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画廊編:再会
オリバ家の入店
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昼過ぎになっても異国の芸術作品に興味を示した通行人がちらほらと店内に入っては鑑賞していた。購入までする人はほとんどいないが、彼らの反応からしてジッピンの作品は好評のようだった。予想以上に好感触だったことにカユボティは大喜びで、双子がランチを食べている間もずっと接客をしていた。カユボティほどはガツガツしていないヴァジーも二人と一緒にパンをかじっている。
「カユボティすごいねえ。ずーっとお客さんとお話してるよ」
「ああ。彼はそういう人だからね。テンションが上がってしまうんだよ」
「お客さんと話してると?」
「いや、まあ、そうだね」
ヴァジーは言葉を濁してパンにかじりついた。アーサーとモニカは首をかしげ、カユボティに視線を戻す。客によって話し口調や口数、性格までコロコロ変わるので見ていて面白い。
「カユボティはプロだね!」
「うん!わたしたちがお客さんだったらどんな接客をしてくれるんだろう」
「気になるね!今度お客さん役やってみようよ」
「やってみたーい!」
「君たちは簡単そうだなあ」
「えー!そんなことないもん!」
「本当に欲しいと思ったものしか買わないもん!」
「買いたいと思わせることが簡単なんだよ。君たちは人でも物でも良いところを見つけるのが上手だからね」
「え?えへへ」
「そ、そうかなあ~」
双子はまんざらでもなさそうに頭を掻いた。ヴァジーは内心(悪いところを見つけるのは上手じゃないけどね)と思っていたが口にしないでおいた。
そのとき、店のドアが開き新しい客が入店した。カランカランと鈴が鳴ったあと、商品を見ていた客がざわめいた。アーサー、モニカ、ヴァジーが入店した客に視線をうつす。シルクハットをかぶった男性と、水色のドレスを着た女性、スーツを着崩している青年が立っていた。青年はあたりを見回し2階でパンをかじっている双子を見つけた。二人と目が合うとニカっと笑い手を振り大声で呼びかけた。
「アーサー!モニカー!来たぞー!!」
「リーノ!!」
「…あー!ヴァジーもいるじゃないか!!」
「見つかってしまった…」
双子の学友でありグサンヴィーレ地区の領主であるオリバ家の長男、リーノ。彼はオヴェルニー学院では寮対抗戦の実況者を務めていた人気者だ。アーサーと特に仲が良く、よくくだらない話をしては笑っていた。
彼の来店にアーサーとモニカは大喜びで階段を駆け下りた。リーノに夢中の双子は気付かなかったが、店内にいた客はオリバ家の入店にざわざわしている。
「オ…オリバ伯爵じゃないか…」
「奥様とご子息様もご一緒にいらして…。このお店、そんな格式高いところだったの?」
「そ…それに売り子の子たち、ご子息様にハグをしているぞ…」
「もしかしてあの子たちもどこかの貴族の子なの…?」
そんな会話をよそに、双子はリーノの両親にも挨拶をした。
「おじさま、おばさま、こんにちは!」
「こんにちは、アーサー、モニカ。おお、これが君たちの画廊か。素敵じゃないか」
「ええ素敵だわ!見てあなた。異国の芸術品がこんなにたくさん!」
「素晴らしい。さっそく見せてもらおうかな」
「はい!ごゆっくりどうぞ!」
「リーノはどうする?俺たちと一緒に見るか?それとも友だちと?」
「アーサーとモニカとまわるよ。父さん、母さん、たくさん買ってあげてくださいね」
「はは。気に入ったものは全て買うとしようか」
「その意気!」
オリバ伯爵はおどけてから、夫人の腰に腕をまわして商品を見て回った。彼らが近づくと一般客が遠慮がちに距離を取るので、伯爵はにこやかに彼らに場所を譲った。
「どうぞ遠慮なさらずに。私のことは石像だとお思いください」
「石像、ですか…?」
