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8章
第67話 二学期中間テスト
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◇◇◇
顧問との約束通り、海茅は二学期からも勉強を頑張った。夏休み中も、一週間に一度は顧問に勉強した内容を報告し、分からないところを質問していたので、今まで積みあがっていた分からないことも随分解消できた。
そのおかげか、二学期の授業は今までと一味違った。先生の話していることがちゃんと理解でき、脳みそに吸収される。授業中に出された問題も自力で解けるようになった。
それに、本を読む習慣ができた海茅は、国語の授業も前ほど嫌ではなくなった。といっても、扱う題材が難しすぎるときは「やっぱり国語なんて嫌いだ」と思ってしまうのだが。
海茅の一番苦手な科目に社会が入っていたのだが、これは意外な方法で克服できた。それは、社会の教科書に載っている文化財の写真や絵画で、匡史がこっそり興奮していることに気付き声をかけたのがきっかけだった。
ある日の昼休み、海茅は一緒にお弁当を食べていた匡史に尋ねた。
「ねえ、匡史君。さっき授業中にちょっとニヤニヤしてなかった? プリント配るときに見ちゃったんだけど」
「えっ!? 見られてた!?」
「やっぱりそうだった。口元隠してたけど、バレバレだったよ」
匡史は顔を真っ赤にして唐揚げを頬張る。
「だって、俺の好きな絵画が教科書に載ってたから……」
「そうなんだ。何ページ?」
その質問がきっかけで、匡史の抑えていた「好き」が堰を切ってあふれ出た。匡史は、その絵画を描いた画家の話だけでなく、この絵画の時代背景もとめどなく話す。
彼の時代背景の解説が面白く、教科書に載っている歴史とも繋がっていたため、海茅は自然と社会の理解を深めていった。
今では、匡史は好きなことを好きなだけ話しても海茅に謝ることはない。それで海茅が楽しんでくれているということを、彼は素直に受け入れることにした。それに、これが二人の仲を深めることのひとつだと匡史は気付いていた。
テスト期間に入ると、海茅はまたいつものメンバーと勉強会をした。五人の中では変わらず海茅が一番勉強を苦手としていたが、海茅なりにも勉強を頑張ってきたおかげで、同じ土俵には立てている気がしてホッとした。
そしてテスト結果はというと――
海茅は、一番心配していた英語のテストが返ってきたとき、クラスメイトの前で床に崩れ落ちた。
「うわぁぁぁ……っ」
結果が気になった優紀、匡史、茜、創が駆け寄る。
「海茅ちゃん、どうだった!?」
海茅は涙と鼻水を垂らした顔で友だちを見上げた。
「み、みんなぁ……っ」
海茅が差し出したテストには、赤ペンで五十一点という点数が書かれている。
「うおー! 五十一点! ギリッギリセーフ!!」
「すごい! よかったねみっちゃん!!」
「勉強頑張った甲斐があったねぇミッチー! 五十一点だって! すごいぃぃぃ!」
五十点を下回る点数だったのではないかと心配していた創、匡史、茜は、喜びのあまり海茅のテスト用紙を掲げて大はしゃぎした。
クラスメイト全員に聞こえる声で「五十一点」を連呼された海茅は、ぐるぐる目を回して創からテスト用紙を引ったくる。
「も、もう! みんなに聞こえちゃったじゃん! 恥ずかしいよぉー!」
「ご、ごめん! 嬉しすぎて我を忘れてた……!」
クラスでドッと笑いが沸き起こる。そしていつしか教室が拍手に包まれた。クラスメイトも、元学年最下位の海茅が勉強を頑張っていたことを知っていたからだろう。
たったの五十一点で祝われるのは恥ずかしかったが、それでも頑張りを認められたことは嬉しかった。
他の教科も、顧問と約束していた点数よりほんの少し上回る点数だった。
テスト結果を報告すると、顧問は顔をほころばせた。
「よく頑張ったな、彼方」
「ありがとうございます!」
「じゃあ次は全教科六十点目指そうな」
「えっ」
