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決戦編:裏S級との戦い
会いたくない客人
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◇◇◇
オーヴェルニュ侯爵家の城に三台の馬車が停まる。
馬車から出てきたのは、カトリナの手を引くリアーナと、布に包まれたジルを大切に抱きかかえるカミーユ、サンプソン、マデリア、アーサー、モニカ、ダフ、そしてベニートパーティ。
バンスティンダンジョンから戻って来た冒険者たちは、一夜をイルネーヌ町で過ごしたあとオーヴェルニュ家を訪れた。
「お父様はいるかしら?」
迎えに来た使用人にカトリナが尋ねると、すぐに侯爵がやってきた。目を白い布で覆っているカトリナに侯爵は目を細めたが、それよりも愛娘と再会できた喜びの方が大きかった。
「カトリナ、よく戻って来たな」
「お久しぶりです、お父様」
侯爵は娘とハグを交わしたあと、残りのメンバーに目を向ける。
「カミーユ、リアーナ。久しぶりだな。……君たちも随分様変わりした」
「三年ぶりだな、侯爵のおやっさん」
「おっちゃーん! 会いたかったぜ!」
カミーユとリアーナと挨拶を交わし双子をハグしたあと、侯爵はギロリとマデリアの隣にいるサンプソンを睨みつける。
「どうして君がここにいるんだ? よくもまあ私に顔を見せられたものだね」
「申し訳ありません侯爵。今回だけは、敷地をまたぐことをお許しください」
サンプソンの暗い顔に、侯爵はそれ以上何も言えなかった。
侯爵は小さく舌打ちして、次はダフに目を向ける。
「おお、君はアドルナート伯爵の息子じゃないか。名前は確か……ダフだね。クルドが溺愛しているという噂の」
「お久しぶりです、侯爵。お名前を覚えてくださっていたんですね」
「はっはっ。ヴィクス王子の近衛兵になった君のことは、貴族なら誰でも知っているさ」
「……」
「イルネーヌ町を焼き払ったときも、君はヴィクス王子の隣にいたのかな」
ダフの背筋が凍り付いた。侯爵は、顔を歪めてはいないもののひどく冷たい目をしている。
「あれは私の領地なのだということを知った上で、君はここに来たのか?」
しかしそこにカトリナが仲裁に入った。
「お父様。ダフはその時ヴィクス王子の傍にはいませんでした。知っていたら彼なら止めていたわ」
「しかしカトリナ。彼がヴィクス王子の近衛兵であることには変わりない。なぜ共に行動をしている?」
「彼はもう近衛兵ではありません。彼のことは信用してあげて。私が責任をもつわ」
「……カトリナがそこまで言うのなら」
ため息をついたあと、侯爵はベニートパーティに視線を移した。
「そして? 君たちは……」
「は、はじめまして。お、俺たち、C級冒険者のベニートパーティです。すみません、俺なんかが侯爵家の敷地に足を踏み入れて」
いかにも貴族という身なりをしている侯爵に、ベニートパーティは体が強張っている。
「おお、君たちがベニートパーティか。カトリナから話は聞いているよ。そんなにかしこまらないで。とにかく、中へお入り」
アーサーがベニートの背中をそっと撫でる。
「大丈夫だよベニート。オーヴェルニュ侯爵は庶民とか貴族とかなんてひとつも気にしない良い人だから!」
「あ、ああ……」
城まで歩いているとき、侯爵はカトリナと隣り合って歩いた。彼女の手を引きながら、そっと尋ねる。
「カトリナ、目が……?」
「ええ。今回の依頼で視力を失ってしまって」
「そうか……」
「……ごめんなさい、お母様とお父様にいただいた大切な体を」
「とても悲しいね。カトリナと目が合うことがないことが悲しい。だが、君が一番辛いだろうから……これ以上は何も言わないことにするよ」
「私は大丈夫よ。今までに美しいものは見尽くしたもの。だからもういいの」
そしてカトリナはふと足を止め、呟いた。
「私がこれから見たいものは、目には見えないものだから」
