【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco

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初夏編:初夏のポントワーブ

【320話】手紙とインコ

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入れ替えっこをした翌日、双子の家に冒険者ギルドから伝書インコが飛んできた。ポントワーブのギルドマスターから、渡し忘れたものがあるから取りに来いという旨だった。アーサーとモニカはゆっくりと支度をしてから冒険者ギルドへ向かう。ギルドへやってきた二人を見た受付嬢が、名前を呼びながら手招きしている。

「アーサーさん!モニカさーん!!」

「はーい!」

「ごめんなさいね!昇級手続きに気を取られて渡し忘れていたものがあるんです!これ!」

「!!」

受付嬢が差し出したのは、数えきれないほどの封筒だった。驚いている双子にニッコリしながら説明する。

「各所の冒険者ギルドから届いたお手紙です。なんでも貴族の方たちがあなた宛てに書いた手紙だとか」

「あー!!!リーノとニコロが言ってた!!」

「お手紙を書いてギルドに預けてくれてたって!!」

「はい。もう何か月も前に預かっていたのですが…。お二人ともずっとポントワーブに戻ってこないので渡すのが今になってしました…。ごめんなさい」

「ううん!ありがとうお姉さん!!」

アーサーとモニカは目をキラキラさせながら手紙をアイテムボックスへ突っ込み、そそくさとギルドを出て家へ帰った。リビングテーブルへ手紙を広げ、思い思いに封を開けて夢中になって読み始める。

「アーサー見て!!ライラからよ!!ノアとチャドからも来てる!!あ!マーサとグレンダからもー!!」

「ほんとだね!!ダフとシリルからも来てるよぉー!!わあああトンブからも来てる!!」

「タールとルリンからも来てるわ!順番に読んでいこ!!」

「うん!!」

------------------------
モニカ、アーサーへ
元気ですか?
私は家に帰ってから
弓術と魔法の練習を
毎日させられています。
弓の練習はとっても楽しいけど
魔法はやっぱり苦手。
モニカ以上に上手に
教えてくれる人がいなくて
もう恋しいです。
アーサーともまた一緒に
弓を射合いたいなあ。
休暇が終わるまでに
また二人に会えたら嬉しいな。
お返事待ってます。
ライラより
------------------------

ライラからの手紙を読んだ双子はサーと顔を青ざめさせた。

「うわぁぁ…もう休暇終わっちゃったよね…?」

「う、うん…。うわぁぁん私もライラに会いたかったよぉぉ!!」

「僕も会いたかったぁ…。と、とにかくお返事書こう!」

「そうね!でもまず全員のお手紙に目を通しましょ」

------------------------
アーサー!モニカ!!
戦おうぜ!!
うちに来たら練習場あるから
来てくれ!!
ってかお前らどこに住んでんだ?!
俺が行ってもいいぞ!
返事くれ!
ダフ
------------------------

------------------------
焼き菓子食べに来てくれよな。
待ってるぞー
あ、ついでに俺んちに遊びに来てくれ。
全力でもてなすから
ノア
------------------------

------------------------
舞踏会に来てアーサー!!
一緒に踊りたい!!
もちろんモニカも一緒にね!
でもアーサーと踊るのは私だから!
グレンダ
------------------------

「アーサーと踊るのは私だもん!!!」

グレンダの手紙を読んでモニカが絶叫した。隣でシリルの手紙を読んでいたアーサーは「わっびっくりしたぁー!」と体をビクつかせる。モニカはぷんぷんしながらマーサの手紙を読み、また「だからアーサーと踊るのは私だってば!!」と叫んで手紙をテーブルに叩きつけた。どうやらマーサも舞踏会のお誘いだったらしい。鼻息を荒くしているモニカをなんとか落ち着かせ、二人は全員分の手紙を読んだ。

手紙は大きく分けて3種類だった。ひとつめは「遊びにきて」、ふたつめは「遊びに行きたいから住所を教えて」、みっつめは舞踏会のお誘い。舞踏会に関してはほとんどが日程を過ぎてしまっていた。アーサーとモニカは全員に返事が遅くなったことについての詫びと、家の住所を先に書き、あとは内容に対する返事を書いた。

