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画廊編:再会
キョウケイの布教に成功しちゃった
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スムーズにとは言えなかったが、モニカは時々言葉に詰まったり噛んだりしながらも一生懸命ウタヤマキョウケイの魅力を伝えようとした。実はモニカはウタヤマキョウケイのことがウキヨエシの中で一番好きだったのでここまで説明できただけだった。彼女は(ウタヤマキョウケイについてで良かったぁー!!他のウキヨエシだったらアーサーにお願いしなきゃいけなかったわ…)と内心ほっとしていた。
それでも男性客を驚かせるには充分だった。詰まりながらでもここまでの内容を話せる子どもはそうそういないだろう。よほどウキヨエについて勉強したのだな、と彼は思った。
(それだけじゃない。この子は本当にウタヤマキョウケイのことが好きなんだな。ウキヨエシの話をしてるとき目がキラキラしてた)
「…美人はファッションにしか興味がないと思ってた」
「えっ?」
「お嬢ちゃん。ドレスとウキヨエ、どっちが好きだ?」
「えー!どっちも好きだから選べない…。うーん…」
「ほー。ドレスと同じくらいウキヨエが好きなのか。バンスティンの絵画も好きなのか?」
「えっと、アカデミックなのは難しいから少し苦手だけど…。好きな画家はたくさんいます!」
「へえ」
「お客さまは絵画が大好きなんですね!」
「…まあ、それなりにだが」
「ちなみにお好きな絵画をうかがっても?」
「…アンギーの絵画が好きだ。"グランド・オダリー"とか」
「あっ!ルアン美術館にありますね!」
「…分かるのか」
「はい!アンギーさんは私の友人の画家の師匠なので少しだけ。とても厳しい方だとか」
「アンギーの弟子と友人?あんた、何者だ?」
「わたしはただの画廊"夢見"の売り子です。友人はルアンに住んでいるので、それほど特別なことではないですよ。あそこのカフェに行けばだいたい会えます。紹介いたしましょうか?」
「い、いや、いい。そんな」
男性客は慌てて首を横に振った。一番好きな画家の弟子を紹介してもらうなんて、想像しただけで死んでしまいそうだ。
(それにしてもさっき会ったばかりの俺にどうしてここまで親切にするんだ…。こんな、存在感の薄いブサイクな俺に…)
「なあ嬢ちゃん。ひとつ聞いていいかな」
「はい!なんでもどうぞ!(ウタヤマキョウケイ以外の質問はしないで~)」
「いま店には俺以外にも何人か客がいる。どうして俺に声をかけて、俺に知り合いを紹介なんて親切をしようとした?」
ウキヨエの難しい質問ではなくてモニカはホッと胸を撫でおろした。そして尋ねられた簡単な質問に即答する。
「あなたが一番、ウタヤマキョウケイのウキヨエに惹きつけられていたからです」
「……」
「わたし、ちょうど見ていたんです。あなたが何気なく店内を歩いていて、ウタヤマキョウケイのウキヨエの前でビクっとしたの」
「そんなところから見られてたのか…」
「はい!それからあなたはウキヨエにゆっくり近付いて、いろんな角度から見たり、近くから見たり遠くから見て、ホォーって深いため息をついて、またじーっと見て動かなくなりました!」
「おい…見すぎだ…」
「だから声をかけました。あなたは…カユボティがよく言う"絵画に恋をした"ように見えたから!」
「……」
「声をかけて正解でした!あそこまでウタヤマキョウケイに興味を持って質問してくださったのはあなたが初めてでしたし、あなたの目を真っすぐ見ることができました。あなたははじめわたしに少し怖い目をしてたけど、ウキヨエを見てるときは瞳が揺れて感動がこっちにも伝わっきましたし、今のあなたはわたしにも優しい目を向けてくれてます。えへへ、うれしい」
(俺が難しい質問をしたのは君に意地悪をしようとしたからだ。困ったな。嫌味も意地悪も通じない子なんてはじめてだ…。それに、俺と話しただけでこんなに嬉しそうに笑ってくれる子も)