侯爵は娘の頭を撫で、肩を抱く。
「そうか」
「ええ」
オーヴェルニュ侯爵家の城に三台の馬車が停まる。
馬車から出てきたのは、カトリナの手を引くリアーナと、布に包まれたジルを大切に抱きかかえるカミーユ、サンプソン、マデリア、アーサー、モニカ、ダフ、そしてベニートパーティ。
バンスティンダンジョンから戻って来た冒険者たちは、一夜をイルネーヌ町で過ごしたあとオーヴェルニュ家を訪れた。
「お父様はいるかしら?」
迎えに来た使用人にカトリナが尋ねると、すぐに侯爵がやってきた。目を白い布で覆っているカトリナに侯爵は目を細めたが、それよりも愛娘と再会できた喜びの方が大きかった。
「カトリナ、よく戻って来たな」
「お久しぶりです、お父様」
侯爵は娘とハグを交わしたあと、残りのメンバーに目を向ける。
「カミーユ、リアーナ。久しぶりだな。……君たちも随分様変わりした」
「三年ぶりだな、侯爵のおやっさん」
「おっちゃーん! 会いたかったぜ!」
カミーユとリアーナと挨拶を交わし双子をハグしたあと、侯爵はギロリとマデリアの隣にいるサンプソンを睨みつける。
「どうして君がここにいるんだ? よくもまあ私に顔を見せられたものだね」
「申し訳ありません侯爵。今回だけは、敷地をまたぐことをお許しください」
サンプソンの暗い顔に、侯爵はそれ以上何も言えなかった。
侯爵は小さく舌打ちして、次はダフに目を向ける。
「おお、君はアドルナート伯爵の息子じゃないか。名前は確か……ダフだね。クルドが溺愛しているという噂の」
「お久しぶりです、侯爵。お名前を覚えてくださっていたんですね」
「はっはっ。ヴィクス王子の近衛兵になった君のことは、貴族なら誰でも知っているさ」
「……」
「イルネーヌ町を焼き払ったときも、君はヴィクス王子の隣にいたのかな」
ダフの背筋が凍り付いた。侯爵は、顔を歪めてはいないもののひどく冷たい目をしている。
「あれは私の領地なのだということを知った上で、君はここに来たのか?」
しかしそこにカトリナが仲裁に入った。
「お父様。ダフはその時ヴィクス王子の傍にはいませんでした。知っていたら彼なら止めていたわ」
「しかしカトリナ。彼がヴィクス王子の近衛兵であることには変わりない。なぜ共に行動をしている?」
「彼はもう近衛兵ではありません。彼のことは信用してあげて。私が責任をもつわ」
「……カトリナがそこまで言うのなら」
ため息をついたあと、侯爵はベニートパーティに視線を移した。
「そして? 君たちは……」
「は、はじめまして。お、俺たち、C級冒険者のベニートパーティです。すみません、俺なんかが侯爵家の敷地に足を踏み入れて」
いかにも貴族という身なりをしている侯爵に、ベニートパーティは体が強張っている。
「おお、君たちがベニートパーティか。カトリナから話は聞いているよ。そんなにかしこまらないで。とにかく、中へお入り」
アーサーがベニートの背中をそっと撫でる。
「大丈夫だよベニート。オーヴェルニュ侯爵は庶民とか貴族とかなんてひとつも気にしない良い人だから!」
「あ、ああ……」
城まで歩いているとき、侯爵はカトリナと隣り合って歩いた。彼女の手を引きながら、そっと尋ねる。
「カトリナ、目が……?」
「ええ。今回の依頼で視力を失ってしまって」
「そうか……」
「……ごめんなさい、お母様とお父様にいただいた大切な体を」
「とても悲しいね。カトリナと目が合うことがないことが悲しい。だが、君が一番辛いだろうから……これ以上は何も言わないことにするよ」
「私は大丈夫よ。今までに美しいものは見尽くしたもの。だからもういいの」
そしてカトリナはふと足を止め、呟いた。
「私がこれから見たいものは、目には見えないものだから」
侯爵は娘の頭を撫で、肩を抱く。
「そうか」
「ええ」
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