「そう、広場にあるあの石像。そっくりでしょう?ふふ」
「あら、うふふ」
伯爵と夫人は町民と挨拶を交わしたりちょっとした会話を交わしながら店内を歩く。彼らに声をかけられた町民は、愛想の良い領主に挨拶を返して照れ笑いをしていた。男爵は握手を求められると快く受け、「町を支えてくれているみなさんに感謝を」と一言添える。カユボティとヴァジーはこっそり目を合わせ微笑み合った。
「なあ、アーサー、モニカ!いつからうちに来てくれるんだー?」
絵にあまり興味がないリーノは早々に飽きていた。ウキヨエの前に立つものの、それより双子のことが気になるようだ。
「えーっとね、5日後くらい!」
「ちぇー!まだ5日も待たなきゃいけないのかー!でも楽しみだなー!」
「僕も楽しみ!リーノのお屋敷大好きなんだー!」
「私も―!綺麗な絵がたくさん飾ってあるし、なにより料理がとってもおいしいの!」
「そうだろー!うちのコックは優秀だからな!ニコロも大好きなんだ、うちの料理」
「あ!そう言えばニコロは元気?」
「ときどき伝書インコ飛んでくるけど元気そうだ!あ、そういえば俺この前ニコロにこの画廊のことでインコ飛ばしたんだ」
「そうなのー?!ありがとう!」
「たぶんそろそろ来ると思うぜ。あいつ絵好きだから」
「ほんと?!うれしいなー。早く会いたいなニコロ」
「ニコロにアーサーにモニカ…。あはは、学院の頃を思い出すな!楽しかったなあ」
「楽しかったー!また行きたいなー!」
「俺は寮対抗戦の実況だけしに行きたいな」
「あはは!リーノ、勉強きらいだったもんねえ」
「勉強好きなやつなんているかあ?あ、ニコロは好きだったなあ。変人だ」
「アーサーもきらいじゃないのよー?変人よねえ。お勉強だいっきらい!」
「分かるぞモニカ。同志だな俺ら」
「ドウシが見つかって嬉しい!」
「子どもたち、神聖なる絵の前でよたばなしとは贅沢だねえ」
大声で騒いでいると、こめかみにピキピキと筋を立てているヴァジーに背後から声をかけられた。顔は笑っているが目が笑っていない。3人は慌てて口をつぐみ、おそるおそるヴァジーを見上げた。静かになった子どもたちに「騒いじゃだめだぞ」と目で合図をしてから着物ブースを指さした。
「奥様がキモノの購入を検討されていらっしゃる。3人も奥様に合うキモノを選んでくれないか?」
「カユボティすごいねえ。ずーっとお客さんとお話してるよ」
「ああ。彼はそういう人だからね。テンションが上がってしまうんだよ」
「お客さんと話してると?」
「いや、まあ、そうだね」
ヴァジーは言葉を濁してパンにかじりついた。アーサーとモニカは首をかしげ、カユボティに視線を戻す。客によって話し口調や口数、性格までコロコロ変わるので見ていて面白い。
「カユボティはプロだね!」
「うん!わたしたちがお客さんだったらどんな接客をしてくれるんだろう」
「気になるね!今度お客さん役やってみようよ」
「やってみたーい!」
「君たちは簡単そうだなあ」
「えー!そんなことないもん!」
「本当に欲しいと思ったものしか買わないもん!」
「買いたいと思わせることが簡単なんだよ。君たちは人でも物でも良いところを見つけるのが上手だからね」
「え?えへへ」
「そ、そうかなあ~」
双子はまんざらでもなさそうに頭を掻いた。ヴァジーは内心(悪いところを見つけるのは上手じゃないけどね)と思っていたが口にしないでおいた。
そのとき、店のドアが開き新しい客が入店した。カランカランと鈴が鳴ったあと、商品を見ていた客がざわめいた。アーサー、モニカ、ヴァジーが入店した客に視線をうつす。シルクハットをかぶった男性と、水色のドレスを着た女性、スーツを着崩している青年が立っていた。青年はあたりを見回し2階でパンをかじっている双子を見つけた。二人と目が合うとニカっと笑い手を振り大声で呼びかけた。
「アーサー!モニカー!来たぞー!!」
「リーノ!!」
「…あー!ヴァジーもいるじゃないか!!」