男性客は気まずそうに頭をかいた。今ではモニカをいじめようとしたことをひどく後悔しているようだった。
(この子は俺の外見じゃなくて絵への愛情やひとかけらの好意を見つけて喜んでくれている。はあ…顔も良ければ性格も良い子じゃないか。外見だけで人を判断してたのは俺のほうだったな。恥ずかしすぎて消えてしまいたい)
「…いくらだ?」
「えっ?」
「ああ、値札に書いてあったな。…金貨10枚。この絵が?安すぎないか?」
「あはは!さすがですね。絵に詳しい方は、ウキヨエが金貨10枚で売られていることを驚かれるんです」
「ちっ、なにを言ったって褒めるじゃないか」
「褒めたつもりはないんだけど…」
「じゃあ、ウタヤマキョウケイのウキヨエ3枚、もらおうか」
「えっ?!」
「なんだ、だめなのか?」
モニカはぶんぶんと首を振り、大きな瞳をきらきら輝かせて満面の笑みを浮かべた。
「だめじゃないです!!きゃー!うれしい!!」
「よかったな。君のお手柄だ」
「えへへ!!やったー!ねえ、どこに飾るんですか?!寝室?!リビング?!」
「そうだな。あと客間とか…」
「きゃーっ!素敵ー!!」
(販売できたことより、ウタヤマキョウケイのウキヨエが俺の手に渡ることを喜んでるのか。つくづく変わった子だな)
モニカはスキップをしながら壁からウキヨエ3枚を取り外し、カウンターで梱包した。男性客は金貨30枚と一緒に名刺を渡しながら、小さな声でボソボソと呟いた。
「あー…。またウタヤマキョウケイのウキヨエが画廊に並んだら教えてくれるか」
「もちろんです!!」
「これが俺の家の住所だ。また伝書インコを飛ばしてくれ」
「分かりました!!ありがとうございます!!」
ウキヨエ3枚を抱かえた男性客は、モニカに見送られながら帰路についた。同じウキヨエシに惹かれた仲間に出会えて(おまけに3枚もウキヨエが売れて)上機嫌のモニカは店の外で「やったー!!」と飛び跳ねた。それに驚いた通行人が体をビクつかせて奇異の目を向けていたので、モニカは顔を真っ赤にして逃げるように店内へ戻った。
のちにカユボティとヴァジーがその男性客の名刺を見て驚きの声をあげた。彼はルアンいち有名な絵画の評論家で、気難しい性格からなかなか打ち解けられる人がいないらしい。とんでもない人を手懐けたな、と大人たちに褒められても、モニカは「別に普通に良い人だったけどなあ~」と首を傾げていた。
それでも男性客を驚かせるには充分だった。詰まりながらでもここまでの内容を話せる子どもはそうそういないだろう。よほどウキヨエについて勉強したのだな、と彼は思った。
(それだけじゃない。この子は本当にウタヤマキョウケイのことが好きなんだな。ウキヨエシの話をしてるとき目がキラキラしてた)
「…美人はファッションにしか興味がないと思ってた」
「えっ?」
「お嬢ちゃん。ドレスとウキヨエ、どっちが好きだ?」
「えー!どっちも好きだから選べない…。うーん…」
「ほー。ドレスと同じくらいウキヨエが好きなのか。バンスティンの絵画も好きなのか?」
「えっと、アカデミックなのは難しいから少し苦手だけど…。好きな画家はたくさんいます!」
「へえ」
「お客さまは絵画が大好きなんですね!」
「…まあ、それなりにだが」
「ちなみにお好きな絵画をうかがっても?」
「…アンギーの絵画が好きだ。"グランド・オダリー"とか」
「あっ!ルアン美術館にありますね!」
「…分かるのか」
「はい!アンギーさんは私の友人の画家の師匠なので少しだけ。とても厳しい方だとか」
「アンギーの弟子と友人?あんた、何者だ?」
「わたしはただの画廊"夢見"の売り子です。友人はルアンに住んでいるので、それほど特別なことではないですよ。あそこのカフェに行けばだいたい会えます。紹介いたしましょうか?」
「い、いや、いい。そんな」
男性客は慌てて首を横に振った。一番好きな画家の弟子を紹介してもらうなんて、想像しただけで死んでしまいそうだ。
(それにしてもさっき会ったばかりの俺にどうしてここまで親切にするんだ…。こんな、存在感の薄いブサイクな俺に…)
「なあ嬢ちゃん。ひとつ聞いていいかな」
