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淫魔編:1年ぶりの町巡り

【168話】どうしてアビーは女の子なのにおちんちん生えてるの?(トロワ)

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◇◇◇
イチが子どもたちに声をかけている間に、アーサーとモニカは念入りに化粧をした。贈られたドレスを着てキャネモに会いに行くと、キャネモは「はぅっ!」と気持ち悪い声を出しながら二人を歓迎した。

「アビー!モニカ!!会いたかったよ…。それはもう会いたかった。私が会いに行こうかと思うくらい会いたかった!さあこちらへおいで」

「お久しぶりですわキャネモ様!」

「お会いできて嬉しいですわ!」

アーサーとモニカはキャネモにぎゅーっと抱きついた。キャネモはユリの香りを漂わせる少女二人の肩に両腕を回し、深く息を吸い込んだ。すべすべの肌を撫でながら二人に尋ねる。

「学院で1年間勉強をしていたそうだね。どうだった?楽しかったかい?」

「はい!とっても楽しかったですわ」

「変な虫はつかなかったかい?」

「変な虫?いえ、変な虫はいませんでしたわ」

「うーん、そういうことではないのだが。まあ良い。二人が元気そうで私はとても嬉しいよ。少し背が伸びたね?特にアビー」

「う…え、ええ!この一年でぐっと背が伸びましたわ」

「うんうん。ずっと小さいままではいられないものだ。残念であり、嬉しくもある。モニカはこの一年でより女の子らしくなったね。とても柔らかい」

「ありがとうございますキャネモ様!」

「アビーは美しくなったね。細い首筋が綺麗だ。くっきり浮き出た鎖骨も、細くて長い指も」

「う、嬉しいですわキャネモ様」

キャネモは今までの不足分を補うかのように、アビーとモニカをしばらく抱きしめて離さなかった。腰をさすり始めたとき、モニカはゾワゾワと鳥肌が立ちこっそりアーサーの手を握って助けを求め、アーサーは男だとバレないかヒヤヒヤした。
やっと離してもらえた時には、二人とも加齢臭に包まれてげっそりとしていた。別れの挨拶をしてからキャネモに白金貨300枚を支払い、宮殿を出た。アーサーとモニカは手を繋ぎながらよろよろと貧困街へ戻った。

「うげえぇ…くさいよぉ」

「どうしてカミーユは臭くないんだろう」

「モニカ、カミーユはまだキャネモほど年を取ってないじゃないか。カミーユに怒られちゃうよ」

「えー、それでもカミーユはおじさんだよ?加齢臭がしてもおかしくないわ」

「運動してるからかなあ?」

「ジルなんてむしろ良い匂いがするわ」

「モニカ!ジルはまだお兄さんだよ!」

「お兄さんって言っても、もうすぐ30歳でしょう?」

「わぁ…怖いよぉ。僕も30歳になったらモニカに臭いって言われるのかなあ」

「アーサーはいくつになっても臭くならないわ!きっと!」

「自信ないなあ…」

そんな話をしながら児童養護施設へ戻ると、マドレーヌが二人に声をかけた。

「アビー、モニカ。今日は泊まっていくのかい?」

「うん!泊まろうかな!」

「分かった!二人の部屋の鍵渡しとくね」

「ありがとう」

部屋へ入った二人は、加齢臭を洗い流すためにすぐさまお風呂に入った。石鹸でごしごしとお互いの背中を洗い合う。モニカに背中を洗ってもらっているとき、アーサーは「うーん」と腕を組んで唸った。

「僕思うんだけど、キャネモって悪いひとに見えないんだよね。僕たちにすごく優しいし」

「確かに。貧困層をあんなに無茶苦茶するほど悪い人には見えないわ。むしろ良い人に見えちゃう」

「でも、流されやすいよね。カトリナに領土渡しちゃうってよっぽどだと思うし」

「そうねえ。ちょっとバカなのかもしれないわね…」

「僕はあと数年でアビーでいられなくなっちゃう。それまでにキャネモを変えられなかったら、モニカ、お願いね」

「うん。任せて。きっと良い領主さまにしてみせるわ」

「頼もしいなあ」

「えへへ。はいアーサー、背中洗い終わったよ!」

モニカは兄の背中に湯をかけて泡を洗い流してからペチンと叩いた。すっきりとしたアーサーは気持ちよさそうに伸びをしてから立ち上がる。

「じゃあ、僕はそろそろお風呂あがろうかな。モニカは?もう少し入る?」

「うん。あとちょっとだけ湯舟に浸かるわ」

「分かった。じゃあごゆっくり」

アーサーは浴室から出てタオルで体を拭いた。寝衣を用意し忘れていたので、タオルを肩にかけて裸のまま部屋に戻った時、突然部屋のドアが開いて5人の子どもが入ってきた。

「アビー!モニカ!!イチから聞いたんだけど…」

「あっやば…」

「……」

「……」

子どもたちがアーサーの顔と体を交互に見る。一人の少女が震える手でアーサーを指さした。

「ア…アビー…?」

「ううっ…」

しばらくの沈黙。そして叫び声が施設中に響き渡った。

「きゃあああああ!!アビーにおちんちん生えてるううう!!」

「うわあああああ!!」

「ぎゃあああああ!!おちんちんだあああ!!!」

「ど、どうしたんだお前ら!!アビーとモニカの部屋で騒ぐんじゃない!!…え?」

子どもの声につられて大人たちも部屋に入ってくる。アーサーは咄嗟に股間を手で隠したが、その筋肉質な上半身はとても女の子には見えない。大人たちも口をあんぐり開いてアーサーを凝視した。