モニカは特にライラとチャド、ノアに会いたがった。ライラはまだ学院に在学しているので当分会えないだろうが、チャドとノアは学院を卒業したので日程さえ合わせたら会えそうだ。モニカは小さな紙に絵を描き手紙に添えた。

アーサーが会いたがったのはもちろんダフとシリルだ。ダフの熱量に感化されたのか、アーサーは「僕も会いたい!!いつ会えるの!!」と語彙力の低い返事を書きたくっていた。

その日のうちに全員分の手紙を郵便屋に預け、アーサーとモニカは上機嫌で家に帰った。

「お返事来るの楽しみだねえモニカ!!」

「うん!!はやくみんなに会いたいよぉ!!んあぁぁ!!」

「会いたいねぇ!!あー!今すぐ会いたいよぉ!!」

「あれ?」

楽し気に笑いながら家の門を開けると、玄関の前に誰かが立っていた。その人は全力疾走したあとのようにゼェゼェと肩で息をしている。ゆっくり近付き誰かを確かめる。背後から歩いてくる双子に気付いた彼は振り返り駆け寄ってきた。アーサーとモニカはパッと顔を輝かせて彼の名を呼んだが、彼はそれを無視して二人の肩をがっしり掴んだ。

「わー!!ベニートだぁ!!」

「ベニート!どうしたのー?!」

「アーサー、モニカ!何をしている?!いつ帰ってきた?!」

「え…?5日くらい前に…」

「5日前?!なのにどうして!!」

「…?」

「ベ、ベニート、どうしたの…?」

深刻な顔をしているベニートに双子の表情もかげる。思い当たりのなさそうな二人を、ベニートは訝し気に見た。

「…おまえら、インコ受け取ってないのか?」

「インコ?今朝ギルドからのインコは来たけど…」

「他には?」

「来てないけど…」

「ちっ…」

ベニートは舌打ちをして首を振った。苛立たし気に頭を掻きむしり、双子の手を掴み家の中へ入る。戸惑うアーサーとモニカの背中を乱暴に押し、余裕のない声で指示をした。

「今すぐ準備をしてくれ」

「え?」

「準備?」

「時間がないんだ!頼む早くしてくれ!」

「ベ、ベニート…?」

「アーサーは薬を調合する道具と薬素材。もちろんエリクサーもだ。あとは適当に着替えを何着かと武器は忘れるな。モニカは杖と庭で繁殖してるスライム何匹か連れて行ってくれ。頼む早くしてくれ!!!」

「う、うん…」

ボーっとしている双子にベニートがいらいらと大声を出した。そんなベニートを初めて見て、アーサーとモニカが少し怯えている。ベニートはハッとして深呼吸をした。

「…すまない。余裕がなくなってた。お前たちはなにも知らないもんな。キツく当たってすまない」

「ど、どうしたのベニート…。なにかあったの…?」

「ああ。なにかあったんだよ」

「なにが…」

「カミーユパーティーが全員重症。特にリアーナさんとジルさんの命が危ない」

「え…」

「シャナさんとボルーノ爺さん、ユーリはすでに駆けつけて治療中。だがそれだけじゃ足りないんだ。アーサー、モニカ。お前たちの力が必要なんだ」

「そんな…」

「お前たちに向けて5日前からずっとインコを飛ばしてた。予定ではジッピンから帰ってきてるはずだったからな。なのに一向に来てくれないし返事すらない。だから俺が来た。正解だったよ。インコはお前たちの家に辿り着いてないようだしな。とにかく頼む早く来てくれないか一刻を争うんだ」

双子は頭が真っ白になった。あのカミーユたちが重症?ありえないなにかの冗談だと頭の中で呟いた。だがベニートの様子はただ事ではない。それにベニートがこんな冗談を言うはずがない。

感覚のなくなった体で二人は言われるがまま準備をした。双子の間で会話もなく、呆然としながらアイテムボックスに必要なものを入れる。玄関に降りて来たアーサーとモニカをベニートが抱え馬に乗せた。馬に乗っている間も、アーサーとモニカは何も話さずボーっと遠くを眺めていた。
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