286 / 718
異国編:ジッピン後編:別れ
【305話】座敷童と挨拶
しおりを挟む
「蓮華、蕣。扇子と煙管を」
キヨハルが合図をすると、レンゲが扇子、ムクゲが煙草盆を持って彼の傍へ座った。その二つを持とうとしたキヨハルが困ったように笑う。
「困ったな。腕が片方しかない」
「煙管は私が持つ」
「ありがとう蓮華。では、吸わせてくれるかな」
「はい」
「アーサー、目を瞑って」
「うん」
キヨハルは蓮華に差し出された煙管を吸い、扇子を広げた。扇面へ煙を吹きかけ、扇子をアーサーに向けて小さく振る。アーサーは花の香りがする煙が顔にかかるのを感じた。薄目を開けようとするとキヨハルに注意される。
「そのまま目を瞑っていなさい」
「…うん」
「蕣。アーサーに妖力を与えなさい」
「はい」
蕣が立ちあがりアーサーと向かい合って座る。彼の両頬に手を添え、唇を合わせた。モニカが「ひぅっ!!!」と体をびくつかせたが、慌てて首を振って心を落ち着かせる。
(ムクゲは男の子ムクゲは男の子ムクゲは男の子…)
ムクゲが妖力を与えているところをガチガチになりながら眺めていると、アーサーの体が一瞬ふわりと光った。
「アーサー。目を開けてみなさい」
キヨハルの声に頷き、アーサーがゆっくりと目を開ける。目の前に白髪の女の子がいて、その子が自分にキスをしている。アーサーは大声を上げてムクゲの肩を掴み引きはがした。
「うわぁあぁっ!!!」
「私のこと見える?」
「見える!見えるけど!!どうしてキスしてるの?!」
「妖力を与えてた」
「ア、アーサー…落ち着きなさい…」
あやかしが見えるようになったことより、女の子(に見える子)にキスされたことにパニックになっているアーサーを、キヨハルが抱き寄せて背中をさすり落ち着かせた。アーサーは顔を真っ赤にしながらキヨハルにしがみついている。
「アーサーすまない…。君がそんなに動揺するとは思わなかった。今まで女の子にわりと上手に接していたようだったから…」
「学院のときのことを言ってるのかな…。あれは無意識でたらしこんでいただけよキヨハルさん…」
モニカがボソっと母国の言葉で呟いた。アーサーはぷるぷる震えながら首を横に振る。
「ぼ、僕モニカ以外の女の子とキスしたことないもん…。びっくりしたよ先に言っといてよキヨハルさんのバカぁ…」
「精霊としてたけどね」
「あれはほっぺだったもん…」
「ふふ。でも安心しなさい。蕣は女の子じゃないよ」
「え?」
ぽかんとしているアーサーが面白かったのか、キヨハルはクスクス笑いながらムクゲを指さした。
「彼は男の子」
「え、でも女の子のキモノだし、どう見たって女の子…」
「これはヌシサマの趣味。私男の子のカタチ」
ムクゲはそう言ってアーサーの手をおへその下に当てた。ふにふにした感触が手に伝わり、アーサーが「わ、ほんとだぁ…」とムクゲの顔と股間を交互に見ている。
「どおりでモニカが怒らないわけだねえ」
「アーサー、この子が蕣。ちなみにこの子は幼い頃の薄雪にそっくりなんだよ。私が間違って一目ぼれしてしまうのも分かるだろう?」
「あ、うん…。どう見たって女の子にしか見えないし、とってもかわいらしいね!はじめましてムクゲ、僕アーサー。よろしくね!」
「うん」
かわいいと言ってもらえて嬉しかったのか、ムクゲはもじもじしながらアーサーの手を握った。次にキヨハルはレンゲを紹介する。
「そしてこの子が蓮華。蕣と同じく座敷童だよ」
「わぁ!ムクゲとそっくりだね!この子もかわいい!よろしくねムクゲ!」
「う、うん…」
ニコニコしながら握手を求めてきたアーサーに、レンゲは頬を赤らめながら手を差し出した。その様子をモニカがため息をつきながら眺めていた。
「アーサー…あやかし相手に天然たらししてんじゃないわよ…」
