様子を見ている。それに気が付いた双子が手を振った。
「イチー!!元気?」
「わあイチ!この一年で随分逞しくなったねえ!」
「…うん」
「がんばってるんだね!」
「別に」
「畑仕事は順調?」
「うん。ヴァレリアンの育ちが良かったからたくさん収穫できた。他の薬草も干してあるよ。…来る?」
「行く!」
アーサーとモニカはイチのうしろをついていった。施設の一室を薬草保管室にしているらしく、部屋一面に薬草が干してある。丁寧に吊るされた薬草の束を見て双子は感心した。
「わあ!すごく状態がいいわ。さすがね、イチ」
「俺だけじゃない。子どもたちがみんなでやった」
イチはぶっきらぼうにそう言った。笑わないしあまり人を好きではないように見えるが、意外にも面倒見がよく子どもたちに好かれている。イチも子どもたちを大切にしていることは、言葉の節々から感じ取れた。
「そうだイチ、仕事を頼まれてくれない?」
「なに?」
「薬素材の調合を手伝ってほしいんだ。お給金は、エリクサー1本分で小銀貨2枚。薬草代が小銀貨2枚だから、合計小銀貨4枚。どう?」
「エリクサー1本分ってどのくらい?」
「えっとね。このくらい」
アーサーはアイテムボックスから1本分の薬素材を取り出してイチに見せた。
「ちょっとじゃん。こんなんで小銀貨4枚も?」
「うん。お願いできるかな?1日1500本分作ってほしいんだ。作り方は僕が教えるよ」
「分かった。やるよ」
「できたら手の空いてる子たちにも仕事を回してあげてくれる?」
「うん。俺は畑もしてるから稼ぎあるし。稼ぎのない子どもに声をかけとくよ」
「あっそうだわイチ。あと、魔法を使える子っていないかしら?」
「分からない。聞いとく」
「わーイチ!ありがとう!」
「頼れるお兄さんだわ!イチぃ!」
「ちょっ!抱きつくなようっとうしい!!」
抱きついて離れない二人を引きはがそうとジタバタするイチだったが、やたらと力の強いアーサーと何をしても面白がるだけのモニカには勝てず、最終的にはうんざりした目で双子になされるがままになっていた。
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