「え…誰だいこの男の子は」

「もしかして…モニカかアビーの、こ、こ、恋人…?」

「いや待て…髪は短いが、顔がアビーにそっくりだ」

「まさか。だってこの子、男の子だぞ」

「いやしかし…顔が…」

「あ、あの…みなさん…これはですね…あの…」

「アーサー?どうしたの大騒ぎして」

浴室からモニカの声が聞こえる。このままではモニカの裸まで見られてしまうと思ったアーサーは「モニカ!!出て来ちゃだめだ!!」と叫んだ。

「え?モニカお風呂か?ってことは、この男の子と一緒に風呂に入ってたってこと…?」

「ってことはモニカの恋人…」

「うそだ…うそだろ…俺のモニカに…恋人…」

「え?どうしたのアーサー。誰か来たの?」

ドアの向こうでモニカがアーサーに話しかける。

「うん!すごく大人数の人が来てるからモニカは出てこないでね!」

「分かったぁ…。って、え?!アーサーあなた今裸じゃない?!」

「そうなんですよ!!」

「やだアビーが男ってバレちゃうじゃない!!」

「わ、ばかっ!」

「え…」

「お、おい…今の聞いたか…?」

「この子が、アビー…?」

「ってことは…アビーって…」

「みなさん、落ち着いてください。ちゃんとお話します。あの、ですね…。もうお察しのとおり、僕はアビーです…」

「ぐあぁぁっ!!!」

何人かの男性がショックで床にへたりこんだ。

「おれの…初恋が…」

「アビー…俺のアビーが…男…」

「好きになった子が男の娘でした…」

「えっと、あの…ごめんなさい…。領主さまに気に入ってもらうためにですね、女の子の恰好をしなきゃいけなくて…。それで、お願いです!僕が男だってこと、富裕層に漏らさないでほしいんです!!そうじゃないと…貧困層はまたキャネモの手に戻ってしまう…!」

アーサーの言葉に大人たちが真っ青な顔をした。

「それはいや!!私たちはアビーとモニカがいい!!また領主さまの手に戻るなんて絶対にいやだわ!」

「そうだ!そんなこと、絶対いやだ!」

「もちろん秘密にする!!子どもたち、お前らもこの施設以外で絶対誰にも言っちゃいけないぞ。じゃないとまた路地裏の生活に戻ってしまうぞ!」

「や!そんなのぜったいやだあ!!」

「分かった!アビーにおちんちん生えてること、言わない!」

「やくそくする!!アビーにおちんちん生えてること言わないって、やくそくする!!」

「でもどうしてアビーは女の子なのにおちんちん生えてるのぉ?」

「アビーのおちんちんちっちゃーい」

「えっ誰ぼくのおちんちんちっちゃいって言った子!」

「アビーにおちんちん生えてるって連呼しないでくれ…!ダメージを受けすぎる…!」

「いやほんともう、すみません…」

アーサーは申し訳なさそうにへこへこ頭を下げた。大人たちは涙を堪えながら首を横に振った。

「いや…早い段階で分かってよかったよ」

「そうだな…。失恋は早い方がいいもんな」

「あの…とりあえず服着てもいいですか…?」

「おっとそうだな!!子どもたち、お前らも行くぞ」

「えーでもイチに…」

「みんな、明日の朝食堂に集まってくれる?そこでお話するから」

「分かった!!じゃあねアビー!!」

「ねえ、どうしてアビーは女の子なのにおちんちん生えてるのぉ?」

「アビーのおちんちんちっちゃぁい」

「お前らもう黙れ!ほら行くぞ!」

「お、おやすみ、みんな…」

全員が部屋から出ていって、アーサーは「ハァァ…」とため息をつきながら床にしゃがみこんだ。

「アーサー?終わった?もう出ていい?」

「いいよ…」

モニカが水を滴らせながら部屋に入ってきた。アイテムボックスから寝衣を取り出しアーサーに放り投げる。だがアーサーは力が抜けてしまったのか一向に着ようとしない。モニカは苦笑いしながら兄に話しかけた。

「早々にバレちゃったねー」

「鍵を掛け忘れてた僕が悪い…やっちゃったぁ…」

「まあ、みんな黙っててくれてるって言ってるからいいじゃない。バレちゃったものはしょうがないわ」

「そうだね…」

「だから早く服を着て。風邪ひいちゃうわよ」

「うん…」

ひどく落ち込みながらアーサーは寝衣を身に付け、ベッドに倒れこんだ。モニカはクスクス笑いながらアーサーの隣に寝転んだ。

「そんなに落ち込んだって仕方ないわ。はいっ!今日のことは忘れましょう!」

「そうだね。…ねえモニカ。僕のってそんなに小さいの?」

「知らないわよ。私、アーサーとカミーユのしか見たことないもの。カミーユと比べたら誰でも小さいんじゃないの?」
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