キヨハルが合図をすると、レンゲが扇子、ムクゲが煙草盆を持って彼の傍へ座った。その二つを持とうとしたキヨハルが困ったように笑う。
「困ったな。腕が片方しかない」
「煙管は私が持つ」
「ありがとう蓮華。では、吸わせてくれるかな」
「はい」
「アーサー、目を瞑って」
「うん」
キヨハルは蓮華に差し出された煙管を吸い、扇子を広げた。扇面へ煙を吹きかけ、扇子をアーサーに向けて小さく振る。アーサーは花の香りがする煙が顔にかかるのを感じた。薄目を開けようとするとキヨハルに注意される。
「そのまま目を瞑っていなさい」
「…うん」
「蕣。アーサーに妖力を与えなさい」
「はい」
蕣が立ちあがりアーサーと向かい合って座る。彼の両頬に手を添え、唇を合わせた。モニカが「ひぅっ!!!」と体をびくつかせたが、慌てて首を振って心を落ち着かせる。
(ムクゲは男の子ムクゲは男の子ムクゲは男の子…)
ムクゲが妖力を与えているところをガチガチになりながら眺めていると、アーサーの体が一瞬ふわりと光った。
「アーサー。目を開けてみなさい」
キヨハルの声に頷き、アーサーがゆっくりと目を開ける。目の前に白髪の女の子がいて、その子が自分にキスをしている。アーサーは大声を上げてムクゲの肩を掴み引きはがした。
「うわぁあぁっ!!!」
「私のこと見える?」
「見える!見えるけど!!どうしてキスしてるの?!」
「妖力を与えてた」
「ア、アーサー…落ち着きなさい…」
あやかしが見えるようになったことより、女の子(に見える子)にキスされたことにパニックになっているアーサーを、キヨハルが抱き寄せて背中をさすり落ち着かせた。アーサーは顔を真っ赤にしながらキヨハルにしがみついている。
「アーサーすまない…。君がそんなに動揺するとは思わなかった。今まで女の子にわりと上手に接していたようだったから…」
「学院のときのことを言ってるのかな…。あれは無意識でたらしこんでいただけよキヨハルさん…」
モニカがボソっと母国の言葉で呟いた。アーサーはぷるぷる震えながら首を横に振る。
「ぼ、僕モニカ以外の女の子とキスしたことないもん…。びっくりしたよ先に言っといてよキヨハルさんのバカぁ…」
「精霊としてたけどね」
「あれはほっぺだったもん…」
「ふふ。でも安心しなさい。蕣は女の子じゃないよ」
「え?」
ぽかんとしているアーサーが面白かったのか、キヨハルはクスクス笑いながらムクゲを指さした。
「彼は男の子」
「え、でも女の子のキモノだし、どう見たって女の子…」
「これはヌシサマの趣味。私男の子のカタチ」
ムクゲはそう言ってアーサーの手をおへその下に当てた。ふにふにした感触が手に伝わり、アーサーが「わ、ほんとだぁ…」とムクゲの顔と股間を交互に見ている。
「どおりでモニカが怒らないわけだねえ」
「アーサー、この子が蕣。ちなみにこの子は幼い頃の薄雪にそっくりなんだよ。私が間違って一目ぼれしてしまうのも分かるだろう?」
「あ、うん…。どう見たって女の子にしか見えないし、とってもかわいらしいね!はじめましてムクゲ、僕アーサー。よろしくね!」
「うん」
かわいいと言ってもらえて嬉しかったのか、ムクゲはもじもじしながらアーサーの手を握った。次にキヨハルはレンゲを紹介する。
「そしてこの子が蓮華。蕣と同じく座敷童だよ」
「わぁ!ムクゲとそっくりだね!この子もかわいい!よろしくねムクゲ!」
「う、うん…」
ニコニコしながら握手を求めてきたアーサーに、レンゲは頬を赤らめながら手を差し出した。その様子をモニカがため息をつきながら眺めていた。
「アーサー…あやかし相手に天然たらししてんじゃないわよ…」
16
あなたにおすすめの小説
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。