「はい!なんでもどうぞ!(ウタヤマキョウケイ以外の質問はしないで~)」
「いま店には俺以外にも何人か客がいる。どうして俺に声をかけて、俺に知り合いを紹介なんて親切をしようとした?」
ウキヨエの難しい質問ではなくてモニカはホッと胸を撫でおろした。そして尋ねられた簡単な質問に即答する。
「あなたが一番、ウタヤマキョウケイのウキヨエに惹きつけられていたからです」
「……」
「わたし、ちょうど見ていたんです。あなたが何気なく店内を歩いていて、ウタヤマキョウケイのウキヨエの前でビクっとしたの」
「そんなところから見られてたのか…」
「はい!それからあなたはウキヨエにゆっくり近付いて、いろんな角度から見たり、近くから見たり遠くから見て、ホォーって深いため息をついて、またじーっと見て動かなくなりました!」
「おい…見すぎだ…」
「だから声をかけました。あなたは…カユボティがよく言う"絵画に恋をした"ように見えたから!」
「……」
「声をかけて正解でした!あそこまでウタヤマキョウケイに興味を持って質問してくださったのはあなたが初めてでしたし、あなたの目を真っすぐ見ることができました。あなたははじめわたしに少し怖い目をしてたけど、ウキヨエを見てるときは瞳が揺れて感動がこっちにも伝わっきましたし、今のあなたはわたしにも優しい目を向けてくれてます。えへへ、うれしい」
(俺が難しい質問をしたのは君に意地悪をしようとしたからだ。困ったな。嫌味も意地悪も通じない子なんてはじめてだ…。それに、俺と話しただけでこんなに嬉しそうに笑ってくれる子も)
男性客は気まずそうに頭をかいた。今ではモニカをいじめようとしたことをひどく後悔しているようだった。
(この子は俺の外見じゃなくて絵への愛情やひとかけらの好意を見つけて喜んでくれている。はあ…顔も良ければ性格も良い子じゃないか。外見だけで人を判断してたのは俺のほうだったな。恥ずかしすぎて消えてしまいたい)
「…いくらだ?」
「えっ?」
「ああ、値札に書いてあったな。…金貨10枚。この絵が?安すぎないか?」
「あはは!さすがですね。絵に詳しい方は、ウキヨエが金貨10枚で売られていることを驚かれるんです」
「ちっ、なにを言ったって褒めるじゃないか」
「褒めたつもりはないんだけど…」
「じゃあ、ウタヤマキョウケイのウキヨエ3枚、もらおうか」
「えっ?!」
「なんだ、だめなのか?」
モニカはぶんぶんと首を振り、大きな瞳をきらきら輝かせて満面の笑みを浮かべた。
「だめじゃないです!!きゃー!うれしい!!」
「よかったな。君のお手柄だ」
「えへへ!!やったー!ねえ、どこに飾るんですか?!寝室?!リビング?!」
「そうだな。あと客間とか…」
「きゃーっ!素敵ー!!」
(販売できたことより、ウタヤマキョウケイのウキヨエが俺の手に渡ることを喜んでるのか。つくづく変わった子だな)
モニカはスキップをしながら壁からウキヨエ3枚を取り外し、カウンターで梱包した。男性客は金貨30枚と一緒に名刺を渡しながら、小さな声でボソボソと呟いた。
「あー…。またウタヤマキョウケイのウキヨエが画廊に並んだら教えてくれるか」
「もちろんです!!」
「これが俺の家の住所だ。また伝書インコを飛ばしてくれ」
「分かりました!!ありがとうございます!!」
ウキヨエ3枚を抱かえた男性客は、モニカに見送られながら帰路についた。同じウキヨエシに惹かれた仲間に出会えて(おまけに3枚もウキヨエが売れて)上機嫌のモニカは店の外で「やったー!!」と飛び跳ねた。それに驚いた通行人が体をビクつかせて奇異の目を向けていたので、モニカは顔を真っ赤にして逃げるように店内へ戻った。
のちにカユボティとヴァジーがその男性客の名刺を見て驚きの声をあげた。彼はルアンいち有名な絵画の評論家で、気難しい性格からなかなか打ち解けられる人がいないらしい。とんでもない人を手懐けたな、と大人たちに褒められても、モニカは「別に普通に良い人だったけどなあ~」と首を傾げていた。
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