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魂魄編:ピュトア泉
セルジュが与えたもうひとつのもの
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その後もシチュリアとフィックは、アーサーが他に吸血鬼の性質を残していないかを調べた。アーサーの瞳孔や爪、歯など、身体的な部分は何も変わっていない。小さな傷をつけて回復力を調べたりもしたが、そういったところも変化は見られなかった。
肌寒い中下着一枚で立たされて、出会ったばかりの少年少女に体中を観察されることは、さすがのアーサーでも恥ずかしさで顔を真っ赤にしていた。
「うぅぅ……。ふたりしてそんな、そんなジロジロ見ないでよぉ……」
「何を言っているんです? 調べないと今後に不安が残るでしょう」
「そうだよアーサー。何を恥ずかしがることがあるんだい? 隠すべきものは隠しているんだし」
アーサーのか細い声に何食わぬ顔で返すシチュリアとフィック。アーサーは顔を手で覆い、ボソッと呟く。
「こ、こんなこと、モニカにもされたことないよぉ……」
「うーん、アーサーの体質がそもそも特殊すぎて判断が難しいな……」
アーサーを無視して唸るフィックにシチュリアも頷く。
「そうなの。アーサーは元々身体的な基礎能力値が高いから、筋肉の頑丈さや回復速度などがそもそも常人と違うのよね。モニカに聞いていたらそんなに変わらないということだから、これがアーサーの元々持っている能力なのでしょうけど」
「本当にすごい。基礎能力値が人間離れしていると、人間の構造はこうなるのか。勉強になるな。この華奢な手足と細い腰にこんなに質の良い筋肉が詰まっているなんて。惚れ惚れするなあ」
「ええ。芸術的ね。ずっと見ていられるわ」
「ちょっと待って、なんだか主旨が変わってきてない!?」
「ほら見てフィック。アーサーって体もすごく柔軟」
「ちょ、えっ、なにしてるのぉ!?」
「素晴らしい。神の最高傑作だ。その上鍛錬を怠らず日々体を鍛えているおかげで、より美しい体に仕上がっているね」
「16歳とはとても思えない身長だけど、もしかしたらそれも神に愛されすぎてしまったせいなのかもしれないわ」
「おお、良い見解だよシチュリア」
「僕は一体何をされてるんだろう……」
途中からまるで芸術品のように鑑賞され始めたアーサーは、虚ろな目をしてそう呟いた。
なぜ兄が好き勝手されてモニカが何も文句を言ってこないかと言うと、彼女も一緒になって彼の体を鑑賞して、誇らしげにシチュリアとフィックの称賛の声に頷いていたからだ。
モニカがソファでうたた寝を始めて、疲れたフィックが寝室へ戻っても、シチュリアはずっとアーサーの体を眺めていた。
寒さで体の震えが止まらなくなった頃、たまりかねたアーサーが服を着ようとすると、彼女に腕を掴まれた。
「シチュリア! 僕、寒くてガクガク震えてるの! 服着せて!」
「ち! ちがうんです! ひとつ気になることがありまして!」
「気になること?」
シチュリアは頷き、彼の胸をまじまじと見つめながら唸る。
「やっぱり、変ですね……」
うつらうつらしていたモニカがぼんやりと目を開ける。
「アーサーの胸がどうしたの、シチュリア?」
「どうして僕は女の子に胸を凝視されてるんだろう……」
アーサーがそう呟いても、シチュリアは気に留める様子もなくモニカに話しかける。
「モニカ、アーサーに魔力は全くないのですね?」
「うん。一回も使えたことがないし、魔力を目視できる人たちも、アーサーには魔力の器がないって言ってたわ」
シチュリアがうーんと考え込む。
「そうですか。実は、アーサーに魔力を微かに感じます」
「「えっ!?」」
「ですがそれは本当に微かなものです。お母様の命に残っていたものかとも思いましたが、先ほどのモニカの話を聞いている限り、そうではないようですね。……ということは、吸血鬼の魔力の器の一部がアーサーに受け継がれたのかもしれません。ヒトの核に魔力の器があるように、魔物も魂魄に魔力の器を宿しているので」
双子は驚いて目を見合わせた。
「ってことは僕も……」
「魔法を使えるようになったってこと……!?」
「セルジュ先生みたいな!?」
「セルジュ先生の魔法すっごかったんでしょ!?」
「えー! 僕すごい魔法使いになっちゃえるの!?」
「きゃーーーー! ってちょっと待ってよ! ってことはわたしの立ち位置は!?」
「大丈夫だよモニカ! 先生は聖魔法と回復魔法は使えない!」
「聖魔法と回復魔法だけの要員!? なんかやだあ!!」
「盛り上がっているところ申し訳ありませんが」
どんどんと勝手に話を進める双子に苦笑いを浮かべて、シチュリアが小さく手を上げた。
「アーサーが受け継いだ魔力の器は質は良いものの、本当に微かなものです。そんなに多様な魔法が使えるとは思えませんし、実戦で使えるほどの魔力もないように感じます」
「ええ……」
「それは残念!」
シチュリアの言葉に、アーサーは肩を落として、モニカは顔がニヤけるのを隠せなかった。