どうやら、顧問はこれで満足してくれないらしい。
顧問との約束通り、海茅は二学期からも勉強を頑張った。夏休み中も、一週間に一度は顧問に勉強した内容を報告し、分からないところを質問していたので、今まで積みあがっていた分からないことも随分解消できた。
そのおかげか、二学期の授業は今までと一味違った。先生の話していることがちゃんと理解でき、脳みそに吸収される。授業中に出された問題も自力で解けるようになった。
それに、本を読む習慣ができた海茅は、国語の授業も前ほど嫌ではなくなった。といっても、扱う題材が難しすぎるときは「やっぱり国語なんて嫌いだ」と思ってしまうのだが。
海茅の一番苦手な科目に社会が入っていたのだが、これは意外な方法で克服できた。それは、社会の教科書に載っている文化財の写真や絵画で、匡史がこっそり興奮していることに気付き声をかけたのがきっかけだった。
ある日の昼休み、海茅は一緒にお弁当を食べていた匡史に尋ねた。
「ねえ、匡史君。さっき授業中にちょっとニヤニヤしてなかった? プリント配るときに見ちゃったんだけど」
「えっ!? 見られてた!?」
「やっぱりそうだった。口元隠してたけど、バレバレだったよ」
匡史は顔を真っ赤にして唐揚げを頬張る。
「だって、俺の好きな絵画が教科書に載ってたから……」
「そうなんだ。何ページ?」
その質問がきっかけで、匡史の抑えていた「好き」が堰を切ってあふれ出た。匡史は、その絵画を描いた画家の話だけでなく、この絵画の時代背景もとめどなく話す。
彼の時代背景の解説が面白く、教科書に載っている歴史とも繋がっていたため、海茅は自然と社会の理解を深めていった。
今では、匡史は好きなことを好きなだけ話しても海茅に謝ることはない。それで海茅が楽しんでくれているということを、彼は素直に受け入れることにした。それに、これが二人の仲を深めることのひとつだと匡史は気付いていた。
テスト期間に入ると、海茅はまたいつものメンバーと勉強会をした。五人の中では変わらず海茅が一番勉強を苦手としていたが、海茅なりにも勉強を頑張ってきたおかげで、同じ土俵には立てている気がしてホッとした。
そしてテスト結果はというと――
海茅は、一番心配していた英語のテストが返ってきたとき、クラスメイトの前で床に崩れ落ちた。
「うわぁぁぁ……っ」
結果が気になった優紀、匡史、茜、創が駆け寄る。
「海茅ちゃん、どうだった!?」
海茅は涙と鼻水を垂らした顔で友だちを見上げた。
「み、みんなぁ……っ」
海茅が差し出したテストには、赤ペンで五十一点という点数が書かれている。
「うおー! 五十一点! ギリッギリセーフ!!」
「すごい! よかったねみっちゃん!!」
「勉強頑張った甲斐があったねぇミッチー! 五十一点だって! すごいぃぃぃ!」
五十点を下回る点数だったのではないかと心配していた創、匡史、茜は、喜びのあまり海茅のテスト用紙を掲げて大はしゃぎした。
クラスメイト全員に聞こえる声で「五十一点」を連呼された海茅は、ぐるぐる目を回して創からテスト用紙を引ったくる。
「も、もう! みんなに聞こえちゃったじゃん! 恥ずかしいよぉー!」
「ご、ごめん! 嬉しすぎて我を忘れてた……!」
クラスでドッと笑いが沸き起こる。そしていつしか教室が拍手に包まれた。クラスメイトも、元学年最下位の海茅が勉強を頑張っていたことを知っていたからだろう。
たったの五十一点で祝われるのは恥ずかしかったが、それでも頑張りを認められたことは嬉しかった。
他の教科も、顧問と約束していた点数よりほんの少し上回る点数だった。
テスト結果を報告すると、顧問は顔をほころばせた。
「よく頑張ったな、彼方」
「ありがとうございます!」
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「えっ」
どうやら、顧問はこれで満足してくれないらしい。
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