【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco

文字の大きさ
147 / 718
淫魔編:1年ぶりの町巡り

【167話】1年ぶりのトロワ

しおりを挟む
モニカが寝坊したせいで、二人は化粧もしていないまま馬車に飛び乗った。温厚なアーサーも、30分間氷漬けにされたことで不機嫌そうにムスっとしている。モニカはバツが悪そうにアーサーの体をゆすりながら謝った。

「ごめんってばアーサー」

「モニカのせいで体の芯まで凍えちゃったよもう」

「ごーめーんー」

「僕だから無事だったけど、これ普通の人にしてたら死んじゃうからね?モニカは自分の魔法の強さを自覚しなきゃいけないと思う」

「うう…気を付けます…」

「あと仕事のときはちゃんと起きて。眠いし起きたくないのは分かるけど、大事なときに遅刻しちゃだめ」

「はい…」

たいがいのことは笑って許してくれるのに、この日のアーサーは厳しく妹を叱った。モニカはしょんぼり反省しながらも、脚と腕を組んで不機嫌そうにこちらを見ているアビーがとても綺麗でもっと叱られたいと思ってしまった。

「ん?どうしたのモニカ」

「ううん。なんでもないよ」

「うそ。何か言いたいことがある顔してる」

「…言ったらまた叱られちゃう」

「なに?怒らないから言ってみて」

「…怒ってるアビーもきれいだなあって思ってたの」

「……」

モジモジと照れながらそう言うモニカを、アーサーはジトっとした目で見た。

「反省してないよね?」

「し、してるもん!」

「ふーん」

◇◇◇

トロワへ到着し、貧困層に入ったアーサーとモニカは感嘆の声を上げた。真新しい施設が4棟建っており(どれも白を基調とした品のある建物だった)、地面も整備され白のレンガが敷き詰められている。食料品店に並ぶ女の人、町をおしゃべりしながら楽しそうに歩く男の人などが目に入る。それに児童養護施設からかすかに子どもたちの笑い声が聞こえてきた。双子が最後にトロワへ来たときは、衛生面はかなり改善されていたが辛気臭さの残る場所だった。それが今では一部がこじゃれた町に変貌している。まだまだ手を入れないといけないところがたくさんあるが、1年でここまで発展させたカトリナとジルの手腕に驚きを隠せなかった。

「すごい…1年でこんなに…」

「カトリナとジル、頑張ってくれたんだね…」

街並みを見渡しながら、アーサーとモニカは養護施設の扉を開けた。それに気付いた大人の女性がぱっと顔を輝かせる。

「あら!アビーとモニカじゃないか!!久しぶりだねえ!!」

「マドレーヌさん!!久しぶりぃ!元気だった?!」

「ああ!おかげさんで元気よぉ。おーい子どもたちぃ!!アビーとモニカが来たよぉ!!」

「アビー?!」

「モニカ?!」

「わあああ!!」

マドレーヌの声を聞き、部屋から次々と子どもたちが飛び出してきて双子に抱きついた。1年半前までガリガリだった子どもたちも、今ではふっくらしていてよく笑う。彼らが路地裏で死にかけていたなんて誰が思うだろうか。アーサーとモニカは一人一人に声をかけ、ハグをしたり頭を撫でてじゃれあった。

みんなより遅れてイチがそろそろ双子に近寄ってきた。他の子たちのように抱きついたりはせず、一歩引いて黙って様子を見ている。それに気が付いた双子が手を振った。

「イチー!!元気?」

「わあイチ!この一年で随分逞しくなったねえ!」

「…うん」

「がんばってるんだね!」

「別に」

「畑仕事は順調?」

「うん。ヴァレリアンの育ちが良かったからたくさん収穫できた。他の薬草も干してあるよ。…来る?」

「行く!」

アーサーとモニカはイチのうしろをついていった。施設の一室を薬草保管室にしているらしく、部屋一面に薬草が干してある。丁寧に吊るされた薬草の束を見て双子は感心した。

「わあ!すごく状態がいいわ。さすがね、イチ」

「俺だけじゃない。子どもたちがみんなでやった」

イチはぶっきらぼうにそう言った。笑わないしあまり人を好きではないように見えるが、意外にも面倒見がよく子どもたちに好かれている。イチも子どもたちを大切にしていることは、言葉の節々から感じ取れた。

「そうだイチ、仕事を頼まれてくれない?」

「なに?」

「薬素材の調合を手伝ってほしいんだ。お給金は、エリクサー1本分で小銀貨2枚。薬草代が小銀貨2枚だから、合計小銀貨4枚。どう?」

「エリクサー1本分ってどのくらい?」

「えっとね。このくらい」

アーサーはアイテムボックスから1本分の薬素材を取り出してイチに見せた。

「ちょっとじゃん。こんなんで小銀貨4枚も?」

「うん。お願いできるかな?1日1500本分作ってほしいんだ。作り方は僕が教えるよ」

「分かった。やるよ」

「できたら手の空いてる子たちにも仕事を回してあげてくれる?」

「うん。俺は畑もしてるから稼ぎあるし。稼ぎのない子どもに声をかけとくよ」

「あっそうだわイチ。あと、魔法を使える子っていないかしら?」

「分からない。聞いとく」

「わーイチ!ありがとう!」

「頼れるお兄さんだわ!イチぃ!」

「ちょっ!抱きつくなようっとうしい!!」

抱きついて離れない二人を引きはがそうとジタバタするイチだったが、やたらと力の強いアーサーと何をしても面白がるだけのモニカには勝てず、最終的にはうんざりした目で双子になされるがままになっていた。
しおりを挟む
感想 494

あなたにおすすめの小説

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。