「この器の大きさですと、使えたとしてもたったひとつの魔法くらいしか……」
「だったら火魔法がいいなあー! モニカに氷漬けされても自分で溶かせるし!」
「そうですね。一度試してみましょうか」
肌寒い中下着一枚で立たされて、出会ったばかりの少年少女に体中を観察されることは、さすがのアーサーでも恥ずかしさで顔を真っ赤にしていた。
「うぅぅ……。ふたりしてそんな、そんなジロジロ見ないでよぉ……」
「何を言っているんです? 調べないと今後に不安が残るでしょう」
「そうだよアーサー。何を恥ずかしがることがあるんだい? 隠すべきものは隠しているんだし」
アーサーのか細い声に何食わぬ顔で返すシチュリアとフィック。アーサーは顔を手で覆い、ボソッと呟く。
「こ、こんなこと、モニカにもされたことないよぉ……」
「うーん、アーサーの体質がそもそも特殊すぎて判断が難しいな……」
アーサーを無視して唸るフィックにシチュリアも頷く。
「そうなの。アーサーは元々身体的な基礎能力値が高いから、筋肉の頑丈さや回復速度などがそもそも常人と違うのよね。モニカに聞いていたらそんなに変わらないということだから、これがアーサーの元々持っている能力なのでしょうけど」
「本当にすごい。基礎能力値が人間離れしていると、人間の構造はこうなるのか。勉強になるな。この華奢な手足と細い腰にこんなに質の良い筋肉が詰まっているなんて。惚れ惚れするなあ」
「ええ。芸術的ね。ずっと見ていられるわ」
「ちょっと待って、なんだか主旨が変わってきてない!?」
「ほら見てフィック。アーサーって体もすごく柔軟」
「ちょ、えっ、なにしてるのぉ!?」
「素晴らしい。神の最高傑作だ。その上鍛錬を怠らず日々体を鍛えているおかげで、より美しい体に仕上がっているね」
「16歳とはとても思えない身長だけど、もしかしたらそれも神に愛されすぎてしまったせいなのかもしれないわ」
「おお、良い見解だよシチュリア」
「僕は一体何をされてるんだろう……」
途中からまるで芸術品のように鑑賞され始めたアーサーは、虚ろな目をしてそう呟いた。
なぜ兄が好き勝手されてモニカが何も文句を言ってこないかと言うと、彼女も一緒になって彼の体を鑑賞して、誇らしげにシチュリアとフィックの称賛の声に頷いていたからだ。
モニカがソファでうたた寝を始めて、疲れたフィックが寝室へ戻っても、シチュリアはずっとアーサーの体を眺めていた。
寒さで体の震えが止まらなくなった頃、たまりかねたアーサーが服を着ようとすると、彼女に腕を掴まれた。
「シチュリア! 僕、寒くてガクガク震えてるの! 服着せて!」
「ち! ちがうんです! ひとつ気になることがありまして!」
「気になること?」
シチュリアは頷き、彼の胸をまじまじと見つめながら唸る。
「やっぱり、変ですね……」
うつらうつらしていたモニカがぼんやりと目を開ける。
「アーサーの胸がどうしたの、シチュリア?」
「どうして僕は女の子に胸を凝視されてるんだろう……」
アーサーがそう呟いても、シチュリアは気に留める様子もなくモニカに話しかける。
「モニカ、アーサーに魔力は全くないのですね?」
「うん。一回も使えたことがないし、魔力を目視できる人たちも、アーサーには魔力の器がないって言ってたわ」
シチュリアがうーんと考え込む。
「そうですか。実は、アーサーに魔力を微かに感じます」
「「えっ!?」」
「ですがそれは本当に微かなものです。お母様の命に残っていたものかとも思いましたが、先ほどのモニカの話を聞いている限り、そうではないようですね。……ということは、吸血鬼の魔力の器の一部がアーサーに受け継がれたのかもしれません。ヒトの核に魔力の器があるように、魔物も魂魄に魔力の器を宿しているので」
双子は驚いて目を見合わせた。
「ってことは僕も……」
「魔法を使えるようになったってこと……!?」
「セルジュ先生みたいな!?」
「セルジュ先生の魔法すっごかったんでしょ!?」
「えー! 僕すごい魔法使いになっちゃえるの!?」
「きゃーーーー! ってちょっと待ってよ! ってことはわたしの立ち位置は!?」
「大丈夫だよモニカ! 先生は聖魔法と回復魔法は使えない!」
「聖魔法と回復魔法だけの要員!? なんかやだあ!!」
「盛り上がっているところ申し訳ありませんが」
どんどんと勝手に話を進める双子に苦笑いを浮かべて、シチュリアが小さく手を上げた。
「アーサーが受け継いだ魔力の器は質は良いものの、本当に微かなものです。そんなに多様な魔法が使えるとは思えませんし、実戦で使えるほどの魔力もないように感じます」
「ええ……」
「それは残念!」
シチュリアの言葉に、アーサーは肩を落として、モニカは顔がニヤけるのを隠せなかった。
「この器の大きさですと、使えたとしてもたったひとつの魔法くらいしか……」
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「そうですね。一度試してみましょうか」
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