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異国編:ジッピン前編:出会い
【266話】鷽と垂桜
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「サクラ…」
1枚の浮世絵を手に取ったとき、モニカが小さく呟いた。深い藍色の背景に、白い花が咲いている木の枝に一羽の鳥がとまっている絵。モニカはサクラがどのような花なのか分からなかったが、その浮世絵に描かれている花がサクラのような気がした。浮世絵にはジッピンの文字が書かれていたので、浮世絵の束を漁っていたアーサーを呼んでその絵を見せた。
「どうしたのモニカ?」
「アーサー、ここに書いてる文字読める?」
「えーっと…、ウグイス…じゃない。えっと…これは…そうだ!鷽(ウソ)だ!ウソって鳥の名前と…シダレサクラ…かな?」
「サクラ!!やっぱり!じゃあこの花がサクラなのね!!」
「きっとそうだよ!綺麗だねえ」
「うん…!すっごくきれい!わたしこれだいすき!」
「僕もすきー!」
「よし!これをウスユキにあげようっと!」
「ふぎぃっ…」
「えっ、なにか言った?」
「ううん!別に!じゃあ僕あっちの束見てくるね!」
「う、うん」
どすどすと足音を立ててアーサーが離れて行った。モニカは首を傾げてアーサーを追いかける。
「ねえアーサー。どうしたの?急に不機嫌になった」
「別に不機嫌になってないもん」
「なってるよ。ほっぺたふくらんでるよ」
「ふくらんでない!」
「そう?じゃあ一緒に大人の女の人の絵と、大人の男の人の絵を探してくれない?頼まれてるの」
「やだ!自分で探せば?!」
アーサーがつんとそっぽを向き、またモニカから離れた場所へ移動して浮世絵を漁り始めた。だがすぐにハッとして手を止める。
(あっ!またやっちゃった…!こんな態度取ったらモニカがかわいそうだ。謝らないと…)
振り返ると、兄にそっけなくされて目を潤ませているモニカがスカートの裾を握って立っていた。下唇を噛んで我慢していたが、こらえきれずにぷるぷる震えながら泣き出してしまう。
「ふえ…ふえぇぇぇん…」
「?!」
「ふぇっ、ふぇぇぇ…。アーサーのばかぁぁぁ…」
「ご、ごめん!!わぁぁ…」
アーサーは慌ててモニカに駆け寄った。背中をさすって妹が泣き止むのを待つが、なかなか泣き止んでくれない。
「今日のアーサー…こわいよぉ…っ。ずっと、私に怒ってるよぉ…っ。私なにかいけないことしちゃったのぉ…?教えてくれないと分からないよぉぉ…。ふぇぇぇん…」
「わぁぁ…ごめんねモニカ…。僕なんてことしちゃったんだろう…」
モニカにいやな思いをさせてしまい、自分のふがいなさにアーサーまで目に涙を滲ませた。
「ごめんね、ごめんね。モニカはなにもいけないことしてないよ。僕が勝手にモヤモヤしちゃってただけだから…。ごめんね…」
「なんでモヤモヤしたのぉ…?ふぐぅ…ふぇ…」
「うぅ…。言いたくない…」
「言ってくれないと分からないよぉ…」
「…今日、朝からモニカ、ウスユキのことばっかり話すから…」
「えぇ…?そんな話してたかなぁ…?」
「ううん。そんな話してないと思うんだけど…ずっと引っかかって、もやもや…。なんだかウスユキにモニカを取られちゃったみたいで…さみしくて…」
「ふふ…っ」
理由を聞いたモニカは泣きながら笑った。
「なぁんだ。それでだったんだあ。てっきり嫌われちゃったのかと思った」
「嫌いになるわけないだろ?なにがあったって僕がモニカのこと嫌いになることなんてないんだから」
「そっか。ふふ。よかった。私もアーサーがいちばんだいすきだよ」
「…うん。ありがと」
「ウスユキはただの友だち。ウスユキはね、私以外に友だちがいなくてひとりぼっちなの。だからね、時々話し相手になってあげようと思って。だってウスユキ、とっても寂しそうな目をしてるから」
「うん…」
「サクラの浮世絵もね、買ってきてほしいってお願いされたんだ」
「そうなんだね。ごめんねモニカ。ぷんぷんしちゃって」
「私こそ不安にさせちゃってごめんね。私、ウスユキに会わない方がいい?」
「…ううん。会ってあげて。ひとりぼっちは寂しいもんね。モニカとお話してるととっても気持ちが明るくなるから、ウスユキもきっと楽しいんだよ。僕はウスユキに寂しい思いをさせてまで、モニカをひとりじめしようと思ってないよ」
「ありがとうアーサー…。そうだ!アーサーも一緒にウスユキに会いに行こうよ!それだったらアーサーも寂しくないでしょう?」
「いいのかなあ…?」
「いいわよ!おしゃべりは人数が多い方がいいでしょう?」
「…うん!」
こうしてアーサーとモニカは仲直りをし、二人で一緒に大人の女の人の絵と大人の男の人の絵を選んだ。うんうん悩んだ結果、モニカが選んだ蝶を眺めている女性の浮世絵と、アーサーが選んだ雪が降るの夜に船を漕いでいる男性二人の浮世絵に決めた。それらとサクラの3枚の浮世絵と、その他100枚の浮世絵を画家たちのもとへ持って行くと、カユボティはそれらを見て満足げにしていた。103枚の浮世絵を購入し、彼らはキヨハルの屋敷へ戻った。