「見つかってしまった…」
双子の学友でありグサンヴィーレ地区の領主であるオリバ家の長男、リーノ。彼はオヴェルニー学院では寮対抗戦の実況者を務めていた人気者だ。アーサーと特に仲が良く、よくくだらない話をしては笑っていた。
彼の来店にアーサーとモニカは大喜びで階段を駆け下りた。リーノに夢中の双子は気付かなかったが、店内にいた客はオリバ家の入店にざわざわしている。
「オ…オリバ伯爵じゃないか…」
「奥様とご子息様もご一緒にいらして…。このお店、そんな格式高いところだったの?」
「そ…それに売り子の子たち、ご子息様にハグをしているぞ…」
「もしかしてあの子たちもどこかの貴族の子なの…?」
そんな会話をよそに、双子はリーノの両親にも挨拶をした。
「おじさま、おばさま、こんにちは!」
「こんにちは、アーサー、モニカ。おお、これが君たちの画廊か。素敵じゃないか」
「ええ素敵だわ!見てあなた。異国の芸術品がこんなにたくさん!」
「素晴らしい。さっそく見せてもらおうかな」
「はい!ごゆっくりどうぞ!」
「リーノはどうする?俺たちと一緒に見るか?それとも友だちと?」
「アーサーとモニカとまわるよ。父さん、母さん、たくさん買ってあげてくださいね」
「はは。気に入ったものは全て買うとしようか」
「その意気!」
オリバ伯爵はおどけてから、夫人の腰に腕をまわして商品を見て回った。彼らが近づくと一般客が遠慮がちに距離を取るので、伯爵はにこやかに彼らに場所を譲った。
「どうぞ遠慮なさらずに。私のことは石像だとお思いください」
「石像、ですか…?」
「そう、広場にあるあの石像。そっくりでしょう?ふふ」
「あら、うふふ」
伯爵と夫人は町民と挨拶を交わしたりちょっとした会話を交わしながら店内を歩く。彼らに声をかけられた町民は、愛想の良い領主に挨拶を返して照れ笑いをしていた。男爵は握手を求められると快く受け、「町を支えてくれているみなさんに感謝を」と一言添える。カユボティとヴァジーはこっそり目を合わせ微笑み合った。
「なあ、アーサー、モニカ!いつからうちに来てくれるんだー?」
絵にあまり興味がないリーノは早々に飽きていた。ウキヨエの前に立つものの、それより双子のことが気になるようだ。
「えーっとね、5日後くらい!」
「ちぇー!まだ5日も待たなきゃいけないのかー!でも楽しみだなー!」
「僕も楽しみ!リーノのお屋敷大好きなんだー!」
「私も―!綺麗な絵がたくさん飾ってあるし、なにより料理がとってもおいしいの!」
「そうだろー!うちのコックは優秀だからな!ニコロも大好きなんだ、うちの料理」
「あ!そう言えばニコロは元気?」
「ときどき伝書インコ飛んでくるけど元気そうだ!あ、そういえば俺この前ニコロにこの画廊のことでインコ飛ばしたんだ」
「そうなのー?!ありがとう!」
「たぶんそろそろ来ると思うぜ。あいつ絵好きだから」
「ほんと?!うれしいなー。早く会いたいなニコロ」
「ニコロにアーサーにモニカ…。あはは、学院の頃を思い出すな!楽しかったなあ」
「楽しかったー!また行きたいなー!」
「俺は寮対抗戦の実況だけしに行きたいな」
「あはは!リーノ、勉強きらいだったもんねえ」
「勉強好きなやつなんているかあ?あ、ニコロは好きだったなあ。変人だ」
「アーサーもきらいじゃないのよー?変人よねえ。お勉強だいっきらい!」
「分かるぞモニカ。同志だな俺ら」
「ドウシが見つかって嬉しい!」
「子どもたち、神聖なる絵の前でよたばなしとは贅沢だねえ」
大声で騒いでいると、こめかみにピキピキと筋を立てているヴァジーに背後から声をかけられた。顔は笑っているが目が笑っていない。3人は慌てて口をつぐみ、おそるおそるヴァジーを見上げた。静かになった子どもたちに「騒いじゃだめだぞ」と目で合図をしてから着物ブースを指さした。
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