1枚の浮世絵を手に取ったとき、モニカが小さく呟いた。深い藍色の背景に、白い花が咲いている木の枝に一羽の鳥がとまっている絵。モニカはサクラがどのような花なのか分からなかったが、その浮世絵に描かれている花がサクラのような気がした。浮世絵にはジッピンの文字が書かれていたので、浮世絵の束を漁っていたアーサーを呼んでその絵を見せた。
「どうしたのモニカ?」
「アーサー、ここに書いてる文字読める?」
「えーっと…、ウグイス…じゃない。えっと…これは…そうだ!鷽(ウソ)だ!ウソって鳥の名前と…シダレサクラ…かな?」
「サクラ!!やっぱり!じゃあこの花がサクラなのね!!」
「きっとそうだよ!綺麗だねえ」
「うん…!すっごくきれい!わたしこれだいすき!」
「僕もすきー!」
「よし!これをウスユキにあげようっと!」
「ふぎぃっ…」
「えっ、なにか言った?」
「ううん!別に!じゃあ僕あっちの束見てくるね!」
「う、うん」
どすどすと足音を立ててアーサーが離れて行った。モニカは首を傾げてアーサーを追いかける。
「ねえアーサー。どうしたの?急に不機嫌になった」
「別に不機嫌になってないもん」
「なってるよ。ほっぺたふくらんでるよ」
「ふくらんでない!」
「そう?じゃあ一緒に大人の女の人の絵と、大人の男の人の絵を探してくれない?頼まれてるの」
「やだ!自分で探せば?!」
アーサーがつんとそっぽを向き、またモニカから離れた場所へ移動して浮世絵を漁り始めた。だがすぐにハッとして手を止める。
(あっ!またやっちゃった…!こんな態度取ったらモニカがかわいそうだ。謝らないと…)
振り返ると、兄にそっけなくされて目を潤ませているモニカがスカートの裾を握って立っていた。下唇を噛んで我慢していたが、こらえきれずにぷるぷる震えながら泣き出してしまう。
「ふえ…ふえぇぇぇん…」
「?!」
「ふぇっ、ふぇぇぇ…。アーサーのばかぁぁぁ…」
「ご、ごめん!!わぁぁ…」
アーサーは慌ててモニカに駆け寄った。背中をさすって妹が泣き止むのを待つが、なかなか泣き止んでくれない。
「今日のアーサー…こわいよぉ…っ。ずっと、私に怒ってるよぉ…っ。私なにかいけないことしちゃったのぉ…?教えてくれないと分からないよぉぉ…。ふぇぇぇん…」
「わぁぁ…ごめんねモニカ…。僕なんてことしちゃったんだろう…」
モニカにいやな思いをさせてしまい、自分のふがいなさにアーサーまで目に涙を滲ませた。
「ごめんね、ごめんね。モニカはなにもいけないことしてないよ。僕が勝手にモヤモヤしちゃってただけだから…。ごめんね…」
「なんでモヤモヤしたのぉ…?ふぐぅ…ふぇ…」
「うぅ…。言いたくない…」
「言ってくれないと分からないよぉ…」
「…今日、朝からモニカ、ウスユキのことばっかり話すから…」
「えぇ…?そんな話してたかなぁ…?」
「ううん。そんな話してないと思うんだけど…ずっと引っかかって、もやもや…。なんだかウスユキにモニカを取られちゃったみたいで…さみしくて…」
「ふふ…っ」
理由を聞いたモニカは泣きながら笑った。
「なぁんだ。それでだったんだあ。てっきり嫌われちゃったのかと思った」
「嫌いになるわけないだろ?なにがあったって僕がモニカのこと嫌いになることなんてないんだから」
「そっか。ふふ。よかった。私もアーサーがいちばんだいすきだよ」
「…うん。ありがと」
「ウスユキはただの友だち。ウスユキはね、私以外に友だちがいなくてひとりぼっちなの。だからね、時々話し相手になってあげようと思って。だってウスユキ、とっても寂しそうな目をしてるから」
「うん…」
「サクラの浮世絵もね、買ってきてほしいってお願いされたんだ」
「そうなんだね。ごめんねモニカ。ぷんぷんしちゃって」
「私こそ不安にさせちゃってごめんね。私、ウスユキに会わない方がいい?」
「…ううん。会ってあげて。ひとりぼっちは寂しいもんね。モニカとお話してるととっても気持ちが明るくなるから、ウスユキもきっと楽しいんだよ。僕はウスユキに寂しい思いをさせてまで、モニカをひとりじめしようと思ってないよ」
「ありがとうアーサー…。そうだ!アーサーも一緒にウスユキに会いに行こうよ!それだったらアーサーも寂しくないでしょう?」
「いいのかなあ…?」
「いいわよ!おしゃべりは人数が多い方がいいでしょう?」
「…うん!」
こうしてアーサーとモニカは仲直りをし、二人で一緒に大人の女の人の絵と大人の男の人の絵を選んだ。うんうん悩んだ結果、モニカが選んだ蝶を眺めている女性の浮世絵と、アーサーが選んだ雪が降るの夜に船を漕いでいる男性二人の浮世絵に決めた。それらとサクラの3枚の浮世絵と、その他100枚の浮世絵を画家たちのもとへ持って行くと、カユボティはそれらを見て満足げにしていた。103枚の浮世絵を購入し、彼らはキヨハルの屋敷へ戻った。
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